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 王子とにせ真珠姫の婚礼の式は、盛大に行われました。
 けれども、王子は少し不思議に思いました。自分が夢の中で見た真珠姫と、今の花嫁とは、どこか違っているような気がしてならないのです。第一、本当の真珠姫なら、バラの花を咲かせたり、真珠の玉をこぼしたり、緑の草を生やすことが出来る、と聞いているけれど、この花嫁には、そんな力などなさそうです。――そうかと言って、まるっきり似ていないという訳でもありません。
(その内に、本当の真珠姫かどうか、きっと分かるだろう……)
 王子はそれとなく、様子を窺っていることにしました。
 一方、山の中に置き去りにされた目の見えない真珠姫はどうなったのでしょう……。
 思ってもいなかった悲しみに出会って、泣き続けていました。すると、見えなくなった目から零れ落ちる涙が……いや、真珠の玉が、そこらいっぱいに広がりました。
 丁度その時、一人の老人が、その辺りへ薪を取りに来ていました。
「はてな……?」
 真珠姫の泣き声を聞いた老人は、そっと近づいてみました。
「あっ、これはまた、なんという事だろう。あなたは、妖精ですか。それとも仙女ですか?」
「いえ、わたくしは、ただの人間です」
「しかし、こんなにいっぱいの真珠の玉が……」
「はい、これは神様がお授け下さったものです」
「それにしても、こんな酷い事を?」
「はい、ある人に騙されて……」
「そうですか。ともかく、このままでは死んでしまいます。私はこの山で、たった一人で暮らしている者です。私の小屋へ行きましょう」
 老人は、目の見えない真珠姫をかごから出すと、自分の小屋に連れて行きました。
「私は、この山で薪を取り、それを町に売りに行って暮らしているのです。一人暮らしですから、良かったらいつまでもここにいて下さい」
「はい、こんな身体では、もうどこへも行けません。ご迷惑でしょうが、ここに置いて下さい」
「いいですとも、いいですとも」
 こうして、一人暮らしの老人と、真珠姫……いや、目の見えない娘との、二人の暮らしが始まりました。
 そして老人は、薪の代わりに、娘の目から零れ落ちた真珠の玉を町へ売りに行くのが仕事になりました。
 ある日、老人は、目の見えない娘を慰めてやろうと、面白い昔話を語って聞かせました。
 娘は、その話がおかしくて、声を出して笑いました。この山に来てから、笑ったのは初めてでした。
 すると、不思議な事が起こりました。小屋の戸口の前に美しいバラの花が咲いたのです。
「あれっ、こんな季節に、こんな美しいバラの花が!」
 老人は、驚いて叫びました。
 目の見えない娘は、そのバラの花で、良い事を思いつきました。
「お爺様。このバラの花を宮殿に持って行き、買ってくれませんかと言って下さい。宮殿には、バラの花を欲しがっている人が、必ずいるはずですから……。そして、いくらかと聞かれたら、お金では売りません。人間の目玉とならお取替えします、と言って下さい」
「なるほど……。よし、では、さっそく出かけましょう!」
 老人は、宮殿の門の前に行くと、
「バラの花です。美しいバラの花です。バラの花はいりませんか!」
 と、大声で叫びました。すると、中から一人の年取った侍女が、慌てて出てきました。そうです。あの侍女頭でした。
 侍女頭は、どうしてもそのバラの花が欲しかったのです。と言うのは、王子はこの頃、お嫁さんになった自分の娘を、本当の真珠姫かどうかと、疑っているみたいだからです。このバラの花を見せて、その疑いをなくそう、と思ったからでした。
「そのバラを売ってくれぬか。いくらですかな?」
 侍女頭は、わざと落ち着き払って言いました。


Shinjuhime-2.JPG


「はい、これは、世にも珍しいバラの花です。ですからお金で売ることは出来ません。人間の目玉二つとお引き換えになら、お譲りします」
 老人も、無理に買ってもらわなくても良いようなそぶりをしました。
「いや、是非売ってもらいましょう。では、すぐに目玉を持ってくるからね」
 そして、慌てて中に消えた侍女頭は、すぐに出てきました。
「ほれ、目玉を二つ」
「はい、では、花をどうぞ」
 老人は、バラの花と二つの目玉と取り換えて帰りました。
 山の小屋で待っていた娘は喜びました。
 その目を、元の目の穴に入れました。目の見えるようになった娘は、前にもまして、愛らしく、美しくなりました。
 一方、宮殿の中の王子は、偽物ではないかと疑っていたお嫁さんが、季節外れの美しいバラの花を持ってきたので、本物の真珠姫かも知れないと思いました。
 けれども、バラの花は出しても、真珠の玉を出したことがありません。また、歩いても緑の草は生えません。
 王子は、また少し疑いの気持ちが出てきました。
 すると、侍女頭の母親は、それに気が付いて、次の方法を考えました。
(あの美しいバラの花を持ってきた老人なら、きっと、真珠の玉を出したり、緑の草を生やすことだって出来るだろう)
 侍女頭は、そっと、山の中へ老人を訪ねていくことにしました。




~つづく~


 真珠姫の涙も、次回で完結なわけですが……。


 それにしても今回の展開、真面目なシーンなのに、私は「なんで態々、真珠姫の目ん玉とっておいたんや」とか、「目ん玉はめただけで元に戻るとか、『Dr.スランプ』か!w」なんて突っ込みながら読んでました(苦笑)。


 と言ったところで、今日はこの辺で。

 どうも。ではでは。

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