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 今日は文庫本コーナーの記事でいきたいと思います。
 今回は、ちょっと短めの怪談、『きつねの赤ん坊』です。

 では、スタート!

きつねの赤ん坊


 銀太は腕利きの猟師でしたが、腕の立つのをいいことにして、アサゲ村の、山と言う山、森と言う森を一人で荒らし回っていました。
 村の猟師仲間では、猟のできる間を十月から次の年の三月までと決めていましたし、カモシカなどは、撃ってはいけない約束でした。けれども銀太は、熊でも鹿でも、春と言わず夏と言わず、撃ちまくっては、獲物をこっそり町に売りに行って、随分お金を儲けていました。
 銀太のおかみさんは、町の“皮万”という毛皮屋の娘でしたから、獲物を売りさばく事は簡単でした。
 けれども、銀太のおかみさんはとても気ままな人で、「猪の肉は食べ飽きたから、雉の肉が食べたい」とか、「イタチの毛皮で足袋を作って欲しい」などと言っては銀太にせがみました。
 銀太はもとより、猟にかけては自信がありましたから、腕の見せ所とばかり、すぐさま山へ行っては、おかみさんの望み通りの獲物を取ってきました。
 ある秋の終わり頃、銀太のおかみさんに赤ん坊が出来ました。そこでおかみさんは、銀太に言いました。
「生まれる赤ん坊に、きつねの毛皮で布団を作ってやりたいで、今日は山へ行って、きつねを五匹、取ってきておくれ」
 銀太は、これにはびっくりしました。
 きつねの毛皮を襟巻にするというのなら分かりますが、布団を作るなどという事は、聞いた事がありません。しかも、一度に五匹も欲しいというのです。
 けれども銀太は、初めて生まれてくる子供のためですから、鉄砲を持って、早速山へ出かけていきました。
 二日の間、山を駆けずり回って、銀太は四匹まで、きつねを撃ち取る事が出来ました。
 あと一匹です。銀太はまるで猪が突っ走るように、谷をわたり、ばらやぶをかき分けて、きつねを探しました。
 そして、とうとう最後のきつねを見つけました。それは今までに見た事も無い、大きな狐です。
 大ぎつねは、太いトチの木の陰の洞穴の中で、体を横たえてじっとしていました。
 銀太は、さっそく鉄砲を構えました。
 ところがよく見ると、それは身重のきつねでした。
 もうすぐ子ぎつねが生まれるのでしょう。大きなおなかを足と尻尾で庇いながら、首だけをもたげて、「どうか撃たないで下さい」と訴えるような目で銀太を見つめていました。
 銀太はなんだか気味悪くなって、いったん構えた鉄砲を下ろしましたが、辺りは夕暮れです。ぐずぐずしていると、薄闇の中へ逃げ込まれてしまうと思い、夢中で引き金を引きました。
「ズドーン」
 鈍い音と一緒に、きつねははじかれて、そのままぐったり動かなくなってしまいました。

 五匹のきつねの毛皮を縫い合わせて、柔らかな布団が出来上がると、おかみさんは、
「これはあったかそうだ。赤ん坊が生まれるまで、この布団にくるまって寝よう」
 と言って、大きなお腹を、その毛皮の布団でしっかりくるんで、毎晩ぐっすり眠りました。
 その内に、おかみさんは、妙な事を言い出しました。
「町へ行って、油揚げをどっさり買ってきておくれ。ご飯の代わりに油揚げが食べたい。うさぎの肉も生のまま食べたい」
 と言うのです。
 銀太は首をかしげながら、おかみさんの顔を覗くと、なんだか顎の辺がばかにとがって、眼は吊り上がっているように見えました。
 なおもよく見ようとすると、おかみさんはその吊り上がった目を険しく光らせて、
「何をぐずぐずしているのだえ、早く行っておいで」
 と、きんきん声で怒鳴りました。
 銀太は仕方なく、町へ出かけていきました。
 それからというものは、おかみさんは銀太を自分の寝ている部屋の中へは入れませんでした。
 やがて十五日ばかりたった夜、銀太のおかみさんは、とても苦しみ始めました。それに気づいた銀太は、急いでお産婆さんを呼びに行こうとして、土間で下駄を探していますと、突然おかみさんの寝ている部屋から「ギャッ、ギャッ」と、奇妙な声が聞こえました。銀太はびくっとして、耳を澄ますと、今度は「ケンケン、ケンケン」と、咳払いでもしているような声が聞こえてきました。
 銀太は不思議に思っておかみさんの部屋に近づいて、そっとふすまを開けてみました。
 するとどうでしょう。きつねの毛皮の布団にくるまっているのは、人間の子供ではなく、きつねの赤ん坊ではありませんか。銀太は驚いて「ひぇーっ」と声を上げました。
 その声で、おかみさんが布団の中からひょいと顔を出しました。それを見た銀太は、ぶるるっと身震いして、そのまま棒のように倒れてしまいました。
 おかみさんの顔も、やっぱり狐の顔だったからです。



~おしまい~
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 今日は『下っぱ忍者』の完結編でいきたいと思います。
 では、スタート!


 麦助が春日山について、町の人々に聞いてみると、段三の事はすぐに分かりました。
 段三は馬を飲み込む術をやってみせ、それを見て感心した上杉の家来の長尾修理(ながお・しゅり)が自分の屋敷に連れて帰ったそうです。
 その夜更け、麦助は修理の屋敷に忍び込み、天井裏に隠れました。
 次の日の朝、屋敷の中が騒がしくなりました。謙信が、馬を飲む忍者を見に来ると言うのです。
 麦助が客座敷の天井裏に移ると、やがて段三が出てきて、座敷の端にきちんと座りました。麦助は、思わず懐かしくなりました。段三は痩せて苦労しているようでした。
 坊主頭の謙信が家来を連れて、座敷に入ってきました。謙信は尋ねました。
「馬を飲む忍者、お前の名は何という?」
「とび加藤と申します」
 麦助は嬉しくなりました。伊賀の下っぱ忍者の段三が、天下に名高い上杉謙信に、堂々とでたらめの名を言っているのです。
 続いた段三は言いました。
「このとび加藤、忍びの術で上杉家にお仕えしたい」
「よし。では、術を試そう。今夜、わしの家老の、直江山城の屋敷に忍び込み、山城の薙刀を持ち出してこい」
「かしこまりました」
 段三は、頭を下げました。
 その夜、直江山城の屋敷では、庭にも、門の前にも、赤々とかがり火をたき、足軽や侍がいっぱい、見張りに立ちました。
 奥の部屋の真ん中には机を置き、その上に袋に入れた薙刀を乗せ、十人の侍がその薙刀を守りました。
 ところが朝になると、長尾修理の家来が、馬を飛ばしてきました。
「とび加藤、昨日の夜のうちに、薙刀を持って帰ってきました」
 慌てて薙刀を出してみると、袋の中はただの木の棒になっていました。
「恐ろしい男だ」
 侍たちは顔を見合わせたのです。
 それから五日目の夜、麦助はやはり、修理の家の天井裏に潜っていました。
 下の座敷では、酒盛りが始まり、段三が笑い声をあげて酒を飲んでいます。その嬉しそうな顔を見ると、麦助は段三の肩を叩いて、
「良かったな、段三」
 と言ってやりたいほどでした。
 あれは実に簡単な事でした。
 あの日、直江家に忍者が忍び込むと聞いて、あちこちから応援の侍が駆けつけました。段三は、その侍たちの家来のようなふりをして、直江の屋敷に入り込みました。
 そして、薙刀を蔵から取り出す時、自分の持ってきた木の棒とすり替えてしまったのです。麦助も直江の屋敷に入り込んで、それを見ていたのでした。
 薙刀取りに成功した段三は、明日からいよいよ上杉家の家来です。今夜は、そのお祝いの酒盛りでした。
 しかし、麦助は段三が上杉の家来になる事を喜んでばかりはいられません。源太夫の、蛇のような目つきが、麦助の頭の中に浮かんできます。もし麦助が段三を殺さなければ、麦助は源太夫に殺されるでしょう。
 ――すまぬが、段三。死んでくれ。
 麦助は手裏剣を握りました。だが、すぐその手を下ろしました。下の様子がおかしいのです。見ると、下の座敷のふすまの向こうに、侍たちが集まってきて、刀や槍を構えました。
 麦助は、すぐその訳が分かりました。上杉家が、段三を殺すつもりになったのです。あの恐ろしい忍者が、もし裏切ったら大変な事になる、と直江山城や、長尾修理は考えたのでした。
 ――けしからん上杉家め。
 麦助は腹を立て、段三にその事を知らせてやりたくなりました。しかし、すぐ考え直しました。もし段三が上杉家に殺されるなら、自分は友達を殺さないで済む、と思ったのです。
 下の座敷では、段三が言いました。
「一つ、面白い物をお見せしよう」
 段三は自分の酒を入れた竹筒を取り出して、長尾修理の盃につぎました。
「これは――」
 修理も、座敷の中の男たちも、思わず声を上げました。竹筒から出てきたのは酒ではなく、小人の女でした。女は盃の中で、笛を吹き始めました。
 段三は次から次へと、座敷の人々に酒を注いでいき、つぐたびに小人が飛び出しました。やがて、数十人の小人たちは座敷の真ん中に集まり、笛や太鼓に合わせて踊り始めました。



 不思議な事には、ふすまの向こうの侍たちにも、この小人の姿は見えました。みんな、吸い付けられるように、この小人の踊りを見つめました。
 ――見事だ。見事な目くらましの術だ。
 天井裏で、麦助がまた嬉しくなっていました。
 やがて段三は座敷を出ていきました。しかし、侍たちは、座敷の真ん中のいもしない小人たちの姿に、じっと見とれているばかりでした。


 それから三月。ここは上杉謙信の敵、武田信玄の住む町、甲府の町はずれです。
 野原の真ん中に、見上げるほどの高い塀があり、その前に、眼を光らせた段三が立っていました。そして、数十メートル離れたところに、鉄砲を構えた足軽たちがいて、ぐるちと段三を取り巻いています。段三は腹の底から絞り出すような声で言いました。
「忍者はどこへ行っても、人並みに生きていくことが出来ないんだな。伊賀では病気の母親の看病も出来ず、伊賀を出て大名に仕えようとすれば殺されるのか」
 段三は、今度は武田に仕えようとしたのです。上杉の時と同じように、術が試される事になりました。その術試しは、いま段三の後ろにある、高い塀を飛び越える事でした。
 段三は見事に塀を飛び越えました。だが、段三は向こうに下りないで、塀に片手の指を一本つくと、くるりと向きを変えて、もと来た方に飛び降りました。塀の向こうには、尖った釘や茨がいっぱい植えてあったのです。すると、術試しの係の侍が叫びました。
「塀を飛び越えながらこちらに飛び降りるとは怪しい奴。魔法使いに決まったぞ」
 その声を合図に、隠れていた鉄砲隊が立ち上がり、段三の胸に狙いをつけたのです。鉄砲隊に囲まれては、段三もどうしようもありません。
 ――死ぬよりほか無いのか。
 段三はばりばりと、歯を噛み鳴らしました。すると、その時、どこからともなく自分の声が聞こえてきました。
「天下の忍者、とび加藤。死ぬ前に最後の術を使って見せよう。オレは一羽の鳥になる。鳥になったところを撃ち殺せ」
 段三ははっとしました。この野原のどこかに、麦助がいるのです。
「だまされるな! 相手は魔法使いだぞ。撃て」
 侍が叫んだ瞬間、段三の姿はぱっと消えました。鉄砲隊は、塀の上に飛び上がった一羽の鳥を狙ったのです。
 鳥はトビでした。鉄砲は当たらずトビは青空に悠々と輪を描きながら小さくなっていきました。
 次の日、二人の鎌商人が甲府を出て、駿河へ向かいました。麦助と段三でした。
 きのう麦助は、段三が「忍者はどこへ行っても、人並みに生きていけないんだな」と言った時、目が覚めたような感じがしたのです。
「その時、忍者をやめようと俺は思った。やめた事で、源太夫が俺たちを殺そうとしても、二人が力を合わせれば、防ぐことが出来るんだ」
 麦助の言葉に、段三は頷きました。
 昨日、麦助は塀の向こうにぶら下がっていました。鳥を使うのは、麦助の術の一つです。麦助が捕まえていたトビを放し、みんながトビを見た瞬間、段三は地面に身体を伏せたのです。



 トビが飛び立つのと、地面に伏せるのと、同時でなければ、段三がトビになったと思わせることは出来ません。二人の忍者の心が一つにならないと出来ない術でした。
 あとは簡単でした。鉄砲が鳴り響いた途端、段三は塀の向こうに隠れたのです。
 そのあと、この二人の忍者の行方は分からなくなりました。ただ、何年か後、越前矢の根の百姓たちが、自分たちをいじめる領主と戦った事があります。その時、百姓たちの中に、八方手裏剣や花火を使う男が二人混じっていて、侍たちは散々な目に遭わされたという事です。



~おしまい~
 今日は『下っぱ忍者』の続きでいきたいと思います。
 では、スタート!


 麦助は、矢の根五郎左衛門の家の玄関の敷居の下に穴を掘りぬきました。その穴から、玄関の内側へ麦助が頭を出そうとした時、穴の外に積み上げた土の山が、どさりと崩れました。――しまった。
 麦助は頭を引っ込めました。どかどかと走ってくる足音がし、玄関に明かりがつき、穴のそばに立った男が槍を構えました。
「出てきたら、一突きだぞ」
 そう言った男の耳に、声が聞こえました。
「見つかったらしいぞ、平左。裏の物置から入れ」
「よし、そうしよう」
 答える声がし、また別の声がしました。
「いや、もう三郎たちが忍び込んだぞ」
 槍を構えた男は慌てました。
「敵は大勢だぞ。奥の部屋へ誘い込んで、討ち取ってしまえ」
 男は叫びながら、奥へ駆け込みました。
 穴の中から麦助は飛び出しました。別々の人の声を出す、これが麦助の得意の術だったのです。
 矢の根の家の家来たちが十人余り、刀や槍を構えて、奥の部屋の入り口に固まっています。
 その部屋の横の薄暗い廊下を、麦助は足音を立てないで走り、五郎左衛門の部屋の前で叫びました。
「殿、敵です。起きて下さい」
 さっきの、槍を構えた男の声でした。
「よし、行く」
 五郎左衛門は出ていきました。廊下の薄暗がりから麦助は飛び出しました。刀を五郎左衛門の背中に突き立てました。
「うむ」
 五郎左衛門の大きな体は、音を立てて廊下に転がりました。同時に、麦助は雨戸を蹴破って外へ飛び出しました。




「追え! 忍者だ」
 五郎左衛門の家来たちも、庭に飛び出しました。途端に家来たちは「あ、あっ」と叫んで、地面にかがみました。
 逃げながら麦助は『まきびし』を撒いたのです。『まきびし』はヒシの実のように、尖った先がいくつもついている、小さな武器です。
『まきびし』を踏み抜いた家来たちが走れないでいるうちに、麦助は門の前に着きました。入る時に使った竹筒の熊手――忍び熊手と言いますが、これをもう一度使って、門の外に飛び降りました。
 だがすぐ、五郎左衛門の家来たちは門を開き、松明を振りかざし、馬を走らせて麦助を追ってきました。
 麦助が逃げていく道の右側に、竹藪があります。五郎左衛門の家来たちがその竹藪に近づいた時、

 バ、バーン!

 すごい音がして、竹藪は火を吹きました。次から次へと音は鳴り響きます。
 馬は驚き、人間は慌てました。
「鉄砲だ。今度こそ、敵は大勢だぞ」
 家来達は馬から降りて、道端に伏せました。だがやがて、鉄砲の弾が飛んでこない事に、家来たちは気が付きました。麦助は花火を竹藪の中に仕掛けておいたのです。
 家来たちが道端に伏せている間に、麦助は、もうずっと先の方へ逃げて行ってしまいました。


 忍者の仕事はすぐに片付くものではありません。相手の様子を探り、色々な準備をしていなければなりません。麦助は矢の根の里の仕事を仕上げるために、ちょうど一年かかりました。
 麦助が伊賀に帰って来ると、驚いた事には、段三が居なくなっていました。
「逃げたんだ。伊賀の掟を破ってな」
 と、仲間の一人は言いました。
 話を聞くと、こうでした。麦助の留守中、段三の母親が、重い病気にかかりました。その時、源太夫は段三に徳川の仕事に出ていくように、言いつけたのです。母親が病気ですから、段三は断りました。すると、源太夫は言いました。
「行けと言えば、行け。わしがお前の母親の面倒は見てやる」
 仕方なく段三が徳川に行っている間に、母親は死にました。源太夫は、別に看病もしてやらなかったのです。後から徳川に来た忍者が、その事を話すと、段三は一晩中泣きました。そして、それきり姿を消してしまったのです。
 段三が逃げたのは当たり前だ、と麦助は思いました。しかし、源太夫はかんかんになっていました。
「徳川で仕事もせず、逃げてしまった男は、殺さなければならぬ」
 そして、段三の行方が分かったら知らせてくれるようにと、伊賀中の侍たちに頼みました。
 麦助が矢の根の里から帰って来て、二年ばかりたった頃、源太夫が麦助を呼びました。
「段三が、越後春日山の城下にいるそうだ。行って殺してこい」
 春日山には上杉謙信の城があります。その城下で段三が、目くらましの術――今で言えば催眠術――を使っていたそうです。
 麦助は友達の段三を殺したくはありません。しかし、源太夫の蛇のような目つきで睨まれると、震えあがりました。
 麦助は鎌売り商人に姿を変えて、伊賀を出、忍者の早足で、飛ぶように越後へ急ぎました。
 越後へ行く道は、途中、越前を通ります。麦助は、ふと思いついて、矢の根の里へ行ってみました。
 矢の根の里に入った麦助は首を傾げました。里の様子が変わっていました。田には草を生やしたままだし、田に水を入れる溝も、うずまったりしています。



 麦助は、一軒の農家に入りました。
「鎌はいらぬか、鎌は」
 出てきた年寄りと麦助は話し込み、話の間に麦助は聞いてみました。
「以前、この里は豊かな里だと思ったが」
「一昨年まではそうだった。ところが、矢の根五郎左衛門様が殺されてしまい、この里を守ってくれる人がいなくなった」
 年寄りの話では、五郎左衛門が死ぬとすぐ、この里は朝倉の領地になりました。朝倉はこの里から物を取り上げるだけで、五郎左衛門のように百姓の事を考えてくれません。
 ――そうだったのか。
 聞いている麦助の胸は、きりりと痛みました。麦助が五郎左衛門を殺したため、この里の人々みんなが不幸せな目に遭ったのです。
 年寄りと別れ、越後春日山へ急ぐ麦助の心は重く沈み込んでいました。



~つづく~
 今日は久々に『文庫本コーナー』の記事でいきたいと思います。
 今回は時代劇小説、『下っぱ忍者』です。

 ではスタート!

下っぱ忍者


 この話は今から四百年余り前、日本のあちこちに大名が居て、お互いに戦い合っていた頃の話です。

 うっすらと名の花の匂いが匂う、ある春の晩の事です。越前の国、矢の根の里の領主、矢の根五郎左衛門(やのね・ごろうざえもん)の屋敷の前で、黒い影が一つ、むくりと地面から起き上がりました。
 影は、何かをパッと門の屋根に投げ上げました。
 ピシッ! と、小さな音がして、投げ上げたものは、太い綱のようになって、屋根から垂れ下がりました。だが、よく見ると、綱ではありません。いくつもの竹筒に、綱を通した物でした。殺気の小さな音はその綱の先の熊手が、わら屋根の骨組みの木に食い込む音でした。
 影は竹の節を手掛かりにして、するすると、屋根に上りました。とんと屋敷の中に飛び降ります。と思うと、屋根の上からはもう、さっきの竹筒が姿を消し、地上に降りたはずの姿も消えてしまいました。
 しばらくすると、影はまた現れました。屋敷の中の一番大きな建物の、玄関の前でした。影は腰の袋から、細く尖った道具を取り出し玄関の敷居の下に、穴を掘り始めました。

 この影は伊賀の忍者で、名を麦助(むぎすけ)といいます。伊賀の国の侍の百地源太夫(ももち・げんだゆう)に使われている下っ端の忍者です。伊賀の侍たちは、みんな下っ端忍者を何人も使っていて、あちこちの大名が、忍者が入り用だと言ってくると、その下っ端忍者を仕事に出してお礼のお金をもらいます。
 こんど百地源太夫は、矢の根五郎左衛門を殺すようにと、越前の朝倉義景に頼まれました。五郎左衛門はちっぽけな領主ですが、朝倉の言う事を聞きません。五郎左衛門はいくさに強い男だったのです。
 源太夫は麦助にその仕事を言いつけました。麦助はびっくりしました。
「一人でですか? あんなに強い侍を殺すのに。段三(だんぞう)と一緒にやらせて下さい」
 段三は、やはり源太夫の下っ端忍者で、麦助の友達です。高いところへ飛び上がるのが上手い男でした。
 源太夫は答えました。
「二人の忍者が、心を一つにして動くのは難しい。一人でやれ」
 一人で越前へ行く事になった麦助を、段三は国境の峠まで見送ってきました。二人は、峠の草の上に座りました。



「忍者はいつ、どこで死ぬかわからぬ。別れの酒だ」
 段三は、腰の竹筒に入れた酒を、やはり竹筒の盃についで、麦助に回しました。峠ではウグイスが鳴き、スミレが咲いていて、とても平和な感じでした。
 この時、段三は言いました。
「源太夫様は、俺達二人が親しくするのを嫌っているんだと思う」
 そうかもしれない、と麦助も思いました。もし、下っ端忍者たちが、心を合わせて源太夫に背けば源太夫は困ってしまいます。
 そして、下っ端忍者たちが源太夫に背くわけは、十分ありました。源太夫は大名からたくさんの金をもらうのに、麦助達にごくわずかの金しかくれません。だから、源太夫は下っ端忍者たちが仲良くなるのを嫌がっているのでした。



~つづく~
 今日は『花がさいたら』の完結編を投稿したいと思います。
 前回はコチラ

 まずは、本文スタート!


 五日間というもの、洋二も新平も、つるばら館の事はわざと口に出しませんでした。その事を話すのが何となく、恐ろしかったのです。
 え、二人のケンカですか? ああ、あれはひとまずお預け――と言うよりも、二人とも、忘れてしまったのではないかしら。洋二と新平は、元通り、仲良くしているようですから。
 ただ、お互いに、つるばら館の庭の花の競争だけは、負けたくないと思っていました。それで、種を蒔いてから、まだ雨の降っていない事が気がかりでなりません。
 そしてまた、五日経ちました。
 五時間目の国語の時、洋二の所へ後ろから電報が来ました。
 洋二は、先生が黒板に字を書いているすきに机の陰で読みました。

『きよう つるばら館へ いてみよう。あの子 いるかも しれたいよ。 花のめが 出てるかも しれないよ』

 少し、間違ったところがありますが、電報は新平からでした。洋二は、新平がちぎったノートの裏に、「りょうかい」と書いて、後ろの友達に頼みました。新平の席は、洋二と同じ列の、一番後ろでしたから。
 学校が終わると、洋二と新平は、誰にも内緒でつるばら館に来ました。
 建物をぐるっと回ってみたけれど、窓はきっちりと閉まり、女の子もいません。二人は庭へ入りました。十日の間に、また新しい草が生えています。洋二たちは、黙って草をむしり、水をまきました。
「まだ、目を出さないのかなあ」
 新平が、土の上を撫でながら言いました。
「何の花か知らないけど……。もう生えてもいい頃だよね」
 洋二は答えて、それから、あっと青くなりました。
「ミカコちゃんが、ゆ、幽霊だったら? 幽霊のくれた花の種だったら?」
「幽霊がくれた? 花の種を? ばかだなあ、幽霊なんか――」
 いやしないよ、と、言いかけた新平は、
「ひゃあ~~~」
 とまたまた悲鳴を上げました。洋二も、ぶるぶる震えています。
 だって、つるバラに囲まれた窓の中で、
「フフ、ウフフフ……」
 と、誰かの笑う声がするんですもの。
 洋二と新平は、転ぶように走って、そこから逃げ帰ったのでした。


 十日経ち、二十日経ち、ひと月が過ぎました。
 海は太陽を映して走り、風は夏の香りを運んできます。
 洋二も新平もあんなに怖かったつるばら館の事を、いつの間にか忘れてしまいました。水遊び、植物集め、ザリガニ取りと、結構忙しかったのです。
 そうしたある日、洋二たちの組に、一人の転校生が来ました。
 先生の後ろから、教室に入って来たその子を見て、洋二は、はっとしました。
 あの子です! つるばら館にいたあのミカコなのです。
「これから皆さんと勉強する事になった小山ミカコさんです。ミカコさんは、海を挟んだ向かいの島、四国の学校で勉強していました。新聞社にお勤めの、お父さんの転勤で、この町に来たのです」
 受け持ちの女の先生がミカコを紹介すると、
「あたし、つるばら館へ引っ越してきました。どうぞよろしく」
 ミカコはぺこんとお辞儀をしました。
「まあ、つるばら館ですって……」
「あの、ゆうれい館のことだぞ」
「幽霊、怖くないのかしら」
「幽霊じゃないよ。姿の見えない、お婆さんがいるんだ」
 教室の中は急にざわざわしてきました。でも、ミカコはみんなの言葉をにこにこして聞いているのです。
 そして、新しい友達の中に洋二の顔を見つけると、「あら」と言って、手を上げました。洋二が赤くなっているのに、
「幽霊なんて、いないわよね」
 と、ミカコは平気で話しかけます。
「うん、まあ、いるような、いないような……」
 洋二は、下を向いたまま答えました。
「じゃあ、百歳過ぎのお婆さんは?」
 後ろの方から、女の子が聞きました。
「え、ま、まあ、いるような、いないような」
 今度はミカコが、少しどもって答えました。
 でもミカコは、洋二のように下なんか向かないで、つるばら館の話をみんなの前で話し始めたのでした。

 昔、日本が戦争をしていた頃――。
 つるばら館は、今のようにおんぼろではありませんでした。写真屋さんだったお父さんは、戦争に行って、南の島で死んでしまい、学校へ上がったばかりの女の子、女の子のお母さん、それに、八十歳を過ぎたお婆さんの、三人家族が住んでいました。
 夏のある日、熱を出したお婆さんを連れて、お母さんは病院のある町へ、バスで出かけていきました。
 その日です。お母さんたちが行った町に、大きな爆弾が落とされたのは……。



 その町も、お母さんやお婆さんも、みんな灰になってしまいました。一人で留守番をしていた女の子は、お母さんたちを探しに出たまま、行方不明になってしまったのです。
 その爆弾で、親戚の人達も死んでしまい、お婆さんやお母さんの死んだことを届ける人はいませんでした。
 そこで、戸籍には、まだ生きている事になっているのです。
 その頃八十歳のお婆さんですと、今、生きていれば百歳は過ぎるはず――それで、不思議な噂が流れたのでしょう。

 ミカコは、そう話したのです。
 そして、おしまいに言いました。
「行方不明になった女の子ね、四国の人が育ててくれたんですって。大人になって、新聞記者のお嫁さんになって、それでつるばら館の事が分かったんですって。私の母さんなの、その女の子」
 みんな、しーんとして、ミカコの話を聞いています。
 この組の友達は、家に帰って、ミカコの話をするでしょう。家の人は、近所の人に話し、近所の人は、また誰かに話して、そのうち誰もあの建物の事を「ゆうれい館」なんて呼ばなくなるでしょうね。
 学校が済むと、洋二と新平は、ミカコに誘われて、つるばら館へ行ってみる事になりました。
 丘の道を降りながら、洋二は気になっていたことをミカコに訊いてみたのです。
「夕方、窓に明かりがついてたよ。それに窓の中でウフフと笑う声も聞こえた……。あれ、ミカコちゃんだったの?」
「笑ったのは私よ。だって、幽霊の種なんて言うんだもの。明かりをつけてたのは、たぶん父さんだと思うわ。まだ電気が来なくて、ろうそくの明かりよ。引っ越してくる前、母さんに内緒で家の手入れをしてたのよ。自分の生まれた家がおんぼろだったら、母さん、悲しいだろうって」
「ふーん、優しいんだなあ」
 洋二は、優しいお父さんの子供だから、ミカコも、きっと優しいだろうと思いました。
 ところが大間違い! つるばら館に来てみると、見違えるほど明るくなっていました。窓はピカピカ光っているし、庭一面、花模様のじゅうたんを敷き詰めたように、松葉牡丹が咲いているのです。
「これじゃ、どっちが謝るのか――」
「わかりゃしないや」
 洋二と新平は、同じことを思い出して言いました。
 するとミカコは、悪戯っぽく二人を見比べて、急に笑い出したのです。
「アハハ……ハッハッハ……。バカねえ、そんな事、どうでもいいのよ。あたし、庭を綺麗にしたかっただけなんだから。ハハハ……ご苦労様でした」






~おしまい
 いかがでしたか?

 物語の舞台と挿絵からして、作中で言われている「大きな爆弾」と言うのは、おそらく広島の原爆の事みたいですね。
 時代設定も、当時ならではな感じになっています(丁度、私のお袋の世代が洋二達と同年代になるわけですし)。

 それまでとは打って変わってハードな設定でしたが、“オチ“のミカコの企みで、ちょっと明るい終わり方になった、といった感じでしょうか。

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。
 今日はこの間の『花がさいたら』の続きで行こうと思います。
 前回はコチラ

 では、本文スタート!



 草ぼうぼうの庭に立って、洋二と新平は、しばらく見とれていました。
 金色の五月の日差しを受けて、赤いつるバラの花が、そこにもここにも、ほら、あんな高い所にまで、咲いています。黒ずんだガラス窓が、さび付いたように閉まっていますが、今にもそれが開いて、童話のお姫様が顔を出しそうな感じでした。
 こうして明るい所で見ると、洋二は昨日の事なんか、まるで嘘のような気がしてきました。
 まして新平は、初めから本気にしていなかったので、
「それ見ろ、幽霊なんて、いないじゃないか」
 と、勝ち誇ったように言うのです。
「夢でも見て、寝ぼけたのさ。もう、でまかせなんか言うなよ」
「誰がでまかせ言った? 見たから見たって言ったんだ」
 珍しく、洋二が食って掛かりました。
「まだ言ってら。しつこいぞ、洋二も」
「君こそ、疑い深いや。男らしくないよ」
「なに!」
「なんだよ……」
「よーし、お前なんか、絶交だ」
「いいよ、こっちこそ、絶交だい」
 仲良しというものは、ケンカする時にまで、気を合わせるのでしょうか。洋二と新平は、同じような事を言い合っています。
 絶交なんて、出来るわけがないくせに。
「あやまれ、洋二」
「君こそあやまれ」
 二人は絶交どころか、決闘でもするみたいに、一歩ずつ詰め寄りました。
 ……その時です。
 ギィー、ザリリーッと、重い音を立てて、窓の扉が開いたのです。
「ひゃあ~~~!」
 この大きな悲鳴、洋二だと思うでしょう?
 ところが、洋二ではなくて新平でした。
 洋二は声も出せないで、後ろに飛び下がっていたのです。バラのトゲで指をひっかいてしまうほど慌てて――。


 もちろん、洋二は泣き出しました。
 けれど、そう長くは泣いていられませんでした。何故って……。地べたに座り込んで、えんえんやっていた洋二の耳に、女の声が聞こえたからです。
 ぎくりとして顔を上げると、幽霊――じゃなかった。百歳過ぎのお婆さん――でもなかった。洋二ぐらいの女の子が、窓の中で笑っているのです。
 洋二と新平は、ぽかんと顔を見合わせました。
 すると、女の子は、歌うような声で言うのです。
「ねえ、どっちが謝るのか決まった?」
「き、きみ、誰さ」
「ど、どこから来たのさ」
 見知らぬ女の子の前で、男の子二人は、どぎまぎしながら尋ねました。
「分からないわ。一人ずつ言ってちょうだい」
 女の子は、記者会見のスターみたいに気取って、そのくせちゃんと聞き取っていたのです。
「あたしミカコ、あっちから来たわ」
 女の子は、海の方を指さしました。そう言えば、女の子の服は海の色、襟のレースは波がしらの色です。けれど洋二が、
「へえ、海から来たのかい?」
 と聞いたら、首を振って笑うのです。
「まさか。海坊主じゃあるまいし。それより、ケンカしてたんでしょ? どっちかが謝るんでしょ?」
「大きなお世話だい」
 たまりかねた新平が、口をとがらせて言いました。
 でも、この人を食った女の子、ミカコには敵いそうもありません。
「あたしが、謝る方を決めてあげる」
 ミカコはそう言って、窓から手を出しました。
 何か、紙に包んだものを新平に渡したのです。
「なんだ、こりゃあ?」
 紙を開いて新平は言いました。洋二にもわかりません。鉛色で、あわ粒よりも小さなものです。
 さらさらした小さな粒が、一握りほど入っていました。
「それ、お花の種よ。何の花かは、咲けば分かるわ。二つに分けて、この庭に蒔くの。早く咲いた人が勝ち。負けた人が謝る……っての、どう?」
 ミカコは、得意そうに言いました。
 ちょっとしゃくだけど、洋二と新平はミカコの言った通りに決めました。二人とも、謝るのも、謝られるのも、あまり好きではなかったのです。
 種を二つに分けて、さあ、競争が始まりました。
 ぼうぼうの草をむしるのは一苦労です。でも、二人は汗びっしょりになって、頑張りました。瓶の壊れたのを拾ってきて、土を柔らかくしたり、溝から水をすくってきてかけたり――。
 そして日暮れ近く、洋二と新平は、自分の種を、やっと蒔き終わりました。



 ところが、どうでしょう。
 窓に腰かけて、二人を応援していたミカコが、いつの間にか消えているのです。
「おい、きみ――」
「ミカコちゃーん」
 何度呼んでも、返事はありません。ミカコが腰かけていた窓は、きっちりと閉まっていて、ガラスに夕焼けが映っていました。



~つづく~
 今日は久々に『文庫本コーナー』でいきたいと思います。

 舞台は、半世紀前の瀬戸内海が見える小学校で、主人公は二人の小学三年生。
 ……ちなみに、『ファイクエ』の舞台設定は95年くらいだったりします。

 能書きはともかく、スタート!



花がさいたら


 丘の上の学校です。
 地図そのままの、静かな青色をした瀬戸内海を窓から見下ろせる教室です。
 洋二は、勉強の良く出来る男の子。中でも理科は得意中の大得意で、三年生全部の組を合わせても、洋二にかなう友達はいないでしょう。
 ところが、その埋め合わせをするように、泣き虫、弱虫、べそっかきの方でも、一番は洋二でした。
 そして、べそっかきの洋二の友達というのがこれまた学校中で一番の暴れん坊で、いじめっ子の新平なんです。ご丁寧に新平の成績ときたら、三年生全部の組を合わせたって、ビリから一番間違いなし。
 この一番と一番が仲良くなったのは、ついこの間――つまり、三年生になって間もなくの事です。
 学校の帰り道、犬に吠えられて立ちんぼうだった洋二を、新平がわけなく助けたのでした。
 新平は犬好きですし、犬の方でも新平には特別親しみを感じるようです。
 次の朝、洋二はお返しに、新平が忘れてきた宿題を、こっそり教えてあげました。
 感激した新平は、その日勉強が終わった後、洋二を取り巻いていた五年生のワル達を一人で追い払ったのです。
 それをまた感激して、洋二は次の日も宿題を――。
 またまた感激した新平が、弱虫の洋二のために一働き――。
 とまあ、こんな具合に助け合っているうちに、二人は、いつの間にか二人合わせて一人のような仲良しになっていたのでした。
 丘の上の学校です。
 もう、みんな帰ってしまった、空っぽの教室です。
 いえ、まるきり空っぽと言う訳ではなく、洋二と新平の二人だけ残って、何か言い争っていました。
 珍しい事です。洋二と新平が喧嘩をするなんて。
 けれども、ほら、新平はあんなに口をとがらせているし、洋二は今にも泣きだしそうな顔。
 一体、何を言い争っているのか、もう少し、二人のそばへ近寄ってみましょう。


「いるもんか、そんなもんが」
 新平が、二十六回目の「いるもんか」を言いました。
「だって、いたよ。見たんだもん……」
 洋二は二十七回目の「いたもん」を言って、ますますべそをかきました。
「いやしないよ」
「いたんだってば」
 新平も洋二も、辛抱強く繰り返します。
「ばっかあ、幽霊なんてもんが、今の時代にいるかって」
「なら、昔はいた?」
「まあ、な。だけど、恐竜やなんかと一緒に、とっくの昔、滅びちゃってらあ」
「じゃあ、僕が見たの、生き残りの幽霊だよ。ほんとなんだ。窓に明かりがついてて……影が……」
 そこまで言って、洋二はぞくっと肩をすぼめました。海の色が、ここまで届くはずは無いのに、洋二の顔は真っ青です。
 分かった! 洋二は昨日お使いの帰りに見た、「つるばら館」の話をしているのでした。

 つるばら館というのは、隣町との境目辺りにある、古ぼけたコンクリートの建物の事です。
 春になると、窓を少しだけ残して、壁も屋根もすっかり、つるバラに隠れてしまうのです。
 遠くで見ると、点々と紅色をした、小さな森のようでした。
「つるばら館」の他に、もう一つ、町の人達が陰で呼んでいる名前があります。
 それは「ゆうれい館」。
 昔は立派な写真館だったそうです。が、もう二十年以上も、空き家のままでした。
 それなのに、何故でしょう……。
「あそこには、百歳を超すお婆さんが、明かりもつけずに住んでおるそうな」
 なんて、不思議な噂があるのです。
 そんなお婆さんの姿など、誰も見た人はいないのに……。
 とにかく、つるばら館というのは、薄気味悪くて、人の近寄らない建物でした。
 ところが、そのつるばら館のすぐ横を、洋二はお使いの帰りに通ったのです。
 いえ、洋二が急に強い子になったわけじゃありません。行くとき通った道に、大きな犬が寝そべっていたからでした。
 もう、薄暗くなっていたので、洋二はわざと声を出しながら歩きました。
「怖くないったら、怖くない。幽霊なんか、いやしない――」
 でも……幽霊なんか……いたのです!
 なるべく見ないように下を向いて通ったのですが、それでも目の端に、つるばらの窓が映りました。窓には、ほの暗い明かりがともって、おまけに黒い影法師が、ゆらゆらと揺れているではありませんか。
 ゆうれい館!
 洋二はつるばら館のもう一つの名前を思い出したのです。後はもう、夢中で逃げて帰ったのでした。
「ちぇっ、洋二らしくないなあ。人がいないのに、何で明かりが点くんだよ」
 新平はいらいらした口ぶりで言いました。
「影なんか、映る訳ないじゃないか。誰も住み手が無いから、ゆうれい館って言うんだぞ」
「幽霊がいるからゆうれい館だい」
 そう言って洋二は、自分でもどうかしてるな、と思いました。幽霊なんて科学的ではありませんもの。
 けれど、見たものは見たもの。後へは引けません。
「そうだ!」
 洋二は言いました。
「君も見に来るといいよ。これから、行ってみない?」
「え、つるばら館へかい?」
 少し驚いている新平の手を、洋二はぐいぐい引っ張ります。
 そしてまあ、海側の窓を一つ、閉め忘れて――二人は、教室を飛び出していきました。



~つづく~
 昨日は月に関する中国の昔話を投稿しましたが、今日は世界の国の、ちょっと短めの月に関する昔話をいくつか投稿したいと思います。

 では、さっそくスタート!

指の跡がある月の顔(ニューギニア)

 大昔、一人の女が、瓶の中に月を隠していました。女は月の美しい光を、誰にも知られずに、一人で楽しんでいました。ところが、その秘密を見破った少年たちは、女が留守になった時、こっそり瓶のふたを開けたのです。途端に、月は飛び出してきました。そして、逃がすまいとして懸命に握りしめる少年たちの手を逃れようと、もがいたのです。
 とうとう月は、少年たちの手から滑りぬけて、高い空へ飛びあがっていきました。今でも、月の表にたくさんの斑点があるのは、この時の少年たちの手の指の跡なのです。



~おしまい~

乙女を奪った月(ポリネシア)

 ある所にクイという盲目の男が住んでいました。クイには美しい娘が幾人もいましたが、月はその内の一人の娘が大変気に入りました。それで、月はある夜、天から降りて、その娘の所にやって来たのです。乙女は炉のそばで木の葉をくべて、火箸でそれをかき混ぜていました。それを見た月は、いきなり乙女を抱き上げて、空へ飛んで行ってしまいました。
 それで、月には女と木の葉と火箸がはっきり見えるのです。



~おしまい~

蛙に飛びつかれた月(北アメリカ)

 昔、月は一人の蛙の妹と一緒に、天に住んでいました。ある時、月は星たちを招いて宴会を開きました。ところが、あんまりたくさんの星のお客様たちが集まって来たので、妹のいる場所が無くなってしまいました。それで、兄の月に不平を言ったのですが、月は聞き入れてくれません。怒った妹は、兄さんの顔に飛びつきました。今でも月には、妹の蛙がしがみついて離れません。



~おしまい~

月が欠ける訳(アフリカ)

 ある時、太陽が月に酷く腹を立て、月の身体を少しずつそぎ取っていきました。月は、
「このうえ肉を切られると、死んでしまって子供を養えなくなる。肉がついて太るまで待ってておくれ」
 と、頼みました。それで、今でも月は大きくなったり細くなったりします。



~おしまい~

孤児(みなしご)を助けた月(アッシリア地方)

 昔、親を失った乙女が、村の領主に“ただ”で働かされていました。
 ある時、人の息が凍りそうな寒い月夜の晩に、乙女は桶一杯に水を汲んで、家へ戻ろうとしましたが、柳の木につまづいて倒れてしまいました。桶の水はみんな流れ出てしまい、乙女は寒さの中で泣いていました。
 これを見た月はかわいそうに思って、月の家へ連れて行きました。それで、月が輝いている晩には、おさげを下げた乙女の姿が見えるのです。



~おしまい~

娘と海と月(アッシリア地方)

 ある海辺の粗末な家に、母と娘が住んでいました。娘は母の言いつけで、海へ水を汲みに行ったところ、海は娘を引きずり込んだので、娘は海の神と争いました。その時、海の上に現れた月が、ひしゃくをもって娘をさらったのです。



~おしまい~

 いかがだったでしょうか?

 北アメリカの「月と蛙が兄妹」って昔話もなかなかシュールですが、私は『月が欠ける訳』で、『サンドラの大冒険』ってゲームの三日月王っていうボスキャラを思い出しました(笑)。

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。
 今日は久しぶりに『文庫本コーナー』でいきたいと思います。
 中国の、月に関する昔話です。

 では、本文スタート!

ニーオとヤーラ



 大昔、天には太陽があるだけで、月はありませんでした。星もありませんでした。
 ところが、ある晩の事、突然空にギラギラ燃える月が現れたのです。
 月は怪しい光を投げかけ、田や畑をすっかり枯らしてしまいました。
 人々は、暑くて死にそうです。
 その頃、ターシー山のふもとに、若い夫婦が住んでいました。男はヤーラといって、弓の名人。いつも山の中を駆け回って狩りをしていました。女はニーオといって、機織りが上手。いつも家で美しい錦を織っていました。
 ニーオはヤーラに言いました。
「あなたは弓の名人、あの月を射落として、みんなを助けて下さい」
 ヤーラは弓と矢を取って、ターシー山のてっぺんに登りました。そして力いっぱい弓を引き絞ると、矢を放ちました。ところが矢は、半分も届かないうちに落ちてしまいました。次の矢も、次の矢も落ちました。ヤーラはがっかりして空の月を仰ぎました。
 その時、突然ギィーっと音がして、後ろの大きな岩が門のように開き、中から白いひげの老人が現れました。
「ヤーラよ、もしも力が欲しいなら、南山の大トラと北山の大シカの肉を食べよ。トラの尾の弓、シカの角の矢で射れば、きっと月まで届くだろう」
 老人はそう言うと、岩の中に姿を消しました。
 岩の門は、またギィーっと音を立てて、閉じてしまいました。
 ヤーラは困りました。そのトラとシカは弓で射ても、矢が刺さらないのです。
「大きな網で捕まえるほか、どうしようもない。だが、どこにそんな丈夫な網があるだろう」
 これを聞くと、ニーオは自分の長くて美しい髪の毛をなでて言いました。
「これで編みましょう」
 ニーオが髪の毛を抜くと、不思議な事に、髪の毛は抜く後からすぐに生えてくるのです。二人は夜も昼も編み続けて、それはそれは丈夫な網を作り上げました。
 二人はその網で、洞穴の入り口を囲み、出てきたトラを生け捕りにしました。今度は北山のシカの洞穴へ網を張りました。そして、シカも退治しました。
 ヤーラがその肉を食べると、素晴らしい力が体中にわいてきました。ヤーラはトラの尾で弓を作り、シカの角で矢を作ってターシー山に登りました。
 ヤーラは矢をつがえ、弓を引き絞り、狙いを定めました。
 ひょうっ。矢は月をめがけて真っすぐに飛び、ぴぱっと音を立てて月に当たりました。月から火花が飛び散りました。火花は空に散らばって、星になりました。
 屋は月に当たると、くるりと向きを変えてまたヤーラの手に落ちてきました。ヤーラはまた、その矢をつがえて月を射ました。
 こうして百回も続けました。月のごつごつした角はみんな飛び散り、空は星で一杯になりました。
 月はすっかり丸くなりましたが、あの怪しい光は相変わらず地上を照らし続けています。
 ヤーラはしょんぼりを弓を抱えて、山を下りました。



「ニーオ、どうしたら良いのだろう。あの、怪しい光を遮るものが欲しいのだが……」
 この時ニーオは錦を織っていました。錦には、金色の桂の木の下に立っている、ニーオの姿が織り込まれてありました。
 そして、ニーオはこれからヤーラの姿も織り込もうとしていたところでした。
 ニーオは言いました。
「この錦を矢の先に付けて、空に射上げなさい」
 ヤーラはすぐさま山に登り、その錦を矢につけて、ひょうっと月を射ました。
 屋は月に当たり、錦は月をすっぽりと覆ってしまいました。
 月はもう怪しい光を放ちません。柔らかな清い光を地上に投げかけています。人々は、喜びの声を上げました。
 その時、突然――
 月を覆った錦の中のニーオが動き出し、地上に向かって手招きをしました。
 すると、家の戸口に立っていたニーオが、ふわりふわりと空へ舞い上がり、あれよあれよという間に、月の中へ飛び込んで、二人のニーオがぴったりと一つになってしまいました。
 見ていたヤーラは、思わずへたへたと座り込んでしまいました。けれども、目だけはしっかりと見開いて月を見つめ、胸の中で叫びました。
「ニーオ。お前はなぜ、錦の中に私の姿を織り込んでくれなかったのだ。ニーオ、降りて来てくれ、ニーオ」
 すると、月の中のニーオが動いて、自分の髪の毛を伸ばして、長い長い一本のおさげを編みました。そして、月がちょうど山の上を通る時、ニーオはそのおさげを山の上に垂らしました。



 ヤーラはそれにつかまると、するするとサルのように登って、月の中へ入りました。二人はしっかりと手を握り合って喜びました。
 こうして二人は月の中で錦を織り、ヤギやウサギを飼って幸せに暮らしました。
 ごらん。あの月の中の黒い影、あれが、ニーオとヤーラなのですよ。



~おしまい~
2018.07.27 ネコの催眠術
 読み物系が続きますが、今日は『ファイクエ』ではなく、『文庫本コーナー』のお話で行きたいと思います。
 今回お送りするのは、寓話・『ネコの催眠術』。
 では、本文スタート!

ネコの催眠術




 アニマン・シティは、動物たちの町。土曜日の夜、そのアニマン・シティの劇場で、魔術大会が開かれる。
 劇場の中は、ぎっしり満員。席が足りなくなったので、ウサギはトラの頭に乗っかり、子豚はライオンのおじさんに抱っこされてるという具合だ。
 とにかく、アニマン・シティの動物たちは仲がいい。どんなに強い動物だって、他の動物を食べるようなことは全然しない。その代わり、トラやライオンのおじさん達は、ブタやウサギなんかを、むしゃむしゃ、やってる。
 それじゃ、やっぱり、他の動物を食べてるんじゃないかって? ところがどっこい、ライオンのおじさん達がむしゃむしゃやってるのは、本物じゃない。工場の機械で作った、偽物のウサギや豚なんだ。ところが、偽物とは言っても、味も形も本物そっくり。こんな便利な食べ物が発明されたおかげで、ライオンのおじさん達は、他の動物を捕まえたり、殺したりしなくても、暮らせるようになったんだ。
 そのため、動物たちの暮らしも、ずいぶんと進歩した。町が出来たし、工場が出来た。立派な公園や、劇場も出来た。その劇場で、ある土曜日の夜、魔術大会が開かれることになったという訳だ。



 トランプを使うキツネの手品、二匹のクマのアクロバット、ガソリンを飲んで口から火を吐くゴリラ……。楽しい出し物がいろいろと続き、最後にいよいよ、一匹のネコが、するっと舞台へ現れた。
 遠い町からやって来た、ネコの催眠術使い。催眠術って、何のことかわからないけど、ともかく動物たちは、わあーっと一斉に拍手した。
 ほんのちょっぴり、お辞儀をすると、ネコはいきなり、持っていた鞭をパチッと鳴らした。
「それでは早速、始める事に致しまする。トラさん、子豚さん、ウサギ君、ご面倒でも、しばらくお相手を願いたい」
 トラたちは、照れくさそうに、舞台へ出て並んだ。
「さっそくお引き受け頂いて、かたじけない」
 ペロンとネコは、舌なめずりをしたかと思うと、ぴーんと尖った自分の耳を、ぴくぴくぴくぴく、動かし始めた。ぴくぴくぴくぴく、ぴくぴくぴくぴく……それをじっと見つめているうちに、トラの目も子豚の目もウサギの目も、だんだん、とろーんと眠そうになって来た。
 するといきなり、甘い甘い、甘ったるい声で、ネコがトラに向かってささやきかけた。
「どうです、トラさん。ここらで、陽気にひと踊り、楽しく騒ぐってのはいかがです?」
「いいねえ、踊ってみたいねえ」
 とろーんとトラが答えると、ネコは片目をつぶった。
「そーら、音楽も聞こえてきましたぞ。さ、踊ったり、踊ったり」
 音楽だなんてウソだった。全然聞こえてこなかった。ところが、トラときたら、愉快で愉快でたまらないといった顔で、くにゃくにゃ、くにゃくにゃ、踊りだしたんだ。
 続いて今度は、子豚の番。ネコは優しくささやいた。
「さあて、君には、鳥のように飛んでもらうとしよう。そーら、飛べ、飛べ、飛び上がれ」
 その途端、子豚は足をばたばたさせながら、劇場の中を飛び回り始めた。
 なるほどなるほど。これが、催眠術と言うものか。
 それにしても、トラや子豚のへんてこな姿と言ったら……。拍手する者、笑う者、劇場の中は、大騒ぎだ。



 ネコは、今度はウサギに呼び掛けた。
「さて、ウサギ君。君は一体、何者ですかな?」
「ぼく、ウサギだよ」
 ウサギも、とろーんとした声で答えた。
「いやいや、違うぞ。君はウサギじゃなくて、アップルパイだ。そうじゃなかったかね?」
「そうだ。ぼく、アップルパイだったっけ」
「そうとも、そうとも。ところでアップルパイ君や、ひとつ、この私に食べられてみたくはないかね?」
「うん、食べられてみたいなあ」
「よし、よし。入り口は、こっちだよ」
 ぱくっとネコは、口を開けた。いくらネコの口だって、ウサギの身体が丸ごと入るはずはない。ところがその口の中へ何とか潜り込もうと、ぱたぱた、ぱたぱた、ウサギは大騒ぎ。それを見た動物たちは、きゃあきゃあ、きゃあきゃあ、大笑い。あんまり笑いすぎて、お腹が痛くなった者までいるほどだ。ところが、その時、
「馬鹿な真似は、やめろ!」
 誰かが、物凄い声で怒鳴った。
 その声は、やっぱり、ライオンのおじさんだった。ライオンのおじさんは、厳しい目つきで、ネコを睨みつけた。
「やい、わし達の仲間を食べようとするなんて、一体、どういうつもりだ」
「なあに、今のは、ほんの冗談で」
「冗談だろうが何だろうが、仲間の動物たちを馬鹿にするような真似は、このわしが許さん」
「ほほう、するとライオンさんは、本物のウサギや豚を、もう一匹も食べたくないとおっしゃるんですかい?」
「当たり前だ」
「なーるほど、それは感心」
 この時、ネコは急にこの平和な町をめちゃめちゃにしてやりたくなった。
「しかしですな、ライオンさん。あなたも、心の底の方では、本物の動物をばりばりばりっと食べてみたい。そんなふうに考えてるのと違いますか?」
「なんだと……」
 その途端、ぴーんと尖ったネコの耳が、ぴくぴくぴくぴく、動き始めた。ぴくぴくぴくぴく、ぴくぴくぴくぴく……ライオンのおじさんの目も、だんだん、とろーんと眠そうになって来た。すると、甘い甘い、甘ったるい声で、ネコが優しくささやきかけた。
「ライオンさん、も一度、お尋ねしますがね。ほんとに、あなたは、本物の動物を食べたくはないんですかい?」
「い、いや、さっき言ったのは、みんな、でたらめだ」
 唸るように、ライオンのおじさんが答えた。きいきいと、かすれるような、まるでへんてこな声だった。
「偽物を食べるなんて、我慢できん。わしは、本物の動物が食いたい。ばりばりと食ってやりたいんだ」
「そんなら、遠慮なく、本物の動物をお食べなさい。そら、そこにも一匹いるじゃありませんか」
 ネコは、鞭の先でウサギの方を指さした。ライオンのおじさんは、があーっと真っ赤な口を開けた。
「ひゃあ!」
 ウサギは、ぎゅっと目をつぶって、がたがた、がたがた、震えだした。動物たちも、一匹残らず凍り付いたようになった。
 パチッと、激しくネコが鞭を鳴らした。
「やい、さっさと食べろ、ライオンめ。偉そうなことは言っても、それがお前のほんとの姿だ。みんなも、よっく見とくがいい」
 ぱちっと、も一度、鞭が鳴った。
 その途端、ライオンのおじさんは振り返ると、ひらっとネコに飛びかかった。どたっと、ネコは尻餅をついた。



「な、何をする!」
「お前も、本物の動物に違いない。だから、手近なお前から食べてやろう」
 ライオンのおじさんの声は、やっぱり、きいきい、かすれていた。
 ネコは慌てて逃げ出そうとした。だけど、もう遅い。たちまち、ぺろんと飲み込まれてしまった。
「おおーっ!」
 動物たちは、一斉に叫び声をあげた。
 その声で、催眠術が解けたらしい。ライオンのおじさんは、急にぱちくり、辺りを見回した。
「はあて、ネコのやつ、一体、どこへ行ったんだ」
「ネコだったら、ライオンのおじさんが……」
 そこまで言いかけて、ウサギは急に気が付いた。
 催眠術にかけられていた間の事を、ライオンのおじさんは、何にも覚えていないんだ。もしも、本当の事を教えたら、ライオンのおじさんは、死ぬまで苦しむかも知れない。
 そこでウサギは、嘘をつくことに決めた。
「おじさんを催眠術にかけた後、ネコの奴、こそこそ逃げてった。ここへはもう、二度と来ないって言ってたよ」



~おしまい~

 いかがでしたか?


 ネコが悪役になる物語って、個人的には珍しい気がします。
 それにつけても、ネコは調子に乗った末の自業自得とは言っても、食い殺される末路というのはチト憐れのような……(苦笑)。

 ところで原本が発行されたのって昭和44年なんですが、作中に出てくる『偽物の動物』って、要するにクローン……? 世界初の、ニンジンのクローンが誕生したのが1960年(昭和35年)代のアメリカの事ですが、なかなか時代を先取りしたお話だったようで(笑)。

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。