FC2ブログ

 今日はまた、『ばら姫と青い仙人』の続きで行きたいと思います。

 では、スタート!



 それは、長く苦しい旅でした。いくつもの山や川を越え、広い砂漠の中も通り抜けて、北へ北へと、夜も昼も歩き続けました。
 やっと、緑の丘に出た時でした。マバラックが、ほっとしたように言いました。
「王子様、向こうの山のふもとをご覧なさい。あれが青い仙人の王の館で御座います」
「え……。しかし、私には青い霧だけで、何にも見えないが……?」
 王子がしきりに首をかしげると、マバラックは急に思い出したように、
「あ、そうでした。忘れていました。お待ちください」
 そう言いながら、懐から小さな箱を取り出しました。
「これは、不思議な力を持つ薬です。これを目のふちに塗ると、遠くの方も見えるようになりますから……」
 マバラックは王子の目のふちに、その“こう薬”のようなものを塗りました。
 なるほど、高い山とそのふもとを、ほんのりと包んでいる青い霞の中に、三つの館が見えます。そして、その周りには、仙人たちなのでしょう、青い長い衣のようなものを着た人の姿が、いくつも見えました。
「おやっ……?」
 王子は、また首をかしげました。仙人たちの中から、三人が、飛ぶような速さでこちらに走って来たからです。
「仙人たちには、きっと何もかも見通しなのでしょう」
 マバラックが言いました。
 三人はあっと言う間に、二人の前に着きました。
「ペルシャの国の王子様ですね。ようこそおいでになりました。さあ、王様の所へご案内いたします」
「はい、お願いします」
 王子が言うと、途端に一人が王子を、一人がマバラックを、もう一人は二人の荷物を抱え、また飛ぶような速さで走り出しました。
「ここが、王様の館で御座います」
 案内された館の中には、デザック王が、もう二人を待っていました。青い衣で、胸まで垂れた白い長ひげの仙人の王は、まるで神様のような姿に見えました。
 王の前に進んだミスナー王子は、深々とお辞儀をしてから、たずねてきた訳を話しました。
 鋭く光る目で、じいっと王子を見つめながら聞いていた王は、やがて静かな声で言いました。
「ペルシャの王子。わしとそなたの父とは、長い間親しくしていたが、立派な大王であった。すぐにでも猿の像を与えたいのだが、しかし、そうはいかない……」
「えっ……」
「つまり、そなたに猿の像を与える前に、わしからも、そなたに一つ頼みがある。その頼みをやり遂げてくれたなら、猿の像を与える事にしたいが、どうだな?」
「はい、猿の像を頂けるのでしたら、どのような事でも致します」
「しかし、その頼みと言うのは、決して簡単なものではないのだが、それでも良いかな……」
「どんなに難しい事でも、必ずやり遂げます」
「そうか。では話そう。実は、この絵に描かれている姫を探し出して、ここまで連れて来てもらいたいのだが……」
 仙人の王は、一枚の紙を、王子の前に広げました。
 王子は目を見はりました。その絵に描かれている姫は、花のような、いや、花よりももっと美しくて愛らしい、顔や姿だからでした。
「これは“ばら姫”という、この世で最も美しいと言われる姫でな。インドの国にいるという事だけは分かっているのだが……。どうだな?」
「は、はい」
「どうだな、ミスナー王子。引き受けてくれるかな?」
 仙人の王が、静かな声で聞きました。しかし、その目は鋭く光っていました。
「はい、きっとお探しして、お連れ致します」
 王子ははっきり言いました。
「インドの国は遠いのだし、色々な苦労もあると思うが、それでも構わぬと言うのだな?」
「はい、どのような苦労がありましょうとも、お約束致します」
「そうか。では、無事に探し出して、連れて帰ることを祈っておるぞ」
「はい」
 ミスナー王子とマバラックは、休む暇もなく、青い仙人の館を後に、インドの国に向かって旅立ちました。




~つづく~

スポンサーサイト



Secret

TrackBackURL
→http://ishimarusyoten.blog.fc2.com/tb.php/3283-301c5524