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 サイトを更新しました。

 最近多いですが、今日も『文庫本コーナー』です。『ホビー雑誌コーナー』の記事も、サイト用に作り直さないとなぁ……。


 あと、今日はアメブロの方にも記事を書いてます。

 誕生日占い系の本の話ですが、結構当たってて笑いました(笑)。


 さて、本文の方は『にせ王子』の完結編です。

 では、スタート!


 王様は、一言も言いません。
 お妃とラパカーンの顔を、代わる代わる見比べていました。
 とうとう、お妃に向かって言いました。
「なるほど、お前の言う事はもっともだ。しかし、お前が王子だという若者は、証拠の剣を持っていないではないか。どちらが本当の王子か、これは困った事になった。こうなったら、本当の王子を知る方法は、一つしかない。森の仙女に会って、たずねてみる事だ。すぐ、一番速く走る馬を連れてこい」
 王様は、さっそくただ一人で、馬にまたがって仙女のいる森へ出かけていきました。
 その森は、都からあまり遠くない所にありました。そこにはアルトザイデという仙女が住んでいて、代々の王様が難儀にあった時に、助けてくれると言われていました。
 森の真ん中に広い空き地があって、その周りに高いシダーの木が生えています。そこには仙女が住んでいるという噂があるので、誰も恐れて近寄りません。
 王様は、馬を木につないで、空地の真ん中に立ちました。そして大声で言いました。
「親切な仙女様。私の先祖は、危ない目に遭った時、度々あなたに助けてもらいました。私も今、困った事が起こっています。どうか、良い知恵を授けて下さい」
 すると、大きなシダーの木がぱっと開いて、中から頭巾で顔を隠した長い白い服の女が現れました。
「あなたはサーアウド王ですね。あなたがここへ来たわけは、よく知っています。さあ、この二つの箱を持ってお帰りなさい。そして、二人の者に好きな箱を取らせなさい。そうすれば、本当の王子が分かりますよ」


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 こう言って、金や宝石の飾りのついた美しい象牙の箱を渡しました。
 王様はお礼を言って顔をあげると、もう仙女の姿は消えていました。
 王様は二つの箱を持って、お城へ向かいました。帰る道で箱のふたを開けてみようとしましたが、どうしても開きません。蓋の上にはダイヤモンドを散りばめた字が書いてあります。一つの箱には“しあわせと宝”もう一つの箱には“名誉と徳”と書いてあるのです。
「なるほど、どちらも人の欲しがるものだ。私でも、どちらを取って良いか分からないな」
 王様は、独り言を言いました。
 御殿に帰ると、王様は自分の前に台を置いて、二つの箱を並べました。それからお妃を始め、大臣や女官たちを広間に集めました。
 一同が両側にずらりと並ぶと、王様は、
「新しい王子を、ここへ連れてきなさい」
 と、お側の者に言いつけました。
 ラパカーンは、高慢な顔で広間へ入ってきて、王様の前にひざまずきました。
「お父様、何の御用で御座いますか」
 王様は、椅子から立ち上がって言いました。
「お前が私の本当の息子かどうか、分からないという者があるのだ。それで、今日はみんなの前で、お前が本当の王子だという証拠を見せてもらいたい。ここに、箱が二つある。どちらでも、お前の好きな方を取りなさい。そうすれば、お前の本当の身分が分かるのだから」
 ラパカーンは、立って、箱の前に行きました。どちらを取ろうかとしばらく考えていましたが、とうとう“しあわせと宝”の箱を取ることにしました。
「お父様、私は、あなたの息子に生まれて本当に幸せです。これからも、ずっと幸せで、お金や宝をたくさん持って、楽しく暮らしたいと思います。ですから、この箱を頂きます」
「よろしい。お前が本当の王子かどうか、後で分かるだろう。しばらく向こうで待っていなさい」
 と、王様は言って、今度は狭い部屋に閉じ込めてある若者を連れて来させました。オーマールはやせ細って、悲しそうな顔をしています。
「あのき○がいも、すっかり弱っているらしいね」
 と、家来たちも可哀想に思いました。
 王様は、オーマールにも、
「二つの箱の内、お前の好きな方を取りなさい」
 と言いました。
 オーマールはよく気を付けて、箱の上の字を読みました。そして“名誉と徳”と書いた箱の上に手を置いて言いました。
「王様、私は今度の旅で、酷い目に遭いました。そのおかげで、幸せはすぐなくなることが分かりました。また、大切な宝も人に盗られたり、無くなったりすることを知りました。それで、どんなことがあっても無くならない物が欲しいと思います。それは、名誉と徳です。名誉は泥棒も盗ることが出来ません。また、勇気や親切や、正直などの徳は、私の心の中にあるので、死ぬまで無くなりません。ですから、私は“名誉と徳”の箱を頂きたいと思います」
「よろしい。それでは、二人とも、自分の好きな箱の上に手を置きなさい」
 と、王様は言いました。
 それから王様は、東の方を向いて祈りました。
「神様、どうぞ、本当の王子をお教え下さい」
 お祈りを済ますと、王様は段の上に立ちました。並んでいる人々は、息をつめて箱の方を見守りました。
 広間はしいんとして、ネズミの走る足音も聞こえる位です。
 王様は、厳かに言いました。
「箱を開けなさい」
 すると、今までどうしても開かなかった箱が、ひとりでにぱっと開きました。
 オーマールの箱の中には、ビロードのきれの上に小さな金の王冠と、笏(しゃく)が入っていました。ラパカーンの箱には、大きな針と糸が入っていました。
「めいめい箱を持って、ここへ来なさい」
 王様は言いました。そして、オーマールの箱から小さな冠を出して、掌に載せて眺めました。すると不思議、冠は見る見る大きくなって、とうとう普通の冠の大きさになりました。
 王様はオーマールの頭にその冠を置いて、額に接吻しました。
「お前こそ、本当の王子だ。今まで偽物に騙されていた、愚かな私を許しておくれ」
 王様はこう言って、心から王子に謝りました。
 それからラパカーンに向かって、厳しく言いました。
「この大嘘つきめ。卑しい仕立て職人の分際で、まんまと王子に成りすまして、この私を騙しおったな。切り刻んでも飽き足らないほど憎い奴だが、命だけは助けてやる。さっさと消え失せるがよい。お前は、腕の良い職人だ。これに懲りて、これからは、真面目に洋服屋で働くがよい」
 ラパカーンはウソがばれたので、恥ずかしいやら、情けないやら、両手で顔を隠して一言も言えません。
 オーマール王子の前に、ぺたりと額を付けて、涙を滝のように流して謝りました。
「王子様、どうぞお許し下さい」
「よし、許してやる。このアパシッド王家は、代々、友達には親切にし、敵は許してやることになっている。だから、安心して帰っていきなさい」
 王子様は、自分を苦しめたラパカーンを、快く許してやりました。
 王様はそれを見て、心から喜びました。
「おう、心の広い、優しい子じゃ。お前こそ、私の本当の息子じゃ」
 と、両手を広げて、力いっぱい王子を抱きしめました。王妃も駆け寄って、うれし泣きをしながら接吻をしました。
 大臣や女官たちは、それを見て叫びました。
「アパシッド王家、ばんざい。新しい王子様、ばんざい」


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 喜びに沸き返っている広間から、ラパカーンは、こそこそと自分の箱を抱えて出ていきました。
 王様の厩(うまや)には、ムルパアがつないでありました。これはラパカーンが、自分のお金で買った馬ですから、それに乗ってお城から出ていきました。
「オレはとうとう、王子様になったと思ったけど、あれは夢だったのかなあ。でも、ここに、金やダイヤモンドを散りばめた象牙の箱を持っている。やっぱり、王子様になったのは夢じゃなかったのだ。でも、もう、何もかもおしまいだ」
 ラパカーンはとぼとぼと、アレキサンドリアの町へ帰っていきました。
 他に行く所も無いので、前に働いていた洋服屋へ行ってみました。昔の仲間がせっせと働いています。
「こんにちは」
 ラパカーンは、恐る恐る店へ入りました。
 立派な身なりをしているので、主人は金持ちのお客だと思いました。
「いらっしゃいませ。何か、お入り用で御座いますか」
 丁寧に言って、愛嬌を振りまきました。ラパカーンは笑って、
「親方、私ですよ。ラパカーンですよ」
 そう言われてよくよく見ると、なるほど、ラパカーンです。主人はかっとなって、
「こいつ、よくもぬけぬけと帰ってきたな。おーい、みんな来てくれ。持ち逃げのラパカーンめが、帰ってきたぞ」
 と、大声で職人や弟子たちを呼びました。
「なに、あの見栄っ張りのラパカーンが帰ってきたって」
 職人たちは火熨斗(ひのし)や物差しを持ったまま、飛び出してきました。
「こいつめ、よくも図々しく帰ってきたものだ。性根を叩きなおしてやる。それ、これでも喰らえ」
 職人たちは、火熨斗や物差しを振り上げて、力任せにラパカーンを打ちました。
「ちょっと、私の言う事も聞いて下さい」
 ラパカーンは叫びましたが、誰も言い訳を聞こうともしません。頭から足の先まで、散々打ちのめして、積み上げた古着の上へ打ち倒しました。
「この横着者め、持ち逃げした礼服はどこへやった。お前のおかげで、わしは王様から散々なお叱りをくったぞ。そのうえ、信用はがた落ちだ。さあ、あの礼服をすぐ戻してくれ。でないと、お前を訴えてやるぞ」
 主人はかんかんに怒って喚きたてました。
「お許しください、ご主人様。あの時は魔が差したのです。この償いはきっとします。これから心を入れ替えて、今までの三倍働きますから、どうぞ、勘弁して下さい」
 ラパカーンは、ほこりだらけの床に頭を擦り付けて頼みましたが、聞いてくれません。
「駄目だ、駄目だ。お前みたいな嘘つきの見栄っ張りの言う事なんか、あてになるものか」
 主人と職人たちは、また、めったやたらにラパカーンを打ちのめしました。そして、死んだようになったラパカーンを、外へ放り出しました。


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 ラパカーンの服はずたずたに破れ、体中、傷だらけです。しばらくして、やっと正気に返ったラパカーンは、宿屋までたどり着きました。
「あーあ、酷い目に遭わされたなあ」
 ラパカーンは、粗末なベッドにどさりと倒れ込みました。体中の傷がずきずき痛みました。
「世の中は厳しいものだなあ。ちょっとの間違いでも、許してくれないのだからなあ。綺麗な顔も、綺麗な服も、何の役にも立たなかった。オレみたいな者は、いくら望んでも、王子様にはなれないんだ。もう、これからは夢みたいなことを考えるのはやめよう。そして、真面目に正直に働くことにしよう」
 ラパカーンは、こう決心しました。ラパカーンの見栄っ張りは、職人たちの物差しで叩き出されたと見えます。
 次の日、ラパカーンは大切に持ってきた象牙の箱を宝石屋に売りました。そのお金で小さい家を買って、“ラパカーン洋服店”と書いた看板を出しました。
 それから、箱の中に入っていた針と糸を出して、自分の破れた服を繕いました。縫い始めると、針はひとりでに動いて、ボロボロに破れた服を、元の通り綺麗に繕いました。ラパカーンは驚きました。
「これは不思議だ。王様は、どこかの仙女からもらってきたとおっしゃったが、普通の針とはまるで違う。それに、糸も、いくら縫っても無くならない。この針と糸があれば、オレは独りでいくらでも仕事が出来るわけだ。嘘つきのにせ王子の私に、こんな良い贈り物を下さって、有難う」
 ラパカーンは、心から仙女様にお礼を言いました。
 店を開いてから、ひと月もしない内に、ラパカーンの洋服店は町中の評判になりました。お得意が増えて、一人では縫いきれないほどたくさんの注文が来ました。
 けれどもラパカーンは、手伝いの職人を雇いません。いつも一人きりで、窓を閉め切って働きました。
 こうしてラパカーンは、箱の蓋に書いてある通り、幸せになっていきました。宝もだんだん増えていきました。
 ところで、オーマール王子の方はどうでしょう。強くて勇ましいオーマール王子の噂は、ラパカーンの住むアレキサンドリアの町でも評判でした。
 しかし、他の国の王様たちは、オーマール王子に攻め滅ぼされはしないかと、びくびくしていました。そして、隙があったら、反対にオーマール王子を攻めてやろうと思っていました。
 ラパカーンはその噂を聞いて、
(王子様も、外から見るほど楽じゃないなあ)
 と思いました。
 こうして、ラパカーンはあの箱に書いてあった通り、幸せに、お金持ちになって、町の人からも尊敬されて暮らしました。




~おしまい~


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