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 さて今日は、小説版『ファイクエII』第8話の続きといきます。

 なお、前回はコチラ


 それでは、さっそく本文スタート!


「我が完全なる誕生のために、六つのクリスタルが必要だったのだ!」
 エネルギーを吸い取られたクリスタルが輝きを失っていく。
「フハハハハハハハハ……! まさか魔界騎士の肉体を乗っ取らずとも、この世に顕現できるとはな!」
 ナイトキラーに乗り移った、黒い炎……その正体は、かつてスパイドル軍の面々や、マージュI世に取り憑いていた悪意と同種のものだったのだ。
 ただ、彼らに取り憑いていた悪意にそのものの『意思』が存在しなかったのに対して、今回の『悪意』には固有の自我ともいうべきものが芽生えていたらしかった。
「く、くそっ!」
「まさか、そんな……」
 石川達の背に冷たい物が走った。
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
 杖をつきながら、ようやく校庭までたどり着いたボロボロのマージュIII世もまた、ナイトキラーの姿を見るなりその場に倒れ込んでしまう。
 人の心の奥底に棲む原初の恐怖を呼び覚まされてしまったかのように。
 対照的にマージュII世は感動に身を震わせていた。
「オウッ! 主よ、見事なお姿です! その力を持ってすれば世界を手中に収めるなど容易い事!」
「フフフ……お前には随分と世話になったな。ご苦労であった」
「いえ、そのようなお言葉、なんと勿体ない」
「だが、もう用はない」
「はっ!?」
 マージュII世の目が驚愕で見開かれた。
 ナイトキラーの巨大な手が振り下ろされる。
 すさまじい突風が巻き起こり、マージュII世は吹き飛ばされた。
「うわーっ!」
 そのまま大地にしたたかに叩きつけられる。
「ちょっと、大丈夫!?」
 石川が駆け寄ってマージュII世を抱き起した。
 その拍子に仮面が外れ、マージュII世の素顔が現れる。
 その顔は、かつて石川達が対峙したマージュI世によく似た青年だった。
 その顔つきが穏やかになっていく。
 マージュII世は意識を取り戻し目を開けた。
「わ、私は何を……」
 目の前にそびえ立つナイトキラーに気づいて叫んだ。
「あれは……ナイトキラー!」
「おい、どうなってるんだ! あいつは一体なんなんだ!?」
「わ、私は……そうだ! 私は実験の最中だったんだ!」
「実験!?」
「それがあんな……」
 マージュII世は呆然と語り始めた。


 マージュII世がその巨大メタルゴーレムの製作に取り憑かれたように没頭したのは、彼の持つ独自の正義感からであった。
 彼は国家間の利害解決手段としての武力行使、すなわち戦争が嫌いであった。
 いや、むしろ憎んでいると言っていい。
 それは彼らマージュ三兄弟の両親が、大昔に魔界で起きた大戦争で死んでいることに起因していた。
「この世から戦争をなくす」
 やがてそれこそが、魔界騎士としての地位と天才的な頭脳を持つ自分に与えられた使命だと思うようにまでなっていた。
 ところでマージュII世は甘い理想主義者などではなく、冷厳な現実家でもあった。
 彼が戦争をなくすための手段として選んだのは、世界的な平和運動などではなく、既存のすべての兵器を越えた、究極的な抑止力の開発であった。
 すさまじいまでの物理的なパワーと、それを維持する恒久的なエネルギー供給。
 開発の主眼はここに置かれた。
 その結論として生み出されたのが巨大メタルゴーレム『ナイトキラー』と、世界を構成する六つの元素を圧縮した六つのクリスタルであったのだ。
 組み立ての完了したナイトキラーを見上げながら、マージュII世は呟いた。
「これが完成すれば人類は今までに無かった力を得ることになるだろう。そう、神にも悪魔にもなれる力を……」
 マージュII世の手がコントロールパネルにかかった。
「そのためには強力な力場を封じ込めた動力源が必要なのだが……」
 メインスイッチをオンにする。


 ウィィィィィィ……


 かすかな音を立てて、ナイトキラーの魔力炉に光が走った。
 だんだんと光は強くなり、やがてスパークを生じさせる。
「今度こそ成功してくれよ」
 スパークは激しくなり、中央に怪しげな闇の点が出現した。
「いいぞ、いいぞ……」
 この漆黒の闇こそ、すさまじいまでの質量を秘めた力場となるべきものであった。
 闇は徐々に大きくなっていく。
 が、異変はその時起こった。
 かなりの大きさになった闇の内部で、人影のようなものが揺らめいたのだ。
「な、なんだ!?」
「フハハハハハ……礼を言うぞ! 暗黒の死の空間をさまよう我をよくぞこの世に顕現させてくれたわ!」
「!」
 闇がカッと光り、スパークが放たれた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 マージュII世はその光をまともに浴び、コントロールパネルに突っ伏した。そして、
「光栄に存じます」
 先ほどまでとは別人としか思えない、悪意に満ち溢れたマージュII世の声が響いた。
 マージュII世が静かに顔を上げると、その瞳は狂気の色に輝いていた。
「まずはトゥエクラニフの滅亡……そして、我が完全なる誕生のためにクリスタルを集めるのだ!」
 顕現した“悪意”の言葉に邪悪な笑みを浮かべたマージュII世は静かに頷いた。



「私は悪魔を呼び出してしまった……」
 マージュII世が呆然とつぶやく。
「いや、悪魔よりももっとタチの悪い奴だ!」
 キッとナイトキラーを睨みながら、石川が叫んだ。
「クククク……」
 ナイトキラーの嘲笑が響く。
「ほざくがいい、異世界の勇者ども! まずはお前らを料理してやろう! その次にこの世界の奴らに真の恐怖を教えてやるとするか」
「トゥエクラニフはどうなるのよ!」
 オータムが叫んだ。
「トゥエクラニフ!? あとしばらくでそんなものは存在しなくなる……木っ端微塵となってな!」
「そんな……」
「お前の思い通りにはさせないぞ!」
 石川が怒りを込めて叫ぶ。
 それに対してナイトキラーは高々と笑いを響かせた。
「フハハハハハハハハハハ! 我に逆らおうとは愚かな者どもよ! よかろう、先に貴様らを始末してくれるわ!」
 ズシンとナイトキラーが一歩を踏み出した。
「くっ……」
 ナイトキラーから目をそらすことは無いものの、石川達の頬を冷たい汗が流れて行った。




~つづく~

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