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 今日は昨日の続きといきたいと思います。

 では、さっそく本文スタート!



 王子は、ミスナーという名前を付けられました。大王の愛情と、国民たちの喜びの中で、すくすくと成長していきました。
 長い年月も夢のように過ぎて、ミスナー王子も、やがて十歳の春を向かえました。
 そのお祝いのすぐ後でした。大王が、たちの良くない病気にかかってしまいました。
 宮殿の中ではもちろん、国民たちもみな、朝に晩に神様にお祈りをしました。が、病気は重くなるばかりでした。
 すっかりやつれてしまった大王は、もう自分の命の長くない事を知りました。そして、大臣の位についている弟のアフーバルを枕元に呼びました。
「アフーバル、わしの命ももう長くはないようだ。生きているものに死のあるのは、世の定めだから仕方ないが、心に残るのは、この国の事だ。王子のミスナーはまだ幼くて、国を治めていくことが出来ない。それで、そなたに頼むのだが、王子が十六歳になるまでそなたが代わって国を治めてくれ。そして十六歳になったら、そなたの娘と結婚させて、王の位につけてくれ。頼んだぞ」
 大王は、苦しい息の中から言いました。
「はい、兄上様。必ずお言葉のように致します」
 アフーバルは、きっぱりと誓いました。
「それから、マバラックはいるか……?」
「はい、大王様……」
 後ろの方に控えていたマバラックが、大王の枕元に寄りました。マバラックは黒人ですが、賢い、忠実な家来です。大王から厚く信頼されていて、ミスナー王子の世話を任されてもいました。
「マバラック、そなたは、良く尽くしてくれたな。これからも、王子の世話をしてやってくれよ。頼むぞ……」
「は、はい。もったいのう御座います。大王様……」
 マバラックは、こらえていた涙をどっとこぼしました。
 アザット大王がこの世を去ったのは、その翌日でした。国中が深い悲しみに包まれました。が、その悲しみの中で、弟のアフーバルが、幼い王子に代わって国を治める事が発表されました。それと同時に、ミスナー王子は山の中にある館に移ることになりました。静かな山の方が、学問を習うのにも、体を鍛えるのにも、都合が良いからと、おじさんのアフーバルが言ったからでした。
「大王の王子様が、こんな山の館でなど……」
 マバラックは不服でした。が、王子の方はそんなことは気にも留めず、元気に山を駆け巡り、また、学問にも精を出していました。
 やがて、その六年も過ぎて、ミスナー王子は十六歳の春を向かえました。
 マバラックが王子に言いました。
「王子様、王子様はもう十六歳になられたのです。これから宮殿に戻って、大王様のご遺言通り、王様の位につかれることを宣言いたしましょう。アフーバル様も、たくましくご成長された王子様を御覧になったなら、きっとお喜び下さるでしょう」
「そうか、では、そのようにしよう」
 王子とマバラックは、山を下りて宮殿に向かいました。
 その頃、宮殿では王座のアフーバルを囲んで、貴族たちが会議を開いていました。
 マバラックが王座の前に進み出て、
「アフーバル様。十六歳になられた王子様が、ただいまお戻りになりました。この上は、一日も早く、王位につかれる儀式を……」
 と申し述べました。すると、王座のアフーバルは、少し顔をこわばらせて言いました。
「おう、ミスナー王子。たくましくなられたのう。ところで、そなたが王位につくことは、わしも喜ぶところである。だがな王子、そなたの運勢を見てもらうと、今年は年回りが良くないから、来年まで待った方が良いと言われてのう……。そうだったな、オルグ」
 アフーバルは、横に座っている不思議な姿をした老婆に言いました。
「はい、その通りで御座います。もし、無理におやりになれば、恐ろしい災いを招きます」
 老婆は占い師なのでしょう、二本の手を高く上げて、何やら呪文を唱えてから、はっきりとそう言いました。
「聞いた通りだ。では、そうしてもらおう」
 アフーバルは、もう決まった、というように言いました。
 そう言われては、王子もマバラックも、もう何とも言う事が出来ません。しかし、もう山の館には帰らず、宮殿に住むことにしました。
 それから三日目の事でした。マバラックが顔色を変えて、王子の所に飛んできました。
「王子様、アフーバル様は、恐ろしい方です。王の位を譲るのが嫌で、恐ろしい事を計画しております」
「なに、恐ろしい事を?」
「はい、王子様を亡き者にしようと、幾人かの貴族たちと相談しているところを見ました。占いの老婆が、年回りが悪いなどと言ったのも、実はアフーバル様の言いつけだったのです」
「え、まさか、あの叔父が……?」
 王子もさすがに顔色が変わりました。
「わたくしも、はじめは自分の耳を疑いました。けれども、これは本当の事で御座います」
「すると……」
 王子は、悔しさに身体が震えました。
「王子様、マバラックがついております。わたくしの命のある限りは悪人どもに勝手なことはさせません」
 マバラックは、ミスナー王子の手を取って、宮殿の裏の建物に入りました。そこは、大王が好んで入っていた不思議な部屋でした。
「ここには、誰も知らない秘密があるのです」
 マバラックはそう言いながら、床の絨毯を剥ぐと、その下の大理石を一枚取り外しました。と、ぽっかりと開いた穴の下は、広い部屋になっていました。
 小さな階段を降りると、中は四つの部屋になっていました。灯もともしていないのに、どの部屋も不思議な明るさでした。
 しかも、どの部屋にも金貨を一杯入れたかめが、いくつも置いてありました。また、かめの蓋の上には、猿の像が乗っていました。その猿の目玉は宝石で出来ていて、きらきらと光っていました。
「こんな素晴らしい物が……」
「はい、ここは、大王様の他は、わたくしだけしか知らない所です。王子様、かめを数えてごらんなさい。一つの部屋に十個ずつ、全部で四十個あるでしょう」


Barahime-2.JPG


 王子は数えてみました。でも、一番奥にある、四十番目のかめにだけ、猿の像が乗っていません。
「どうしてだい、マバラック?」
「これには訳があるのです。大王様はずっと前から、青い仙人のデザック王とたいへん親しくしておられました」
「え、青い仙人の王と?」
 王子は思わず声を大きくしました。青い仙人の王は、神様の力を持っている偉い王だ、といくども聞いているからでした。
「そうです。かめの上に乗っている猿の像は、その青い仙人の王から頂いたのです。一年に一つずつでした。そして、三十九個を頂いたのですが、四十個目を頂く前に大王様はお亡くなりになったのです」
「そうだったのか……」
「ところで王子様。この猿の像は、ただの像ではありません。一つの猿に、千人の妖精の守り神がついているのです。けれども、悲しい事には、その妖精たちを働かせるのには、四十個の猿の像を揃えなければならないのです」
「すると、あともう一個あれば」
「そうです。四十個揃えば、全部で四万人の妖精を呼び集めることが出来るのです。四万人の妖精の力があれば、あの悪者たちも簡単に打ちのめすことが出来るでしょう」
「そうか、成程……」
「ですから王子様、今晩すぐに、ここを出発しまして青い仙人の王をおたずねしましょう。きっとお力になって下さると思います」
「うん。では、そうしよう!」
 その夜中、王子とマバラックは、みずぼらしい姿に変装をして、そっと宮殿を抜け出しました。




~つづく~

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