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 サイトを更新しました。

 今日は『ホビー雑誌コーナー』に、シャドーパンサーとドリルビットを追加しています。


 昨日、Googlechromeで書いた記事、二つほど画像を更新したんですが、InternetExplorerだと更新後の画像が出るのに、Googlechromeだと、いくら更新しても修正前の画像のままなんですよねぇ……。

 他のお客様からだとどう見えてるのか気になるところですが……。


 さて、本文の方は、『ほら男爵』の最終回です。


 次回からは、また別の連載企画を考えています。

 では、スタート!


 さて、最後に、月世界旅行と同じような、いや、それに輪をかけた不思議で珍しい吾輩の冒険談をお聞かせしましょう。
 ある日吾輩は、たとえ命にかかわろうとも、という硬い決心のもとに、シチリア島のエトナ山火口の内部の作りを調べようと出発した。
 およそ三時間も険しい道を歩き続けて、やっと山のてっぺんに着いた。
 その頃、山は荒れていて三週間も荒れ続けた後だった。吾輩は火口の周りを三度も回ったが、そんな事では内部の様子はわかるはずも無いので、思い切って、えいとばかりに火口に身を躍らせた。
 吾輩の身体は、吹き上げる真っ赤に焼けた炭火のためにたちまち焼けただれて、それでもどんどん落ちて、ついに火口の底に着いた。
 ほっとした途端、向こうの方で恐ろしい物音と叫び声が聞こえてくるので行ってみると、どこかで見た事のある足の悪い神と、一つ目の巨人が大げんかをしているではないか。
 吾輩は頭をひねって、やっと二人の正体が分かった。いつか、昔話で読んだことのある、火と鍛冶の神ブルカーンと家来のサイクロプスだった。やれやれ、こんな連中が火口の底で暴れていては、山も荒れるわけだ。
 しかし、吾輩の姿を見ると、二人はたちまち喧嘩をやめた。そしてブルカーンは、親切にも油薬を塗って吾輩の手当てをしてくれたばかりか、酒まで飲ましてもてなしてくれた。
 ブルカーンは、エトナ山の起こりについて説明してくれた。
 何のことは無い。ブルカーンの鍛冶場から投げ出される灰が積み重なって出来た山だそうだ。つまりブルカーンは、ときどき家来に罰を与えるために真っ赤な炭火を投げつけるのだが、度重なるうちに、家来はよけ方が上手くなった。そこで外れた炭火は地上へ飛んで灰になって積み重なってエトナ山になったという訳だ。
 ブルカーンはなおも語り続けた。
「我々の喧嘩は二、三か月も続くことがあり、その事から地上に起こる騒ぎを、あなた方は爆発と言っているようです。ご存知のベスビオ山の大爆発も、我々のせいで申し訳ないと思っています」
「なるほど、なるほど」
 吾輩は、正直なブルカーンがすっかり好きになって、もっとこの地下の宮殿に居たかったが、ままならぬは世の、いや地底の常だ。
 口うるさい奴が、ブルカーンに吾輩のつまらぬ告げ口をしたらしく、お人よしのブルカーンはかんかんに怒って、訳も言わずに、
「この恩知らずめ、お前が来た、元の世の中へ帰っていけ」
 言い訳をする暇も有らばこそ、吾輩は底なしの深い井戸に投げ込まれた。
 吾輩の身体は深く深く、どこまでも吸い込まれて、次第に気を失っていったが、やがて我に返ると、眩しい太陽の輝く海の上に浮かんでいた。
「やれやれ、助かったぞ」
 吾輩は、ほっとしたがそれもつかの間の喜びで、どこを見回しても陸地らしいものは見えない。いささか心細くなっていると、小山のような氷山が流れて来た。吾輩は得たりと、それによじ登った。
 腹がペコペコだし、また白熊でも仕留めて焼肉にでもあずかろうと、方々探してみたが、足跡一つ見つからない。
 ガッカリしていると、なんという幸運だ。はるか彼方から、一艘の船が走って来るではないか。
「おーい、助けてくれえ」
 吾輩は夢中で叫んだ。
「今行くぞ、待ってろ」
 向こうも答えて、船はぐんぐんスピードを加えた。
 吾輩は、もう嬉しくて船の来るのが待っていられず、ざぶんと海中に飛び込むと、船に泳ぎ着いて、やっと引き上げてもらった。
 船員から、ここが南太平洋の真ん中だ、と聞かされた時にはからかわれているのかと思った。船員の言う事が本当だとすれば、吾輩はエトナ山の火口の底から地球の中心を突き抜けて、南太平洋の中へ落ちたことになるからだ。
 しかし、それは間違いのない事実だった。そして、それは吾輩以外のどんな人間も通った事のないコースだった。こんな事なら、気など失わずによく観察すればよかった、とつくづく後悔した。
 吾輩は、船員の手厚い看護ですぐ元気になった。そして聞かれるままに、今までの冒険のいきさつを細かに話したが、誰も信用しないばかりか、腹を抱えて大笑いした。
 吾輩は、自分の正直を疑われるのは我慢ならない性質だが、相手が命を助けてくれた恩人であっては仕方がない。煮えくり返る胸を押さえてこらえた。
 次の日の朝、我々の船はオーストラリアのボタニー湾へ着いた。ここは非常に自然に恵まれて上天気で、イギリス政府はここへ罪人を送ってよこすようだが、むしろ手柄のあった人をご褒美に連れてきた方が良さそうに思われた。
 我々は、ここに三日だけとどまってまた出港したが、その四日目の事だった。恐ろしい嵐のために、帆と言う帆は引きちぎられ、船首の斜めの帆もばらばらにされ、おまけに大きなつぎ帆柱が羅針盤の上にぶっ倒れて、羅針盤の箱もろとも無残に打ち砕かれた。
 さあ、大変。
 船に羅針盤が無くなったら、盲目が杖をなくしたのとおんなじだ。方角が分からなくなる。
 間もなく嵐は静まったが、我々の船は、あっちへふらふら、こっちへふらふら、あてどの無い航海を続けなければならなかった。
 そして三か月後の事だった。苦あれば楽あり。
 ある日、吾輩は何とも言えない良い香りに目を覚ますと、甲板の方で、
「ミルクだ、ミルクだ」
 と、船員たちが大騒ぎだ。
 何事かと行ってみると、これは驚いた。海の水が真っ白に変わっている。
 舐めてみると、なるほど、舌のとろけそうな甘いミルクだ。おまけに陸地も広い。
 我々は大喜びで、ミルクの海を突っ切って上陸した。すると、さらに驚いた事に島全体がチーズで出来ている事だった。
 島の住民は、このチーズを食べて生活している。しかも便利な事にいくら食べても、一夜のうちに元通りに生長しているから、ちっとも減らない。
 見事な実のついたブドウの木もたくさんあったが、食べて見るとこれもミルクの味だった。
 お化けキノコのような穂のついた麦も生えていたが、この実の中には、すっかり焼けて食べられるばかりのパンが入っていた。
 我々は、この島を歩き回っている内に、七つのミルクの川と、二つのぶどう酒の池を発見した。
 こんなわけだから、背丈が二メートル七十センチ、足が三本、手が一本、額に角が一本生えている奇妙なこの島の住民は、いつも働く必要もなく、飲んだり食ったりミルクの海で遊んでいる。平地と同じで絶対沈まないのも便利だ。
 このチーズ島で、我々は目と目の間に一本の角の突き出た二匹の野生の牛を仕留めて、焼肉にして舌つづみを打った。しかし、あとでこの牛は住民が乗り物に使うのだと聞いて、悪い事をしたと思った。
 いくら不思議な島でも、牛の骨に一夜で肉がついて生まれ変わるという事は無いからだ。
 また、ある時、吾輩は三人の男が高い気に吊るされているのを見た。
 一体この三人が、どんな悪い事をした罰かと聞いてみた。
 すると役人は、
「この連中は外国旅行をして帰ってきたのだが、出鱈目な冒険談を触れ回ったから厳罰を与えているのだ」
 と答えた。
 吾輩は、なるほどと同感した。
 いや、もっと酷い罰を与えてもいいと思った。旅行者としては、いつでも正直に本当のことを話すより大切な事は無いのだ。
 吾輩は、もっとこの島に居たかったが、船員に怠け癖が付くと困る、という船長の言葉に従って、再び出港した。
 羅針盤の無い船は、相変わらずあてずっぽうに海の上を走ったが、その内に、海は白から緑に、そして真っ黒に変わった。舐めてみると、なんとこれは世にも素晴らしいぶどう酒だった。
 と、その途端だ。我々の目の前に、一軒鯨のような巨大な怪物が現れた。船の中のありったけの望遠鏡をつなぎ合わせて覗いても、尻尾の方はかすんで見えないくらいだった。
 あっと言う間に、そいつは我々を船ごとぱくりとやると、がぶがぶ海水を飲んでのどから胃袋の中へ流し込んだ。
 我々の船は、胃袋の中でぽっかり浮かんだ。周りにも、怪物に飲まれた沢山の船が並んでいた。
 奴は時々水を飲む。その度に、船は水をかぶって沈没しそうになるので、ポンプで排水作業をするのだが、その大変な事ときたらありはしない。
 とにかく、この怪物ときたら、周りが数十キロメートルもあるジュネーブ湖の水よりも、さらにたくさんの水をがぶ飲みするのだ。
 誰も生きた顔色は無かったが、いつか怪魚の腹に駆け込んだ経験のある吾輩だけは、落ち着いていた。奴らの体内の地理には明るいことだし、船長や二、三の士官を励まして、松明を頼りに船を降りて、胃袋の中を視察に出かけた。
 すると隅の方で、一万人近い人が、どうすればこの怪物の腹の中から逃げ出せるかと、真剣に会議を開いていた。
 我々も仲間に加わって、討議が一段と活発になった途端、


 ドドドドドッ!


 頭の上から滝のように海水が流れ込んできた。怪物が意地悪く水を飲んだのだ。
「わあ、助けてくれ」
「溺れるよう」
 みんな、あっぷあっぷの大混乱だ。しかし、そこは海を友とする船乗りたちばかりだから、どうにか危険を逃れて会議は続けられた。
 今度は吾輩が議長に選ばれた。
 そこで吾輩は、
「帆柱を二本継ぎ足して、怪物が口を開いた途端につっかい棒にして、その隙間から逃げる方法はいかが」
 と提案すると、
「なるほど、いい考えだ」
「賛成、賛成」
 たちまち可決された。
 そこで、百人の勇敢なものが選ばれて、二本の帆柱をつなぎ合わせてチャンスを待った。
 やがて時は来た。
 怪物が大あくびをしたので、
「それっ、今だ」
 わっしょ、わっしょい、力を合わせて頑丈な帆柱が怪物の上あごと下あごの間にしっかり立てられた。怪物は大口を開けたまま、目を白黒させている。もう、こっちのものだ。
「ばんざい」
 我々は、凱歌を上げると、胃袋の中の三十五艘の船で一艦隊を編成して、威風堂々、怪物の口から抜け出したのである。
 輪が舟の羅針盤は、うまく怪物のヘソの辺りに他所の船のが引っかかっていたのを頂戴した。
 例の帆柱は、怪物の口の中へ立てっぱなしにして、今後、他の人々が二度と我々のような目に遭わないようほったらかしておいた。
 噂によると、その後、この怪物は飲みたくなくても胃袋に水が遠慮なく流れ込み、ついに腹が膨張して、大爆発を起こして死んだと言われる。
 天罰覿面というものだ。
 さて、我々は死地を首尾よく逃れたのだが、今、どこにいるのかさっぱり分からない。
 しかし、吾輩は今までの行く先を色々と考え併せて、カスピ海らしいと思っていた。
 だが、よく考えてみると、カスピ海と言えばすっかり陸に囲まれていて、どの海にも続いていないから、船が陸を渡って来ない限り、我々がこんな所にいるわけがないのだ。
(おかしいぞ)
 と思っていた。
 そして、吾輩がチーズ島から連れてきた男が、
「なあに、ちっとも不思議じゃありませんよ。あの怪物が、私達を胃袋に押し込めたまま、地下を潜ってこのカスピ海まで来たんですよ」
 と、もっともらしい説明をした。
 さてある陸地に着くと、久しぶりに土を踏むことのできる喜びに、吾輩は真っ先に船を降りたが、途端に待ってましたとばかりに一匹の太った大きな熊が飛びかかって来た。
 吾輩はそれを歓迎と解釈して、
「お出迎え、ご苦労様」
 と言いながら、熊の前足を一本ずつ捕まえて、力いっぱい握手した。


 ウーッ!


 熊は変な声を出して唸ったが、あいにく熊語の分からない吾輩は、熊が喜んでいると思い込んで、何日も手を放さずにいたら、とうとう、熊は腹を減らして伸びてしまった。
 吾輩は、そこからロシアの都ペテルブルクへ行った。そこで、ある古い友人を訪ねると、記念に一匹の猟犬をくれた。狩りの話で、諸君ご存知のあの素晴らしい奴の血を引いた子供だ。
 あの猟犬は、へたくそな猟師に貸してやったばかりに、そいつに撃ち殺された。折角犬がシャコを追い出してくれたのに猟師は間違えて、犬を撃ってしまったのだ。全く、可愛そうなことをしたものだ。
 吾輩は、記念のためにその猟犬の毛皮でチョッキを作った。今着ているこのチョッキだ。このチョッキさえ着ていけば、猟に行くにも犬はいらない。忠実なる吾輩のチョッキは、黙っていても獲物のいる場所へ足を向けさせてくれる。
 射撃の出来る近くまで来ると、吾輩の足はひとりでに止まり、チョッキからボタンが飛んで行って獲物のいる場所へ落ちる。そこを狙って吾輩は引き金を引くという訳だ。
 吾輩の狙いは少しも狂わず百発百中、どんな猛獣だって逃れることは出来ない。御覧の通り、吾輩のチョッキにはもう、ボタンが三つしか残っていない。だが、猟の季節になったら、さっそく二つのボタンをつけ足して、野山へ飛び出すつもりだ。
 その時は、また尋ねてきたまえ。もっと面白い話もある事だろう。じゃあ、さようなら。




~おしまい~

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