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 はい、という訳で、『西遊記セレクション』の今回の話を書き上げたので、今日は久々にそれで行きたいと思います。


 では、さっそくスタート!


第一七回 鳥かごの中の子供



 苦難に負けず、苦労を乗り越えて、四人は励まし合い、助け合って一歩一歩進むうちに、天竺はようやく近づいたと見えて、ある日、またもにぎやかな都に着いた。
「ここは何という国だろう。ちょっと聞いてみよう」
 悟空は引いていた馬の手綱を話して、道端の日向に体を暖めている一人の老人に尋ねた。すると、こんな答えをした。
「へい、へい。ここはもと比丘国(びくこく)といって、坊さんの国と呼ばれましたが、今は子供の国になりました」
(国の名前を変えるとは珍しい。きっと坊さんの王様が亡くなって、その子供が王様になったんだろう)
 悟空達はこう考えながら町へ入って行くと、どこの家の門口にも、五色の幕をかけた鳥かごが伏せてある。
 よくよく見ると、ガチョウを入れる籠である。
(変わったことをする。ガチョウのお祭りでもあるのかな?)
 悟空は首をかしげながら、入り口ごとに置かれてある鳥かごを見つめていくと、籠の幕が風にはためいた。何気なくその下を除くと、のけぞるほどに驚いた。
 どの鳥かごにも、可愛い男の子が入れられている。
「こりゃ、どうしたことだ?」
 走って行って、一つずつ鳥かごを調べると、五歳から七歳ぐらいまでの男の子だけが入れられてある。
「もしもし、これは一体どういう訳ですか?」
 悟空は一軒の家へ飛び込んで尋ねた。すると、その家の主人は鳥かごの中の子供の頭を悲しそうに撫でながら、涙声で話し始めた。
「実は、この国の王様がご病気なのですよ。千百十一人の男の子の肝を食べれば、その病気が治ると言うのです。それで、子供たちが逃げ出さないように、鳥かごに入れておけとおっしゃるのです」
 悟空も三蔵法師も、そのむごい話に身が縮まった。
「悟空、なんという哀れな話だろう。法師の身として、これを見過ごすことは出来ない。経を取りに行くのも大事な仕事であるが、人の命はそれよりも尊い。ああ可哀想に。どうしたら幼い命を救うことだ出来るだろうか?」
 三蔵法師は涙を浮かべて考え込んだ。
「お師匠様、わたくしが助けましょう。しかしこれには、何か怪しいわけがありそうですね。あるいは王様の側に悪い化け物でもついていて、人を絶やして国でも乗っ取ろうという考えではないでしょうか」
「恐ろしい事です。私は、明日、王様にお会いして、諫めましょう」
「とにかく、一刻も早く子供たちの命を守らなければなりません。よしきた。山の神や風の神の手を借りて、今夜中に子供たちを山深い所にでも隠してもらおう」
 悟空はいきなり天へ飛び上がった。山の神、風の神などを急いで呼び集めると、哀れな子供たちの身の上を話して頼み込んだ。
「今夜の内に、町中の子供を一人残らず安全な場所へ隠してくれ」
「承知しました。隠しましょう。そして王様には、よく効く天の薬をあげましょう」
 神様たちはしっかり約束をすると、長生きできる天のナツメの木の実を三個、悟空に渡した。
 悟空は喜んで、その夕方、三蔵法師たちと役所の宿泊所に泊った。
 日が暮れて、夜になった。星空に真っ黒い雲があわただしくいくつも走って、間もなく町は大嵐になった。
 街路樹は吹き倒され、屋根瓦は木の葉のように吹き飛んで、その内に、どの家からも子供を入れた鳥かごがピュウピュウと空高く舞い上がっていった。
「王様、大変で御座います。昨夜の大嵐で、町の子供たちは、一人残らず天へ吹き飛ばされてしまいました」
 次の朝になると、家来たちが続けざまに走ってきて、こう知らせた。
「ああ、私の病気はどうなるのか?」
 王様はおろおろして部屋の中を歩き回っている所へ、三蔵法師が案内されて入って来た。
 悟空はミツバチに化けて、三蔵法師の帽子にとまってついて行った。見れば王様は、やせ衰えて身も心も疲れ切っている。そして、声も細く、目にも全く力が無い。
 三蔵法師は王様にお願いした。
「どうぞ、子供の命をとることはおやめ下さい」
 銅頼んでも、王様と、そばに控えていた一人の仙人が受け付けない。三蔵法師は情けなくなり、困り切っていると、ミツバチに化けた悟空がささやいた。
「あの仙人は魔物です。わたくしは、もう少し様子を探って参りますから、先に宿泊所へお帰り下さい」
 三蔵法師は力なくしおれて、宮殿から出ていった。
 すると、仙人が王様をそそのかした。
「子供がいなくとも、ご心配には及びません」
「何故か?」
「ただいまの和尚は、修行を積まれたなかなか優れた人相をしております。その者の肝を煎じて飲まれたら、子供の肝に比べて万倍も効き目が御座います」
「なぜ、それを早く言わん。帰ってしまったではないか」
「町の四方の門を閉ざして、兵士たちに宿泊所を取り巻かせて、ひっ捕らえてくれば宜しいと存じます」
 王様は、息を弾ませて喜んだ。
 悟空はこれらの話をカーテンの陰にとまって聞いていた。大急ぎで宿泊所へ飛んで帰って知らせた。
「お師匠様、一大事です。宮中にいた魔物の仙人が、王様をそそのかして、ここへ軍隊を差し向けてきます」
「その理由は?」
「お師匠様の肝は、一万人の子供の肝よりも効き目があると、仙人が王様を焚きつけたからです」
「悟空や、どうしよう?」
「まあ、落ち着いて下さい。八戒、熊手で少し土をかき集めてきてくれ。悟浄は少し水を持ってきてくれ。オレに上手い考えがあるんだ」
「ほいきた、ほいきた」
 二人は土と水を持ってきた悟空はそれをこね回して、泥んこの塊を二つ作った。
「お師匠様、しばらくの間、あなたとわたくしの顔を変えて下さい。わたくしはお師匠様に成りすまして、仙人の化けの皮を剥いでまいりますから」
 悟空は自分の顔にぴたりっと、泥んこをかぶせて、猿のお面を作った。続いてお師匠様の顔にもぴたりっと塗りつけて、三蔵法師のお面も作った。
「このお面を、お師匠様とわたくしが取り換えてかぶるのです」
 二人は被った。悟空は、
「変われっ」
 と叫んで術を使うと、三蔵法師の顔は悟空になり、悟空の顔はお師匠様に変わった。
 二人は着物を取り換えていると、銅鑼や太鼓をけたたましく叩き鳴らして、刀や槍を握った三千人の兵士が押し寄せて来た。
「唐土大唐国の和尚。国王がお召しである」
「はい、はい」
 三蔵法師に成りすました悟空が、兵士たちに囲まれてお城へ向かった。間もなく王様の前へ引き出された。すると王様が玉座から見下ろして、厳しい声で命令した。
「私の病気を治すために、和尚の肝を頂く。さよう心得よ」
「はいはい。では腹を断ち割りますから、刀をお貸し下さい」
 家来が、牛を切る大きな刀を持ってきた。
「はい、これで結構です。肝はいくつも御座いますが、何色に致しましょうか。赤、青、黄色、宜しい色をおっしゃって下さい」
 横から仙人が怒鳴った。
「真っ黒い肝を取り出せ」
「承知いたしました。ええいっ!」
 にせ三蔵法師は腹を切って、肝を取り出した。赤、青、黄色、紫、緑の肝が、ぞろぞろと出てきた。
 王様は青くなって震えあがった。
「もう、よい。収めてくれ。収めてくれ」
 仙人がずかずかと、にせ三蔵の所へ寄って来た。
「黒い肝が無いが、どこにあるのだ?」
「慌てなさるな。これから取り出すところだ。王様に申し上げます。大人の真っ黒い肝で宜しければ、この化け物仙人の腹の中にあります。さあ、取り出してお見せしましょう」
 にせ三蔵の顔が悟空の顔に変わった。仙人は驚いてたじたじと後ろへ下がると、雲を呼び起こして逃げ出そうとした。
「逃がすものか。我が棒、喰らえっ」
「ぎゃあっ!」
 仙人は気味悪い叫び声をあげると、悟空が振り下ろした鉄棒の下で、年をとった一匹の白い鹿に変わってぶっ倒れた。王様は、仙人が鹿に変わったり、三蔵法師が猿に変わったりしたので、鹿の死体を飛び越えて逃げ回った。
「王様、どうぞお静かに願います。御覧の通り仙人は、白い鹿の化け物出御座います。わたくしは三蔵法師様の一番弟子である孫悟空で御座います。ちょっとお師匠様の身代わりになって参りました。さあ、ここに天の神様から頂いた長生きの出来るナツメの実が三つ御座います。どうぞ召し上がって、ご病気を治して下さい」
「ああ、私は鹿の化け物などに騙されて、子供たちの肝を食べていたのか。何という恐ろしい事だ」
 王様は恥ずかしさと悔しさで、頭の毛をかきむしって泣き始めた。
 間もなく王様の病気は、天の薬の効き目でさらりと治ってしまった。
 治ると同時に、天へ吹き飛んでいた子供を入れた鳥かごが、赤く、青く、黄色く、五色の幕をひらめかして、花のように美しくゆらゆらと、どの家にも舞い戻って来た。
 町中は大喜びである。鳥かごは踏み砕かれ、捻じ曲げられて、溝や空地へぽんぽん投げ捨てられた。
「王様のご病気は治るし、子供たちの命は助かるし、こんなめでたいことは無い。これも、あのお坊様とお猿さん達のおかげだ。どうぞ、ご馳走を食べて下さい」
 あちらの家でも、こちらの屋敷でも、三蔵法師たちの袖をつかんで離さない。
 大飯食いの八戒は、お盆と正月とお祭りと誕生日がいちどきに押し寄せてきたような喜び方である。
「お師匠様のお供をして、こんなに食べられるのは初めてだ」
 と、身体の周囲にご馳走を山のように置きならべて、その真ん中でぐるぐるとコマのように回りながら、片っ端から平らげていた。とうとう四人は、三十日もご馳走攻めにあって、この街から逃げ出すことが出来なかった。
「大事な用事がありますので、これで失礼致します」
 三蔵法師たちは手を取り合って、逃げるようにして町から離れた。八戒は名残惜しそうに、その後ろから肉まんじゅうの山を両腕に抱えて続いた。
 丸木橋を渡って谷底を覗きながら、いくつも険しい道を通っていくうちに、またもいくど目かの夏が巡って来た。
 行く手の山にも、過ぎてきた山々にも、青葉若葉がきらきらと風に翻ったり、ある時は五月雨が絹糸のように細く降り注いで、馬も人も濡れながら、森や谷の奥へかすんでいったこともあった。
 ある晴れた日の夕暮れ、四人は滅法国(めっぽうこく)という国が見下ろせる山の頂上に着いた。すると、一人のお婆さんが子供の手を引いて、太い柳の陰から現れた。
「もしもし、坊さん方。お前さん達は、これから滅法国へ降りて行きなさるようだが、早く馬を引き返しなさい。とんでもないことになりますぞ」
 三蔵法師は、馬の上から身を乗り出して尋ねた。
「何故でしょうか?」
「滅法国の王様は、とても坊さん嫌いなんだよ。二年前から一万人の坊さんを殺そうという誓いを立てて、今日までに九千九百九十六人を殺したんだ。あと四人で一万人だよ。その四人の坊さんが、これから滅法国へ入ろうとしているんだから、注意しないわけにいかないじゃないか」
「なるほど、お知らせ下さって有難う」
 四人は町へ入る前に、どうしたら良いかを相談するために、山の洞穴に入った。そして悟空は、町の様子を見てくることになった。
「この姿で行っては危ない、火取り虫になって行こう」
 と言って、洞穴を出た悟空は、蛾に化けて飛んで行った。
 見れば城門はすっかり夜になっていて、町は軒ごとに吊り灯籠に火を灯して賑やかである。行き交う人の列が影絵のように美しい。
 悟空は蛾になったまま、一軒の宿屋の軒下から吊り灯籠をかすめて家の中へ入り込んだ。広間には十人近くの旅人たちが、着物や頭巾を抜いて肩を揉み合ったり、足をさすったりして、旅の疲れを休めている。
 宿屋の主人が部屋に入って来た。
「皆さま、お疲れで御座います。近頃物騒ですから、お持物にご注意願います」
 客の一人が答えた。
「それは困ったね。私は眠ったら最後、火事があろうが地震だろうが、絶対に目が醒めない寝坊助なんだ。着物も頭巾も、明日の朝まで預かっといてくれないか」
「私もそう願いたい」
「オレも頼むよ」
 宿屋の主人は承知して、宿泊人たちの品物をまとめて奥の部屋へ運んで行った。
 悟空は蛾から元の姿にかえった。
「これは有難い。皆さんには少しお気の毒だが、頭巾や着物を四人分借りていこう」
 間もなく三蔵法師たちは、坊主頭を頭巾で隠し、衣を脱いで町の人たちの着物に着替えた。そして洞穴を抜け出して町へ入った。
 悟空が頭巾をしっかりと被って、一軒の宿屋の店先に立った。
「我々は馬市へ馬を売りに来た馬商人だが、明日の朝、仲間の者が百十頭の馬を連れてくるんです。今夜、先に来た我々四人を泊めてくれませんか」
「はいはい、どうぞお上がり下さいませ。一番明るい上等なお部屋にご案内いたしましょう」
「ところがこの四人とも、暗い部屋でなければ眠れない癖があるんです。どこか、真っ暗い部屋を頼みます」
「ちょっと待って下さい。調べてみましょう」
 主人が奥へ引っ込んでいった。
 悟浄が悟空の尻をつついて尋ねた。
「兄貴、何だってそんな部屋に泊まるんだ?」
「しっ、黙ってろ。もしも寝ている内に頭巾でも脱げ落ちて、坊主頭が出たらどうする」
「成程、暗い部屋に限る、限る」
 主人が出てきた。
「ちょうど良い部屋は御座いませんが、この下の部屋に大きな長持ちが一つ御座います。その中なら、六、七人は寝られますが」
「それそれ、そこで眠る事にしよう。誰も覗けないように、外から錠をおろしてくれ。馬も長持ちに結んでおいてくれ」
「馬をつなぐのなら、長持ちを庭へ出しましょう」
「よろしい。出してくれ」
 四人は夕飯をすますと、庭へ持ち出された長持ちの中へ入り込んだ。外から錠がぴいんとおろされた。
「うわあ、これは暑い、暑い」
 三蔵法師たちはうめき声をあげた。
 暑いはずである。むんむんと蒸し暑い夏の夜に、風も通さない長持ちの中へ入り込んで、しかも頭には頭巾をしっかりと被っている。
 とうとうやりきれなくなって、揃って裸になった。頭巾を脱いで、団扇代わりにパタパタと汗まみれの身体を仰ぎ出した。その内に昼間の疲れで三蔵法師も八戒も悟浄も、ぐっすり寝込んでしまったが、悟空だけは馬商人に見せかけるために、わざと声を上げてありもしない金の計算を始めた。
「ええと、資本金が五千両なり。昨日売った馬の金が三千両なり、明日の馬市で売れば、また三千両入る。ほいほい。随分儲かるわい」
 この独り言を、近くの部屋に泊っていた三人の泥棒達が聞き込んだ。
「大変な大金が、庭に転がっているわい」
 と、急いで二十人ほどの仲間を連れて宿屋へ押し込んできた。足音を忍ばせて長持ちを担ぎ出した。けれども町を囲んだ城門を出ようとした時、番兵にとがめられた。
「怪しい者ども、待て、待て」
 待ってはいられない。泥棒達は番兵に襲い掛かった。たちまち泥棒と番兵の凄まじい戦いになったが、その内に泥棒達は、長持ちを放り出して逃げ散った。番兵たちは馬と長持ちを取り囲んで、長持ちを開こうとしたが錠がかかっていて開けられない。夜明けを待って王様の所へ運ぶことに決めた。
 その騒ぎに三蔵法師たちは長持ちの中で目を覚ました。震えながらささやき合った。
「さて、大変なことになったぞ。王様の前に引き出されれば、首がすっ飛んでしまう」
 悟空が胸を叩いて、みんなをなだめた。
「お師匠様、心配なさらずに静かに眠っていて下さい。素晴らしい事を考えましたから」
 悟空はアリに姿を変えると、長持ちの隙間から外へ這い出した。そして元の姿になると、雲に乗って王様の城へ飛んだ。
 左の腕の毛を全部引き抜いて、千も万もの眠り虫に変えた。そして土地神を呼び出した。
「この眠り虫を、宮殿の中へまき散らしてくれ。役所の中へも、役人たちの屋敷へも、全部まき散らしてくれ」
 土地神はさっそく眠り虫をまき散らした。
 悟空は、次に右腕の毛を全部引き抜くと、分身の術を使って千も万もの小さな悟空の姿に変えた。その悟空達に、剃刀を一つずつ持たせて、宮殿や役人たちの家へ飛ばして、眠っている者の髪の毛を全部くりくり坊主にしてしまった。そしてまたアリの姿に身を変えて、長持ちの中へもぐりこんできた。
 次の日の朝になった。宮中も役人の家も、うろたえ騒ぐ人の声で大騒動である。
「ぎゃあっ、王様のおつむはどうなさいましたか?」
「うわあ、妃。お前こそ、長い髪の毛は一本もないぞ」
 王様もお妃さまも、官女もおつきの者も、役人たちも、一夜のうちに一人残らずつるつる坊主になっていて、泣くやらわめくやら、頭を抱えて走るやら、おさまりが付かない。
 王様はおろおろしながら、大臣たちに告げた。
「一夜のうちに、千も万もの人間が髪の毛も無くすという事は、私が坊さんを殺した報いであろう。今後は坊さんを大事にするように、国中へ知らせなさい」
 王様が後悔の涙を流している所へ、丸坊主になった大勢の兵隊たちが、頭を帽子で隠して、恥ずかしそうに長持ちを担ぎこんできた。そして、昨夜、どうした事か、大将も兵隊も坊主にされてしまった事や、泥棒が置いて逃げた長持ちの事などを報告した。
 王様も、つるつる頭を布で隠しながら、長持ちを開かせた。
 中から三蔵法師はじめ、四人の坊さんたちが揃って現れた。
 王様は驚いた。恐れおののいていた坊さんたちが、四人も揃って、思いもよらない長持ちの中から現れたので玉座から転がり落ちた。三蔵法師たちの前に、がばりっとひれ伏した。
「どうぞ今までの罪をお許しください。命だけはお助け下さい。これからは皆さま方の弟子になって、しっかり教えを受けたいと存じます」
 三蔵法師は頷いた。
「では、王様、私達がこの国を無事に通過できる手形を書いて頂きましょう」
「かしこまりました」
「それから滅法国などという仏を粗末にした名はよろしくない。今日からは、仏の教えを敬うという意味の欽法国(きんぽうこく)という名にしなさい」
「有難う御座います」
 八戒が、横から口を出した。
「ただちに喜びの大宴会を開く。ご馳走を作れ」
「はい、ただいま、ただいま」
 しばらくの後に大宴会が開かれた。
 三蔵法師たちは、今まで罪もなく殺された気の毒な坊さんたちの霊を厚く弔って、欽法国を出発した。




~つづく~

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