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 トゥエクラニフに立ち込めていた暗雲はようやく消え、人々は数日ぶりに太陽を目にした。
 上空の黒い球体も活動を停止し、人々は不思議そうにそれを見上げていた。
 球体からほど近い、エスカモー村でも……
「うーん、どうなってんだろう!?」
「ふ~む……」
 リョートとオーイェ・ティが顔を見合わせる。
 いち早く気づいたオーイェ・ティが笑みを浮かべて呟いた。
「オーイェー。どうやら、また勇者によって世界が救われたようですね」


 広がる青空の下。
 いつものように、石川が家から飛び出してきた。
「行ってきまーす!」
 トーストを頬張りながら学校へと急ぐ。
「いけね、遅刻しちゃう!」
 通学路から見る町並みは、当たり前だが、すでに元の光景に戻っている。


 ガッ……


「うわっ!」
 急いでいたため、道端に落ちていた石につまづき、石川はバランスを崩して思わずひっくり返った。


 コロコロッ……


「いてて……」
 そのショックでポケットからキーホルダーのようなものが地面に飛び出す。
 それはガダメを呼ぶための眼球であった。
 あの後、三人はそれぞれ三魔爪の召喚アイテムを一つずつ持っていたのだ。
「あ……」
 慌てて拾い、グッと握りしめた。
(もう一月も経つのか……)
 石川は思い出していた。
 セルペン達との別れの時を――


 セルペンはまたも泣きべそをかいていた。
「セルペンちゃん……」
「テッチャンさん、いやっ! 別れたくないですぅ!」
 サクラがセルペンを優しく諭す。
「セルペンさん、私達がいったんトゥエクラニフに戻らないと、こっちの世界の次元バランスを崩してしまう事になるんですよ」
「いやっ、いやっ!」
 オータムも困ったように言う。
「セルペン、その内にまたきっと会えるよ」
「その内って、いつになるか分からないってことでしょう! もうセルペン、テッチャンさんと離れたくないんですぅ!」
「セルペンちゃん」
 石川が静かにセルペンの肩に手を置く。
「ずっと待ってるから」
「えっ!?」
「今度はおれが待ってるよ、セルペンちゃんとの再会の日を」
「テッチャンさん……」
「なに、だいじょぶ、だいじょぶ! 再会なんてすぐだよ! マージュII世やドクター・プラズマに次元の乱れを修正する機械を作ってもらえば済む事じゃない!」
「…………」
「ね、元気出してよ、セルペンちゃん!」
「はい」
 石川の笑顔に、セルペンはうつむきながらも、ようやく頷いた。そして、
「テッチャンさん!」
 突如、セルペンが石川に抱きついてきた。
「わっ……セ、セルペンちゃん……」
「セルペン、またすぐこっちに戻ってくるですぅ!」
「うん、ちゃんと待ってる。……それはともかく、セルペンちゃん力入れすぎ。かなり痛い……」
「だってだって、寂しいんですぅ!」
 セルペンの鯖折りに、石川の肋骨がきしみ始めた。
「あだだだだだだだだだだだだっ!? セルペンちゃん、ギブ! まじギブ!」
「愛されてるねー、テッちゃん」
「そうだね……」
 その光景を見て、岡野と上田が苦笑しながら頷きあっていた。
「勇者どの」
 背後にIII世や魔衝騎士達を従えたマージュII世が声をかける。
「今回は本当に有難う御座いました」
 マージュII世達が深々と頭を下げる。
「いやぁ、気にしない、気にしない」
 ようやくセルペンの鯖折りから脱出した石川が、せき込みながらも明るく答えた。
「倫理さん……私もまた会える日を楽しみにしています!」
「サクラちゃん……」
「盛彦、次に会う時まで、元気にしてなよ!」
「オータムもね!」
 上田と岡野も、それぞれサクラやオータムと、手短ながらも感慨深く再会を約束しあっていた。
「なにはともあれ、めでたしめでたしやな!」
「うむ」
「そうですね」
 ノーテンキに言うクレイに、ガダメとアーセンが微笑みを浮かべて頷いた。
「ガダメ、あんた達は向こうに帰ったらどうするの!?」
「我らか? 我らは、スパイドルナイト様がお戻りになるまで、責任をもってトゥエクラニフの平和を守っていくつもりだ。それが我ら、魔界騎士の使命だからな!」
「相変わらず硬いなぁ、ガダメはんは……」
「ま、ガダメらしいと、言えば、らしい、ですけどね」


 そうこうしている内に、六つのクリスタルのエネルギーが充填されてきたようだった。
 彼らの帰還は、このクリスタルのエネルギーを使って、マージュII世の空間転移魔法で行われることになっている。
「あ、そろそろ時間ですね」
「そうか。……それでは、始めよう」
 マージュII世が地面に巨大な魔法陣を出現させ、早口で呪文を唱え始める。
「テッチャンさん、またね!」
「うん、また!」
「向こうでも、元気で」
「また、こっちに来てね! 待ってるよ!」
「それではいくぞ」
 ひときわ大きな発光の後、セルペン達も、三魔爪も、ダークマジッカーの面々も消滅していた。
 それと同時に、周囲の景色が溶けるようにして、元の現実世界の風景へと戻っていく。
 気が付くと、石川達も普段の私服姿に戻っていた。
 今、また一つ冒険が終わったのだ。
「行っちゃったねぇ……」
「ああ。ま、永遠の別れって訳でもないんだし」
「それでも、いつか分からないって言うのは、ちょっときついかもなぁ……」
 セルペンの前では強がっていたものの、やはり、石川にとっても別れは寂しかったのだ。



 教室に到着した石川は、ランドセルを机に降ろすと中身を机の中に移し始める。
 もちろん、上田や岡野も登校してきている。
 見慣れた普段の始業前の風景だ。
 その時だった。


 ピシ……


「え……」
 石川は思わず席から立ち上がっていた。
 何もないはずの天井付近の空間で、何かが割れるような音が響いたのだ。
「ん、どしたの、テッちゃん?」
「おいおい」
 間違いなかった。岡野も気が付いたのか、その空間に空いた穴を指さした。
「上ちゃん、あれ!」
「……まさか、また!?」
 次の瞬間、穴からセルペン、サクラ、オータムの三人が飛び出してきたのだ。
「テッチャンさん!」
「セルペンちゃん! 早かったね!」
 石川は咄嗟にセルペンを受け止める。
「違う、そうじゃない!」
「そうです! 皆さん、今、トゥエクラニフで大変な事が起きているんです!」
「は?」
 突然の事に唖然となっているクラスメイト達をよそに、オータムとサクラがまくし立てた。
「悪いけど、すぐにこっちに来て!」
「いや、あのちょっと? せめて事情を話してくれないかな?」
「詳しい話はあとでします! とにかく、急いで下さい!」
 いつの間にか、石川達はセルペン達にガッチリと腕をつかまれている。
「このまま一気に行きますぅ!」
「う、うわっ!?」
 気が付くと、石川達は問答無用でトゥエクラニフに送られようとしていた。
「い、一体何がどうなってるんだよ!?」
 状況を飲み込めない三人をよそに、一同の身体は穴へと吸い込まれていった。
 クラスメイト達も、一様に目の前の光景を信じられないといった表情で一連の出来事を見守っていた。
「お、おれ達の平穏を、返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 空間の狭間に、石川達の叫びがこだましているのであった。




~おしまい~


 はい、という訳で、小説版『ファイクエII』も今回で終わりです。


『II』を始めたのが2019年の3月18日、まだヤフブロが存在していた頃でした。(^ ^;)

 完結まで一年ちょっとかかりましたが、次は一気に飛んで『V』辺りを小説化したいなぁ、と思っています。『III』もいずれは小説化したいのですが、さすがに石川達のシリーズが続くとマンネリになりそうですし……。


 とは言え、ガダメやクレイの過去を描いた外伝も構想はあるので、そちらもいずれは形にしていきたいと思っています。


 それでは、これまで小説版『ファイクエII』にお付き合い下さり、有難う御座いました!



 と言ったところで、今日はこの辺で。

 どうも。ではでは。

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 さて、今日は昨日の続きで小説版『ファイクエII』となります。

 次回はいよいよエピローグの予定です。


 なお、前回はコチラ


 では、本文スタート!


 一方、地上での戦いもいまだ続いていた。
「はぁぁぁぁぁっ!」
 石川が跳躍し、ナイトキラーのボディに斬りつける。


 ガキィィィン!


 だが、やはり空しく弾かれるのみだ。
「クッ……」
「なんてこった! こうなったら……」
 上田が目を閉じて、魔力を集中させる。
 上田の右手に青白い光が、左手に赤い光が発生する。
 そのまま両手を合わせると、相反したエネルギーのスパークが巻き起こる。
「無駄だ! 死ぬがよい!」
 ナイトキラーが、その巨大な足を振り下ろした。
 それが念を込めている上田を直撃しようとした時、咄嗟に岡野が飛び出した。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 足は岡野の両手によって、彼らの頭上で止められている。
「すごい、岡ちゃん!」
 石川が感心して叫ぶが、岡野は止めただけであり、状況は岡野に不利だ。
「押しつぶしてくれる!」
 ナイトキラーはぐいぐいと力を増してくる。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」
 岡野は必死に耐えながら叫んだ。
「上ちゃん、頼むぜ!」
 その声に応えるように、上田がキッと目を見開いた。
「極大光熱呪文……ブリザレム!」


 シュゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!


 上田が両手を突き出すと、渦を巻いた赤と青のエネルギーが飛び出し、スパークをまとってナイトキラーに突っ込んでいく。


 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!


 ブリザレムの直撃を受けたナイトキラーは、全身をすさまじいエネルギーに蹂躙されていた。
「どうだ! ……ええっ!?」


 ガシィィィィィィィィィィィィィィィィィン!


 突然、ナイトキラーの左腕から巨大な刃が発射され、石川達のすぐそばの地面に突き刺さる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 石川達は直撃こそ避けられたものの、衝撃で大きく飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「ま、まさか……」
 必死に上田が半身を起こして、ナイトキラーを見つめ、信じられないといった表情をする。
 上田の最強呪文であるブリザレム。
 それはかつて、あの魔爪竜にされ大きなダメージを与えた、トゥエクラニフでも五指に入るほどの強力な呪文である。
 それを受けても、ナイトキラーはほとんど無傷だったのだ。
「ふははははははははははははははっ! なかなか強力な魔法だったようだが、この私にダメージを与えるには力不足だったようだな!」
 勝ち誇ったように、ナイトキラーが右腕の砲塔を石川達に向けた。
 放電の中、ナイトキラーの砲塔にエネルギーが集中していく。
 全員、地面に叩きつけられたダメージが大きく、満足に動くことも出来ない。
 もはや絶体絶命。



 制御装置の防御兵器はあらかた沈黙していた。
 魔爪竜も魔法力をとっくの昔に使い果たし、後はもっぱら尾や火炎による攻撃で相手を破壊していた。
 攻撃の間中、魔爪竜は一歩たりともその場を動かなかった。
 サクラたちの作業の間、盾に徹したのだ。
 一方、オータムとセルペンも、メタルゴーレムの最後の一体を倒していた。
「はあはあはあ……」
 息が荒い。
 二人はヘナヘナとその場に座り込んでしまう。
「大丈夫か!?」
 マージュII世が声をかける。
「ああ……オッサンは!?」
「私の方の作業は終わった。あとは彼女が……」
 と、サクラの方を向き直った時だった。
 倒したと思ったショットアーマーの一体が、銃弾を発射したのだ。
「うぐっ!」
 マージュII世が肩を撃ち抜かれ、その場に崩れ落ちる。
「このっ!」
 オータムが投げナイフを投げつけた。
 ほぼ同時にショットアーマーが二度目の銃撃を行った。
「うっ……!」
 銃弾はオータムの左足をかすめる。
 が、投げナイフはショットアーマーのむき出しの回路を切断していた。
 小さなスパークが起こり、今度こそショットアーマーは沈黙した。
「オッサン!」
「マージュII世様!」
 オータムはセルペンに支えられながらマージュII世に近づき、慌てて抱き起した。
「わ、私は大丈夫だ……。それよりも何としてもあの悪魔を……」
 そのままガクリと気絶する。
 ちょうど同じ時、


 ズズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……


 けたたましい音が響き、魔爪竜が力尽きたようにゆっくりとあお向けに倒れ込んだ。
「ガダメ様! クレイ様! アーセン様!」
 セルペンが驚愕の表情で叫ぶ。
 だが、魔爪竜の三つの首からはどれも反応はない。
「嘘ですよね……!? あなた達が、こんなことで死んだりしませんよね……!?」
 半ば絶望的な状況の中、凛とした力強い声が響いた。
「終わりました!」
 やつれた表情ながら、瞳に強い意志を灯してサクラが叫んだ。
「今から装置を逆転させます!」
「サクラ、早く!」
 サクラは大きく頷くと、レバーに手をかける。
「ナイトキラー、再び闇にお還りなさい!」
 逆転のスイッチが今、入れられた。



 ナイトキラーを中心にスパークが立ち込める中、三人は必死にナイトキラーをにらみつけていた。
「死ねっ、勇者ども!」
 ナイトキラーが、集中したエネルギーを発射しようと砲塔を振り下ろす。
 だが、その時だった。


 カァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!


 石九小の校舎から、白、黒、赤、青、黄、緑の六色の光がほとばしり、石川達を包み込む。
「なにっ!?」
 ナイトキラーが驚きの声を上げる。
「これは!?」
 三人はまばゆい光に包まれ、ナイトキラーは思わず顔をそむけた。
 さらに、周囲のスパークが突然やんでしまう。
「どういう事だ!?」
 次の瞬間、ナイトキラーを取り巻いていたスパークが恐るべき勢いで結界に吸収され始めた。
「こんなバカな!」


 制御装置は猛烈な勢いで逆回転していた。
 そのあまりの勢いに、あちこちで放電がほとばしり、煙を噴き出し始める。
 やがて、小さな爆発音が響き、回路の一部が吹き飛んだ。
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
 その爆発の影響でサクラは大きく吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。


 ナイトキラーからのエネルギー放電はますます激しくなり、結界内はエネルギーの嵐となる。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 私の身体からエネルギーが! パワーが!」
 一方、まばゆい光の中で、石川達の鎧に変化が起こっていた。
 石川の全身は、鏡のような光沢を持った青い鎧に包まれ、上田は大魔導士を連想させるようなローブをまとっていた。
 岡野の身体にも、動きを制限しない、それでいて白銀の輝きを持ったプロテクターが全身に装着されていた。
 さらに、


 パァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!


 六色の光は、それぞれ各所に散っていった。
 黄色の光は五郎川団地へ、青い光は壱の松原へ、緑の光はバピロスへ、赤い光はクリーンファクトリーへ、白い光は愛石神社へ、そして黒い光は、この石九小の中庭へと飛んでいく。
 愛石神社へ到達した光は地面へと走り、大地を砕いた。
 すると、その中から起き上がった者がいたのだ。
 両肩にタイヤを備えた大柄な騎士と、全身にドリルを備えた騎士――
 そう。それは石川達に倒されたはずの、魔衝騎士フライールとガクホーンだった。
「むうっ!?」
「我らを呼ぶのは誰だ!?」


 同じように、五郎川団地に到達した光の中からはゴールディが――
 壱の松原に到達した光の中からはシルバーンが――
 バピロスの光からはスピアーが――
 クリーンファクトリーの光からはニッキーが――
 そして石九小の光からは、ギョクカイゼル達とフゴマー十兄弟、そして四次元ナイトがそれぞれ復活を遂げていた。
 各地で復活を遂げた魔衝騎士達は、エネルギー体となって次々と石九小の校舎へと飛んでくる。
 そしてそのままナイトキラーの周囲を包み込むと、ナイトキラーの身体へと吸い込まれていった。
 その途端、ナイトキラーのボディがまばゆい光に包まれ、その動きが止まってしまった。
「これは!?」
 不思議がる石川に、真っ先に気づいた上田が叫ぶ。
「魔衝騎士達だ!」
 それを聞いて、岡野がけげんな表情をする。
「どういう事だ……?」
「魔衝騎士たちも、本当はガダメ達みたいに、正義の騎士だったんだよ!」
 その時、ナイトキラーのボディから声が響いた。
 四次元ナイトの声である。
「さあ、勇者たち。今のうちに、ナイトキラーを倒すのだ」
 その言葉に、石川が驚きの表情を浮かべて叫んだ。
「けど、そしたらあんた達が!」
「早く! ナイトキラーの動きを封じるのにも限界がある。今を逃せば、ナイトキラーを倒すことは、永遠に出来ぬ!」
「少年たち、早く!」
「勇者たち、頼むアルよ!」
 魔衝騎士達が次々と叫ぶ。
「テッちゃん……」
 上田が不安そうに石川の顔を覗き込んだ。
 石川は目を閉じてグッと考え込んでいたが、やがて決意の表情を浮かべて叫んだ。
「上ちゃん、岡ちゃん、閃光の波動だ! イチかバチか奴の頭を狙う!」
「よぉぉぉぉぉぉし!」
 上田達も頷くと、三人は一気に上空へと飛んだ。
 三人の合わさった手から、膨大な魔力がほとばしる。
「閃光の……波動!」


 ズォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!


 突き出した掌から、三色の光が飛び出す。
 青、黄色、そして緑。
 それらの光は渦を巻き、螺旋状になってナイトキラーへと向かっていった。
 対してナイトキラーも、必死になって右腕、そして両肩の全ての砲塔を石川達の方へと向ける。
「これでも……喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 ナイトキラーもまた、次の一撃に残ったすべてのエネルギーをつぎ込んだのだ。
 ナイトキラーの砲塔から、強力な荷電粒子が渦巻き状に放射される。
 二つの膨大なエネルギーは空中で激突し、互いに押し合う形となった。
 が、次の瞬間、閃光の波動がナイトキラーの荷電粒子砲を打ち破り、その顔面へと炸裂する。
「ぐおおおおおおおおおおっ!」
 ナイトキラーはその威力に全力で耐えていた。
 一方で、石川達も押し切ろうと、さらに魔力を込める。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ついに、閃光の波動がナイトキラーの防御力を打ち破った瞬間だった。
 三色の光は、ナイトキラーの頭部を吹き飛ばして、結界の外まで飛んでいく。
 頭部を失ったナイトキラーの巨大なボディはすさまじいスパークの後、大爆発を引き起こした。
 爆発の中で、あの邪悪な黒い意志がバラバラに散っていくのを石川達は見た。
「魔衝騎士……」
 心配そうに石川が呟く。
 が、次の瞬間、ナイトキラーがいた場所から無数の光球が飛び出した。
 その中には、魔衝騎士たちや四次元ナイトが五体満足な姿で浮かんでいる。
「ああっ!」
 三人の顔がパッと明るくなる。
 無数の光球は、三人を祝福するかのように、その周囲を飛び回っていた。




~つづく~

 今日はアメブロの方に、昨日買ってきたスタジオシリーズ・スカベンジャーの記事をちょっと書いてきました。

 こちらの方は、小説版『ファイクエII』の続きです。

 一応、今回から最終話の予定です。


 では、スタート!


 果たしていくつ目の関門であろう。
 強力な魔法引力がガダメ達とクレイ・タンクを襲い、溶岩の海に引き込もうとしていた。
 以前、石川達が戦ったエセヌ兄弟の魔法を、機械で再現したものだ。
「でやーっ!」
 ガダメが一気にその引力の方向に向かって走った。
「ガダメ、無茶です!」
 だが、ガダメの頭の中では、武術家の本能と言うべき戦闘の勘が告げていた。
 この危機を脱するにはこれしかないと。
「ガダメはん!?」
「クレイ、アーセン、黙って見ていろ!」
 引力により加速がついたガダメは、一気に跳躍する。
 狙いは壁にある引力発生装置。
 一歩間違えれば、目の前にある溶岩の海に叩き落される。
 クレイ・タンクも逃れようと車輪をフル回転させているが、少しも前に進んでいない。
 むしろ徐々に溶岩の海に招き寄せられている。
 その打開策としてガダメが選んだのが、この強攻であった。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ガダメの強烈なキックが引力発生装置にさく裂した。
 バチッ…と火花が散って装置は破壊され、ガダメはキックの反動で一気に溶岩の海を飛び越えた。
「ふぅ……全く、手こずらせおって!」
「これ、いくつ目、だったでしょう!?」
 関門の数は三百を超えたところで数えるのをやめてしまったのだ。
 だが、それらのすさまじさは彼らが負った傷が物語っていた。
「ガダメはん、あれっ!」
 クレイが叫ぶ。
 前方に巨大なドアが見えていた。
「あそこだ! あそこが制御室だ!」
 マージュII世が興奮して叫ぶ。
「分かりました!」
 アーセンが頷き、魔力を集中させる。


 グー・ダッ・ガー・バク・レイ・ゲム!
(大気よ、唸り弾けろ!)


「爆裂呪文・ボンバー!」
 アーセンの爆裂呪文が、ドアを吹き飛ばした。
 一同は制御室の中へと侵入する。
「これが……」
 サクラの目は部屋の中央にそびえる巨大な制御装置を捕らえていた。
「あそこです!」
 オータムとセルペンが頷いて、制御装置に向かって走り出した。
 その時だった。


 ガシャ……


 天井、床、壁……部屋のあちこちからハリネズミのように無数の砲塔が現れて、彼女たちに狙いを定める。
「いかん!」
 マージュII世が叫ぶが、砲塔に気づいていたのは彼だけではなかった。
「やらせぬぞ! クレイ! アーセン!」
「はいな!」
「はい!」
 サクラ達を守るように三魔爪達がその前に立ち塞がった。
「魔界変幻!」
 三人が叫ぶと同時に、彼らの身体が溶けるように混じりあって、瞬時に巨大な三つ首竜が出現していた。
 そう。かつて、石川達を全滅寸前までに追い込んだ、彼ら三魔爪の最強戦闘形態、魔爪竜である。
 魔爪竜は自分の身体を盾として、砲撃からセルペン達を守った。
「ガダメ様! クレイ様! アーセン様!」
「ぬぅ!」
 魔爪竜は闇雲に火を吹き、呪文を唱える。
 瞬く間に前方の砲塔群が吹き飛んだ。
「今だ! ゆけ!」
「分かりました!」
 ガダメの声に、セルペン達は再び走り出す。
 生き残った砲塔群が、次々に彼女達に狙いを定める。
 が、ほとんどが発射の直前に魔爪竜の尾や足の一撃を受けて沈黙した。
「へっ、やらせへんで!」
 突如、床が大きく開き、無数のミサイルが発射される。
「なにっ!?」
 それは正確に魔爪竜とサクラ達に襲い掛かった。
「やれせへんって言うたやろ!」
「クレイ!」
 右腕をムチ状に変化させ、魔爪竜はサクラ達に向かうミサイル群に砲塔の残骸を叩き込んだ。
 ミサイルは次々と誘爆し、彼女たちに被害はない。
 だが、魔爪竜自身はミサイルの直撃を受けて大きく吹き飛ばされた。
 ようやく制御装置に到達したオータム達が振り向く。
「ガダメ、クレイ、アーセン!」
「我らに構うな! 今のうちに装置を逆転させろ!」
「でも!」
「まだまだ、来ますよ!」
 一体どれだけの兵器が仕掛けられているのか、新たな兵器群が次々と部屋のあちこちに顔を出す。
 魔爪竜は制御装置の前に転がり込むと、
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 兵器群に向かって火炎と呪文を叩き込んだ。
 防御兵器も次々と始動し、魔爪竜を狙い撃つ。
 凄まじい死闘が展開された。
「ガダメ様……」
「さ、セルペンさん!」
「こっちだ!」
 流れ弾の飛び交う中、サクラ達四人は制御装置に近づいていく。
「きゃっ!」
 銃弾がかすめ、サクラが眼鏡を弾き飛ばされるが、もはやそんな事には構っていられない。
「ここだ!」
 ようやく制御パネルにたどり着き、サクラとマージュII世は作業を開始した。
「はっ!」
 殺気を感じ、オータムが飛び蹴りを放つ。
 すぐそばまで近づいていたジェネラルが吹っ飛んだ。
 侵入者迎撃用に配置されていたメタルゴーレムやアーマー、ガーディアンなどが次々と現れる。
 石川達からすれば何という事は無い相手だが、彼らよりもレベルに差があるオータム達にとっては、十分な脅威だ。
 メタルゴーレム達は次々とその数を増やしていく。
「やらせないよ!」
「絶対に、サクラさん達を守るですぅ!」
 オータムとセルペンは、必死になってメタルゴーレム達との戦いを開始した。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 魔爪竜も仁王立ちになって、次々と襲い掛かる防御兵器に攻撃を加えていた。




~つづく~

 今回は、小説版『ファイクエII』の続きといきます。

 次回で最終回(最終章)の突入になるかな……?


 なお、前回はコチラ


 では、本文スタート!


 クレイ・タンクとガダメ、アーセンは地下通路を進んでいた。
 その間、サクラたちはマージュII世から制御装置について色々と聞き出していた。
「それじゃあ、その制御装置を逆転させればナイトキラーのエネルギーを吸い取ることが出来るかも知れないのですね」
「そうだ。そのうえ、トゥエクラニフの巨大爆弾も停止するはずだ」
「すべては制御装置をどうするかにかかっているわけですから……」
 オータムがサクラ達の方を向いて言った。
「こうなったら、何が何でも止めるしかないわね、その制御装置とやらを!」
 その時、サクラが気づいて叫んだ。
「クレイさん、前っ!」
「えっ……どわぁっ!」
 クレイもまた前方を見て驚愕する。
 彼の進路上に巨大なドリルが数本現れ、そのままこちらに向けて発射されたのだ。
「あかん、よけきれへんっ!」
 もちろん、粘土で身体が出来ているクレイなら、ドリルをまともに喰らったところで平気だろう。
 だが、中に乗っているサクラ達が無事で済むはずはない。
 しかし、ドリルに気づいたのはサクラだけではなかった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 横にいたガダメが爪を構えて突進する。
 大上段から爪を振り下ろし、飛んできたドリルの先端を叩き落した。
「ガダメはん、ナイスや!」
「ふう、第一関門突破だな……」
 額の汗をぬぐいながら、ガダメが呟いた。
 一行はさらに先を急ぐ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 前方で不気味な地響きが起こった。
「ん!?」
 一同の視界に映ったものは――
「げっ! 巨大岩石!」
 前から、直径十メートルはあろうかと言う巨岩が、数十個単位で転がって来るのだ。
「バック! バック!」
 クレイは慌てて車輪をバックに入れる。
 車輪が逆回転し、クレイ・タンクは猛然と後方に下がっていく。
 ガダメとアーセンも、また背後へと跳躍した。
 だが、彼らが着地した場所の床がいきなり消えてなくなった。
「なにいっ!?」
 同じ場所まで下がってきたクレイ・タンク共々、彼らはその穴に落下していった。
 下はまさに奈落で底は見えない。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 一同がパニックになっている中、冷静なのがアーセンとサクラであった。


 ソル・モー・ベール・ズ!
(羽よりも軽くならん)


「飛翔呪文・フライヤー!」
 フワリとアーセンの身体が宙を舞い、ガダメの身体を受け止める。
 そしてサクラの方も、
「えいっ!」
 そのしなやかな指で、クレイ・タンクの運転席のボタンを押した。


 シュダッ!


 クレイ・タンクの砲塔からワイヤー付きのパンチが発射され、がっしりと穴の淵をつかんだ。
 車体がガクンと振動して、クレイ・タンクが停止した。横に、ガダメを抱えたアーセンが静止する。
「ふぇ~……」
 彼らをかすめて、岩は奈落に落ちて行った。
「第二関門突破」
 オータムとセルペンは顔を見合わせてほっと一息ついた。
 だが、ブービートラップはまだまだ始まったばかりであった。


 それから十数分後。
「第一三五関門突破……」
 まさに秒単位で襲って来るトラップに、さすがの一同もゲンナリしていた。
 心強いのはサクラ達が、いまだ冷静だという事のみである。
「来ました!」
 突然、天井が落ちてくる。
 ご丁寧にも一面するどいトゲを突き出して。
 クレイ・タンクの砲塔とアーセンの極大呪文がほとんど同時に火を噴いた。
 両者の猛射により、ボロボロにひびが入った吊り天井を、ガダメの爪の一撃が粉砕した。
「第一三六関門突破!」
「あともう少しで制御室だぞ!」
 マージュII世が興奮して叫んだ。
「もう制御室までトラップは無いのでしょうな!」
 うんざりした口調のガダメの問いかけに、マージュII世が首を振った。
「いや、まだあと強烈なのが数百……」
「あのなー……」
 何か言い返そうとするガダメをさえぎって、アーセンがまくしたてる。
「ガダメ、ガダメ! 前方に、変な、黒い、霧が、立ち込めて、います!」
「霧!?」
 次の瞬間、クレイ・タンクでこの世の物とは思えない悲鳴が起こった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 サクラ達が三人して抱き合って震えている。
「どうした!?」
「あ、あの霧、よく見てですぅ!」
「あん!?」
「ゴ、ゴ、ゴ、ゴキブリですぅっ!」
「なに!?」
 よく見ると、確かにその黒い霧はゴキブリの大群であった。
 あまりの数に、霧に見えたのである。
「わた、わた、私も、ゴキブリだけは苦手です!」
 さすがのサクラも、これには冷静さを失っていた。
「バカッ、よく見ろ! あれは、全部ゴーレムだぞ!」
「へっ!?」
 ガダメの言う通り、ゴキブリの大群ではなく、ゴキブリの形をした小型ゴーレムの大群であった。
 クレイ・タンクのブリッジでマージュII世が説明する。
「あのゴキブリ型小型ゴーレムは隙間を見つけると侵入して内部から破壊する恐るべき防御モンスターなのだよ。あいつを一体でも侵入させてはならん!」
「ど、どうすんのよ!? あんな細かいのどうやって?」
「こうするのです!」
 叫ぶや否や、アーセンが飛び出した。
「アーセン!?」


 ヴェルク・ゼルク・ヴェイ・ザー・ラッ・デン!
(風の神よ、その息吹で全てをなぎ倒せ!)


「極大真空呪文・タイフーン!」
 アーセンの両腕から、巨大な二つの竜巻が放たれて交差する。
 ゴキブリゴーレムはその竜巻の中に吸い込まれるように突っ込んでいった。
 瞬く間にバラバラになって辺りに飛び散る。
「やるなぁ、アーセンはん」
「ざっと、こんな、ものです!」
 ゴキブリゴーレムは一体残らず破壊されて、床に転がった。
 いや、たった一体……。
「ぎょぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 クレイ・タンクで再び悲鳴が上がる。
 カサカサカサ……と小さい真っ黒な侵入者がブリッジの中を駆け回る。
「で、出たぁ~……」
 迫ってきたゴキブリゴーレムからオータムとセルペンが転がるように逃げ出す。
 だが、そのゴキブリゴーレムを横から無造作に突き出された腕が捕らえた。
「えっ!?」
 サクラである。
「エヘヘヘ……本物じゃないなら、何も怖い事はありません」
「あ、あんた、よく平気ねぇ……」
「ちょうどいい研究材料です。それにしても、よくできてますね。外側だってこんなに柔らかい」
 その言葉にピクリとマージュII世の眉が動く。
「柔らかい!? そんなはずは……」
「でも、だって……」
「まさか!?」


 キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!


 次の瞬間、サクラの悲鳴が超音波となって辺りに響き渡った。
 サクラはその場で泡を吹いて気絶してしまっている。
 ゴキブリゴーレムだと思ったそれは、本物だったのである。



 石九小の校庭では、石川たちがナイトキラーの猛攻に耐えていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ナイトキラーはその巨体を利用して、三人をまさにゴキブリ扱いしていたのである。
「うわぁぁぁぁっ!」
 ナイトキラーが振り回した腕の一撃が、岡野を直撃する。
 岡野は地面にしたたかに叩き付けられた。
「岡ちゃん!」
 慌てて上田が駆け寄り、ヒーレストの呪文をかける。
 だが、そんな上田の息も荒い。
 連続して呪文を使ったため、魔法力を大きく失っているのだ。
「ふはははははははははっ! どうだ、勇者ども! 地下に向かった連中も到底、制御室にはたどり着けまい。どうせ貴様らは皆死ぬ運命なのだ!」
「く、くそう……」
 ブレイブセイバーを構えて、石川がナイトキラーをにらみつける。
 だが、それ以上の事は、今の彼らには出来なかった。




~つづく~

 今日は久々に、小説版『ファイクエII』の続きと行きます。

 では、さっそくスタート!


 陽はとうに沈み、夜があたりを支配していた。
 だが、空は厚い雲に覆われ、星など見ることは出来ない。
 その厚い雲の真下に、今やダークマジッカーの本拠地と化した石九小はそびえ立っていた。


 ビカッ!


 周囲で時々、稲妻がほとばしる。
 稲光に照らされて、石九小を覆う結界の姿があらわになった。
 稲妻は結界の表面に吸収されていく。
 そのたびに、世界のあちこちで異変が起こっていた。
 日本では各地の原発が一切出力ゼロになった――
 アメリカでは、各地に配備した核ミサイルが使用不能に陥った――
 ロシアでは、シベリアの永久凍土が溶け始めた――
 アフリカでは、急速な勢いで砂漠化が進行した――
 中東では、いくつかの油田で石油が枯渇し始めた――
 あらゆるエネルギーが結界に吸収されてしまっているのだ。


「行くぜ、ナイトキラー!」
「覚悟!」
 石川達と三魔爪達は、各々の武器を構えてナイトキラーと対峙する。
 六人はナイトキラーを取り囲むように立つと、一気に跳躍した。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 その巨体からして避けようのない一撃がナイトキラーに迫る。
 が、
「バカめっ!」


 ババババババババババババババババッ!


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ナイトキラーは身体からすさまじい放電をまき散らし、六人を弾き飛ばしてしまった。
 鈍い音がして、一同はそのまま地面に叩きつけられる。
「テッチャンさん!」
「盛彦!」
「倫理さん!」
 セルペン達がそれぞれ叫んだ。


 バキッ!


 左右から剣と爪とで攻撃をかけた石川とガダメだったが、ナイトキラーの腕の一振りで弾き飛ばされてしまった。
 そこを時間差で上田とアーセンの爆裂呪文が襲うが、ナイトキラーも右腕の砲塔から同じく爆裂呪文を放ち、相殺してしまう。
 ともかく、大きさが違い過ぎるのだ。
 十メートルのナイトキラーに対して、普通の小学生である石川達と、三魔爪達も、やや大柄な普通の大人と同じくらいの体格しかない。
 その十メートルの巨体からほとばしるパワーの凄まじさときたら――
「くそっ、なんて強さだ!」
 石川が倒れた拍子に打ち付けた肩をさすりながら叫んだ。
「スパイドルナイトよりも強いかも知れない」
 上田が錫杖を構えたまま呟く。
 岡野も歯噛みする。
「野郎っ!」
 そんな六人の必死の姿をあざ笑うように、ナイトキラーが吠えた。
「ふははははははははははははははははっ! 無駄だ、無駄だ! 往生際の悪い奴らめ!」
 その言葉には余裕すら感じられる。
 ナイトキラーがまた一歩踏み出した。
 ズズッ…と地面がめり込む。
 振動が伝わり、不安そうに見つめる三人の少女たちとマージュII世の身体を揺らした。
「あーあ、私が、私があんなものを作ったからだっ!」
 苦悩の表情でマージュII世が頭を抱えた。
 オータムはそんなマージュII世の襟首をつかむ。
「おい、おっさん! あんたがあのナイトキラーを造ったんだろ! なんか弱点はないの!」
 だが、マージュII世は、
「無い……」
 ガックリした表情であっさりと言ってのけた。
「あれは完璧無比のメタルゴーレムだ。攻撃力も、防御力も、エネルギーのある限り無限大にパワーアップできるように設計されている」
「そんな……」
「今のままではあのナイトキラーを倒すことは不可能だ」
 あたりを沈黙が支配した。
「…………」
 オータムが愕然と手を放し、マージュII世は地面に座り込んだ。
 そんな中、
「あっ!」
 サクラが何事か気づいたようにゴソゴソとポケットをかき回すと、ビー玉大の白い透き通った玉を取り出した。
「なんだい?」
 オータムが不思議そうに玉を見つめた。
 玉はボウッと光り出す。
「!」
「これは、簡単に言ってしまえば魔力探知機です」
「魔力探知機!?」
「みなさんも知っての通り、トゥエクラニフには様々な魔力の流れがあります。それは人に幸運や健康をもたらすこともありますが、中には不幸や障害をもたらすこともあります。特に後者の魔力の流れを避けるために造られたのがこれです」
「それで……?」
「おかしいと思っていましたけど、やっぱり魔力係数の値が異常なんです」
 オータムが怪訝な表情をして、
「なんだって!? どういうことだい!?」
 サクラの手の中にある玉をのぞき込んだ。
「このウスティジネーグにおいて、あれだけの巨体とパワーを維持するとなると、本来ならせいぜい数分が限度のはずです」
「という事は……!?」
「常にエネルギーを補給しているとしか考えられません」
「この結界のせいだよ」
 マージュII世が横から疲れた声で言った。
「えっ!?」
「この建物を包む結界自体が世界中からエネルギーを吸い取ってナイトキラーにエネルギーを無限に供給しておるのだよ」
「だったら!」
 セルペン達が同時に叫んだ。
「この結界を何とかすれば……」
「それは不可能だ」
 と、マージュII世。
「なんで!?」
「この建物の最深部にある結界の制御室に行くまでは何千と言う防御機構を突破せねばならぬ……。とても行きつけるとは思えん……」
 マージュII世が力なく首を振る。
 だが、
「それでも行くしかないわね……」
 オータムはさっきまでと打って変わって不敵な笑みを浮かべていた。
 その言葉に驚いて、マージュII世が顔を上げる。
「サクラ、セルペン、行くよ!」
 オータムの言葉に、サクラもセルペンも元気よく答えた。
「はい!」
「はいですぅ!」
「キ、キミたち……」
「オッサン、いい事を教えてくれたよ! これで希望が湧いてきた!」
「ま、待ちなさい! 制御室にたどり着くのは不可能だと……」
 マージュII世の言葉をさえぎって、オータムは叫んだ。
「いいかい、オッサン! 物事はね、やってもいない内から不可能だなんて決めつける事は出来ないんだよ!」
「どんなことでも、一パーセントでも可能性があるなら、やってみる価値はあると思います」
「それに、このままじゃテッチャンさん達も、トゥエクラニフもなくなっちゃいます! それなのに、諦めて何もしないなんて、セルペン、絶対にイヤですぅ!」
「…………」
 三人の強い意志を感じ取ったのか、マージュII世も立ち上がった。
 そして、意を決したように言った。
「わかった、私も行こう! こうなってしまったのも、元はと言えば全て私に責任がある!」
 さらに、
「その作戦、我らも混ぜてもらうぞ!」
 皆がガダメの方を向く。
「ガダメ様!?」
「このままでは埒が明かん! 少年たち、しばらく三人でここを持ちこたえられるか!? あやつらだけでは心配だ!」
 石川は親指を立てて、それに応える。
「まかせといて!」
 同時に、サクラ達のもとへ、再びチャリオットに変形したクレイが乗りつける。
「嬢ちゃん達、準備できたで!」
「よし、行くよ、オッサン!」
 オータム達はマージュII世を促すと、クレイ・タンクに乗り込んだ。
「おのれっ! そのような事、させぬぞ!」
 ナイトキラーが吠え、クレイ・タンク目がけて動き出す。
 だが、その前に石川達とガダメ、アーセンが立ち塞がった。
「邪魔はさせないぞ!」
 五人は大地を蹴り、ナイトキラーの目をかく乱させるように次々と跳躍を繰り返した。
「ええいっ、うるさいハエどもめ!」
 ナイトキラーは腕を振るって彼らを叩き落そうとするが、俊敏性は石川達の方が上だった。
「やーい、ナイトキラー、どこ狙ってるんだよ!」
「ここまておいで、アッカンベー!」
 石川達の陽動の間に、クレイ・タンクは地下への入り口にたどり着いていた。
「ガダメ様、行くですぅ!」
 セルペンの声を残してクレイ・タンクは地下へと潜って行く。
「よし! 行くぞ、アーセン!」
「はい! あとは、頼みましたよ、少年たち!」
 ガダメとアーセンはナイトキラーの側から離れて、クレイ・タンクを追いかけた。
 背を見せた彼らに向けて、ナイトキラーが構えをとる。
「行かせぬぞっ!」
 右腕の砲塔から、バーネイの呪文を撃ちだした。
 だが、石川達の呪文が真横からそれを相殺する。
「ナイトキラー、お前の相手はおれ達だ!」
 三人は武器を構え、再びナイトキラーに立ち向かっていった。


 次元を超えたトゥエクラニフは暗雲に包まれていた。
 上空に仕掛けられた巨大爆弾のタイマーはなおも作動している。
 トゥエクラニフは最後の時に向かって刻一刻と突き進んでいるのだ。




~つづく~

 さて今日は、小説版『ファイクエII』第8話の続きといきます。

 なお、前回はコチラ


 それでは、さっそく本文スタート!


「我が完全なる誕生のために、六つのクリスタルが必要だったのだ!」
 エネルギーを吸い取られたクリスタルが輝きを失っていく。
「フハハハハハハハハ……! まさか魔界騎士の肉体を乗っ取らずとも、この世に顕現できるとはな!」
 ナイトキラーに乗り移った、黒い炎……その正体は、かつてスパイドル軍の面々や、マージュI世に取り憑いていた悪意と同種のものだったのだ。
 ただ、彼らに取り憑いていた悪意にそのものの『意思』が存在しなかったのに対して、今回の『悪意』には固有の自我ともいうべきものが芽生えていたらしかった。
「く、くそっ!」
「まさか、そんな……」
 石川達の背に冷たい物が走った。
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
 杖をつきながら、ようやく校庭までたどり着いたボロボロのマージュIII世もまた、ナイトキラーの姿を見るなりその場に倒れ込んでしまう。
 人の心の奥底に棲む原初の恐怖を呼び覚まされてしまったかのように。
 対照的にマージュII世は感動に身を震わせていた。
「オウッ! 主よ、見事なお姿です! その力を持ってすれば世界を手中に収めるなど容易い事!」
「フフフ……お前には随分と世話になったな。ご苦労であった」
「いえ、そのようなお言葉、なんと勿体ない」
「だが、もう用はない」
「はっ!?」
 マージュII世の目が驚愕で見開かれた。
 ナイトキラーの巨大な手が振り下ろされる。
 すさまじい突風が巻き起こり、マージュII世は吹き飛ばされた。
「うわーっ!」
 そのまま大地にしたたかに叩きつけられる。
「ちょっと、大丈夫!?」
 石川が駆け寄ってマージュII世を抱き起した。
 その拍子に仮面が外れ、マージュII世の素顔が現れる。
 その顔は、かつて石川達が対峙したマージュI世によく似た青年だった。
 その顔つきが穏やかになっていく。
 マージュII世は意識を取り戻し目を開けた。
「わ、私は何を……」
 目の前にそびえ立つナイトキラーに気づいて叫んだ。
「あれは……ナイトキラー!」
「おい、どうなってるんだ! あいつは一体なんなんだ!?」
「わ、私は……そうだ! 私は実験の最中だったんだ!」
「実験!?」
「それがあんな……」
 マージュII世は呆然と語り始めた。


 マージュII世がその巨大メタルゴーレムの製作に取り憑かれたように没頭したのは、彼の持つ独自の正義感からであった。
 彼は国家間の利害解決手段としての武力行使、すなわち戦争が嫌いであった。
 いや、むしろ憎んでいると言っていい。
 それは彼らマージュ三兄弟の両親が、大昔に魔界で起きた大戦争で死んでいることに起因していた。
「この世から戦争をなくす」
 やがてそれこそが、魔界騎士としての地位と天才的な頭脳を持つ自分に与えられた使命だと思うようにまでなっていた。
 ところでマージュII世は甘い理想主義者などではなく、冷厳な現実家でもあった。
 彼が戦争をなくすための手段として選んだのは、世界的な平和運動などではなく、既存のすべての兵器を越えた、究極的な抑止力の開発であった。
 すさまじいまでの物理的なパワーと、それを維持する恒久的なエネルギー供給。
 開発の主眼はここに置かれた。
 その結論として生み出されたのが巨大メタルゴーレム『ナイトキラー』と、世界を構成する六つの元素を圧縮した六つのクリスタルであったのだ。
 組み立ての完了したナイトキラーを見上げながら、マージュII世は呟いた。
「これが完成すれば人類は今までに無かった力を得ることになるだろう。そう、神にも悪魔にもなれる力を……」
 マージュII世の手がコントロールパネルにかかった。
「そのためには強力な力場を封じ込めた動力源が必要なのだが……」
 メインスイッチをオンにする。


 ウィィィィィィ……


 かすかな音を立てて、ナイトキラーの魔力炉に光が走った。
 だんだんと光は強くなり、やがてスパークを生じさせる。
「今度こそ成功してくれよ」
 スパークは激しくなり、中央に怪しげな闇の点が出現した。
「いいぞ、いいぞ……」
 この漆黒の闇こそ、すさまじいまでの質量を秘めた力場となるべきものであった。
 闇は徐々に大きくなっていく。
 が、異変はその時起こった。
 かなりの大きさになった闇の内部で、人影のようなものが揺らめいたのだ。
「な、なんだ!?」
「フハハハハハ……礼を言うぞ! 暗黒の死の空間をさまよう我をよくぞこの世に顕現させてくれたわ!」
「!」
 闇がカッと光り、スパークが放たれた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 マージュII世はその光をまともに浴び、コントロールパネルに突っ伏した。そして、
「光栄に存じます」
 先ほどまでとは別人としか思えない、悪意に満ち溢れたマージュII世の声が響いた。
 マージュII世が静かに顔を上げると、その瞳は狂気の色に輝いていた。
「まずはトゥエクラニフの滅亡……そして、我が完全なる誕生のためにクリスタルを集めるのだ!」
 顕現した“悪意”の言葉に邪悪な笑みを浮かべたマージュII世は静かに頷いた。



「私は悪魔を呼び出してしまった……」
 マージュII世が呆然とつぶやく。
「いや、悪魔よりももっとタチの悪い奴だ!」
 キッとナイトキラーを睨みながら、石川が叫んだ。
「クククク……」
 ナイトキラーの嘲笑が響く。
「ほざくがいい、異世界の勇者ども! まずはお前らを料理してやろう! その次にこの世界の奴らに真の恐怖を教えてやるとするか」
「トゥエクラニフはどうなるのよ!」
 オータムが叫んだ。
「トゥエクラニフ!? あとしばらくでそんなものは存在しなくなる……木っ端微塵となってな!」
「そんな……」
「お前の思い通りにはさせないぞ!」
 石川が怒りを込めて叫ぶ。
 それに対してナイトキラーは高々と笑いを響かせた。
「フハハハハハハハハハハ! 我に逆らおうとは愚かな者どもよ! よかろう、先に貴様らを始末してくれるわ!」
 ズシンとナイトキラーが一歩を踏み出した。
「くっ……」
 ナイトキラーから目をそらすことは無いものの、石川達の頬を冷たい汗が流れて行った。




~つづく~

 サイトを更新しました。

 今日は『文庫本コーナー』です。


 本文の方は、小説版ファイクエIIの続きと行きます。


 では、さっそくスタート!


「ううむ……」
 四次元ナイトが倒されたという報を聞き、表情こそ仮面に隠されているものの、マージュII世の顔にはわずかに動揺が現れていた。
 彼はマージュII世配下のメタルゴーレムの中でも、最高の性能を誇っていたのだ。
 それが敗れたとなれば……。
「やはり、一筋縄ではいかぬか」
 と、その時である。
「兄上~っ!」
 この場には似つかわしくない、無邪気な少年の声が響いた。
 マージュII世が振り向くと、彼によく似たローブに身を包んだ、小柄な人物がそこに立っていた。
 同じく仮面をかぶっているが、その表情は、三日月型の口に、細い線のような目。
 例えて言えば、笑顔を浮かべた土偶のような表情が描かれていた。
「III世か……」
 そう。彼の名はマージュIII世。
 マージュ兄弟の末の弟であり、今回の兄の野望に同行して、現実世界に来ていたのだ。
 なお、『○世』という呼称は、別に親子に限って使うものでもないので(ほとんど親子間で使われることが)、彼ら三兄弟がそれぞれI世、II世、III世を名乗っていても一応、間違いではない。
「兄上、四次元ナイトが負けちゃったんでしょ? だったら、今度はこのボクが行ってもいいかな!?」
「お前が……?」
 マージュII世は、仮面の奥から不審な目を向けた。
 実の兄弟とあって、彼もIII世の力量は熟知している。そして、性格の方も。
 魔界騎士の地位ではあるものの、見た目通り、III世はまだ無邪気な子供だ。さすがにそれなりの能力は持っているが、その性格から、本気で異世界の少年たちを倒そうとするかは正直怪しかった。
 だが、逆を言えば――
 子供と言うのは残酷だ、とはよく言うが、基本的に少し違う。
 子供は倫理観というものがまだしっかりと固まっていないのだ。基本的に子供時代とはその倫理観を養う時期である。
 その子供時代のまま魔界騎士になり、肉体的にも精神的にも幼いままのIII世なら、あるいは……。
「まあ良いか。いいだろう、III世。行ってあやつらと遊んでやれ」
「はぁ~い、行ってきま~す♪」
 嬉しそうに、マージュIII世は部屋から駆け出て行った。
 それを見送りながら、マージュII世はやや疲れたようにタメ息を一つ。
「まぁ、うまくいけば御の字だろう……」


 一方、四次元ナイトを撃破した石川達は、クレイ・タンクで先を急いでいた。
「だいぶ時間をくっちゃったからな……。急がないと」
 そんな石川達を待ち受ける一台の黒塗りのマシンがあった。
 そのシルエットはほとんど大型トラクターのそれである。
「フフフ……この黒魔術号で体当たりを喰らわせてやる! 覚悟しろよ!」
 操縦席に座っているのはマージュIII世だ。
「来たか……発進!」
 レーダーにクレイ・タンクの影が映ったのを確認すると、マージュIII世は黒魔術号と呼ばれたメカを発進させた。
 前方からクレイ・タンクがやって来る。
「わはははははははは!」
 まさにぶつかる! と思われた刹那、クレイ・タンクはすぐ手前のわき道にそれて行ってしまった。
「あれ!? あれれ!?」
 肩透かしを喰らった格好の黒魔術号はそのまま空しく直進する。


 クレイ・タンクの中で石川は何気なく背後を振り返っていた。
「何かいたみたいだったけど……」
「気のせいでしょ?」
 上田が応えた、その時だった。
「うわわわわっ!」
 激しい衝撃がクレイ・タンクを襲う。
「な、なんや!?」
「どうやら、後ろから、攻撃を、受けた、みたいです」
「いっ!?」
 もちろん攻撃してきたのは黒魔術号だ。
「わはははははははは! 逃がさないよーっ!」
 黒魔術号のコクピットでは、半分プッツンいった様子でマージュIII世がメチャクチャに操作パネルを叩いていた。
「死ねっ、死ねっ、死ねっ!」
 黒魔術号の前部がパカッと開き、巨大なトンカチを持った手が飛び出てきて、クレイ・タンクに殴りかかる。
「うわっ、どわっ、のわっ!」
 クレイは巧みな操縦で、必死にその攻撃を避けていた。
「な、なんとか後ろを攻撃せねば!」
「それでは、私が!」
 アーセンがクレイ・タンクの屋根に向かって行った。
 黒魔術号の攻撃はますます激しくなる。
「わははははははははっ! 今度はこれだ!」
 マージュIII世がボタンを押すと黒魔術号のあちこちから千手観音のように無数に手が飛び出した。
 ヌンチャク、刀、鎌、槍、棍、トンファー……どの手も強力な武器を持っている。
「おら、おら、おら、おらっ!」
 そのすべてが一気にクレイ・タンクに襲い掛かってきた。
「ええい、アーセン、まだか!」
「行きますよ!」


 ドゴォォォン!


 アーセンが極大爆裂呪文・ボンベストを放った。
「ちょちょちょ、飛び道具なんてヒキョーだぞ!」
 マージュIII世の叫びも空しく、黒魔術号の前面にまともに風穴が開く。
「あれ~~~~~~~!」
 黒魔術号は爆発し、マージュIII世も悲鳴を残したままどこかに吹き飛ばされていった。


「オウ、ジーザス! やはりあいつでは無理だったか……」
 一連の光景を見て、さすがのマージュII世も頭を抱えた。
「かくなるうえは……」
 マージュII世は椅子から立ち上がると、ドアの方に向かって歩いて行った。


 黒魔術号を撃退した一同は、ついに屋上に繋がる階段の所に到達していた。
「この先に、マージュII世が……」
 決意の表情で、石川がゴクリと唾をのむ。
 その顔には緊張のためか、汗が浮き出ていた。
 九人は慎重に、階段を上がっていく。
 そして、階段を登り切り、ドアを開けて部屋に一歩踏み出した時だった。
 突然、振動が襲い、石川達のいる地面はエレベーターのように下がっていく。
「うわっ!」
 加速がつき、一気に千メートルを下がり切った。
「ここは!?」
 石川達の降り立った場所はあの地下の大ホールであった。
「フハハハハハハハハ……ウエルカム、異世界の小僧ども!」
 魔法人の真ん中にある魔炎台の前から、ゆっくりと大柄な人影がこちらに歩み寄ってきた。
「お前がマージュII世か!?」
 石川の叫びに、マージュII世は悠然と頷いた。
「そーとも! 私こそ、現在ダークマジッカーを取り仕切る魔王にして、今世紀最大の大天才、マージュ・ギッカーナII世だ。キミたちがなかなか来ないので、こちらから招待させてもらったよ。まあ、ちょっとばかり予定が変わったこともあってね……」
「なにを!」
「さてと、少年たち。トゥエクラニフとウスティジネーグを救いたければ六つのクリスタルをこちらに渡してくれたまえ」
 だが石川はいきり立って叫んだ。
「嫌だ! お前の命令なんか聞くもんか!」
「ふむふむ……では、これを見たまえ」
 マージュII世が軽く手を上げた。
 ボーッと天上あたりの空間が揺らめき、ぼやけた映像が浮かび上がる。
「ブクソフカ……」
 サクラ達が叫ぶ。
 大陸の上空では黒い球体のタイマーが休みなく動いているのが分かった。
「今ならまだ間に合うがね」
 マージュII世が余裕の笑みを浮かべる。
「くそう……」
 石川達は悔しそうに拳を握り締めるが、マージュII世にクリスタルを投げつけた。
「フハハハハハ……! ついに六つのクリスタルが我が手に落ちたぞ!」
 クリスタルを魔法陣にセットしたマージュII世が、喜びの声を上げた。
「おい、マージュII世! クリスタルを集めてどうするつもりだ!」
「フフフ……それは主(しゅ)に聞くことだな」
 マージュII世は魔炎台の方に向き直って叫んだ。
「主よ、揃いましたぞ! ここにすべてのクリスタルが!」
 魔炎台から黒い炎が高々と燃え上がった。
 <待ちかねておったぞ、マージュII世! さあ、ナイトキラーを出すのだ!>
「はっ!」
 マージュII世がコントローラーを取り出してボタンを押した。
 天井が開き、大ホールそのものが浮上を始める。
「何が始まるって言うんだ!?」
 大ホールは石九小の校庭へと出現した。
 目の前にトゥエクラニフ化した校舎がそびえている。
「ここは……」
「いでよ、ナイトキラー!」


 グガガガガガガガ……
 バリバリバリ……
 ギュォォォォォォ……


 空間が揺らぎ、巨大な黒い穴が上空に現れる。
 中から全高十メートルほどのメタルゴーレムが出現した。
「なんてでかいメタルゴーレムなんだ!」
「フハハハハハハ……私の開発した究極のメタルゴーレム、ナイトキラーだ!」
 <そして、我が肉体でもある!>
「えっ!?」
 石九小の結界に集中するエネルギーがひときわ強くなった。
 それと呼応した魔法陣が、そして六つのクリスタルが光り出す。
「なんだ!?」
 <我に力を!>
 黒い炎が天を焦がすほど高々と燃え上がった。
「これは!」


 ビガッ!


 六つのクリスタルからエネルギーが放出され、魔法陣へと集まる。
 エネルギーは黒い炎と共に一挙に上昇し、そのままナイトキラーの頭部に吸い込まれていった。
「誕生、ナイトキラー!」
 邪悪な声があたりに響き渡り、今、生命を得たナイトキラーが満足そうに両手を大きく広げた。
 ナイトキラーから放射された悪の喜びが周囲に満ち溢れた。




~つづく~

 サイトを更新しました。

 今日は『文庫本コーナー』です。


 それからアメブロの方にも、久々に『幻想生物百科』を投稿してきました。


 本文の方は、小説版『ファイクエII』の続きです。

 前回はコチラ


 それでは、本文スタート!


「どうやらここまで来そうだな。ならばせいぜい歓迎してやるとするか。ホホホホホホホホ!」
 不気味な森の出口で、高い崖の上から様子を窺っていた男が笑い声をあげる。
 それは、先ほどマージュII世の背後に控えていた、あの男だ。
 全身をトゲトゲした鎧に身を包み、手には真っ黒な剣と斧を握っている。
 ヘルメットに覆われたその頭部の奥では、メタルゴーレム特有の無機的な瞳が光っていた。


「はあ、はあ……。上ちゃん、もう追いかけて来ない?」
「うん、大丈夫みたい……」
 息を切らせながら、一同は森の出口へと歩いて行く。
「ん、ここは……?」
 森の出口。それは、一面に人骨が敷き詰められた、骨の野原であった。
「ほ、骨だよ! これ全部!」
「マスター、あれを見て下さい!」
 驚く上田に、錫杖が前方を指し示す。
 三人が前方を見ると、空中に人骨が集まっていき、巨大な頭蓋骨が現れたのだ。
「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 悲鳴を上げる三人に向かって、頭蓋骨はカチカチと音を鳴らしながら突撃してきた。
「危ない!」
 慌てて伏せる三人の頭上を、頭蓋骨は通り過ぎていく。
 空中で反転した頭蓋骨は、再び石川達へと向かって行った。
「んなろーっ!」
 岡野は拳に気を溜めると、頭蓋骨に向かって放つ。
「昇竜波!」


 ズォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!


 龍の形をした気を受けた頭蓋骨は、バラバラの破片に砕け散る。
 その降り注ぐ破片の向こうに、人影が姿を現した。
「フホホホホホ! 貴様らが勇者の小僧どもだな!」
「おい、どうやら敵さんのお出ましらしいぜ!」
 いち早く気が付いた岡野が、そちらの方を向いて叫んだ。
「んっ!?」
「私はマージュII世様の腹心、四次元ナイト!」
「四次元ナイト!?」
「ヒョーッホッホッホ! 覚悟してもらおう!」
 四次元ナイトは、両手に持つ剣と斧を構えて叫んだ。
 対して岡野も叫び返す。
「ふん! 腹心だか副都心だか知らないが、今やっつけてやるから覚悟しろ!」
「上ちゃん、おれ達も!」
「うん!」
 三人はそれぞれの武器を構えると、四次元ナイトと真っ向から対峙した。
「行くぞ、四次元ナイト!」
 ブレイブセイバーを正面に構え、己を見据える西川に対して、四次元ナイトは余裕の笑みを浮かべる。
「ふっふっふ。慌てるな、私の力を見せてやろう! ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」


 ビュィィィィィィィィィィ……


 四次元ナイトの目が怪しく光ると、周囲の骨の山が揺れ始め、中から先ほどと同じ巨大な頭蓋骨が無数に飛び出してきたのだ。
「なんだ!?」
「二人とも、気を付けて! やっぱりこいつ、今までの敵とは格が違う!」
 額に汗をにじませ、上田も錫杖を握る手に力を込めた。
 岡野の方は、その威圧感をものともせず、拳を構えた。
「へっ、何をグズグズしてんだ! こんなもんコケ落としよ!」
 そのまま頭蓋骨の群れに飛びかかるが、頭蓋骨たちは素早く八方に散り、岡野の拳は空しく宙を舞う。
 間髪入れず、岡野は頭蓋骨の体当たりをまともに受けていた。
「ぐわっ!」
 吹っ飛ばされた岡野は、背中から地面に激突する。
「岡ちゃん! よーし、ならば!」
 石川はブレイブセイバーを収め、素早く印を組む。


 ゼー・レイ・ヒーラ・ヴィッセル!
(閃光よ、閃け!)


「閃光呪文・バーネイ!」
 石川の掌から、頭蓋骨たちに向かって放射状の火炎が発射される。
 だが、頭蓋骨たちは同じように火炎を避けてかわすと、あざ笑うかのようにカタカタと骨を鳴らした。
「じゃあこれならどうだ!」
 今度は上田が素早く呪文を唱え、ボンバーの光球を放った。
 これまでと違い、広範囲を攻撃できるこの呪文であれば、避けようがないはずであった。
 しかし、頭蓋骨たちは寄り集まって、石川達と四次元ナイトとの間に壁のように塞がったのだ。


 ドガドガドガァァァァァァァァァァァァァァン!


 爆煙が晴れると、その向こうから無傷の四次元ナイトが現れる。
 ボンバーの呪文はいくらかの頭蓋骨を砕いたものの、完全に一掃してしまう事は出来なかったのだ。
 全く攻撃を届かせることが出来ない三人を、四次元ナイトはからかうように笑った。
「フオーホホホ! どうした?」
 それを見て、上田が悔しそうに拳を握る。
「くっそー……」
「くそです」
 錫杖も主人と同じように、悔しそうに四次元ナイトを睨みつけた。
「それだけか? ならば今度はこちらから行くぞ!」
 四次元ナイトの声を合図に、先ほどを上回る数の頭蓋骨が、三人に襲い掛かった。
 素早い上に数が多い頭蓋骨たちの攻撃を、石川達は防御するので精いっぱいだ。
 致命傷になる一撃こそ受けていないものの、何度も頭蓋骨の体当たりを受け、徐々に体力を削られていく石川の視界はクラクラと揺れていた。
「う~、頭がグルグルする……」
 そんな石川を叱咤するように、上田が体勢を立て直して叫ぶ。
「テッちゃん、まずあの骸骨を何とかしないと駄目だよ!」
「動きが速すぎるよ! こんな時、ガダメ達が居たら……」
 ガダメを召喚する眼球を握って、石川がうめいた。
「やってみよう、テッちゃん! もしかしたら、ガダメを呼べるかもしれない。このまま戦ってても、やられちゃうだけだよ!」
「よーし……。来てくれ、ガダメ!」
 意を決して、石川は眼球を空中に投げ上げた。


 シュパーン!


「タンガンガ~ン!」
 光と共に、ガダメが石川達のいる空間に姿を現したのだ。
「ガダメ!」
「やった!」
 ガダメの方も、石川達の姿を認めると、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「おお、少年たち! 無事だったか!」
 しかし、いつまでも再会を喜んではいられない。
「ふん、生意気な!」
 四次元ナイトは、今度はガダメに向かって頭蓋骨の群れをを放つ。
「むむっ!」
 頭蓋骨に気づいたガダメは、クローを装着すると、飛来してくる頭蓋骨を次々と叩き落していった。
「つあっ! とりゃっ! でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」


 ドガッ! ズガッ! バキィィィィィィッ!


「テッちゃん、今のうちに!」
「よーし!」
 石川はブレイブセイバーを構え、四次元ナイトへとまっすぐ駆けて行った。
「てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 が、そのまま剣を振り下ろす石川の姿がフッと消えたかと思うと、その格好のまま岡野の眼前へと現れたのだ。
「いっ!?」
 石川は焦るが、その勢いは止まらない。
 ギョッとなった岡野は、慌てて籠手でその刃を受け止めた。周囲に耳障りな金属音が響き渡る。
「こっ、こら! おれを斬ってどうするんだよ!」
「ヒョーホホホ! 驚いたか小僧!」
「一体どうなってるんだ!?」
 何が起きたのか分からない石川に、上田が言った。
「あれはテレポートだよ!」
 どうやら四次元ナイトは名前の通り、次元を歪める能力を持っているらしい。
 骸骨たちを操っているのもその超能力の応用なのだ。
「その通り! 貴様の攻撃など、私の四次元能力で全てかわしてくれる!」
「何を!」
 再び石川が斬りかかるが、今度は骨の山の眼前にテレポートさせられてしまった。
 正面からまともに山に激突し、石川は鼻血を出しながらひっくり返る。
「はにゃ、ほへ……」
「私の力を思い知ったか!?」
 めまいを起こしながらも、上田と岡野に支えられながら、石川はふらふらと立ち上がった。
「くそ、どうしたら……」
「テレポートより速くあいつに攻撃できたら……」
「そうか、メテオザッパーか!」
 反撃の糸口を見つけた三人は、四次元ナイトの方に向き直るが、四次元ナイトの方も鋭い目つきで石川達を見据えていた。
「私の真の力を見せてくれる。ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」
 すさまじい圧力が四次元ナイトの身体から放射され、三人の身体にはそれまでの何倍ものGがかかっていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 次元を歪めて相手に通常の何倍もの重力を加える、四次元ナイトの必殺技だ。
 そのすさまじい重力に、地面がひび割れ、石川達の身体も地面にめり込んでいく。
 もう普通に立ってもいられない程だ。もし、トゥエクラニフの強化された身体能力でなければ、三人の身体は、とっくの昔に卵のようにひしゃげてしまっていただろう。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 冷や汗を浮かべながら、三人は必死に高重力に耐えている。
「ここまでだな。でやっ!」
 三人が動けなくなったのを見届けると、四次元ナイトは重力波を解いて、とどめとばかりに手にしていた剣を投げつけた。そのまま重力波を使い続けていれば、彼自身の剣も重力にとらわれて石川達まで届かないからだ。
 だが、とどめのはずのこの一撃は、逆に三人に逆転のチャンスを与えることになった。


 ガキィィィィィィィィィィィィィィン!


 どこからか飛んできたクローに弾き飛ばされ、四次元ナイトの剣が地面に突き刺さる。
 続いて剣を弾き飛ばしたクローも、そのすぐそばの地面に刺さった。
「おや?」
 四次元ナイトがクローが飛んできた方向に目をやると、そこに立っていたのはガダメだった。
 四次元ナイトが石川達に気をとられているすきに、頭蓋骨を全て片付けてきたのだ。
「少年たち! 今の内だ! さ、早く!」
「ガダメ! よ~し!」
 石川の内部に宇宙のイメージが浮かぶ。
「超新星呪文・メテオザッパァァァァァァァァァァァァッ!」


 ズゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!


 石川の右腕から、無数の流れ星のように虹色のエネルギーが飛び出す。
 メテオザッパーのエネルギーは、真っ直ぐに四次元ナイトに向かっていく。
「なんと!」
 避ける事もかなわず、四次元ナイトは正面からメテオザッパーにぶち抜かれる。
「ぐあああああああああああああああああああああああっ!」


 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!


 次の瞬間、四次元ナイトのボディは大爆発を起こしていた。
「やったやったー!」
 自分たちの勝利に、上田と岡野も、軽くなった身体で飛び跳ねて喜ぶ。
 四次元ナイトが倒されたことで、周囲の空間も、徐々に元の石九小のダンジョンへと戻っていった。
 彼らを出迎えたアーセンが、嬉しそうにほほ笑む。
「おお、あなた達、無事だったのですね!」
「いきなり自分らが消えてもうた時には驚いたで。おまけに、ガダメはんまで消えてまうんやもんな……」
 石川達は、ポリポリと頭をかくと笑みを返して言った。
「あはは、ごめんごめん。でも、もう大丈夫! さあ、先へ進もう!」
 一同は頷くと、再びマージュII世の待つ屋上へと歩き出すのだった。




~つづく~

 こんばんは、アカサカです。


 最近、インフルが流行ってますね。ウチの職場でも、少なくとも今の時点で四人が順繰り順繰りにインフルに……。

 今日も一人、インフルで早退しまして

 皆様もどうぞお気を付け下さい。


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 私もアルコールで、喉の消毒をしようと思います(待てやおい)。


 さて、タイトル通り、ティグレたちの設定画で取り敢えず正面図が清書までしたので、公開しておきたいと思います。


2020-1-22-2.JPG


 まずはティグレ。

 名字の『ザンナ』はイタリア語で『牙』の事で、名前を和訳すると『虎・牙』になります。


 まだ表情集は描いてませんが、名前の通りに八重歯を入れようかと思ってます。


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 お次はリーリオ。

 前回書いたように、足を露出したデザインにしましたが、結果的にはこっちにして良かったかなと思ってます。

 名字の『ペータラ』はポルトガル語で『花びら』の事で、名前は『ユリ・花びら』になります。


 設定画に書いてある通り、胸部の文字はトゥエクラニフ文字で「武」です(「武」→「ぶ」→「BU」)。


2020-1-22-4.JPG


 でもってブラウ。

 獣人系のデザインはあまり描いた事が無いので、自分でも新鮮でした。

 目を描いたらちょっとアヌビスっぽくなったかなぁと……。


 因みにコボルドの肌は犬のように体毛が生えているわけではないようなので、地肌になります。

 年齢は『?歳』にしていますが、人間年齢に換算するとティグレ達と同年代(ちょびっとだけ上くらい)を意識しています。


 と言ったところで、今日はこの辺で。

 どうも。ではでは。

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 こんにちは、アカサカです。

 サイトを更新しました。今日はひっっっさびさに『テレビ雑誌コーナー』です。


 まだダイジェストが1、2話、ヒカリアン側のキャラ紹介は作りかけですが、『超特急ヒカリアン ストーリーダイジェスト』を追加しました。


 ヒカリアンと言えば、Wikipediaの『超特急』の記事、今日、久々に見てみたんですけども、「これ絶対ウチのブログから引用しただろw」って部分がチラホラあって笑いました(苦笑)。


 まぁ、サイトのアクロモンスターのページの時といい、どこかで人の役に立ってるならいいんですけどね。


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 さて、タイトルにもある通り、まだラフ状態ではありますが、ティグレとリーリオのキャラ設定を描いたので、アップしたいと思います。


2020-1-6-1.JPG


 まずはティグレ。

 石川達と違ってトゥエクラニフ生まれの人間なので、服装はルスト達と同じく、普通にファンタジー風です。

 また、15歳という設定なので、石川達やルスト達よりも年長に見えつつも、幼さがまだ残る顔立ちを意識してみましたが、いかがでしょうか?


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 ゲーム画面でのキャラクターは、画像の『No.2』。

 今までとは逆に、こちらの画像を基にしてキャラクター設定を描きました。


2020-1-6-3.JPG


 続いてリーリオ。

 簡易的なプロテクターを付けた拳法家のイメージで……。


2020-1-6-4.JPG


 ゲーム画面では、画像の『No.8』です。

 画面では生足っぽくも見えるのでどうしようか迷いましたが、ズボン着用のデザインにしました。


DualZenon-28.JPG


 と言ったところで、今日はこの辺で。

 どうも。ではでは。

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 こんにちは、アカサカです。

 今日は久々に、アメブロの方にも新しく買ったゲームの記事を投稿してきました。


 さて、タイトル通り小説版『ファイクエII』がちょっと滞ってますが(プロット自体は出来てるんですけども)、その代わり(?)『ツクール2』版ファイクエはちょっと進めました。


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 ハサキヒオ大陸(2番)とブクソフカ大陸(3番)がちょっと大きすぎたので、町などの配置を気にしつつ、少しコンパクトにしました。


 1番が、ティグレたちが住んでいる大陸です。


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 で、前回の『試練の洞窟』と関所の間に、中間地点となる村を作りました。


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 フィールドではこんな感じ。


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 内部マップはこんな感じです。

 名前は『道中(どうちゅう)』からとりました(爆)。


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 それから、関所の先にある洞窟。

 最奥には、別の大陸へのワープゾーンがあるという仕組みです。


 名前はポルトガル語で「旅」を意味しています。


2019-12-25-6.JPG


 入口はこんな感じです。


2019-12-25-7.JPG


 内部はこんな感じです。


 この『ツクール2』までは、マップのBGMはマップごとではなくて『マップの属性』ごとに決める方式なので、町や城は『いし』でマップを造り、フィールドからマップに入った瞬間、町や城のBGMになるようにイベント命令で操作しています。

 と言うのもベースがダンジョン向けのBGMでして、たとえイベントで変更したBGMも戦闘が発生すると、元のBGMに戻ってしまうので、であるならば戦闘がほぼ無い町や城の方でBGMを変えた方が手間がかからないためです。


 因みに『Super Dante』ではダンジョンの属性は『しろ』『まち』『ダンジョン』の三つで、パーツの形状はそれぞれ独立していますが、『ツクール2』では『こおり』『つち』『き』『いし』『そと』の5種類で、各パーツは『そと』以外は全て同型になっています(机など、小物の模様などは違いますが)。


 先日紹介したブラウは、ここで仲間になるイベントを作ろうかなぁとも思っています。


2019-12-25-8.JPG


 んで、ワープゲートをくぐると……。


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 新天地に到着。

 ここはどこかと言いますと、


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『1』の舞台であり、『3』『5』の舞台とつながっているハサキヒオ大陸です。

 画像に映っているのはハテナ町。


2019-12-25-11.JPG


 さて、それでは最初の大陸についてです。

 まだ大陸名は決めていませんが、『1』がコメッサの町、『2』がアヴェントラ城、『3』が試練の洞窟、『4』がドウチの村、『5』が関所、『6』がヴィアジャルの洞窟です。


2019-12-25-12.JPG


 ついでにハサキヒオ大陸も。

 上の方が切れちゃってますが、『1』がヴィアジャルの洞窟(ハサキヒオ側)、『2』がハテナ町、『3』がキノコノ村、『4』がおかし村、『5』がジプサン城で、矢印の上にスタート町があります。


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 と言ったところで、今日はこの辺で。

 どうも。ではでは。

 サイトを更新しました。

 今日は『ホビー雑誌コーナー』です。


 さて、ブログのネタが浮かばなかったので(えー)、今日は例のツクール2版『ファイクエ』のネタで行きたいと思います。


 まずはプレイヤーキャラについて。


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 ジン

『ファイクエ5』シリーズの主要キャラの一人です。昔、ツクール2でファイクエの外伝を作った時、このグラフィックを使ったので、今回もそれにしてみました。


 ステータスは上田を参考に設定しなおして、スポット参戦キャラにして、『5』より後の時間軸の予定なので、初期レベルも高めにしようと思っています。


2019-12-21-.2JPG


 お次はゴボテン

 もともと『ごぼてん』が、旧ツクール2版ファイクエが初出のキャラなので、作り直してみました。

 ステータスも新規です。


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 そして、コボルドの冒険家、ブラウ

 ティグレたちと腕試しで戦った後、仲間になる展開を考えています。


 名前はドイツ語で『青』を意味する「ブラウ(blau)」からとりました。

 由来は「コボルド→コバルトの語源→コバルトブルー→青」てな具合で。


 性格は一人称が「拙者」な時代がかったキャラにしようかと思っていますが、はてさて……。


2019-12-21-4.JPG


 因みにモンスターとしての戦闘データ。

 上述のステータスを反映しています。通常のコボルドの攻撃に加え、呪文なども使ってきます。


 攻撃力などは『試験官』より高めですが、逆にHPは低いです。


2019-12-14-4.JPG


 なお、通常のコボルドはこっち。

 グラフィック自体は同じです。おかげで歩行グラフィックとカラーリングで差が生まれてしまいますが(『2』は戦闘画面のモンスターグラフィックしかカラーバリエーションが無い)、まぁ、ドラクエ5の仲間モンスターも戦闘画面と歩行グラフィックでカラーリングが違うなんて(スーファミ版では)ざらでしたし……。


 あと、民家の扉のイベントなんかもちょこちょこ追加しました。


 プレステの『3』と違って、この『ツクール2』には「イベントのグラフィック変更」の命令が無い(どうしてもやりたければ、スイッチとイベントの2ページ目、自動開始を組み合わせるしかない)ので、調べた時に、効果音と共に「イベント消える」の命令を実行するようにしました。


 扉が開いた後のグラフィックは使えず、扉が消失した形になりますが、元々開いてる扉のグラフィック自体が薄っぺらいのでそこまで違和感は無いかなと。


 さらに「イベント消える」で消したイベントは、マップ移動すると復活する仕様なので、扉のイベントにはちょうどいいかなぁと。(^ ^)


 と言ったところで、今日はこの辺で。

 どうも。ではでは。

 こんにちは、アカサカです。


 今日はアメブロの方に、昨日買った『スタジオシリーズ』のハイタワーの簡易レビューを投稿してきました。


 さて、本ブログのこちらは今日はどうしようかと迷ったのですが、「二日続けて『文庫本コーナー』の記事にするのも芸が無いしなぁ……」と考えた結果、現在進行中の、『RPGツクール2』版『ファイクエ』の記事にしようと思い立ちました。


 今日はモンスターについて少々……。


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 まずは前回も紹介しましたが、ただのザコI世。

 ステータスは、サンプルゲームのモンスターのものを参考にして作ってみました。


 レベル1だとティグレとリーリオでも2ターンかかりますが、レベル2になった途端に1ターンキルできる程度の能力です(さすがに素手ではそうもいきませんが)。


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 で、ザコII世。

 原作では姿もちょっと違いますが、こっちでは色違いって事で。

 あ、ちなみに今作でも食用設定は生きてて、回復アイテムに『ザコの姿焼き』やら『炒めザコサンド』なども出てきます(爆)。


 原作の設定どおり、能力は五十歩百歩です。


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 スライム。

 ドラクエでは最弱のモンスターですが、『ファイクエ』にはザコがいるので、3番目に弱いモンスターです。


 特殊能力なども特にはありません。


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 コボルド。

 上記の三体よりはやや強く、『突撃』の特殊攻撃を行ってきます。


 とは言え、私が持ってるモンスター図鑑に「危険度:小(もしこの生物を危険だと感じるようなら、あなたは冒険者をやめることを考えた方がよい)」と書いてあったので、スタート地点周辺に登場する、最も弱いモンスター群に含まれています。


 体色はコバルトの語源になっているので、ブルー系のカラーリングにしてみました。


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 小説版『ファイクエII』にも登場したダークトレント。

 4コマにもキーちゃんのパートで登場しています。


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 小説版で、野宿する石川一行を襲った陸ガニ。こちらでも冒険がやや進んだ地域に出そうと思っています。

 色違いでクラブガンス(赤)とマッドクラブ(緑)も作ってます。


 元のビジュアルはスーファミ版での『ツクール1』に相当する、『RPGツクール SUPER DANTE』のカニモンスターでした(ちなみにあっちはモンスターのカラバリが存在しない)。


2019-12-14-7.JPG


 何気に小説版では『1』と『2』の両方に登場している犬面人。

 今回はコボルドの上位種にしました。


 他にネコ獣人とトラ獣人のグラフィックも別個にあるので、こちらもダンジョン用のモンスターに使おうと思っています(フィールド用は容量を使い切った)。


2019-12-14-8.JPG


 小説版にも出した、いのちトリ(言うまでも無く「命取り」が元ネタ)。

 色違いでワイルドターキー(茶色)、メイジターキー(赤)、フロストターキー(青)がいます。


 さて、お次はボスキャラも少々……。


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 まずは『ファイクエI』での1面のボスにあたるウインドリザード。

 RPGツクールには、この2と3にリザードマンのグラフィックがありますが、個人的にはこちらの『2』版が好みです(初めてウインドリザードを作ったのは『ツクール3』版ですが)。


 ティグレたちとは、腕試しと言うか、試合のような感じでの戦闘を考えています。


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 マージュも。

 もちろん今回は物語の黒幕だとか、そんな事はありません。


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 あとはこんなのも。

 上述の『SUPER DANTE』のサンプルゲーム『FATE』に登場するボスの一体(『SUPER DANTE』では青い東洋龍のグラフィック)なんですが、その登場シーンが個人的に好きなので、パロディにしてみようかと思って作ってみました。


 と言ったところで、今日はこの辺で。

 どうも。ではでは。

 今回は久々に、小説版『ファイクエ』の新エピソードに行きたいと思います。

 実はこれまで更新していなかったのは、ちょっとした理由がありまして……(ガダメの過去を描いた外伝の案もあるにはあったんですが、まとまらず……)。


 それはこれです!


Touhyoukekka.JPG


 ヤフブロ時代の最後の企画、『ファイクエ』の人気投票の結果イラストをコツコツと描いてまして……。

 画像はクリックで、元サイズで出ます。


 新デザインのスパイドルナイトとオーイェ・ティは初めてのイラスト化になりますね。

 結果は上記の通り、アーセンが1位でした。


 他にも上位は三魔爪の二人(+セルペン)だったりと、改めて三魔爪の人気を感じました。

 個人的にはアーセンがぶっちぎりのトップだったのがちょっと意外でしたが……外伝効果かな?


 因みに、得票数は以下の通りです。


・アーセン(4票)

・ガダメ(2票)

・クレイ(2票)

・セルペン(2票)

・サクラ(1票)

・オータム(1票)

・スパイドルナイト(1票)

・オーイェ・ティ(1票)

・『自爆Jr.の青春日記』のスライム(1票)

・オカマスライム(1票)

・『しあるのみ』のスライム(1票)


 サクラ以下は、票が割れた感じですね。

 因みにイラストに描いた通り、石川達は得票数0でした(苦笑)。


 今更になりますが、人気投票に参加して下さった皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。m(_ _)m


 さて、本文の方はいよいよ最終決戦スタートです!


 トゥエクラニフ化した現実世界を元に戻すために、石川達が集めていたクリスタルも、ついに六つが揃った。
「これで、この世界を元に戻せるんだよな!?」
 興奮気味に、岡野が言う。
「うむ。これらを変異の中心である、お前たちの学校で使えば、お前たちの世界を元に戻せるはずだ」
 ガダメも力強く頷いた。
「じゃあ、さっそく……!」
「いや、今日はゆっくり休め」
 勢い込む石川達を、ガダメが制する。
「お前たちは、戦いの場から戻って来たばかりだ。万全の状態で戦いに臨むのも、また必要な事だぞ」
「む~……わかった」
 ガダメの言葉に、三人も素直にうなずく。
 ガダメの言っていることは正論であるし、戦いに関しては、ガダメ達は大先輩であるからだ。
「ま、焦ってもしゃーないしな。タイムリミットにはまだまだ時間もあるし……」
 クレイがおどけたように笑い、三人は、今度で笑顔で頷くのだった。


 翌日。
 九人は、石九小の正門前に立っていた。
 正門には、六角形を描くように六つのくぼみがある。
「少年たち、クリスタルを」
 ガダメに促され、石川達が六つのクリスタルを取り出す。

 その途端、


 ビカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!


 クリスタルがまばゆい光を放ち、それぞれのくぼみに向かって光が伸びたのだ。
 六色の光は、それぞれ正門のくぼみを直撃する。
 すると、


 ギィィィィィィィィィィィィィ……


 重々しい、金属が軋むような音をあげながら、正門がゆっくりと開いた。
 その時だ。
「フフフフフフフフ……」
 嘲笑のような声が響き渡り、空中に巨大なホログラフが浮かび上がる。
 マージュII世であった。
「愚かなる勇者たち、それに三魔爪どもよ」
「誰だ、お前は!?」
 石川はホログラフに向かって叫んでいた。
「私の名はマージュ・ギッカーナII世! 貴様らの新たな支配者だ!」
「なにっ!?」
「これを見よ!」
 マージュII世の横に新たな映像が浮かび上がる。
「こ、これは!」
「トゥエクラニフ!」
 そこに映し出された光景は、確かにかつて石川達が冒険した異世界、トゥエクラニフであった。
 ボガラニャタウンやブッコフタウンが見える。
 だが、さらにその上空には、巨大な真っ黒い球体が出現していた。
 直径だけで一〇〇〇シャグル(約三・五キロメートル)はある。
「この黒い球体は魔法時限爆弾なのだ! 爆発すれば、ブクソフカ大陸全てが粉々に吹き飛ぶ!」
「なんだって!」
 マージュII世は懐から携帯スイッチを取り出した。
「これが爆弾のスイッチだ。これを押すと二四時間でドカ~ンだ!」
「そんな!」
「やめて下さい!」
 三魔爪やサクラ達の狼狽ぶりを見て、マージュII世は満足そうに笑うと、
「さて……」
 と軽くスイッチを入れてしまった。
「わわわわわっ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「えらいこっちゃ!」
 トゥエクラニフ上空の黒い球体が振動音を発し、中心に赤い帯が出現した。
「なんて事をするんだ!」
「フハハハハ……爆弾を止めたければ、私のもとに来たまえ! さすれば止める方法を教えてやらないでもない!」
「行ってやろうじゃないか! この世界も、トゥエクラニフも、おれ達が救ってみせる!」
 石川が高々と拳を振り上げ、上田たちもうなずいた。
 決意も新たに、一同はダンジョンと化した石九小に飛び込んでいった。
 正門をくぐり、中庭へと出る。
 その途端、一同の前に呪文が飛んできたのだ。
「!」


 ドガァァァァァァァァァァァァン!


 石川達と三魔爪達は、セルペン達をかばってとっさにその場から飛びのく。
「誰だ!?」
 爆煙が晴れると、そこには五つの人影が立っていた。
 現れた相手に、石川達の表情が驚愕のそれへと変わる。
「お前ら!?」
「まさか……!」
 現れたのは、彼らが非常に見覚えのある人物だった。
 ゴールディ、シルバーン、スピアー、ニッキー……。
 いや、違う。
 よく見ると、四体はそれぞれ、石川達が知っている魔衝騎士達とは細部が異なっていた。
 ゴールディはアイアンクローが左右逆についているし、シルバーンは頭部に大きな板状の兜飾りがついている。
 スピアーはカブトのデザインが違うし、ニッキーは肩の羽が無い代わりに、額に大きな一本角が生えていた。
「魔衝騎士、ゴールダー!」
「同じくシルバーグ!」
「ランサー!」
「シナモーン!」
 各魔衝騎士達が名乗りを上げる。
 そして――
 ひときわ大柄な、初めて見る魔衝騎士が地面を踏み砕いて、一歩前に出た。
 全身を強固な甲冑で包んでいる。
「吾輩は魔衝騎士を率いる、魔衝騎将ギョクカイゼル! お前たちが手に入れた六つのクリスタル、この場で頂くぞ!」
「なにっ!?」
「さあ、かかれ! 我が無敵の軍団よ!」
「おおっ!」
 ギョクカイゼルの号令に、魔衝騎士たちは、一気に石川達に飛びかかった。
「むむっ!」
 石川達が武器を構える。
 ギョクカイゼルは得意そうな笑みを浮かべて呟く。
「いかに奴らとは言え、これだけの数を相手にしてはひとたまりもあるまい……」
「あっと言う間に片が付くな」
「そうそう、あっと言う間に……んがっ!」
 再び前方を見たギョクカイゼルが、唖然とした表情になった。
 気が付いた時には、既に事は終わっていた。


 パンッパンッ……


 上田が手をはたいている。
 石川も自分の剣を鞘に納めているところだった。
 岡野に至っては耳をほじっている。
 三人の後ろに、ゴールダー達がズタボロになって倒れていた。
「一度戦った連中の同型機なんかに負けるかよ」
 息一つ乱さず、石川が呟く。
 わずか十数秒で、石川達は魔衝騎士たちを地面に沈めていた。
「さてと……」
 ジロリと岡野がギョクカイゼルの方を向いた。
「いいっ!」
 ギョクカイゼルの方は、思わず及び腰になる。
「なあ、上ちゃん、テッちゃん。こいつ、自分の軍団は無敵だとか言ってたよな」
「うん」
「言ってた言ってた」
 ギョクカイゼルの顔からさーっと血の気が引き、冷や汗が流れ落ちる。
「えーっと、それは、その、だから……」
 口ごもるギョクカイゼルに、岡野がつかつかと歩み寄っていった。
「自分の言った事には、責任持て!」
 次の瞬間、岡野が突き上げた拳がギョクカイゼルの顎に見事にヒットした。
「激烈アッパー!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!
 キラッ!


 岡野に殴り飛ばされ、哀れギョクカイゼルは真昼のお星さまになった。
 登場が派手だった割には呆気ない。




~つづく~

 サイトを更新しました。

 今日は店内トップ(コンテンツページ)に『アメブロ支店』を追加しています。


 さて、今日は小説版『ファイクエII』第6話の完結編です。

 書き上げたら、今までのパートの倍以上の長さになってしまいました……


 まぁ、ボスも二人いるし、と理由にもなっていない理由は置いておいて……。


 なお、前回はコチラ

 では、本文スタート!


 阿修羅と対峙した三人は、張り詰めた表情で、阿修羅の次の言葉を待っていた。
「最後の関門は……」
「ゴクリ……」
 石川がつばを飲み込む。
「最後の関門は……!」
「はいっ!」
 思わず、石川が気を付けの姿勢になった。
 カッと目を見開いて、阿修羅が叫ぶ。
「ジャンケンだ!」
 よく見ると、阿修羅の六本の腕の内、上の二つはグーを、真ん中の二つはチョキを、下の二つはパーの形になっている。
「ガビョーン!」
 先ほどまでの緊張感もどこへやら、石川達は思わずつんのめった。
 気を取り直して、石川と阿修羅が、同時に拳を振り上げる。
 一瞬早く、阿修羅が動いた。
「行くぞジャンケン!」
「最初はグー! ……って、ええっ!?」
 石川は思わずグーを突き出す。
 普段、彼らは「最初はグー!」の文句でジャンケンをしていたのだが、阿修羅はそんな前置きなしに拳を突き出してきたのだ。
 焦る石川だったが、拳はすでにグーの形で突き出してしまっている。
 しかし、
「チョキ!」
 なんと、阿修羅が突き出したのは、チョキの形の拳であった。
 偶然とはいえ、石川は勝利を収めたのだ!
「やったー! おれの勝ちだーっ!」
「うおお負けた! 負けたぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 ズシィィィィィィィィィィィィィィン!


 自身の敗北にショックを受けた阿修羅は、頭を抱えると、そのまま後方に倒れこんで、凄まじい地響きを立てるのであった。


 最後の関門を突破した三人は、ピラミッドを抜けて、塔の内部へと到達していた。
 塔と言っても、前述の通りそんなに高いものではなく、せいぜい三階建て程度の高さだ。
 その最上階まで登ると、部屋の中央に、何やら白い光を放っている石が見える。
「あ、あれは!」
「クリスタルだよ!」
 石川は、嬉しそうな顔でクリスタルの所まで駆け寄った。
「やったぞ! 最後のクリスタルだ!」
 最後のクリスタル、『光の白玉(ライト・ダイヤモンド)』を手にして喜ぶ石川だったが、その時だ。
「待てい!」
 ステレオで叫ぶ声と地響きのような足音が響く。
「えっ!?」
「そのクリスタル!」
「こちらにもらおうか!」
 そこに立っていたのは、フライールとガクホーンの二体だった。
 二体とも、強引にピラミッドを突破して追いついてきたのだ。
 だが、そう言われて素直に渡す石川達ではない。
 石川は舌を出して叫んだ。
「やだよーっ! せっかくここまで苦労して来たんだ、渡してたまるか!」
 それを聞いて、激高したのはフライールだった。
「なにぃぃぃぃっ!?」
 スラッと腰の大太刀を抜き放つ。
「落ち着け、フライール!」
「うるさーい!」
 ガクホーンがたしなめるが、フライールは構わず太刀を振り上げた。
 それを見て、石川は岡野たちをの方を振り返って叫ぶ。
「くっ! 逃げるんだ、二人とも!」
「死ねぇぇぇい!」


 ドガッ!


 フライールが振り下ろした太刀が、塔の床を砕く。
 間一髪、それを避けた石川達は走り出すが、フライールは強引に塔の柱を切り倒しながら追いかけてきた。


 ドガッ! ドガッ! ドガッ! ドガッ!


 が、柱をどんどん破壊されたせいで、塔は自分の天井を支えきれなくなっていた。
 やがて――


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


 すさまじい地響きを立てて、ピラミッドの天辺に建っていた塔は一気に倒壊してしまったのだ。
 その瓦礫の中から、土煙を上げて二つの影が這い出てくる。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅっ!」
「こんな事なら、最初から塔ごと全て破壊しておけば良かったのだ!」
 忌々しげにガクホーンが吐き捨てる。
 その時、石川も倒壊した瓦礫の中から這い出してきたところだった。
「痛ててて……。無茶苦茶するヤツだなぁ……」
 が、ふと周囲を見てみると、上田と岡野の姿が見当たらない。
「上ちゃん? 岡ちゃん!?」
 まさか、二人とも逃げ遅れて――
 そんな考えが石川の頭をよぎり、その顔が青くなる。
 しかし、そんな石川の前に、魔衝騎士たちは容赦なく立ちふさがった。
「はっはっは、ここまでだな……」
 フライールが勝ち誇ったように笑うが、石川はブレイブセイバーを構えると叫ぶ。
「くっ! 諦めてたまるか! おれ一人でもやってやる!」
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 ガキィィィィィィィィィィィィン!


 フライールが振り下ろしてきた太刀を、石川はブレイブセイバーで受け止める。
 だが、
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 ドガァァァァァン!


「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!」
 間髪入れずに突き出されてきたガクホーンの薙刀を受け、石川の身体が後方へと吹っ飛ばされた。
 新品の鎧のおかげで石川の肉体こそ切り裂かれることは無かったものの、その衝撃はかなりのものだ。
 尻餅をつく石川に、フライールとガクホーンがジリジリとにじり寄る。
「ふん、他愛もない!」
「小僧、覚悟!」
 だが、天はまだ石川を見捨ててはいなかった。
「待て!」
「むっ!」
 ガクホーンが声のした方を向くと、瓦礫の上に立っていたのは上田と岡野だったのだ。
「上ちゃん! 岡ちゃん!」
 安堵と嬉しさのため、石川の表情が笑顔のそれに変わった。
「ごめん、テッちゃん! 脱出に時間がかかっちゃった!」
 あの時、上田は岡野の身体をつかまえて、間一髪、エスケープの呪文で塔の崩壊から脱出していたのだ。
 二人が無事だったことを知って、怒りに燃えていたのはフライールとガクホーンだ。
「おのれ!」
「私が相手になろう!」
 ガクホーンが、上田と岡野の方へと向き直る。
「おう!」
 それに対して、岡野たちも臨戦態勢で待ち構えた。
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ガクホーンが繰り出してきた薙刀を、岡野は籠手で受け止めた。


 ガキィィィィィィン!


 そのまま鍔迫り合いを続けていた両者だが、岡野は強引に押し切ると、ガクホーンに向かって回し蹴りを放つ。
 が、ガクホーンも一瞬のうちに体勢を立て直すと、その蹴りを伏せて避けた。
 その体勢のまま薙刀を振り上げ、さらに今度は目にもとまらぬ速さで突きを放つが、岡野もさるもの、強化された動体視力で、その流れるような攻撃を紙一重でかわしていた。
 続けてガクホーンは薙刀を振り下ろすが、その刃は、再び岡野の籠手によって塞がれていた。
 そして、その刃をはねのけてガクホーンの体勢が崩れたところに、今度は上田が飛び込むと早口で呪文を唱える。


 グー・ダッ・ガー・バク・レイ・ゲム!
(大気よ、唸り弾けろ!)


「爆裂呪文・ボンバー!」


 ドガドガドガァァァァァァァァン!


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 至近距離で爆発の連続攻撃を受け、今度はガクホーンのボディが地面に投げ出される。
 一方、フライールと一対一の勝負になっていた石川も、先ほどまでとは打って変わり、フライールと丁々発止の勝負を繰り広げていた。


 ガキィン! ガキィン!


 剣と太刀の刃がぶつかり合い、周囲に鋭い金属音を響かせる。


 ギィィィィィィィン!


 鍔迫り合いの後、フライールの手から太刀が飛んでいた。
 石川が横に払った一撃が、フライールの太刀を弾き飛ばしたのだ。
「やるな! ならば!」
 叫ぶなり、フライールのボディが変形を始める。
 両腕が胴体に収納され、足も縮み、前方へと突き出される。
 瞬く間に、フライールはレーシングカーのような形態へと姿を変えていた。
 続けてガクホーンも変形を始める。
 両腕が肩に収納され、足も畳まれて、ボディ各所のドリルが全て前方を向く。
 次の瞬間、そこにはガクホーンの頭部を持ったドリル戦車が出現していた。
「行くぞ!」
 叫ぶなり、ガクホーンのドリル戦車が地面へと姿を消す。
「あっ! 野郎、どこへ行く!」
「逃げたのかな……?」
 いぶかしむ上田だったが、答えは次の瞬間に来た。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「わわっ!」
 石川達が立っていた地面が突如陥没し、不意を突かれた彼らは体勢を崩したのだ。
「今だフライール!」
 陥没した穴の底から姿を現して、ガクホーンが叫ぶ。
「応!」
 そこへ、フライールが走りこんできて、石川に強烈な体当たりを見舞った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 続いてはガクホーンが、岡野に対して同じように体当たりを仕掛ける。
 二体は石川達に反撃の隙を与えないよう、絶妙のコンビネーションで体当たりを繰り返していた。
 このままでは、徐々に体力を削られていくのは明白だ。
 上田が石川に向かって叫んだ。
「テッちゃん、三魔爪を呼ぼう!」
「よーし!」
 石川は懐から熊のような姿をした土人形を取り出すと、空に向かって投げる。
「頼むぜ、アーセン!」


 シュパーン!


「ドンッドグ~ウ!」
 土人形がまばゆい光を放ち、その中からアーセンが姿を現した。
「私に、任せて下さい!」
 アーセンは石川達の前に立つと、突撃してくるフライール達に向かって、素早く呪文を唱えた。


 ゼー・レイ・ヒーラ・ヴィッセル!
(閃光よ、閃け!)


「閃光呪文・バーネイ!」


 ゴォォォォォォォォォォォォッ!


 アーセンの、土偶の右手から帯状の火炎が放射され、魔衝騎士たちを吹き飛ばす。
「うぉぉぉぉぉぉっ!」
「ぐわぁぁぁぁぁっ!」
 しかし、二体は体勢を立て直すと、そばの地面に着地した。
「おのれ!」
「フライール!『あれ』をやるぞ……!」
 ガクホーンの言葉に、フライールもうなづく。
「おうよ!」


 ジャキィィィィィィィィン!


 次の瞬間、フライールがガクホーンの機体の上に飛び乗り、ドッキングして一体の大型戦車となったのだ。
「朱(あか)と蒼(あお)の、全方位(オールレンジ)攻撃!」
 叫ぶなり、二体はタイヤとドリルを高速回転させて突進してきた。
 その姿は赤と青の渦巻きへと変わる。
「なんだアイツら……?」
 呆然とその渦を見つめていた岡野だが、その錐揉み状の渦が彼らの側を突き抜けていった時、凄まじい衝撃が一同を襲ったのだ。


 ドガァァァァァァァァァァン!


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「これはぁぁぁぁぁっ!」
「みんな! うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 石川達もアーセンも、木の葉のように宙に吹き飛ばされて地面に激しく叩きつけられる。
「くっ……あの攻撃、ただ事じゃないぞ!」
 軋む体を押さえながら、石川が立ち上がる。
「二体の、魔衝騎士たちの、相乗効果で、威力が、何倍にも、強まっているようです。並大抵の、攻撃では、あの渦を、突破することは、出来ません」
 いつもの冷静な口調ながらも、冷や汗をかきながらアーセンが言った。
「じゃあ、どうしたら!?」
「私に、考えが、あります。いいですか?」
 アーセンは三人に向かって、手短に反撃の作戦を伝える。
「よし、それでいこう!」
 アーセンの作戦を聞いた石川達は、力強く頷く。
 四人は一カ所に固まると、石川、上田、アーセンは呪文を唱え、岡野は拳に気を集中させる。


 グー・バク・ゴウ・ゲレム・ガルム・バング
(大気よ、全てを砕け散らせたまえ)


 グー・ダッ・ガー・バク・レイ・ゲム


 上田とアーセンの両手に極大呪文のスパークが巻き起こり、石川の手にはボンバーのスパークが同じように生まれている。
 岡野の掌にも、今の彼のレベルで可能な限りの気が送り込まれていた。

 その間に、フライール達は向きを反転させ、再び四人に向かって突進してきた。
「極大爆裂呪文・ボンベスト!」
「爆裂呪文・ボンバー!」
「昇竜波!」

 上田とアーセンからはボンベストが、石川からはボンバーが、岡野からは神龍波よりも一回り小さい竜の姿をした気功波が放たれ、それらは混じりあって、フライール達にも匹敵する大きさの渦となった。


 ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!
 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!


 呪文と気が融合した光の渦と、赤と青の渦は正面から激突し、周囲に大爆発を巻き起こす。
 勝ったのは石川達の方だった。
 爆煙に混じって、かつてフライールとガクホーンだった金属の破片が辺りに降り注いでいたのだった。



「ようやく全部そろいましたね」
 目の前に並べられた六色のクリスタルを前にして、サクラが感慨深そうに言った。
 住宅地の中央広場で、全員がクリスタルの前に立っていた。
 その時だ。


 パァァァァァァァァァァッ……


「あらっ?」
「な、なに?」
「なんだ?」
 突如、六色のクリスタルが淡い光を放ったのだ。
「テッちゃん、空を見て!」
「えっ?」
 空には虹色に光るオーロラが現れていた。
「なっ、これは……?」
 一同は呆然と、そのオーロラを見上げている。
 オーロラはまるで、クリスタルが揃った事を祝福するかのように、いつまでも輝いているのだった。




~つづく~

 という訳で、今回は小説版『ファイクエII』第6話のパート2です。

 早ければ、明日には完結編が投稿できると思います。


 なお、前回はコチラ

 では、本文スタート!


 石川達は、暗い通路を進んでいく。
 しばらく歩いていると、目の前に上の階へと続く階段が見えてきた。
 そしてその前には……。
「おっ?」
「よく来た! このアイシジンジャは各階の関門を乗り越えないと次の階へ行けないのだ!」
 階段の前には、二メートルほどの高さの人間のような目と口が付いた木が立っており、その横には立札が立っていた。
 以前、壱の松原で襲い掛かってきたダークトレントに似ているが、顔つきはあちらのように凶悪ではなかった。
 相手に攻撃の意思がない事を理解した三人は、どのような関門が待ち受けているのか、緊張した面持ちで身構える。
「まずはワシが出す計算に答えてもらおう……!」
 言うなり、トレントの横に立っている立札に計算式が映し出される。
「計算なら頼むぜ、上ちゃん!」
「ええっ、おれ!?」
 石川に指名され、上田が困惑した声を出す。
 彼はどちらかと言うと、国語や社会の方が得意なのだ。
「この問題を二〇秒で解くのだ!」
 映し出された問題は、一つ目が『2X+3=7。X=?』二つ目が『3X=18-3。X=?』。
 簡単な算数ではあるが、まだ四年生で習うような問題ではない。
「急げ上ちゃん!」
「頑張って!」
「えーっと……」
 しばらく上田は考え込むが、残り五秒となったあたりで叫んだ。
「答えは一門目がX=2! 二門目がX=5!」
「正解!」
「ふう、塾行っといて良かった……」
「では次の問題は一〇秒だ!」
 立札の計算式が、次の問題を映し出す。
「答えはX=12!」
「正解! では次!」
「頑張れ上ちゃん!」
 うんうん唸りながらも、上田は確実に答えを出していった。
「では次!」


 トレントの関門を突破した石川達は、次の階の通路を進んでいく。
 しばらく進むと、今度は人の体に羊の頭を持った石像が立っていた。
 手からは糸から吊るされた、小さな輪っかがぶら下がっている。
「よく来ましたね。この関門を突破できますか?」
 言うなり、羊頭は手からぶら下げた輪っかを左右に揺らし始めた。
「ほ~れ眠れ~。眠ってしまえ~……」
 左右に揺れる輪っかから波のようなものが照射され、三人を包み込んでいく。
「ふわぁ~……。何かおれ、眠くなってきた……」
「おれも……」
 見る見るうちに石川達の目がトロンとしていき、まぶたが下がっていく。
 ただ一人(?)、生きている杖である錫杖には催眠音波は効いておらず、三人を必死に起こそうとしていた。
「マスター! しっかりして下さい!」
「そんな事言ったって……」
「あ~も~、こうなったら!」
 しびれを切らした錫杖は、なんと、手近にいた岡野の尻に、自分の頭部(?)の先にある刃を突き刺したのだ。


 ブスッ!


「痛てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 その痛みに、岡野が尻を押さえて飛び起きる。
「何てことすんだよ、錫杖!」
「それより岡野さん、お二人を!」
「ああっと、そうだった!」
 我に返った岡野は、石川と上田を揺り起こす。
「おい、起きろよ! テッちゃん上ちゃん」
 が、二人はなかなか目を覚まそうとしない。
「起きろーっ!」


 ビシバシ! ビシバシ!


 石川の両頬に、岡野は連続ビンタをかます。
 でも、だめ。
「起きろぉぉぉぉぉっ!」


 ゴキゴキゴキ……


 上田には、なんとコブラツイストまでかけるありさまだ。
 やっぱり、だめ。
 そうしている内にも、羊頭からは催眠音波が照射され、再び岡野も眠気に襲われてきた。
 そんな岡野が出した答えは……。
「ええいこうなったら、強行突破だ!」
 なんと岡野は石川と上田を担ぎ上げると、そのまま全力ダッシュで羊頭の横を走り抜けていったのだ。
 これには羊頭も、呆然となって見送るしかなかった。


 さて、その頃。
 ピラミッドに再度突入したフライールは、またしても迷路の中に迷い込んでいた。
「ええいまた行き止まりか!」
 壁にぶち当たったフライールは、腰の大太刀を抜くと、壁に向かって投げつける。
「でやぁぁっ!」


 ドガァァァァァァァァァン!


 壁をぶち破って先へ進むフライールだが、まだまだ迷路からは抜け出せそうにない。
「くそう、また迷路の中に入っちまったぜ!」


 一方、ガクホーンの方は、先ほど石川達が突破した羊頭の前に到着していた。
「ここの関門、突破できますか?」
「…………」


 ジャキン!


 ガクホーンは無言で薙刀を構える。
 羊頭がギョッとなったのもつかの間、次の瞬間、


 ズバッ!


 薙刀が一閃し、羊頭の石像は綺麗に横に切断され、胸部から上がその場に転がった。
 その横をガクホーンは何の感慨も示さずに通り過ぎていく。


 他方、その羊頭の関門を突破した三人。
 石川と上田もようやく目を覚まし、階段を上っていた。
「はぁ、はぁ、あといくつ関門あるんだ……?」
 息を切らせながら、石川が階段を上りきる。
 ふと前を見ると、一行の目の前には、全高が五メートルほどの、凄まじい形相の阿修羅の像が立っていたのだ。
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 その恐ろしい姿に、思わず石川が悲鳴を上げる。
「よくぞここまでやって来た。いよいよ最後の関門じゃ」
「は、はい……」
「この関門を失敗すればお前たちは死ぬ……」
「ええっ……!?」
 衝撃の事実を突きつけられ、三人の表情が驚愕に歪んでいた。




~つづく~

 こんにちは、アカサカです。

 アメブロの方に、昨日のオーズアーマーと先日買ったフォーゼアーマーの簡易レビューを先ほど書きまして、こちらでは小説版『ファイクエII』の続きといきたいと思います。


 ……ブログが二つあると、こういう時に便利やね(爆)。

 ちなみに私にとっての『難関』は、文字サイズを変えるとバグる、このブログの改行だったり(爆)。


 では、本文スタート!


 トゥエクラニフ化した現実世界を元に戻すため、石川達が集めているクリスタルも、残すところ『光の白玉(ライト・ダイヤモンド)』のみとなった。
 ……のだが。
「むむむむむむ……」
 住宅地の中央広場で、石川達は魔力書物を前に険しい顔をしてうなっていた。
 残り一つというところで、書物がなかなかクリスタルの反応を示さないのだ。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! おれ、もう耐えられない!」
 耐えかねたように岡野が叫ぶ。
「まぁまぁ、オカノさん、落ち着いて……」
「書物が反応しないとクリスタルのある所は分からないんだから」
 横からアーセンと上田がなだめるが、石川も岡野に同意するかのように叫んだ。
「でも! 魔衝騎士がクリスタルを手に入れたらと思うと、焦っちゃうよ」
 そんな時だ。
 実にタイミングよくと言うべきか、書物がクリスタルに反応して光を放ったのだ。
「この場所は愛石神社だね……」
 地図を見ながら上田が言った。
 ここは結界の中でも住宅地から一番遠い場所にある。
 だが、最後のクリスタルを見つけたという喜びが、彼らのやる気を最大限に高めていた。
「よ~し、愛石神社に行くぞー!」
「おーっ!」
 石川の号令に、上田と岡野も拳を振り上げて景気よく叫んだ。


 一方、石川達が出発したのを、マージュII世も気づいていた。
 一足早くクリスタルの反応を感知した彼は、すでに魔衝騎士を向かわせていた。
 彼らの姿が映る水晶球を前に、マージュII世は仮面の下から不敵な笑い声を漏らす。
「ふふふ、小僧どもめ。アイシジンジャに向かっておるな。あそこには魔衝騎士フライールとガクホーンがおるのだ。ファッファッファッファッファッ!」



 住宅地を出発した三人は、壱の松原の時のように品柄川(しながらがわ)にそって歩いていた。
 ただし今回は、神社と住宅地の中継地点である甥浜駅(おいのはまえき)まで川に沿って歩くことになる。
 大通りを横切った時、ふと、上田が住んでいるマンションだった建物が目に入った。
 それもやはり、西洋の館のような建物に変貌している。
「…………」
 上田は複雑な表情で、その建物を見つめていた。
「上ちゃん……」
 岡野が気遣うように、上田に声をかける。
 覚えているだろうか。
 岡野は今でも知らないふりをしているが、上田はトゥエクラニフに飛ばされたその日、ホームシックで密かに泣いてしまった事があった。
 だが、上田は岡野に対してニッコリと笑いかける。
「ん、大丈夫。クリスタルも残り一個だし、ここで頑張らないと!」
「だな。よし、行くか!」
 岡野もうなずくと、三人は道中襲い掛かってくるモンスター達の襲撃を退けつつ、先を急いだ。
 ちょうど甥浜駅に着いた辺りで日が暮れてきたので、三人は駅内部にある喫茶店で夜を明かした。


 翌朝、三人は朝食をとると神社に向かって出発した。
 駅に入居しているスーパーもやはりトゥエクラニフ化していて、洋服屋だったお店は鎧などを置いた防具屋へと変貌していた。
 とは言え、店員がいるはずもなかったので、三人はそれぞれ自分に合った防具を持ってきていた。
「まぁ……」
 石川は苦笑しながらこう言った。
「RPGじゃ、人んちの宝箱の中身を勝手に持っていくなんて当たり前だしね!」
 さて、武器はもとより、防具も充実した三人にとって、そこいらのモンスターなど敵ではない。
 暴走パトカーと同じように意思を持った自動車モンスター、黒タクシーも、アーマーの上位種であるカーネルも、トゥエクラニフでは散々苦戦させられたメイジターキーも、彼らの行く手を阻むことはできなかった。
 三人は半日もせずして、愛石神社に到着していた。
 しかしながら、トゥエクラニフ化した愛石神社の変貌ぶりは、石川達の想像をはるかに超えていた。
 本来、この神社は小高い山の上にあるのだが、山の中腹から上の部分がマヤのピラミッドのようになってしまっていたのである。
 天辺には神社の本殿が変化したのであろう、低めの塔が建っていた。
「ここ、本当に愛石神社だよね……」
 ピラミッドを見上げて、石川が呆けた声を出す。
 無理もなかった。
 これまでのダンジョンで、一番元の施設との変化がすさまじかったのだから。
 或いはこれも世界が本格的にトゥエクラニフ化してしまう事の前触れなのか……。
 三人の頭に、そんな考えがよぎった。


 同じ頃、ピラミッドの中ほど。
 その中は複雑な迷路と化していた。
 突然、


 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!


 壁を突き破って、巨大な刀が飛び出してくる。
 壁の向こう側から現れたのは、赤い重厚なボディを持った魔衝騎士だった。
 刀はこいつが投げたのだ。
 両肩には巨大なタイヤが付き、胸部には『飛』という文字に似た紋章が刻まれている。
 フライールである。
「ええい! いつになったら最上階に着けるのじゃ!」
 フライールは苛立ったように叫ぶ。
 迷路の壁を破壊して進むという行動から分かるように、彼はなかなか短気な性格をしているようである。
 他方、もう一人迷路を進む影があった。
 額には刃のような一本角が生え、両肩をはじめとして、つま先などに巨大なドリルがついている。
 そして、膝のパーツはキャタピラになっていた。
 胸部には『角』という文字に似た紋章が描かれている。ボディ全体は青を基調としたカラーリングだ。

 手には両端に刃が付いた長刀を持っている。
 こちらが愛石神社に向かったもう一人の魔衝騎士、ガクホーンだった。
「中に入れば迷路ばかり……。なかなか厄介な所にクリスタルが……むっ、フライール!」
「ガクホーン!」
 バラバラに迷路を進んでいた二人だったが、どうやら迷路で迷っているうちに、偶然再会したようであった。
「どうだ、そっちは?」
「ダメだな。どこもかしこも行き止まりで、上へあがれん」
 相棒も収穫が無いのを聞いて、フライールは腹立ちまぎれに思いっきり床を踏みつけた。


 ドシィィィィィィィィィン!


「おのれ! 誰だこんな迷路を造りやがったのは!」
 が、少しばかり力が強すぎたようだ。


 ピシッ、ピシピシ……


「あ……」
 フライールが踏みつけた所から床にひびが入り、あっと言う間に彼らがいた場所の床が、音を立てて崩れ落ちたのだった。


 ガラガラガラガラァァァァァァァァァァァァッ!


「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「このバカがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 フライールの悲鳴とガクホーンの怒声は、ともに暗い穴の中に消えていった。
 一方、石川達は山を登り、ピラミッドの入り口の前に立っていた。
「ここが入り口か……」
「さ、グズグズしてられないよ! 中に入ろう!」
「おう!」
 その時である。
「マスター、見て下さい」
 錫杖が入り口よりも右の方を指し示す。
「あれ、こっちの方にも入り口がある」
「こっちにもあるぜ?」
 岡野の言う通り、彼らが立っていた入り口からさらに左側にも入り口があった。
 と、


 ドガァァァァァァァァァァァン!


 ピラミッドの壁が吹き飛び、何かが落下してきたのだ。
「どわっ!」
「な、なんだ!?」
 三人(と一本)は、驚いてそちらの方を向く。
「貴様らは!」
「救世主の小僧ども!」
 落下してきたのは、魔衝騎士の二体だった。迷路から転げ落ち、放り出されてきたのだ。
「魔衝騎士!」
「テッちゃん、クリスタルを手に入れる方が先だよ!」
「あ、そっか!」
 上田に促され、三人は入り口に向かって駆けだした。
「急げ!」
 そんな三人の背中に向かって、フライールがバカにしたように笑う。
「バカめ! そこはさっきオレ達が入った入り口よ! 本当の入り口はここだ」
 言いながら、右側の入り口に向かう。
「待て、フライール。こっちが本物かもしれん!」
 ガクホーンは左側の入り口の前に立って言った。
「ではどうするのだ!?」
「どちらにせよ、奴らより先にクリスタルを手に入れねばならん。ここは手分けしてクリスタルの元へ向かうとしよう」
「良し!」
 フライールとガクホーンも、それぞれ分かれて、再度ピラミッドの中に入っていくのだった。




~つづく~

 実は二週間ほど前、とあるブロ友さんにちょっとお聞きしたいことがあって『メッセージ』を送ってるんですけど、いまだに未開封なんですよねぇ……。

 その方はもう、ブログの引っ越し作業(ヤフー推奨)が終わってて、ヤフブロの方が見られなくなってるので、単に気づかれていないって可能性が高くはありますが……。

 現在はコメントをする方もされる方も休止されてて(記事の方は定期的に更新されてますけども)、元々『訪問者履歴』にも名前を残さない設定にされてるので、今もウチに来られてるかどうかわからないですし……。


 さて、記事の方は小説版『ファイクエII』第5話の完結編です。
 今月中に片づけたいことがまた色々あるので、次回の本編の更新は、FC2の方に完全移行してからになるかと思います。

 なお、前回はコチラ
 では、本文スタート!

 車輪ピエロの攻撃を退けた三人は、さらに通路を進んでいく。
 と、薄暗い通路の先に明かりが見えた。
 しかも、それはこちらへと向かってくるではないか。
「なんだ、あれ?」
 三人は目を凝らす。
 と、その方角から、突如メガフレアの火球が飛んできたのだ。

 ゴォォォォォォォッ!

「うわっ!」
 間一髪で、三人は火球をかわす。
 前方にいた明かりの正体は、2メートルほどの聖火台に手足が生えたような外見のモンスターだった。
 古ぼけた松明が長い年月を経て意思を持った、歩く松明というモンスターだ。
「カモーン、エブリバディ!」
 歩く松明が叫ぶと、その頭部の炎が一層激しく燃え上がり、中から目が付いた人魂のようなモンスターが無数に飛び出してきた。
 炎に意思が宿ったフレアゴーストというモンスターだ。
 そこまで強いモンスターではないが、数が多いのが厄介だった。
 しかも、

 カ・ダー・マ・デ・モー・セ!
(火の神よ、我が敵を焼け!)

「火炎呪文・フレア!」
 フレアゴーストはその口から、頻繁にフレアの呪文を唱えてくる。
 たとえフレアといえど、これだけの数で唱えられたらギガフレアに匹敵する。
「わちっ! わちっ!」
「熱いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
 三人はフレアの嵐の中を逃げまどっていた。
 そんな中、冷静に錫杖が叫ぶ。
「マスター、ここは吹雪呪文で!」
「うん!」
「よし、じゃああの鬱陶しい連中はおれ達が……」
 上田が呪文を唱える間、石川と岡野が敵の注意を引き付ける。

 アース・ウェーバー・ガーゴ・グー!
(氷の風よ、凍結させよ!)

「吹雪呪文・フロスト!」

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 上田の掌から、強烈な雹粒を伴った冷風が噴き出し、歩く松明とフレアゴースト達を包み込む。
「あぎゃぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 風が収まった時、そこには氷の彫像と化した松明が突っ立っているのだった。

 歩く松明とフレアゴースト達を倒した三人は、ついに工場の中心へとやってきていた。
「あれは……」
 目の前の祭壇に、赤く輝くクリスタルが見える。
『火の赤玉(ファイア・ルビー)』だった。
「やった! 五個目のクリスタルだ!」
 石川達は、喜び勇んでクリスタルに駆け寄ろうとする。
 その時だ。
「待っていたぞ、少年たち」
「!」
 三人とクリスタルの間に、人影が舞い降りた。
 そいつは馬の頭部を持った騎士で、肩鎧には小さな翼のような装飾がついている。
 腕には長いランスを持ち、胸部には『桂』という文字に似た紋章が描かれていた。
「我が名は魔衝騎士ニッキー! ここのクリスタルと君たちの命、私がもらい受ける!」
「やっぱここにもボスがいたのか!」
 三人とニッキーは、武器を構えて対峙した。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 先に動いたのは石川だ。
 石川は床を蹴って一気にニッキーに迫ると、ブレイブセイバーを振り下ろす。
 だが、

 ガキィィィィィィィィィィィィン!

「何っ!?」
 目の前にいたはずのニッキーの姿が一瞬にして消え、ブレイブセイバーは空しく床を切りつけたのだ。
「テッちゃん、後ろ!」
 振り向いた石川の眼前に、槍が突き出されていた。
「くっ!」
 とっさに石川はブレイブセイバーを構え、ランスの一撃はブレイブセイバーをかすめて床に大穴をあける。
「これならどうだ!」
 今度は岡野が飛び上がり、ニッキーに向かって飛び蹴りを放つが、同じようにニッキーの姿は突然掻き消えた。
「えっ!?」
「跳躍力と素早さでは、天馬とてこのニッキーにはかなわぬ」
 またも背後から声がして、岡野に向かって槍が襲い掛かった。
 岡野は身をかわすが、今度は槍が右腕をかすめる。
「うわっ!」
 その衝撃で、岡野は腕から血を流しながら、床にたたきつけられた。
「岡ちゃん!」
 上田が岡野に駆け寄る。
「岡ちゃん、大丈夫!?」
「ああ、かすり傷だよ。けど、アイツのジャンプ力は厄介だぜ。ピョンピョン野郎とは段違いだ」
 その言葉を聞いて、上田が何ごとか、考え込んだ顔つきになる。
「ジャンプ力……って事は、この間のスピアーみたいに飛び回ってるわけじゃない……。だったら……」
 何か考え付いたのか、上田がニヤッと笑う。
「テッちゃん、クレイを!」
「? 分かった!」
 促されるまま、石川が懐から粘土の塊型のアイテムを取り出し、空高く放り投げた。
「来てくれ、クレイ!」

 シュパーン!

「チョ~コック~!」
 粘土がまばゆい光を放ち、その中からクレイが姿を現す。
「呼んだか、ボン達? ……っと、えらい暑い場所やなぁ。こんなところに呼び出されたらかなわんわぁ……」
 額をぬぐいながらクレイが言った。お忘れかも知れないが、身体が粘土でできている彼は、熱に弱いのだ。
 上田はクレイに駆け寄ると、耳打ちをする。
「あのね、こうして、こうして、そうして欲しいんだ」
「なるほどなぁ……。よっしゃ、ワイに任しとき!」
 言うなり、クレイの身体が溶けるようにして床に消えていく。
 その様子を眺めながら、ニッキーは断続的にハイジャンプを繰り返していた。
「何をしようが、無駄な事だ! 私を捕らえる事など誰にもできぬ!」
 ニッキーはとどめとばかり、ひときわ高く宙へと飛んだ。
「覚悟!」
 そのまま自由落下に乗って、凄まじい速度で降下してくる。
 だが、

 ガシィッ!

「な、なにっ!?」
 驚きの声を上げたのはニッキーの方だった。
 彼のボディは、あちこちが地面から生えた、粘土製の縄にからめとられていたのだ。
「地面と一体化しときゃ、あんさんの動きも丸わかりや! 調子に乗って墓穴掘ったな!」
 地面からクレイの目が現れて、不敵な笑みを浮かべる。
「ボン達、今や!」
「よぉ~し、さっきの借り、きっちり返してやるぜ!」
 上田の呪文で傷を回復させた岡野が、目を閉じて拳を構える。
 握りしめた右拳に、気が収束されていった。
 岡野がカッと目を見開き、その足が、力強く床を蹴る。
 拳に気を溜めたまま、ニッキーに向かって駆けていく。
「オーラナックル!」
 岡野が拳を突き出すのと、クレイが拘束を解除して地面に潜り込むのは同時だった。
 気をまとった岡野の拳は、正面からニッキーのボディに命中する。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 岡野の一撃を受けたニッキーは、空中高く殴り飛ばされ、工場の高い天井すれすれで大爆発を起こした。


「いやぁもう、ヘトヘト……」
「本当だねぇ……」
 ニッキーを撃退して『火の赤玉』を手に入れた一同は、クリーンファクトリーを後にする。
 日は傾き始め、空は先ほどまでの工場の中のように赤く染まっていた。
「とにかく今日は、ぐっすり寝たい」
「同感……」
 上田は力なく頷くと、テレポーの呪文を唱えようとする。
 だが……。
「上ちゃん、どったの?」
 石川の問に、上田はバツが悪そうな顔をして振り向いた。
「魔法力……切れちゃったみたい」
「えーっ!?」
 この後一同は、アーセンに迎えに来てもらう事になるのだった。
「えっと、今回の、私の、出番、これだけですか?」
 うん、そう。
「そんなの、あり!?」
 あり。



~つづく~
 てなわけで、前回から三週間近く間が空いてしまいましたが、今日は小説版『ファイクエII』の続きといきたいと思います。
 なお、前回はコチラ

 それでは、本文スタート!

 翌朝、三人は荷物をまとめると、クリーンファクトリーに向けて出発した。
 道路を渡り、さらに坂道を登っていく。
 そうして到着したクリーンファクトリーは、これまでとは少しばかり違う変化をしていた。
「こ、これって……」
 これまでの場所は元から林であった壱の松原を除き、ファンタジックな外見になっていたのだが、このクリーンファクトリーはレンガ造りながらも、ちょうど産業革命が起きた頃の工場のような様相を呈していたのだった。
「よし、行ってみよう」
「うん……」
 石川を先頭に、三人はクリーンファクトリーに入っていった。

 このクリーンファクトリーは、彼ら三人はつい先日、学校の社会科見学で来ていたのだが、内部構造は別の意味で驚くべき変化を遂げていた。
 通路の下には溶岩のような、ドロドロに溶けた真っ赤な川が流れ、周囲では巨大なプレス機が機械らしい規則正しさでゴミを潰し続けている。
 それはまるで……
「ダ、ダ●トマンステージ……?」
「いや、バーニ●・ナウ●ンダーでしょ」
 そう、彼らが愛好しているアクションゲームに出てくる、工場のステージによく似ていたのだ。
 こういう所に出てくる敵と言えば……。

 ガシャン!

 足音が響き、三人はそちらの方を向く。
 そこに立っていたのは……
「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ、出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「オバケぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 石川と上田が悲鳴を上げる。
 それはボロボロになった、ゾンビのようなモンスターだった。
 しかし、
「バカ、よく見ろ! ありゃメカだぜ!」
「へっ!?」
 岡野の言う通り、それはスクラップになりかけたアーマーだった。
 とは言え、壊れかけた姿で迫ってくるのは、生身(?)のゾンビとはまた違った気色悪さがある。
「ギィィィィィィッ!」
 ゾンビアーマーは軋むような咆哮を上げながら襲い掛かってくる。
 しかし、
「ゴミ捨て場に帰れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 バキィィィィィィィィィィィィッ!

 岡野の鉄拳が飛び、アーマーは近くの溶鉱炉に落下して、沈んでいった。
「ふう、気持ち悪い奴だった……」
「そうだね」
 苦笑する一同だったが、そこへさらに足音が響く。
「……まさか?」
「ギィィィ……」
「ガァァァ……」
「ゲェェェ……」
 ゆっくりと振り向いた三人が目にしたのは、数にして二十体以上のゾンビアーマーだった。
「に、逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 三人は一目散に走りだす。
 さすがにこれだけの数のゾンビアーマーを相手にするのは骨が折れるし、それ以前に、こんな気色悪い連中と戦いたくないというのが本音だった。
 しばらく走った後、三人は工場の一角で一休みしていた。
 相変わらず、周囲はゴミ処理用の機械の駆動音に包まれている。
 そんな時だった。

 ゴロゴロゴロゴロゴロ……

「んっ……?」
 機械の音に交じって、何かが転がってくるような音が聞こえ、三人は耳を澄ませる。
 音はどんどん近づいてきた。
 三人が音のする方を見てみると、巨大な、直径2メートルはありそうな歯車が転がってくるところだった。
「ぬわぁに!?」
 三人の目が、驚愕のために見開かれる。
 しかしそれは、ただの歯車ではなかった。
 その上に、ピエロのような姿をしたモンスターが、玉乗りの要領で乗っていたのだ。
 車輪ピエロという道化師タイプのモンスターで、トゥエクラニフでは遺跡などのダンジョンに潜み、迷い込んできた哀れな犠牲者を石の車輪で轢き潰してしまうという。
「轢き殺す!」
 これまでに無いほど物騒な台詞を吐きながら、車輪ピエロは歯車をゴロゴロ転がしながら三人に迫っていった。
「おっと!」
 三人は横に飛んで避けるが、ピエロは方向転換すると、執拗に三人を追い回す。
 そうこうしているうちに、一同は狭い通路に追い込まれていった。
 ここでは横に逃げることも出来ない。
 このまま力尽きたら、そのまま歯車でペシャンコにされてしまうだろう。
「このっ、これならどうだ!」

 ディ・カ・ダー・マ・モウ・バッ・ダ!
(火の神よ、猛火の裁きを!)

「火炎呪文・メガフレア!」
 上田の掌から、ピエロに向かって火球が飛ぶ。
 しかし、それは歯車にぶつかると、何事もなかったかのようにかき消されてしまった。
「うっそー!?」
 上田が驚きの声を上げる。
 岡野や石川も、振り返って反撃しようにも、どうにも歯車が邪魔してピエロまで攻撃を届かせることが出来ないでいた。
 だが、運はまだ、彼らを見捨ててはいなかった。
 逃げながら、上田が壁に貼られた工場内の見取り図を見つけたのだ。
 彼らの進路の先はT字路になっていて、その先は溶鉱炉になっているようだった。
 即座に上田が考えを巡らせる。
「二人とも、このすぐ先がT字路になってるみたい! おれに考えがあるから、聞いて!」
「なになに?」
 走りながらも、上田は石川達に耳打ちをする。
 それを聞いた二人が、ニヤリとほほ笑んだ。
「よし、やってみるか!」
 三人はスピードを上げて、T字路に向かっていく。
 車輪ピエロもそれに劣らないスピードで、三人の後を追った。
 そしてついに、正面のT字路へと到着した。
 その先は見取り図の通り、真っ赤な溶岩がグラグラと音を立てていた。
 三人は振り返ると、車輪ピエロの方をにらみつける。
「ケケケケケケケケケケケカカカカ!」
 車輪ピエロは勝ち誇ったように、スピードを上げて三人に突撃していく。
 その歯車が、まさに眼前に迫った時、三人はニヤッと笑って、両側の通路に飛びのいた。
「ほんじゃ、バイバイ♪」
「なにいっ!?」
 さしものピエロも急停止する事はかなわず、そのまま溶鉱炉へと真っ逆さまに落ちていった。
「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 下の方からピエロの悲鳴と、「バッシャァァァァン!」という水音が聞こえてくる。
「アーメン」
 三人は目を閉じて十字を切ると、さらに通路の奥へと進んでいくのだった。



~つづく~
 こんにちは、アカサカです。

『ファイクエ』の人気投票、一応明日で締め切りですので、ご協力頂けると幸いです……。

 さて、本文の方は、小説版『ファイクエII』の続きと行きたいと思います。
 今回からは第5話となります。


 では、本文スタート!

 トゥエクラニフ化してしまった現実世界(なお、彼らの世界では我々のいる現実世界の事を“ウスティジネーグ”と呼んでいる)をもとに戻すために冒険している石川達だが、四六時中、クリスタルを求めて冒険しているわけではない。
 もちろん、一か月というタイムリミットはあるものの、クリスタルの反応が無い以上は、闇雲にあてもなく結界内を探してみてもしようがない事であるし……。
 主だった事件が無い時には、以前探索したダンジョンに戻って手掛かりが無いか調べてみたり、住宅地の周囲で訓練などをしたり、時には一日、心身を休めるためにのんびりと過ごしている事もあった。
 その日も、一同は住宅地の中心にある広場で朝食をとっていた。
 普段の料理役はオータム、サクラ、ガダメに、たまに上田やセルペンが手伝っていた。
 特にセルペンは、先日の壊滅的な家事でさすがに懲りたのか、現在は素直にサクラ達から料理の手ほどきを受け、だいぶまともな料理を作れるようになっていた。
「せやけど、嬢ちゃんたちの料理、ホンマに美味いなぁ」
 ほとんど胃袋に流し込むような食べ方をしながらクレイが言った。
 モンスター出身とは言え、味覚は人間と大差ないのだ。
「えへへ……有難う御座います」
 サクラが照れたように笑う。
 彼女はブッコフタウンの出身ということもあって、サンドイッチをはじめとする、パンを使った料理が得意だった。
 オータムの方は、むろん魚をはじめとする、海の幸を使った料理が得意だ。
「あたしは、この間ガダメさんが作ってくれた魔界鍋もなかなかだったけどねぇ」
 魔界鍋というのは、動植物性の食用になるモンスターを材料にして作った鍋だ。
 味付けも使われる具材も、その時々によって変わり、決まった形というものが無い。
 要するに、現実世界でいうちゃんこ鍋のようなものである。
「強い身体を作るためには、料理も欠かせない修行の一つだからな。みんなにはその内、私が研究中のコウモリ料理をご馳走して進ぜよう」
「あ、えと……それは遠慮しておきます……」
 そんな他愛もない会話をしながら食事を終えた時、数日ぶりにクリスタルの反応が出たのだった。

「まさか次の目的地がクリーンファクトリーとはね~……」
 道を歩きながら上田が呟いた。
 クリーンファクトリーは、彼らが住んでいる地域の清掃工場であり、彼らの住宅地からは壱の松原とほぼ同じくらいの距離があった。
 加えて小高い山の上にあるため、距離的にはなおさら遠く感じる。
 五郎川団地の横を抜けて、五郎川を渡り、城野春小学校の近くの道を歩いていく。
 時間にして午前中に出発した彼らだったが、例によってモンスターと戦いながらの旅路であるため、球磨野神社に到着した頃には、太陽はすでに真上に来ていた。
「ここで一休みしようか」
「さんせ~い」
 石川の提案に、上田と岡野もうなずいた。
 この神社は、かつて図画の授業で彼らが写生に訪れたことがある場所だった。
 住宅地の中にある、小高い森のなかに存在しているという、少し不思議な神社だ。
 不思議なことに、他がトゥエクラニフ化している中、この神社は比較的外見が変わっておらず、以前のままだった。
 また、モンスターの気配なども感じることが無かった。
 もしかしたら、この辺り一帯が不思議な力で護られているのかも知れない。
 体を休めながら、三人はぼんやりとそんなことを考えていた。
 一時間ほど休んだ後、一同は改めてクリーンファクトリーに向かって出発した。
 すでに道のりは半分ほど来てはいるが、ここから先は坂道が続く。
 幹線道路だった街道を上っている三人の前に、突如素早い動きで黒い影が飛び込んできた。
「こ、こいつは……!」
 それは先日、バピロスで交戦したカマと呪いの鎧だった。
 ただし、今回は呪いの鎧がカマの背中に騎乗しているという状態だったが。
 カマを乗りこなせるようになった合体モンスターで、カマライダーという。
 呪いの鎧のパワーに加え、カマの機動力を併せ持つという、なかなかの強豪モンスターである。
「このやろーっ!」
 石川が切りかかるが、敵は素早い。
 何度も切りかかったが、カマライダーは身軽に攻撃をかわし、その鋭い呪いの剣とカマの両腕で逆に切り付けてくる。
「このっ!」
 岡野が籠手でその攻撃を受け止め、拳を叩き込もうとするが、やはりカマのスピードで、その拳の一撃もかわされてしまった。
「くっそー……。あいつら、別々に襲い掛かってくるより強くなってねぇ!?」
 息を切らせながら、岡野が前方に立ちふさがるカマライダーを睨みつける。
 呪いの鎧が見事にカマを操ることで、カマ単体の時よりも、効率的な動きができるようになっているのだ。
「じゃあ、これならどうだ!」
 上田が前に出て、印を結び呪文を唱える。

 オーゾ・ナル・エー!
(時よ、緩やかになれ!)

「減速呪文・スロー!」

 ヴュヴュヴュヴュヴュ……

 上田の掌から音波のような呪文が飛び出し、それはカマライダーに命中した。
「キッ、キキッ……」
 カマが焦ったような鳴き声を上げる。
 チャリンコナイトの時と同じく、素早い相手のスピードを奪うという戦法だった。
 スピードさえ半減してしまえば、もはや遅るるに足らず。
「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 岡野は地面を蹴って一気に跳躍すると、渾身の気を込めた拳を繰り出す。
「オーラナックル!」

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!
 キラッ!

「ギャェェェェェェェェェェッ!」
 気をまとった拳は、カマに正面から命中し、その背中にまたがる呪いの鎧ごと、お空のお星さまに変えたのだった。
 気が付くと、あたりの空には星がいくつが出ていた。
 太陽は西の空に沈みかけ、空も赤く染まっている。
「もう夜か……」
 クリーンファクトリーはほとんど目と鼻の先ではあったが、消耗した状態で突入すれば、返り討ちにあるのは目に見えている。
 ちょうど右手にレストランだった建物があった。
 ここもやはり無人ではあったが、店の中は荒らされた様子もなく、食料もたっぷりと貯蔵されている。
「今夜はここに泊まらせてもらおう」
「そうだね……」
 一同はレストランに入ると、内側から鍵をかける。

 三人は夕食を済ませると、一息ついた。
「あ~、やっぱりサクラちゃんたちの方が料理上手いよね……」
 今回の調理を担当した上田が嘆息しながら言った。
 たまに手伝いなどをしていたとはいえ、それでもやはり、サクラ達には遠く及ばなかった。
「ガダメ呼んで作ってもらえば良かったかな……」
 ちらりと石川の荷物に入っている、ガダメの召喚アイテムを見ながら上田が呟いた。
「そんな用事で呼んだら怒られるって……」
 そんな上田に、思わず苦笑してしまう石川だった。
 なお、後日そのことを聞いたガダメ曰く、
「なんだ、それならそれで呼んでくれても構わなかったのに」
 意外と気さくなガダメなのであった。



~つづく~
 というわけで、今日はタイトル通り、現在執筆中の、小説版『ファイクエII』関連の元ネタやら何やらを書いていきたいと思います。

 ファイクエと言えば、『ファイクエ』の人気投票の締め切りまで二週間を切りましたので、早めにご参加頂ければ有難いです……。m(_ _;)m


 さて、原典の『II』は、以前にも話しましたが、クラスメイトの脱退問題が本格化していたため、まともに完成していませんでした(脱退問題自体は『I』の頃からありましたが)。

 きちんと書いたのが、岡ちゃんともう一人のクラスメイト(小説版のアバンで『大ちゃん』として登場)の最強装備、それから1面、教会、最終面のマップの三つと、敵キャラのページだけでした。


 ちなみに、今回は全部で画像が三つですが、全て右下クリックで元サイズが出ます。

イメージ 1

 今までにも何度か上げましたが、これが『II』のフィールドマップ。
 なんと、自由帳の1ページに収まっています。

 んで、小説版を書くにあたって、このマップの特徴(最終面の周囲に、敵の拠点がある)を見ていてふと考えたのが、

「どうせ現実世界が変異したんなら、こっちに元からある施設をステージにした方が面白くね?」

 といったことでした。
 んで、できたのがコレ。

イメージ 2

 規模としては比べ物にならないほど広大になりましたね(爆)。
 左下は『丘陵地帯』と書いていたのですが、写真では切れてしまいました(汗)。

 実はこの地図、この記事を書く一時間ほど前に書きました(笑)。
 御覧の通り、幹線道路などは略していますが、地形そのものに関しては『実物』に割と忠実に描いてたりします。(^ ^;)


 さて、この「最初からどのステージにも(行こうと思えば)行ける」というシチュエーション、何か思い出さないでしょうか?

 バラしてしまうと、今回の『ファイクエII』、初代のロックマンシリーズ(特に『&フォルテ』)と、SFCの『がんばれゴエモン2』を意識しました(ゴエモンの方は主にキャラの特徴や新規のザコについてですが)。
 テッちゃんの斬撃技なんかも、武器ゲットシステム(というか『X4』のゼロのラーニング)が発想のきっかけになってたり。


 ステージに関して言えば、壱の松原はフリーズマン、次回登場予定のクリーンファクトリーはジャンクマンのステージBGMをイメージしています。


 そういう理由もあって、設定上は各魔衝騎士の強さというのも、実はそんなに差が無かったりします。
 小説の都合上、順番にそれぞれのクリスタルが反応してますが、実際は「どこから攻略してもいい」みたいな……。

 仮にアクションゲームで作ってたら、石川は『全能力標準的、遠距離も近距離も攻撃できるゴエモンタイプ』、上田は『移動速度と耐久力は低いが、遠距離攻撃に優れたエビス丸タイプ』、岡野は『遠距離攻撃は出来ないが、攻撃力・移動力に優れたサスケタイプ』って感じになるかなぁ、と思ったり(サスケはクナイ投げの遠距離攻撃がありますが)。



 さて、ここからは元ネタ関係なしに、ボスについてです。

 原典ではこんな感じで……。

イメージ 3

 一作目に続いて、既存のキャラをナイトタイプにしたものの他、ほとんどが強化型のスライムで、最後にはそれらが合体する、という展開でした(ちなみに小6の時の自由帳のリメイク版では、ボスが全員彼らになったほか、両足になるスライムは統合されて『巨大な下半身を持つスライム』になりました)。

 んで、小説版にするにあたって「さすがにそのままじゃマズイよなぁ……」と考えた結果、生まれたのが魔衝騎士たちでした。
「統一されたモチーフがある」という点では、原典のボススライムに通じる部分もありますね。


 ちなみに左端の列の真ん中にいる『四次元ナイト』は大ちゃん作の中ボスで、彼はそのまま小説版にも登場する予定です(やっぱり詳細な設定はなかったので、キャラ付けは私のオリジナルになりますが)。

 余談ですが、このページに映ってる雑魚キャラも、『スカイメタルクリボー』や『さそりスライム』、『スライム軍1』については、テッちゃんや岡ちゃんが手掛けたものです。


 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。
イメージ 1

 今晩は、アカサカです。
『TFシージ』で、ジェットロン保安部隊の三人(アシッドストーム、イオンストーム、ノヴァストーム)が商品化だと……!?
 いいぞ、もっとやれ(笑)。

 ともあれ、初めて本当の意味で劇中通りの変形をする保安部隊が商品化されるわけですね。
 アシッドストーム以外の二人の名前が公言されるのも、これが初……?

 さて、前回からスパンが短いですが、明日からまた二連休なので、今日は実家に帰ってきました。

イメージ 2

 夕食はソニックの中で、新発売の豚骨焼ラーメンとほろよいです。


 さて、前回の小説版『ファイクエII』に出た雑魚キャラですが、元デザインがあるものを、この場にアップしておこうと思います。
 なお、それらは右下クリックで元サイズが出ます。

イメージ 3

 まず『腐った柿の実』は再掲になりますが、ファイクエ以前の企画で考えてた敵キャラが元ネタです。
 今回のデザインでは、ドラクエ5のガップリン系モンスターのように、『巨大な実に顔が付いた姿』にしようと思っています。
 ちなみに、五郎川団地に出た暴走パトカーも元デザインはこれです。

イメージ 4

 呪いの鎧はリメイク版『II』で登場しました。
 手に持っているのが呪いの剣と呪いの盾です。

 上の『パチ』共々、デザインはテッちゃんですが、どんなキャラなのかは聞いていなかったので、設定は私が考えました。

イメージ 6

 同じく、リメイク版『II』に登場したカマ。
 右上の『合体スライム』とこいつもテッちゃん製です。

イメージ 7

 さて、この後は先ほどサニーで買ってきたお好み焼きと本搾りで晩酌といきたいと思います。

イメージ 5

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。
 という訳で、前回からちょっと間が空きましたが、今日は小説版『ファイクエII』第4話の完結編と行こうと思います。
 なお、前回はコチラ

 それでは、本文スタート!

 三階へと上がって来た三人は、今度は書籍売り場だった場所を横切って屋上へと向かう。
 書籍売り場は、トゥエクラニフの本が並ぶ空間へと変わっていた。
 それはさながら、あのブッコフ図書館を思い出させる。
 歩きながら、それらを横目で見ていた上田がふと立ち止まる。
「トゥエクラニフの本か……。もし手元に置いてたら、世界を元に戻した後も、持っておけるかな……?」
 そう言いながら、棚に並んでいる本を一冊手に取った。
 それを見て、石川と岡野が呆れたように声を掛ける。
「上ちゃん、そんな事してないで、早く先に進もうぜ」
「いいじゃん、ちょっとくらい。どれどれ……」
 何気なく本を開いた上田だが、次の瞬間、その表情が凍り付く。
 なんと、本の中に、巨大な蝶の頭と胴体、それに腹が折りたたまれていたのだ。
 次の瞬間、その蝶の身体が展開して、宙に舞い上がる。
 丁度、本の部分が羽になっていて、パタパタと空中で羽ばたいている。
「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 思わず上田が悲鳴を上げ、本を投げ出した。
 本に擬態しているブック蝶というモンスターで、今の上田のように、うかつに自分を手に取った者に襲い掛かってエサにしてしまうのだ。
 完全に不意打ちを食らった格好になった上田はその場に尻餅をつく。
 それを逃さず、ブック蝶は上田に飛びかかった。
 だが、上田がブック蝶の餌食になってしまう事は無かった。
 一瞬早く動いた石川のブレイブセイバーが、ブック蝶の羽をずんばらりんと切り裂いていたのだ。
「全く、だから余計な事するなって言ったのに……」
 パチンと剣を鞘に納めながら、石川が冷ややかに言った。
「ご、ごめん……」
 さすがに上田も、素直に謝るとすまなさそうに頭を掻きながら立ち上がった。

 ブック蝶を退け、先へと進む三人に、さらに潜んでいたモンスター達が襲い掛かった。
 左腕に魔法ライフルを装備したショットアーマー。
 全身が鋭利な刃物で出来た、カマキリとケンタウロスを合わせたような姿のカマ。
 電撃を浴びせてくるパチ。
 両腕が翼に進化したスカイザコ。
 それらを撃退しながら、石川達は屋上へと続く階段を駆け上っていった。
 そしてついに、
「着いた!」
「着いたね!」
 三人は屋上駐車場までたどり着いたのだった。
 屋上は車止めや外灯などが消滅しており、遮蔽物の無い広場のようになっていた。
 三人が上がって来た階段とは丁度反対側に、バピロスの看板が付いた出入口がある。
 その看板からは、緑色の光が漏れていた。
「あれか!」
 看板に向かって、岡野が跳躍した。
「あっ、待って岡ちゃん! 嫌な反応が……」
 上田がその言葉を発するのがあと一瞬早ければ、岡野は無傷で済んだだろう。
 しかし、わずかに遅かった。

 バリバリバリバリバリバリバリバリ!

「しびればびれぶ~~~っ!」
 凄まじい電撃に全身を蹂躙され、岡野が悲鳴を上げた。
 真っ黒こげになった岡野は、その場に落下する。
「ど、どうなってんの……?」
 口から「ケホッ」と煙を吐き出しながら、岡野が呟いた。
「どうやら、クリスタルはバリアで守られてるみたいだね……」
 岡野にヒールをかけながら、上田が看板の方を見据える。
「ええっ、じゃあどうやってクリスタルを手に入れたら……」
 困った顔になる石川に、上田がにっこりわらって言った。
「大丈夫、任せておいて」
 そう言うと、上田は看板によじ登って、呪文を唱えた。

 ノーダ・メル・ジー!
(我が障害を跳ね除けん!)

「障壁無効化呪文・インビジ!」
 その瞬間、上田の全身が淡い光に包まれる。
 そのまま上田は、まるで最初からそんなものは無かったかのように、バリアの中を進んでいった。
 どうやら上田が使ったのは、バリアなど、ダメージを与える結界などを無効化する呪文らしかった。
「やった! 取ったどー!」
 緑色のクリスタル――『風の緑玉』を掲げて、上田が叫んだ。
 その時である。
「ご苦労だったな、異世界の少年たち」
 ゴオッと風を切るような音が響き、巨大な影が瞬時にその場に飛び込んできたのだ。
 猛禽類を連想させる兜をかぶり、槍を持った細身の魔衝騎士。
 スピアーである。
 スピアーは、石川達がクリスタルを手に入れたところを強奪しようと、待ち構えていたのだ。
「我が名は魔衝騎士スピアー! 早速だが、そのクリスタルを渡してもらおうか!」
「や~だよ! 誰が渡すかってんだ!」
 スピアーに対して、石川がアッカンベーをする。
「フン、ならば命ごと頂くまで!」
 スピアーは槍を構えると、三人に向かって突っ込んでくる。
「は、速い!」
 慌てて身をかわした三人のすぐそばを、スピアーは突き抜けていった。
「あいつ、とんでもなく素早いぞ!」
「そうみたいだね」
 急いで上田は、ファストを唱えて自分たちの速度を上げる。
 しかし、
「無駄な事よ! はあっ!」
 空中を縦横無尽に飛翔するスピアーは、三人の攻撃を易々とかわしては攻撃を加えてくる。
「くっそー、じゃあこれならどうだ!」

 ソル・モー・ベール・ズ!
(羽よりも軽くならん!)

「飛翔呪文・フライヤー!」
 上田の身体がフワリと宙に浮かんだ。
 フライヤーで、敵の空中殺法に対抗しようというのだ。
 だが、いくらある程度レベルが戻ってきたとはいえ、そのスピードの差は歴然としていた。
「はっはっは、遅い遅い!」

 ガキィィィィィィィィン!

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 あっさりと蹴りを食らい、上田の身体が地面に投げ出される。
「上ちゃん!」
 石川と岡野が上田に駆け寄って、その身体を抱き起した。
「駄目だぁ……。今のおれのレベルじゃ、空中戦じゃアイツにかなわない」
 ガックリと上田がうなだれる。
「ふっふっふ、実力の差が分かったか!? ならば、次はこれだ!」
 スピアーの口が、素早く呪文を唱える。

 ヴェルク・シー・レイ・ウェン・ザー・ザム!
(風の神よ、その羽根で切り裂け!)

「真空呪文・トルネード!」
 スピアーの掌から中級の竜巻が飛び出し、三人に襲い掛かった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 かまいたちに全身を切り刻まれ、三人が吹き飛ばされる。
「くっ、このままじゃ……」
 石川が悔しそうに、唇を噛んだ。
「テッちゃん! アイツの素早い攻撃に反応出来る仲間を呼ぼう! ガダメを!」
「そうか!」
 上田の声に、石川は懐から、眼球型のアイテムを取り出す。
「頼むぞ、ガダメ!」
 石川が眼球を天高く放り投げた。

 シュパーン!

「タンガンガ~ン!」
 眼球がまばゆい光を放ち、その中からガダメが姿を現す。
「私が相手だ!」
 ガダメはスピアーに向き直ると、得物の爪を構える。
「ふっ、スパイドル軍の三魔爪か。こざかしい!」
 スピアーは槍を構えると、ガダメの横すれすれを猛スピードで通過する。

 ガシィッ!

 すれ違いざまに繰り出された槍の一撃は、ガダメの鎧に鋭い切り傷を生んでいた。
「くっ!」
 その傷を見て、ガダメが舌打ちをする。
「はっはっはっは! 三魔爪など何するものぞ! 敗残兵は大人しく引っ込んでいるがいい!」

 ガキィン! ガキィン! ガキィィィン!

 自信に満ちた笑い声と共に、目にもとまらぬ速さでガダメの鎧に次々と新しい傷が生まれていく。
 そのヒット・アンド・アウェイ戦法に、ガダメも成すすべが無いように思われた。
「ああっ! ガダメ!」
 一方的にやられているガダメを見て、石川達が叫び声をあげた。
 だが、実際のガダメの方はというと、全く逆の感情を抱いていた。
 ガダメは片方しかない目を閉じ、静かに精神を統一して待っていたのだ。
 スピアーを捕らえるチャンスを。
 ガダメの、武術を極めた魔界騎士としての感覚が、迫りくる殺気を敏感に感じ取る。
 それはほとんど野生動物の勘に近いものがあった。
「とどめだ!」
 スピアーがガダメを仕留めようと槍を繰り出すのと、ガダメがカッと目を見開いたのは同時であった。
「そこだ!」

 ガシィィィィィッ!

「なっ、何いっ!?」
 先ほどまでの余裕に満ちた表情とは打って変わって、スピアーの目が驚愕のために見開かれる。
 彼の槍は、その腕ごと、ガダメによってガッチリと掴まれていたのだ。
「はあっ!」

 バキッ!

 気合一閃、ガダメは槍をへし折ると、続けてスピアーに強烈な回し蹴りを見舞った。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 バキィィィィィィィィィィィィィィィィッ!

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 スピアーのボディが吹っ飛び、地面に勢いよく叩きつけられる。
 そこを逃すガダメではない。
「ガダメ・電磁爪!」
 ガダメは一気にスピアーに駆け寄ると、電撃をまとわせた爪を、スピアーのボディに突き立てた。

 バリバリバリバリバリバリ!

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 またも全身を電撃に貫かれ、スピアーが悲鳴を上げる。
「よぉし! おれもガダメに負けてられないぜ!」
 石川はブレイブセイバーを掲げると、呪文を唱えた。

 ゴッ・ディ・カーミ・レイ!
(神の稲妻よ、裁きを!)

「雷撃呪文・サンダス!」

 ピシャァァァァァァァァァァァァァン!

 上空から稲妻が降り注ぎ、ブレイブセイバーの刃に落ちた。
 石川は稲妻をまとった剣を振りかざすと、そのままガダメ達の方に向かって駆けだす。
「行くぜ、ガダメ!」
「おう!」
 ガダメはなおも電撃を流し、スピアーをその場に釘付けにする。
 激突の瞬間ガダメは身をかわした。
「雷鳴斬!」

 ズバァァァァァァァァァァァァァァァッ!

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 電撃をまとったブレイブセイバーがスピアーの機体を横に薙ぎ払い、両断されたスピアーは大爆発を起こした。


「これで四つ目! 残りは二つだ!」
 手に入れた『風の緑玉』を囲んで、石川達が嬉しそうにはしゃぐ。
 ガダメもそんな彼らを見つめて「フッ」と笑みを浮かべると、満足そうに頷いていた。
 果たして、次のクリスタルはどこにあるのか……。



~つづく~

 というわけで、小説版『ファイクエII』も、中間地点に到達してきました。
『Ⅰ』の頃に比べると短いですが、もともと『II』は原典の時点でシリーズ中、一番展開が短い作品でしたし……。

 その分、こないだのように外伝で話数を稼げたらなぁ、とも思っています。(^ ^;)

 ちなみに今回戦った魔衝騎士のスピアーですが、彼との戦いは、ちょっと『ロックマン&フォルテ』版のテングマンを意識してます。

 この辺りの詳細は、また近々裏話・設定紹介記事でも作ろうかと……。

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。
 サイトを更新しました。
 今日は『文庫本コーナー』に、小説版『ファイクエII』の第1話を掲載しています。


 という訳で、今日は昨日に続いて小説版『ファイクエII』の第4話・その2といきたいと思います。
 思った以上に新モンスターを登場させることが出来ました。

 ちなみに、今回のシーン、最初に戦う相手はテッちゃん作で、次に出てくるモンスターは某『ドラクエ』のモンスターのパロディだったりします(現在進行中の『ファイクエ』4コマの、クラスメイトのパートとの兼ね合いもあって登場させました)。

 では、本文スタート!

 焼きナスで腹を満たした三人は、建物の南出入口付近の階段を昇って、二階へと進む。
 ちなみに南出入口は鋼鉄製の扉へと姿を変えており、がっちりと鍵がかかっていて出入り不可能になっていた。
 階段を上がった先は、変異前であれば玩具屋が入居していた場所だ。
 その前を通り、衣料品売り場だったエリアに入る。
 一同は、今度は売り場の北側に向かって進んでいた。
 彼らが二階に上がって来た南階段の、三階へ進む部分がシャッターのようなもので塞がれていたからだ。
 衣料品売り場は、無数の武器や鎧などが整然と並んだ、武器屋のような空間へと姿を変えていた。
「へぇ、こりゃ凄いや。もしかしたら、この中に役に立つ武器とかあるかな……」
 しげしげと並んでいる武器を見つめながら、上田が呟く。
 それに対して、錫杖が心外そうに言った。
「マスター、私では不満なのですか?」
「冗談だよ、冗談。おれもテッちゃん達も、武器は一番いいのをもう持ってるわけだし……」
「もう……」
 その時だ。
「危ない!」
「わっ!」
 いきなり石川に突き飛ばされて、上田が床に転がる。
 次の瞬間、彼が立っていた場所には、両刃の剣が深々と突き刺さっていたのだ。
「あ、危なかった……。ありがと、テッちゃん」
 よく見ると、その剣は、鍔の部分に一つの目が付いている。
 その剣は、まるで見えない力で引き抜かれたかのように床から離れると、真っすぐ空中に浮き上がった。
 続けて、
「ケケケケケケケケッ!」
 突如笑い声が響き、棚から凶悪そうな目つきに牙の生えた口が付いた盾が飛び出してきたのだ。
 それぞれ呪いの剣、呪いの盾という、武具が意志を持ったモンスターである。
 普段は普通の武具に擬態し、それを手に取った者の生気を吸い取って、それを自分達の糧にしている。
 さらに、
「ゴォォォォッ!」
「うわっ!」
 響くような唸り声をあげて、全身甲冑がその場に飛び出してきた。
 その兜の奥には鋭い目が光っているが、よく見ると、甲冑と甲冑の隙間には、本来あるはずの肉体が無かった。
 同じく鎧自体に魂が宿ったモンスターで、呪いの鎧という。
「ゴォォォォォォッ!」
 呪いの鎧の雄たけびに呼応するように、呪いの剣と呪いの盾が飛んでいき、その両手に収まった。
「が、合体した……?」
 呆然とその光景を見守っていた岡野が呟く。
 確かに合体と言っても、間違いではないかもしれない。
「ゴォォォォッ!」
 呪いの鎧は剣をかざして、三人に向かって突進してきた。
「このおっ!」
 石川がその一撃をブレイブセイバーで受け止め、周囲に火花が散る。
 その隙を逃さず、岡野が飛び上がって拳を繰り出した。
 だが、呪いの鎧はその動きに反応して、すかさず盾で岡野のパンチを受け止める。
「か、硬てぇ……」
 戦神の籠手のおかげで拳にダメージこそ無かったものの、その盾の防御力は並の物ではなかった。
「あの剣と盾は厄介だな……。まずはあれを何とかしないと」
 苦々しい表情で、岡野が呪いの剣と呪いの盾を見据える。
「ねえ、錫杖。あの剣も盾も、モンスターだって事は生きてるって事だよね?」
「ええ、そうなりますね」
「それなら……。ねぇ、テッちゃん」
「何?」
 石川に対して、上田が何ごとか耳打ちをする。
 それを聞いて、石川も納得したようにうなずいた。
「よし、やってみるか」
 二人は横に並ぶと、先ほどのお化けナスビとの戦いの時のように揃って呪文を唱える。

 ゼー・レイ・ヒーラ・ヴィッセル!

「閃光呪文・バーネイ!」
 再び、二人の掌から帯状の炎が噴き出した。
「ムンッ!」
 呪いの鎧は、盾でそれを受け止める。
 だが、二人は呪文を放ち続けていた。
「頑張って、テッちゃん! おれの狙い通りなら……」

 ゴォォォォォォォォォォォォォッ!

 呪いの鎧は二人から放たれる火炎を盾で防ぎ続けていたが、そうこうしている内に……。

 ジジジ……ジジジジ……

 徐々に、呪いの盾が真っ赤に熱せられてきた。
 そしてついに、
「熱ッチィィィィィィィィィィィィィッ!」
 耐えかねた盾が、思わず呪いの鎧の手から離れて飛び上がったのだ。
「イイッ!?」
 盾を失った呪いの鎧は慌てた声を出すが、もう遅い。

 ゴォォォォォォォォォッ!

 防御手段を失ったところに、二人分のバーネイが直撃する。
「ギェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!」
 呪いの鎧は火だるまになって悲鳴を上げる。
 そこへ、
「今だぁっ!」
 チャンスとばかりに岡野が飛びかかった。
「おらおらおらおらおらおら!」
「グワァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
 岡野にボコスカ蹴りを入れられ、哀れ、呪いの鎧は鉄クズと化してしまったのだった。
「や、やったね、岡ちゃん」
 息を切らせながら親指を立てる上田に、岡野も親指を立てて返した。


 呪いの鎧を撃退し、一同はさらに奥へと進む。
 現在、彼らがいるのは宝石店だった場所である。
 財宝には世界の別は無いのか、そこは比較的、変異前と変わらない雰囲気だった。
 とはいえ、彼らは小学生。
 まだまだこういった財宝に興味がある訳でもなく、足早に通り過ぎようとした。
 その時だ。
「な、なんだ……?」
 みょうな違和感を感じて石川が立ち止まる。
 ふと振り向くと、上田と岡野の姿がなく、代わりに居たのは、妙にちんちくりんな化物と、鬼から角を取ったような姿の化物だった。
「上ちゃん!? 岡ちゃん!?……さてはお前達が、二人を食ったんだな! 許さん!」
 石川は二体の化け物に向かって剣を構える。
 が、化物たちは戦いを拒否するように首をブンブンと横に振った。
「臆病者め! 二人の仇だ! やっつけてやる!」
 剣を振りかざして化物に飛びかかる石川だったが、突如、その身体がどこから現れたのか巨大な蛇によってぐるぐる巻きにされる。
 その耳元で、何やら怒鳴り声が聞こえた。
 何を言っているのか、聞こえているのに分からない。
「離せ! くそっ……」
 もがく石川だったが、いきなり両頬を連続でひっぱたかれる。

 ビシバシ! ビシバシ!

「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 思わず頬を押さえて叫ぶ石川に、呆れたような声が掛けられた。
「テッちゃん、目ぇ覚めた?」
「へっ?」
 見れば、目の前にいたのは岡野だ。
 よく見ると、自分の身体をぐるぐる巻きにしていたのは錫杖が変形したチェーンだった。
「ど……どうしてたの、おれ?」
「混乱の呪文をかけられたんだよ。パニックって言うの」
 かつてブッコフタウンで学んだ呪文の事を思い出しながら、上田が言う。
 先ほど石川の思考が妙に短絡的になっていたのも、この呪文の作用だったのだ。
「こいつがパニックをかけたんですよ」
 錫杖の杖の部分の下で、見慣れぬモンスターが抑え込まれていた。
 目口のついた袋のような姿で、ヘラヘラと人を馬鹿にしたような笑いを浮かべながら、一息ごとにルビーだのサファイアだの金貨だの真珠だのを噴き上げては吸い込む妙な奴だ。
 長い年月を経る事で、宝石袋に魂が宿った、マッドジュエルというモンスターである。
 石川は頭を振って気を取り直すと、二人に向かって頭を下げた。
「ごめん、二人共。大丈夫?」
「おれ達は何ともないよ」
 二人は肩をすくめる。
 マッドジュエルは、その顔つきの通り何も考えていないのか、束縛から解放されると、えへらえへらと笑いながら、その場から去っていった。
 三人はそれを見送ると、三階へと足を運ぶのであった。



~つづく~
 はい、という訳で、今日は小説版『ファイクエII』の第4話といきたいと思います。
 今回のステージは、今までで一番舞台が想像しやすいかも……(笑)。

 では、本文スタート!

 変異してしまった石九小の最上階、その南校舎。
 変異前であれば、そこには屋上に出る階段があるのだが、現在、その奥は豪奢な部屋になっていた。
 広さはちょうど、この学校の校長室くらいである。
 そこでは一人の人物が、満足そうにトゥエクラニフ化した地上を見下ろしていた。
 クライヤ山脈の屋敷に居た、あの魔術師風の男である。
 彼の名はマージュ・ギッカーナII世。
 正真正銘、あのマージュの弟であり、現在、ダークマジッカーを取り仕切っている人物にして、トゥエクラニフでも五本の指に入る天才魔導学者――それが彼の正体であった。
「フフフフ……」
 マージュII世の口許から、思わず笑みがこぼれる。
「この光景も、まもなくこのウスティジネーグ全てがそうなるのだ……」
 今から起こることが楽しみでしょうがない、といった口ぶりであった。
 ちなみに『ウスティジネーグ』とは、彼らトゥエクラニフの人間から見た、現実世界の事である。
 言うまでもなく、今回の騒動を引き起こしたのは、このマージュII世であったのだ。
「オォッ、ジーザス! 人々に幸せを!」
 大げさな手ぶりで頭を押さえると、皮肉るように呟いた。
 マージュII世は手にした杖を軽く振る。
 同時に彼の姿はその場から消え、校舎の遥か地下に作られた大広間に転移した。
 そこはマージュII世が先ほどまでいた部屋の数十倍はありそうな巨大な空間だった。
 壁際はビッチリと重厚なメカが積み上げられ、床には巨大な魔方陣が描かれていた。
 さらに、魔法陣には六つの祭壇が等間隔で並べられている。
 丁度、例のクリスタルが納められそうなサイズだ。
 そして、魔法陣の中心にはまるで聖火台のようなものが据えられ、怪しい黒い炎が揺らめいていた。
 敢えて言うならば、それは魔炎台とでも呼ぼうか。
 マージュII世はその魔炎台の前まで来ると、ひざまずいた。
 魔炎台の黒い炎が一段と燃え上がる。
 <マージュII世よ!>
 強烈なテレパシーがマージュII世の頭の中に響く。
 マージュII世はビクッとして、深々と頭を下げた。
 <救世主どもは始末したか!?>
「はっ、今しばらくご猶予を……。クリスタルの回収と並行して、刺客を送り込んでおりますゆえ」
 <うむ……。計画の方はどうなっておるか!?>
「ご安心ください。計画は順調に進んでおります。ウスティジネーグ全土をトゥエクラニフ化し、貴方様をこの世界へとお招きするのも時間の問題かと……」
 <マージュII世、期待しておるぞ>
「ははっ!」
 炎はゆっくりと収まり、再び元の大きさに戻った。
 マージュII世もようやく顔を上げる。
 黒い炎の照り返しを受け、その仮面が怪しく光っていた。


 さて、こちらはその石九小から南に一キロほど行ったところにある商業施設。
 地元ではバピロスと呼ばれている大型スーパーである。
 今、この建物の入り口に立っている者がいた。
 細身で鋭角的なシルエットを持ち、頭部は猛禽類を象ったヘルメットを被ったようなデザインをしている。
 手には細い槍を持ち、左胸には『香』という文字に似た紋章が描かれている。
 スピアーという魔衝騎士で、このバピロスにクリスタルの反応があったのを感知し、いち早く駆けつけてきたのだ。
 スピアーはバピロスの天辺、屋上駐車場を見上げて不敵な笑みを浮かべる。
「クリスタルの反応はこの上か……。ここにあるクリスタル、このスピアーがもらった!」
 スピアーは一気に飛び上がると、一気に屋上まで飛んでいく。
 見れば、屋上の看板から、緑色の光が漏れていた。
「そこか!」
 スピアーは一気に看板に向かって飛翔する。
 が、

 バリバリバリバリバリバリバリバリ!

「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 クリスタルに手を伸ばした途端、全身をすさまじい電撃に包まれて悲鳴を上げる。
 真っ黒こげになったスピアーは、屋上の床へと落下した。
「ぐぅぅっ……。バリアのようなもので包まれている……。金属製のボディを持つオレでは、このバリアを突破するのは無理か……。ならば……」
 何ごとか思いついたスピアーは、槍を杖代わりにして立ち上がると、その場から飛び立った。

 一方、石川達もクリスタルの反応を察知して、このバピロスへとやってきていた。
 彼らも看板から緑色の光が漏れているのを発見する。
「屋上か……。屋上に行くなら、自動車用の坂道を使えば早いんだけど……」
 言いながら、上田がチラリと屋上につながるスロープに目をやる。
 スロープは丁度、中ほどで崩落したような形になっており、例え強化された岡野の跳躍力でも反対側に渡る事は難しそうだった。
「やっぱり、地道に一階から攻めていくしかないか……」
 軽くため息をついた石川を先頭に、一同はダンジョンと化した元スーパーへと入っていった。
 入口から入ると、本来ならすぐ左手に屋上につながるエレベーターと階段があるのだが、案の定と言うべきか、そう簡単に屋上へは行かせまいぞと言わんばかりに、そこは壁へと変化していた。
 三人はフードコートだった大広間を抜け、食品売り場へと出る。
 売り場の通路もあちこちに新たな壁が出来ており、まさに迷路の様相を醸していた。
 ここに来るまでに、三階まで行けるエスカレーターも確認してみたが、やはり途中で大きな岩に塞がれており、こちらも使用不能になっていた。
 現在、三人は生鮮食品売り場だった通路を進んでいた。
 その時、
「キキーッ!」
 甲高い叫び声がして、棚からザコI世とザコII世、それから、人の頭ほどもある巨大な柿の実が飛び出してきたのだ。
 よく見ると、全体的に腐りかけており、人のように目と口が付いている。
 食べられることなく腐ってしまった柿の実の怨念から生まれた、腐った柿の実というモンスターである。
 その甘ったるすぎるような、腐敗臭のような妙なにおいに、三人は思わず鼻をつまむ。
 正直、こんな奴を相手に武器や拳で攻撃を加えるのは戸惑われた。
「てなわけで、上ちゃん、お願い。おれとテッちゃんは、ザコを相手にしてるから」
 岡野がスチャッと上田に向かって手を上げ、石川と共にザコ達に向かっていく。
「ゲッ、おれが? まぁ、しょうがないか……」
 ブツブツ言いながらも、上田は錫杖を構えると呪文を唱える。

 ディ・カ・ダー・マ・モウ・バッ・ダ!
(火の神よ、猛火の裁きを!)

「火炎呪文・メガフレア!」

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 上田の掌から、サッカーボール大の火球が飛び出して腐った柿の実を包み込む。
「ギャヘーッ!」
 腐った柿の実は悲鳴を上げると、次の瞬間、程よい焼き加減の焼き柿に姿を変えていた。
 モンスターを片付けた石川達は、さらに店舗の南側の階段に向かって進んでいく。
 その時だ。
「ねぇ、何か聞こえない?」
 ふと、上田が足を止めて呟いた。
「ん?」
 他の二人も耳を澄ませる。
 そんな三人の元に羽音のようなものが聞こえてきたのだ。

 バサバサ、バサバサ……

「んん……?」
 振り返った三人の視界に飛び込んできたのは、コウモリのような羽を生やし、目と口が付いたナスビの群れだった。
「食べて! 食べて!」
 ナスビが意志を持った、お化けナスビというモンスターだ。
 相手に大軍で襲い掛かって無理やり自分たちを食べさせ、食べすぎと灰汁(ナスビにはアルカロイドが含まれており、生食には向いていない)による中毒で相手を動けなくして、自分たちの苗床にしてしまおうという、地味ながら恐ろしいモンスターである。
「に、逃げろーっ!」
 三人はその数に圧倒され、思わず全速力で逃げ出す。
 しかし、それも長くは続かなかった。
 三人は壁際に追い詰められてしまったのだ。
 目前にせまるお化けナスビの大軍に、石川が腹をくくったように叫んだ。
「よぉし、こうなったら、望み通りにしてやる! 上ちゃん!」
「えっ?……あ、そっか!」
 石川の狙いを察した上田はこくりと頷く。
 二人は目を閉じると、精神を集中させて呪文を唱え始めた。

 ゼー・レイ・ヒーラ・ヴィッセル!
(閃光よ、閃け!)

「閃光呪文・バーネイ!」
 二人の掌から、同時に帯状の炎が飛び出し、お化けナスビ達に襲い掛かる。
「お、美味しく食べてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 断末魔の叫び声(?)をあげて焼きナスと化したナスビ達は床に落下する。
 その美味しそうな匂いに、思わず三人はゴクリと喉を鳴らす。
 おあつらえ向きに、そこは調味料コーナーであった。
「せっかくだし……いただいちゃおっか?」
「そうだね」
 石川達は手を合わせて「いただきます」と呟くと、その場にあった調味料で、大量の焼きナスを美味しく頂くのだった。



~つづく~
 ここ最近、ちょこちょこ突然ストップエラー(ブルー画面でQRコードと共に「問題が発生したためPCを再起動します」って文字が出る奴)が出てかなりビビります。
 今回に至っては約半日で二回出ましたし……。

 これが小説を書いてる最中だともうね……。
 しかも狙ったかのように前回の外伝と、今回の本編を書いてる時に起きたもんだから、それまで書いた部分がパァですよパァ。

 それでは、お話変わって……。(C.V.納谷悟朗)

 今日、買い物から帰ってきたら、寮の入り口にセミがとまっていました。

イメージ 1

 今年になってから実物を目にしたのは初めてです。
 もう夏ですねぇ……。

 さて、現在進めてる『ファイクエ 4コマクラブ』の復刊作業なんですが、その中のネタの一つを、サースィさんがリメイクしてくれました。
 こちらです。

イメージ 2

 元ネタはウチの妹が書いた原稿のネタですね。

イメージ 5

 さらに解説も。
「文章を右から左」っていうのは、私も子供の頃にそれこそ『漫画の描き方』とかで読みましたね。

 復刊版は一応、当時のクラスメイトの絵や構図を最大限、尊重して描いてますが、台詞だけは読みやすいように、配置を当時から変えている部分も多々あります(過去記事の比較画像を見て頂ければ分かるかと思いますが)。

 因みに、当時ウチの妹が描いたのはこちら。

イメージ 3

 で、それを基にして私が描いたのがこちら。

イメージ 4

 元のネタのオチが「ごぼてんの背中から正体不明の黒い翼が生えてて、それを見たルストが固まる」というのに対して、サースィさんの方は「普段とギャップがありすぎるごぼてんの姿にルストが面食らう」といった形になってますね。

 実は、今回の復刊作業にあたって、現在のネッ友・ブロ友さんにも4コマを執筆してもらえたらなぁ……とか、ちょっと考えてました。
 何せ今、私のネッ友さんには絵がお上手な方が数多くいらっしゃいますし……。(^ ^;)

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。
 サイトを更新しました。
 今日は『文庫本コーナー』です。

 本文の方は、『ファイクエII』第3話の完結編でいきたいと思います。

 なお、前回はコチラ
 では、本文スタート!

 シルバーンの幻覚から覚めた後、一同はさらに松原の奥へと進んでいった。
 一度、加羅津街道と呼ばれる、松原を突っ切っている道路に出た後、再び松原に入る。
 そうして、少し進んだ時だ。

 腹減った~……腹減った~……

 どこからともなく、そんな声が聞こえてきたのだ。
「な、なに……!?」
「なんか、この後の展開が予想できるような雰囲気……」

 ガァァァァァァァァァァァァァァッ!

 石川の言葉通り、次の瞬間、周囲の松の木に紛れていた無数の樹木のモンスターが、彼らに襲い掛かって来たのだ。
 よく見ると、その幹には凶悪そうな目と、鋭い牙を備えた口が付いている。
「ほらやっぱりーっ!」
 慌てて一同は走り出す。
 逃げながらも、上田はモンスター百科をその樹木モンスターに向ける事を忘れなかった。
 今回は反応があり、百科は薄い光を放ってページがめくれていく。
「なになに……『ダークトレント。邪悪な精霊が樹木に宿ったモンスター。肉食で凶暴ですが、火が弱点です』。……よぉ~し、だったらバーンの呪文で……」
 上田はダークトレントに向き直り、呪文を唱えようとするが、岡野が慌てて押しとどめる。
「ば、バカ! こんな所で火なんて使ったら、火事になっておれ達もみんな丸焼きだぞ!」
「あ、そっか……」
 岡野に言われて、上田の後頭部を汗がツツーッと流れる。
「逃げろーっ!」
 一同は再び、全速力で逃げ出したのだった。
 だが、ダークトレント達は樹木であるにもかかわらず、意外に素早い。
 その内の数匹が、岡野の眼前に迫った。
 岡野は慌てて石川を指さす。
「わーっ、やめろーっ! おれよりテッちゃんの方が美味いって!」
 そう言われて、ダークトレント達は石川の方を向く。
「げげっ! おれなんかより岡ちゃんの方が美味いってば!」
 今度は再び岡野の方を向く。
「テッちゃん!」
「岡ちゃん!」
「テッちゃん!」
「岡ちゃん!」
 お互いを指さす石川と岡野に、ダークトレント達はキョロキョロとしていたが、やがて「どっちでもいい!」とばかりに、同時に三人に襲い掛かった。
「どわーっ!」
 三人は死に物狂いで走り出した。
 やがて、松原を抜け、壊れかけの小さな橋を渡り、砂浜に出たあたりで、ようやくダークトレント達の追撃を逃れる事が出来た一同はゼイゼイと荒い息を吐く。
「危なかった~……」
 その時、開けた場所に出てようやく魔力が届くようになったのか、水晶球からサクラの声がした。
 <皆さん、その先です! そこにある岩から、クリスタルの反応がします!>
「えっ?」
 見れば、海の上に大きな岩があり、そこから青い光が漏れていた。
「そうか! あの岩の中にクリスタルがあるんだな!」
「よぉし、クリスタルはおれが手に入れてやるぜ!」
 石川と岡野はまたも睨み合うと、二人して岩に向かって駆けだした。
 そんな二人を見て、錫杖が不安げに呟く。
「あの二人で大丈夫なんでしょうか……?」
「大丈夫なわけないでしょ……」
 と、そこへ突然巨大な金棒が飛んできて、彼らの眼前に落ちる。

 バッシャァァァァァァァァァァァン!

「うわっ!」
「うわぁぁぁっ!」
 水しぶきを浴びながら、二人は吹っ飛ばされて尻餅をついた。
 続いて、二人の眼前に首のない人型のボディが飛来する。
 シルバーンだ。
 もちろん、金棒はシルバーンが投げたものだった。
 それまで彼らの様子を伺っていた頭部もボディに合体し、元のシルバーンの姿へと戻る。
「案内ご苦労アルね」
「何だと!?」
「サンキューアルよ!」
 シルバーンは石川達に向かって金棒を振り下ろし、二人は後方に飛んでそれを避けた。
「くそお! 絶対クリスタルは渡さないぞ!」
 意気込む石川と岡野はシルバーンに挑みかかるが、シルバーンは余裕の笑みを浮かべている。
「ナハハハハ! 今のお前達はワタクシには勝てないア~ル!」
 その言葉の通り、石川と岡野はシルバーンに圧倒されていた。
 理由は簡単だ。
 喧嘩して、お互いに足を引っ張り合っている二人では、いつもの連携が発揮できないのだ。
「何やってんだよ岡ちゃん!」
「テッちゃんこそ、いつもみたいにやってくれよ!」
 この状況下でもなお言い争う二人をあざ笑うように、シルバーンが愉快そうに言った。
「アヒャヒャヒャヒャ! 冥土の土産に教えてやるアルね! お前達はワタクシの催眠光線を浴びて喧嘩中ア~ル! その喧嘩、ワタクシ解かない限り永久に続くア~ル! アヒャヒャヒャ!」
 それを聞いて、石川達の瞳が驚愕のために見開かれた。
「ええっ!? で、でもおれは……」
 石川はちらりと岡野を見る。
 岡野の方でも、迷いがあるような表情で石川の方を見ていた。
「おれだって……」
 真相を知ってもなお仲直り出来ない二人だったが、錫杖が思いついたように叫ぶ。
「そうだ! 喧嘩したままでも戦えます。あのですね、マスター、ヒソヒソゴニョゴニョ……」
「な~るほど!」
 錫杖に耳打ちされた上田は、にっこり笑うと二人に向かって叫んだ。
「テッちゃん、岡ちゃん! そんなに一緒に戦いたくないなら、競争すればいいんだよ!」
「競争?」
「そう! 運動会のリレーを思い出して! 相手の足を引っ張らないで、どっちがあいつに勝つか競争するんだよ!」
 それを聞いて、石川も岡野もニヤリと笑みを浮かべた。
「面白い……!」
 二人はシルバーンに向き直ると、それぞれの武器を構えて突進していった。
「むむっ!」
 先ほどまでとは明らかに戦況が変わり、今度はシルバーンの方が防戦一方になる。
 お互いの足を引っ張らないように意識しながら戦っていた二人は、自然と連携が復活していたのだ。
「岡ちゃん、やるじゃん」
「テッちゃんもね」
「へへっ……」
「ふふっ……」
 二人はお互いを見つめて微笑みあう。
 すると、お互いの顔から隈が消え、顔つきも穏やかになっていった。
「あれ、おれ達……」
「なんか、変な夢を見てたような……」
 正気に戻った二人は、シルバーンの姿を認めると、それまでの事を思い出す。
「そうか! あいつのせいで、おれ達ケンカしてたんだ!」
「よくもやってくれたな! 行くぜ、岡ちゃん!」
「おう!」
 改めて、二人はシルバーンに向き直る。
 その顔つきは、完全に普段の二人に戻っていた。
「どどど、どーしてアルか!?」
 元に戻った二人を見て、今度はシルバーンの表情が驚愕のそれへと変わった。
 シルバーンがかけた催眠は、本当であれば彼が解除しない限り元には戻らないはずだった。
 それが、石川達は自力で催眠術を打ち破ったのだ。
「おれ達は、ずっと苦労を共にしてきたんだ! 見かけの心は揺れても、心の底までは操れないぜ!」
「今までの借り、きっちり返させてもらうぜ!」
 上田を加えた三人は、改めてシルバーンを取り囲む。
 だが、シルバーンの方も気を取り直すと叫んだ。
「それはどうかナ!? これでどうアルか!?」
 その口が素早く呪文を紡ぐ。

 マー・ボー・ルォーゾ!
(幻覚に惑わされよ!)

「幻惑呪文・ミラージュ!」

 ヴュァァァァァァァァァァァァァッ!

 シルバーンから、陽炎のような波動が飛び出して三人を覆う。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
「えっ!?」
「シ~ルバァァァァァン! シ~ルバァァァァァン!」
 その途端、シルバーンの姿が次々と増えていき、一同はあっという間に、十数体のシルバーンに囲まれてしまったのだ。
「これは……!?」
「幻覚だよ!」
 石川は手近にいたシルバーンに斬りつけるが、手ごたえはなく、切り裂かれたシルバーンはそのまま消滅する。
「何ッ!?」
「ニヘヘヘヘヘヘヘヘ!」
 笑い声と共に、シルバーンはさらにその数を増やしていった。
「うりゃぁっ!」
 上田も錫杖で斬りつけるが、真っ二つになったシルバーンはそのまま二体へとその数を増やす。
「いいっ!?」
 驚いた上田のどてっぱらに、金棒が飛んできて見事に命中した。

 ドガァァァァァァァァン!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「上ちゃん! うわぁぁぁっ!」
 上田に気を取られた石川も、本物のシルバーンの攻撃を受けて吹っ飛ばされる。
「くっそー! これじゃキリがないぜ!」
 悔しそうに岡野が唇を噛んだ。
「上ちゃん、どうすればいいんだよ!?」
「要するに本物が一人で、あとは幻なんだよ!」
 金棒を食らった腹部にヒールをかけながら、立ち上がった上田が叫ぶ。
「だから!?」
「えーっと……」
 石川の質問に、上田は腕を組んで考え込んだ。
 そのまましばらく考えていた上田だが、やがて思いついたように叫ぶ。
「そうだ影だよ!」
「影?」
「幻には影が無いんだ! 影があるのは本物だけだよ!」
「どうしてそうなの?」
「昔っから幻には影が無いっていうのが相場なの!」
「本当かよ……」
 汗ジトになる石川と岡野だが、上田はすさまじい剣幕で二人に怒鳴りつけた。
「つべこべ言わずに探す!」
「はっ、はい!」
 上田の迫力に圧倒された石川と岡野は、十数体のシルバーンを、目を凝らしてよく見てみる。
 すると、そんな中、一体だけ上田が言った通り、影がある個体がいたのだ。
「奴だ! 岡ちゃん、一気に決めるよ!」
「オーケー!」
 石川のブレイブセイバーにフレアの炎がともる。
 岡野も、シルバーンに向かって駆けだした。
「無っ駄ヨ~! 無駄アルね~!」
 たかをくくっていたシルバーンだったが、石川と岡野は、迷うことなく本物のシルバーンに向かって走ってくる。
「ま、まさか……」
 石川が剣を、岡野がかかと落としを繰り出したのは同時だった。
「火炎斬!」
「降龍かかと落とし!」

 ザシュゥゥゥゥゥゥッ!
 バキィィィィィィィン!

 石川の剣はシルバーンのボディに、同時に岡野のかかと落としが頭部にヒットしていた。
「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ドガァァァァァァァァァン!

 シルバーンの悲鳴が響き、蹴り割られた頭部と両断されたボディは、同時に大爆発を起こした。
 その途端、十数体いたシルバーン達もその場から消え失せた。
 術者が倒された事で、幻覚も解除されたのだ。


 シルバーンを倒し、改めて石川は岩に登ると、その天辺に収まっていたクリスタルを取り出した。
「やったやったー!」
 上田が笑顔でピョンピョン跳ねる。
 クリスタルは透き通ったような、深い青色をしていた。
『水の青玉(ウォーター・アクアマリン)』である。
 辺りは陽が沈みかけ、夕日が一同を照らしていた。
 岡野が石川達に笑いかけて言った。
「これからも、三人で力を合わせて行こう! 何があっても!」
 その言葉に、石川も笑顔で頷く。
「うん! よーし、あの夕日に向かって走ろう!」
「行こうぜ、テッちゃん!」
 そのまま石川と岡野は、夕焼けの砂浜を走り出したのだ。
 その光景は、まるで一昔前の青春ドラマである。
「おれ達は誓うぞ! 永遠の友情を、あの夕陽に!」
 さわやかな笑顔を浮かべ、石川と岡野は拳を掲げて飛び上がった。
 ……が、上田は肩をすくめると、そんな青春ドラマを繰り広げている二人を冷ややかに見つめながら、ジト目で呟く。
「アホだね……」



~つづく~
 と言う訳で、今日は昨日の続きといきたいと思います。
 一応、次回で完結の予定ではありますが、明後日は休みを挟むので、少し間が空くかもしれません。

 なお、前回はコチラ
 では、本文スタート!

 三人はひとまず、行軍を再開した。
 霜大和団地と松原を隔てている踏切を渡り、松原に入る。
 本来であれば、この道は松原の反対側まで真っすぐ突っ切っているのだが、例によって絡み合った樹木でふさがれていたため、三人は横道に入っていった。
 周囲は数多くの松の木が生えており、普段なら森林浴には絶好の場所なのだが、今回はそうもいかない。
 なにせ、トゥエクラニフ化した世界を戻すという重要な冒険の真っ最中だからだ。
 加えて――
「ちょっと、邪魔だよ!」
「テッちゃんこそ!」
 相変わらず石川と岡野はいがみ合い、事あるごとに言い争いを始めているのだ。
「はぁ……」
 そんな二人を見て、上田は深々とため息をつく。
 二人のギスギスした雰囲気から逃れようと、上田は通信用の水晶玉を取り出して念じるが、反応が無かった。
「あれっ、反応しない。サクラちゃ~ん? ガダメ~?」
 どうやら深い松林の中で圏外(?)になってしまっているらしかった。
 とはいえ、
(今のこの二人を、セルペンちゃん達やガダメ達が見たらかえってややこしい事になりそうだし……これで良かったのかなぁ……)
 と考え直して、上田はある意味でホッとしていた。
 その時だ。

 ガルルルルルルル……

「!」
 低い咆哮がして、三人は武器を構える。
 松林の茂みで八つの目が光ったかと思うと、飢えた野獣のように牙をむき出しにした四匹のモンスターが襲い掛かって来た。
 トゥエクラニフのタイリョー森でも襲撃してきた犬面人だった。
「またお前らかっ!」
 三人は犬面人の攻撃をかわす。
 が、はずみで石川と岡野がぶつかってしまった。
「そんなところでボッとしてるなよ!」
「岡ちゃんに言われたくねえよ!」
 犬面人のことなどすっかり忘れて喧嘩を始める二人に、上田は頭を押さえて叫んだ。
「ああもう、いい加減にしてよ二人共!」
 その隙を逃さず、犬面人達が飛びかかってくる。
「ワン! ワワワン!」
「ガゥゥゥゥゥゥッ!」
 が、上田の方は、完全に石川達に意識を向けていたわけではなかった。
「ウィップモード!」
 瞬時に錫杖が変形し、先端に錫杖の刃が付いた、チェーン・ウィップに変形する。
「おらっ!」
 上田が鞭になった錫杖を振るうと、四匹の犬面人にヒットし、モンスター達はひるむ。
 すかさず、上田は呪文を唱えた。

 グー・ダッ・ガー・ハー・ゼイ・ロウ!
(大気よ、爆ぜろ!)

「爆裂呪文・ボム!」

 ドガァァァァァァァァァァァァァァン!

「キャィィィィィィィン!」
「ギャワン、ギャワン!」
 上田の呪文が炸裂し、犬面人たちは真っ黒こげになって引っくり返った。
「ふう……」
 危機を脱した上田は、額の汗をぬぐう。
 しかし、
「お前が謝れ!」
「お前こそ!」
「はぁ~っ……」
 戦闘そっちのけでなおも喧嘩を続ける石川達を見ると、再びため息をつくのだった。

 一方、シルバーンは松原を飛び回ってクリスタルを探していたのだが。
「駄目アルね~。強烈な植物の匂いでレーダー利かないアルね~。……ん?」
 見ると、石川達がこちらに向かって歩いてくるところだった。
「無事だったアルか! よ~し、今度これアルよ~!」

 ミョンミョンミョンミョン……

 シルバーンの目から、今度はピンク色の光線が照射される。
 光線は石川達三人に、太陽の光のように降り注いだ。
 次の瞬間、
「な、なにーっ!?」
「これは……」
 光線を浴びた三人が、驚きと喜びの入り混じった声を上げた。
 見れば、それぞれ石川の前にはレアなゲームソフト、上田の前には彼が昔から欲しがっていたロボットトイやプラモ、そして岡野の前には有名なスポーツ選手のサイン入りサッカーボールやバットが出現していたのだ。
「すっげー! ゲームボッチのドソキーユング! カセット版のスーパーマルオ2! こっちなんて、まだ発売前のトラクエ6じゃん!」
「やったぁ! 昔から欲しかったライノカイザーに、こっちはバトノレガイイヤー! それにこっちはガムダマンじゃん!」
「ああ、夢にまで見たカヅ選手のサインボール……。こっちはガッズィーラ松居選手のバット……」
 自分達にとってのお宝が目の前に出現し、浮かれる石川達だったが……。
「はぁ~……?」
 そんな三人を、錫杖は不思議そうに見つめているのだった。
 そりゃそうだろう。
 何せ、三人は何もない場所で木の枝やら松ぼっくりやらを有難そうに愛でていたのだから。
 これもシルバーンの幻覚光線の力であった。
 そんな中、正気なのは錫杖だけだった。
 どうやら生きている杖(リビングスタッフ)である彼には、幻覚が効いていないらしい。
 不思議に思ったのはシルバーンだ。
「どうしてアイツだけ何とも無いアルか?」
 思わず錫杖の眼前まで飛んでくる。
「お前も自分の理想を言うアルね~」
 錫杖も錫杖で、目の前の相手が誰なのかなど深く考えもせず、あっけらかんと答えた。
「ええ? 私は別に理想なんてありませんよ」
「そんなハズないアル~。さぁ~、理想の物、言うアルね~!」
 シルバーンに促され、錫杖は「う~ん」と考え込んだ。
「う~ん、それでしたら……」
「フンフン……」
「前のままの皆さんが理想です」
 錫杖がそう言った途端、
「へっ?」
「あれっ?」
「おやっ?」
 突如、夢から覚めたように、石川達がハッとなった。
 錫杖の一言で、シルバーンの幻覚が解けたのだ。
「あれ、一体なにしてたんだろう?」
 三人は声をそろえて、全く同じセリフをこれまた同じタイミングで口にする。
 予想だにしなかった結果に、シルバーンは慌てふためく。
「だぁぁ、しまった~! だがまあいいアル! まだ、仲良し引き裂き光線効いてるアルね~!」
 シルバーンの言葉の通り、石川と岡野の目の下の隈は残ったままであった。



~つづく~
 今日は小説版『ファイクエII』の第3話と行きたいと思います。
 今回の話まではシナリオも出来ていたので、それなりにサクサク投稿できるかなぁと。

 一方で『店舗日誌』も進めなきゃなぁ、と思ったり、我ながら欲張りだなぁ……(苦笑)。

 それでは、本文スタート!

 五郎川団地で『土の黄玉(グランド・シトリン)』を手に入れた石川達は、彼らが拠点としている住宅地に戻ってきていた。
 吉報を持って戻って来た彼らを、三魔爪やトゥエクラニフの少女たちは笑顔で出迎えた。
「さっすが、テッチャンさんですぅ!」
「やったな、少年たち」
 そんな彼らに、石川達も笑顔で頷いた。
「ところで……」
 石川は黄玉を手に入れた時、黄色い光がクリスタルから飛び出したことを語った。
 その不思議な光景の話を聴いて、アーセンが納得したように言う。
「おそらく、クリスタルの、魔力と、あなた達の、魔力が、反応したのでしょう。あなた達は、トゥエクラニフに、とっては、特別な、存在です。その為、魔力の、塊である、クリスタルが、反応を、示したのだと、思います」
「成程ねぇ……」
 アーセンの説明を、一同は息を漏らしながら聞いていた。

 二日後、再びクリスタルが反応を示した。
「今回クリスタルの反応があったのは、ここですね」
 サクラが地図を指し示す。
 それは彼らの住宅地からは北の方向にある海岸であった。
「壱の松原か……」
 上田が呟く。
 ここには彼も、小さい頃に家族などと一緒に海水浴に来た事がある。
 小学生の足では、そこそこ距離があった。
「どっちにしても行かなきゃいけないし……さっそく出発しよう!」
 石川の言葉に、上田と岡野が頷いた。
 ちなみにテレポーの呪文を使えば楽かと思われるかもしれないが、この呪文は行き先の光景を術者がイメージしなくては使えないため、世界が変異してしまった今では、変異後に訪れた場所以外に対しては使用不可能となっていた。
 これについては、テレポーと同じ効力を持つアイテムであるワープフェザーも同じことである。
 と言うか、そもそも上田のレベル自体が、まだ再びテレポーを使えるほどにまで回復しておらず、彼らの手元にワープフェザーも無いという、直接的な理由もあった。
 そんなわけで、一同は住宅地を出ると、住宅地と石九小を隔てている品柄川(しながらがわ)にそって歩き始めた。
 とは言え、この川は、ちょうど小学校の敷地を超えたあたりから、松原とは反対方向に曲がり始めるので、一同はその手前で西の道に入っていった。
 変異前は酒屋だった建物や公園の横を過ぎ、五郎川を渡って、川沿いに北上していった。
 普段であればそんなに時間がかかる道のりではないのだが、道中では度々モンスターの襲撃を受けたため、霜大和小学校だった建物の辺りに来た時には、すっかり日が暮れてしまっていた。
 この霜大和小も、彼らの小学校と同じように城砦のように変化していたが、幸い中にモンスターの気配は感じられなかったため、三人はここで一夜を明かすことにしたのだった。
 例によって内部構造は全く変わっており、中は『ドラ〇エ』に出てくる城とほとんど変わらないような造りになっていた。
 いや、人がいない分、レ〇ール城に近いか……?
 それはともかく、厨房のような場所を見つけたため、三人はそこで、ナップザックに入れておいた食料を調理して夕食をとった。
 これも彼らがかつてトゥエクラニフで使っていたナップザックで、ガダメ達が持ってきてくれたものだった。
「なんかこの感覚、久しぶりだね」
 独り言のように上田が呟く。
 五郎川団地での冒険は、出発から含めて一日で終わったため、このような野宿に近い夜は、今回の冒険では初の事であったのだ。
「まぁ、普段はこんな事ないからねぇ……」
 石川が苦笑を浮かべる。
「早いとこ、休もう。明日の昼までには壱の松原に到着できるだろうし……」
「うん」
「ああ」
 三人は夕食を済ませると、ベッドが用意してあった部屋(恐らく変異前は宿直室か保健室だったのだろう)で、眠りについたのだった。

 翌朝、三人はベッドから起き出すと、荷物をまとめて早速出発した。
 霜大和団地を抜け、いよいよ松原に到着しようかと言ったところで、突然三人の耳に鈴のような音が聞こえてきた。

 チリンチリーン!

「?」
「これって……」
「自転車のベル?」
 三人はいぶかしむが、前回の暴走パトカーの一件から、警戒を緩める事は無かった。
 そこへ、
「チャリチャリーン!」
 甲高い叫び声と共に、一同の前に飛び込んできた者がいたのだ。
 その姿を見て、三人は唖然となる。
「な、なんだコイツ……」
 岡野があんぐりと口を開けてしまうのも無理はなかった。
 現れたモンスターは、上半身は甲冑に身を固めた騎士で、手にはランスを構えていたのだが、問題は下半身だ。
 なんと、下半身はそのまま自転車で出来ていたのだ。
 ペダルもついているものの、騎士がまたがっているわけではなく、自転車のサドル部分がそのまま騎士の上半身になっている格好だ。
 すかさず上田がモンスター百科をその騎士に向かってかざす。
 しかし、今回も百科は反応しなかった。
「こいつも、この世界が変異した影響で生まれたモンスターって事か……」
 その言葉を合図にしたかのように、その騎士はすさまじいスピードで一同に襲い掛かって来た。
「チャリチャリーン!」
 たかが自転車、されど自転車。
 生身の三人は、その素早い動きに翻弄されてしまっていた。
「このっ!」
 三人の中では一番素早い岡野が拳を振るうが、騎士はそれを軽々と避ける。
 騎士のスピードは、あのピョンピョン野郎をもはるかに上回っていた。

 そんな三人の戦いを、松原の奥深くで察知していた者がいた。
 短いスパイクが生えた扁平な鉄兜に、後頭部には弁髪のようなものが付いている。
 左腕には鋭い爪を備えた手甲を装備しており、左胸には『銀』という文字に似た紋章が描かれている。
 この壱の松原に派遣されてきた魔衝騎士で、シルバーンといった。
「とうとう来たアルか。でもワタクシ絶対クリスタル渡さないア~ル! シルバ~ン!」
 叫ぶなり、シルバーンの頭部がボディから分離すると、中華鍋を底面で二つ合わせたような形状のUFOへと変形して飛び立った。

 一方、三人は相変わらず自転車騎士を相手に苦戦していた。
 上田や石川は魔法で攻撃しようとするが、騎士はその魔法も素早い動きで避けてしまうのだ。
「くっそー、どうしたら……」
 石川が拳を握りしめる。
 その時、錫杖が叫んだ。
「マスター、スローの呪文で奴の動きを!」
「そっか! 分かった!」
 錫杖の言葉に、上田は印を結んで呪文を唱える。

 オーゾ・ナル・エー!
(時よ、緩やかになれ!)

「減速呪文・スロー!」

 ヴュヴュヴュヴュヴュ……

 上田の掌から音波のような呪文が飛び出し、自転車騎士に直撃する。
「チャ、チャリチャリ~ン……」
 途端に自転車騎士の動きが鈍り、表情が驚愕のそれへと変わる。
「二人共、今のうちに!」
「オーケー!」
 石川と岡野は頷くと、動きの鈍った騎士へと飛びかかった。
「おりゃーっ!」
「うりゃーっ!」
「ヂャリィィィィィィィィィィィィィィン!」
 剣と拳を受け、自転車騎士はスクラップになって道路に引っくり返ったのだった。
 なお、この騎士は後日、協議の末『チャリンコナイト』という名前が付けられたという。
 閑話休題――
「やれやれ、危ないとこだった……」
 ため息をつく石川だったが、そんな彼らの上空に小型のUFOが現れる。
 シルバーンだ。
「と、思うのは早いノ! そ~れ、イ~リャ~ンサ~ン!」

 ミョンミョンミョンミョン……

 シルバーンの目から、超音波のようなものが発射され、石川と岡野に降り注いだ。
 その途端、二人の目つきが険しくなる。
 よく見ると、目の下には隈まで出来ていた。
「岡ちゃんはバカだ!」
 突然、荒々しい口調で石川が叫ぶ。
 負けじと岡野も叫び返した。
「バカはそっちだろ!」
 突然の事態に、上田と錫杖はビックリ仰天。
「どうなってるんですか……?」
「ちょ、どうしたの二人共! のんきにケンカしてていいの!?」
「いいの!」
 石川と岡野は、同時にプイッとそっぽを向く。
 上田はオロオロしながらも、二人を落ち着かせようとした。
「二人共、そんな事してる場合じゃないでしょ!」
 が、
「引っ込んでろ!」

 バキィィィィィィィィィィィィッ!

 全く同時に同じ言葉を発しながら、これまた同時に拳が飛んできて、上田の顔面にヒットする。
「な、なんでこうなるの……?」
 パンダのようにあざが出来た顔で、上田は目を回してその場に引っくり返った。
 その光景を、シルバーンはさも面白そうに眺めている。
「へへへへ、今のうちにワタクシ、クリスタル探すアルね~!」
 混乱に陥っている石川達を尻目に、シルバーンは松原の方へ飛んでいくのだった。



~つづく~
イメージ 1

 今晩は、アカサカです。

 サイトを更新しました。
 今日は『文庫本コーナー』です。

イメージ 2

 さて、先日キャン★ドゥで買った原稿用紙、お気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、実は『ファイクエ4コマ』を復刻したいなぁ、と考えてまして。

 あ、例によって、以下の画像の内、4コマ部分は右下クリックで元サイズの画像が出ます。

イメージ 4

 友人「キーちゃん」の作品。
 私の小学校は2年ごとにクラス替えがあってまして、彼とは小1・2年と、5・6年の頃にクラスメイトでした。

 ちなみに『ファイクエ』は小3の頃にスタートしたのですが、彼は『VI』にて、この『自爆野郎Jr.』や『クラムボン』といったキャラクターをちょこっと作ってくれました。

 写植は打ち込む予定なので、ここは鉛筆書きのままです。

イメージ 5

 オリジナル版。
 左下は彼の本名なので消してます。

 復刊版では、クラスメイトの名前は当時のニックネーム(私が呼んでなかった場合は周囲が呼んでいたもの)で表記しようと考えています。

イメージ 6

 ニックネーム「フジさん」の作品。
 彼は小5・6時代、『ファイクエ』全作品をプレイしてくれた、小学校時代では一番の『ファイクエ』ファンでした。

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 オリジナル版。
 出来るだけ元原稿を忠実に描き映していますが、台詞などは読みやすさを優先して、配置や文章を若干アレンジしています。

イメージ 8

 実は十年前にも復刻計画はありまして、その時はあくまで「元原稿に似せて私が別の紙に描きなおす」という、いわゆる『模写』だったのに対し、今回は元の原稿を可能な限りトレースして描きなおしています。

 ……当時、妹も参加してくれてたし、今回も再執筆を打診してみるかなぁ……(笑)。

イメージ 3

 と言ったところで、今回はこの辺で
 はい、それでは今日は、小説版『ファイクエII』第2話の完結編といきたいと思います。
 仕事前に、ギリギリ書き上げる事が出来ました(苦笑)。

 なお、前回はコチラ
 では、本文スタート!

 三人はさらに歩を進めていく。
 途中、さらなるモンスターの妨害をも退け、一同はついに管理塔までたどり着いたのだった。
「ようやく到着だねぇ……」
 ここまでの苦労を思い返しながら、上田がため息をついた。
 ダンジョン化した団地の探索は、彼らの予想を超える大仕事だったのだ。
 三人はこれまでの道のりを噛みしめるように、塔に近づいていく。
 その時だった。
「そうはいかん!」
 叫び声と共に、彼らの眼前に着地した者がいた。
 それは身長が2メートル近くある、大柄なメタルゴーレムだった。
 全身を黒を基調とした、戦国時代の武者のような甲冑で包んでいる。
 右腕は、先端が三日月のように湾曲した、薙刀のような武器を握っている。
 左腕は右腕に比べて肥大化しており、指には鋭い爪を備えていた。
 その肩鎧には『金』という字に似た紋章が描かれている。
「我が名は魔衝騎士・ゴールディ! この塔に眠るクリスタルと、お前達の命をもらい受けるために参った!」
「魔衝騎士!? ゴールディ!?」
「このダンジョンのボスってわけか……!」
 ゴールディと真正面から向き合い、三人はそれぞれの武器を構える。
「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 薙刀を振りかざして、ゴールディが突進してくる。
 振り下ろされた薙刀を、三人は三方向に散って避け、宙を切った薙刀は彼らが数秒前までいた地面を砕いた。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 地面を蹴り、石川がゴールディに向かってブレイブセイバーを振り下ろす。
 しかし、

 ガキィィィィィィィィィィン!

「えっ!?」
 その一撃は、ゴールディの左手によって受け止められていた。
「ふんっ!」
 そのままゴールディはブレイブセイバーの刃を掴み、石川を力任せに投げ飛ばした。
「うわっ!」
 投げ飛ばされた石川は、したたかに背中を地面に打ち付けてしまう。
「痛たたたた……」
 背中をさすりながら立ち上がる石川に上田が駆け寄ると、すかさずヒールの呪文を唱える。
 暖かい光を感じながら、石川の背中から痛みが消えていった。
「大丈夫、テッちゃん?」
「ああ、サンキュー!」
 石川は体勢を立て直すと、上田と共にゴールディの方に向き直った。
 そこでは、岡野がゴールディに向かって殴り掛かっていたが、ゴールディの方が薙刀を持っている分リーチが長く、どうしても攻めあぐねている。
「ふっふっふっふ。一振りの元に、その首をはねてやるわっ!」
「岡ちゃん!」
 すかさず上田がバーンの呪文を唱える。
 メタルゴーレムなら、火炎系の呪文でオーバーヒートを起こせると判断したのだ。
 だが、ゴールディに向かった帯状の火炎は、やはりその左手で受け止められていた。
「うっそー!?」
「ふふふ、そんなもの、オレには効かんぞ!」
 不敵な笑みを浮かべ、再びゴールディが薙刀で斬りかかって来た。
 三人はそれを避けるので精一杯だ。
 ゴールディは左腕だけでなく、全身を覆う鎧も強固であった。
 その鎧に阻まれ、有効な打撃を与える事が出来ないのだ。
 三人はその熾烈な攻撃から逃げながら、必死になって作戦を練る。
「ど、どうする!? このままじゃおれ達、逃げるのに疲れてやられ……どわっ!」
 石川の頭上をかすめた薙刀の一撃は、彼の向こうにあった植木をバッサリと切断していた。
「魔法もダメ、打撃もダメ、一体どうしたら……ひえっ!」
 上田のその言葉に、石川がハッとなる。
 もしこれがコミックだったら、彼の頭上で電球がパッと光っていただろう。
「魔法……打撃……打撃と魔法……。そっか! 閃いた!」
「閃いたって、何を!?」
「見てて!」
 石川は振り返ると、ゴールディに向かって剣を構える。
「ふふふ、観念したか!」
 勝ち誇ったように、ゴールディが薙刀を振り下ろした。
 石川はその一撃を避けると、ゴールディに斬りかかる。
 その一撃も、今までのように強固な鎧に阻まれる……と思われたのだが。

 ザシャッ!

「何ィッ!?」
 ゴールディの目が、驚愕のために見開かれた。
 石川の剣の一撃で、ゴールディの肩鎧がざっくりと大きく裂けていたのだ。
「こ、これは……」
 その場にいた全員が、驚きの声を上げる。
 なんと、ブレイブセイバーの刀身が、炎で燃え上がっているのだ。
「テッちゃん、それ!?」
「やった、成功だ! 魔法も打撃もダメなら、両方を合わせてみたらどうかと思ったんだけど……うまくいった!」
 ブレイブセイバーの刀身で燃えている炎は、フレアの呪文で発生させたものだった。
 なんと、石川はぶっつけ本番で魔法剣を成功させてしまったのだ。
「これなら行ける! たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 石川は燃えるブレイブセイバーを構え、真っすぐにゴールディに向かって走り込んでいく。
「バカめ! カウンターでバラバラにしてくれるわ!」
 ゴールディも薙刀を構え、石川を迎え撃つ体制をとった。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ガキィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 乾いた金属音とゴールディの悲鳴が響き渡って、その背後に石川が着地した。
 石川が横に薙ぎ払った一撃は、ゴールディの胴体を見事に両断していたのであった。
 次の瞬間、

 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 ゴールディのボディが大爆発を起こし、辺りにその破片が降り注いだ。
「ふへぇぇぇぇぇぇ……なんとか勝てたな……」
 石川は肩で大きく息をすると、火を消したブレイブセイバーを鞘に納める。
「すっごいじゃん、テッちゃん!」
「土壇場で必殺技を編み出しちまうなんてなぁ!」
 上田と岡野が、息を弾ませながらかけてくる。
「昔、ド○クエのマンガで主人公が同じことやってたの思い出してさ。出来るかなぁ~って思って試してみたら……出来ちゃった♪」
 あっけらかんと言う石川に、上田と岡野は思わずつんのめる。
「ところで、その技の名前、決めてるの?」
「そうだなぁ……火炎の斬撃だから……『火炎斬』って名前にしよっかな」
「んな安直な……」
 思わず汗ジトになる上田であった。


 一同は一休みすると、塔を上がっていく。
 中は階段があるだけで、今までと違い、モンスターなども出現しなかった。
 これもクリスタルの影響か……?
 そんなことを考えながら、一同は一番上の階に到達した。
 扉を開けると、そこは四畳半ほどの部屋になっており、部屋の中央には石でしつらえた祭壇があった。
 その上に、上田が拾ったものと同じ、ゴルフボールくらいの大きさの、正十二面体のクリスタルが載っていたのだ。
 色は黄色。
「『土の黄玉(グランド・シトリン)』だ!」
 三人は目を輝かせると、祭壇の上のクリスタルを手に取る。
 その途端、

 シュォォォォォォォォォォォ……

 クリスタルから黄色い光が飛び出し、三人を包み込んだ。
 やがて光は収まり、輝きを失ったクリスタルは、石川の手の中で冷たくなった。
「取り敢えず、二個目のクリスタルゲットだね」
 石川が嬉しそうにクリスタルを掲げ、岡野達も力強く頷いた。
「さ、帰ろう!」
 三人は意気揚々と五郎川団地を後にすると、帰路に就く。
(必ずこの世界を元に戻して見せる!)
 改めて、そう心に強く誓いながら。



~つづく~
 サイトを更新しました。
 今日は『情報雑誌コーナー』です。

 本文の方は、小説版『ファイクエII』の続きでいきたいと思います。
 なお、前回はコチラ

 では、スタート!

 ヘルムートを倒した後、三人は外周部の道路だった道に到達していた。
 アスファルトの地面は、石畳へと姿を変えている。
 道幅は、ちょうど車がギリギリすれ違える程度だ。
 その時である。

 ファンファンファンファン……

 遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
 思いもよらぬ事態に、一同は顔を見合わせた。
「これって……」
「パトカー……?」
「って事は、おれ達以外にも、この世界に残ってる人がいるって事!?」
 だが、一同のそんなささやかな期待は裏切られる事になる。
 前方の道路から現れたのは、確かにパトカーだった。
 しかし、
「なんだ、誰も乗ってないぞ!?」
 某ロボットアニメでよく聞くフレーズが、石川の口から飛び出す。
 そう。驚いた石川が叫んだ通り、そのパトカーは無人だったのだ。
 おまけにそのパトカーは、フロントガラスに目までついている。
 これではまるで、小さな子供の絵本に出てくる“生きているパトカー”だ。
 ただし、その目つきはかなり凶悪だったが。
「犯人発見! タイホ! タイホ!」
 パトカーが直接言葉を発する。
「な、なんだありゃ!?」
 岡野が驚愕の表情を浮かべ、上田はモンスター百科をそのパトカーに向ける。
 しかし、今までと違って、百科はページがめくれるどころか、うんともすんとも言わない。
「ありゃ、どうなってんの……?」
 怪訝な表情になる上田だったが、それも長くは続かない。
「タイホー!」

 ブロブロブロォォォォォォォォォォォン!

 そのパトカーが、エンジンをふかして突進してきたのだ。
「どわーっ!」
 慌てて一同は、左右に飛んでその突進を避ける。
「ちょっ、岡ちゃん、何とかならないの!?」
 岡野の方を振り返り、上田が叫ぶが、岡野も慌てて叫んだ。
「無茶言うな! いくら強くなったからって、自動車の相手なんて出来……うひゃっ!」
 なおもパトカーは突進を繰り返してくる。
 いくらトゥエクラニフ化の影響で肉体が強化されている彼らとは言え、まともに食らえば一巻の終わりだ。
 おまけに、パトカーの進路は滅茶苦茶で、そのスピードとも相まって、攻撃を命中させる事さえ出来なかった。
 これでは反撃の糸口さえつかめない。
「マスター、ここは魔法で!」
「うん!」
 錫杖に促され、上田は再び構えをとった。

 グー・ダッ・ガー・ハー・ゼイ・ロウ!
(大気よ、爆ぜろ!)

「爆裂呪文・ボム!」
 パトカーが反転する瞬間を見計らって、上田の掌からスパークに包まれた光球が飛ぶ。
 狙い通り、それはパトカーに見事に命中した。

 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 爆発が巻き起こり、パトカーは爆炎の中に姿を消す。
「どうだ……!?」
 緊張した面持ちでそちらを見つめていた上田だったが、次の瞬間、その表情は驚愕のためにひきつってしまう。
「タイホー……」
 なんと、車体のあちこちを焦がしながらも、ほとんど無傷に近い状態で、パトカーが姿を現したのだ。
 これには上田も錫杖を取り落としそうになる。
 しかし、流石にダメージがあったのか、パトカーの表情は怒りのそれに変わっていた。
「公務執行妨害罪により……判決、死刑!」

 ギャギャギャギャギャ!

 怒り狂ったパトカーは、アクセル全開で突っ込んできた。
 背後は団地の壁だ。

 ブッブー! ブッブーッ!

 勝ち誇ったように、パトカーが走って来ながらクラクションを鳴らす。
 万事休すか!?
 その時、とっさに岡野が石川と上田の腕をつかんだ。
「岡ちゃん!?」
「今だ!」
 岡野はタイミングを見計らって、石川達の腕をつかんだまま、上空へと思い切り飛び上がった。
「!?」
 いきなりパトカーの視界から、三人の少年の姿が消えた。
 目標を見失ったパトカーの目に飛び込んできたのは、団地の壁だ。
「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 ブレーキをかける間もなく、パトカーはその勢いのまま団地の壁へと突っ込む。

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 激突の勢いで、辺りに凄まじい土ぼこりが舞った。
 そして、土煙が晴れた時に一同が目にしたのは、大破し、もはや廃車となったパトカーの姿だった。
「あ、危なかった……」
 汗だくになった額をぬぐいながら、石川は大きく息をつくのだった。

 <なに、そんな事が?>
 石川が手にしている水晶玉から、ガダメの声がする。
 よく見ると、水晶玉にはガダメの姿が映っていた。
 これは三魔爪達が持ってきた魔界の道具で、二つの水晶玉を介して、遠くの相手と連絡が取れると言うものだ。
 要は現代で言う携帯電話みたいなものである。
 ただし、三魔爪がわざわざ持ってきたという事からも分かるように、これはトゥエクラニフでも貴重なアイテムであり、一般人でその存在を知っている者はほとんどいないと言っても差し支えなかったが。
 <確かに、君たちの言う特徴を持ったモンスターなど、地上や魔界でも、見た事も聞いた事も無いが……>
 水晶の中のガダメは、腕を組んで考え込む。
 そこへ、横からサクラが顔を出した。
 <これは私の推測なんですけど……もしかしたら、この世界がトゥエクラニフ化した現象がそのパトカーっていう鉄の馬車にも影響したのではないかと……>
「つまり、建物や道路なんかがトゥエクラニフ化したのと同じように、自動車がモンスターになっちゃったって事?」
 <はい>
 上田の問いに、サクラがこくりと頷く。
「成程ねぇ……」
 思った以上の事態に、一同は新たな不安を抱く。
 それはそれとして、例のパトカーが変化した新種のモンスターには、『暴走パトカー』と名前が付けられたのだった。



~つづく~
 はい、と言う訳で、今回は小説版『ファイクエII』の第2話その1でいきたいと思います。

 それでは、早速スタート!

 住宅地を後にした石川達は、すぐそばにある五郎川団地へとやってきていた。
 ここは団地としてはまぁ平均的な規模で、集合住宅が二十棟ほど建っていた。
 石川達の小学校の校区にも含まれている為、当然、彼らのクラスメイトも数多く住んでおり、彼らがこの団地を訪れるのも、一度や二度の事ではない。
 ……のだが。
「な、なにこれ……」
 目の前にそびえ立つ建物群を見て、上田がポカンと口を開ける。
 そこにあったのは、彼らがよく知っている団地ではなく、まさに『城砦』と言うのにふさわしい建造物だったのだ。
 敷地はフェンスが変化したのか、高い塀に囲まれており、建物はサイズと基本的な外観こそあまり変わっていないものの、よく見ると、内部構造は全く変わってしまっていた。
 おまけに敷地内の道もあちこち塞がれたり、曲がりくねったものに姿を変えており、目の前の場所へ行くにも、大きく迂回せねばならなさそうだ。
「な、なんか大変な事になっちゃってるみたいだね……」
 石川達は改めて、自分達の世界に起こった変化を実感していた。
 三人は慎重に、ダンジョンと化した五郎川団地へと入っていった。
 この団地は住宅地の中央に塔があり、その周囲を住人用の細い道路が囲っているという造りになっているのだが、塔はそっくりそのまま、まるで団地全体を見張る監視塔のような姿になっていた。
 ここに来る前に聞いた情報では、クリスタルの反応は団地の中央からしているらしい。
「よっしゃ、じゃあ、取り敢えずあの塔を目指そう!」
 石川の言葉に、上田と岡野も頷く。
 変異前であれば、団地の棟と棟の間の道を歩いていけば、すぐに中央塔まではやってこれるのだが、先ほども述べた通り、ダンジョン化した団地は、道はあちこち曲がりくねり、おまけに団地の建物も集合住宅ではなく、あちこちで壁が繋がったり途切れたり、さらには部屋の中に階段が出現しているなど、まるで迷路のようになってしまっていた。
 おかげで石川達は、一つの棟を抜けるのに、想像以上に時間をかけねばならなかった。
「一体どうなっちゃってんだよ、これ……」
 ブツクサ言いながら歩を進める一同の元に、突如人影が出現した。
「キキーッ!」
「!」
 明らかに人間ではなさそうなその叫び声に、三人は身構える。
 現れたのは、彼らがよく知っているモンスター……に見えたが。
「ザ……ザコ?」
 眼前の相手を見据えながら、石川が怪訝な表情をする。
 そう、確かに現れたのは、あの“ただのザコ”だったが、外見が少しばかり違っていた。
 手足が人間並に長く、五本指を備えた手もついていたのだ。
「えーっと、どれどれ……」
 上田が懐からモンスター百科を取り出し、目の前のザコらしきモンスターへと向ける。
「その本、まだ持ってたのか……」
「うん。こっちに戻ってくる時、懐に入れてたら、一緒に戻ってきてたんだ。……お、反応し始めたぞ。なになに……『ただのザコII世。ただのザコが進化して、手足を備えたモンスター。強さはI世とたいして違いませんが、手が使える分厄介です。引き続き、食材にもなります』……だって」
 言い終わらない内に、ザコII世が三人に向かって飛びかかってくる。
「キキーッ!」
 しかし、
「あらよっと!」

 ゴス!

「キュゥ……」
 アッサリと岡野の拳を顔面に喰らい、ザコII世が顔面を陥没させて床に沈んだ。
「なんだ、やっぱり見掛け倒しかよ……」
 ポリポリと頭をかいて、岡野が呆れるように言った。

 ザコII世を退けた一同はさらに団地の中を進んでいく。
 幾つめかの棟を抜けると、団地の公園だったらしい広場に出た。
 そこを、新たな敵が襲撃してくる。
「こいつらは!?」
 それはシンプルな西洋甲冑に身を包んだ、兵士のようなモンスターだった。
 数は三体。
 鎧の色は青紫で、露出している顔は人形のような目がついただけの、シンプルな造りだった。
 こんな敵は、以前トゥエクラニフを冒険していた時には会った事も無かった。
「ちょっと待って……」
 再び上田がモンスター百科を取り出すと、相手に向かってそれを向ける。
 すると、またしても本が薄くブーンと光を放ち、かってにパラパラとめくれていく。
「えーっと、『アーマー。魔族の城の警備用に制作されたメタルゴーレム。パワーはそこそこですが、量産型なのでそこまで強くはありません』……だってさ」
「へーっ……」
 三人は身構えると、襲い掛かってくるアーマー達を迎え撃った。
 百科の解説通り、パワーこそ人間を上回ってはいたものの、アーマー達の能力は、今回の冒険で最初に戦ったフゴマー達よりも低かった。
 石川達のレベルこそ、リセットされて低い状態ではあるものの、あの長い戦いを経験した三人にとっては、これ位の敵はへでもない。
「メタルゴーレムなら遠慮しないぜ! うりゃーっ!」
 石川のブレイブセイバーが閃き、彼に迫っていたアーマーは真っ二つになってその場に転げ落ちる。

 ゼー・ライ・ヴァー・ソウ!
(閃光よ、走れ!)

「閃光呪文・バーン!」

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 上田の掌から帯状の炎が飛び、アーマーを包み込む。
 炎に包まれたアーマーはオーバーヒートを起こし、あっさりと崩れ落ちた。
 そして、
「おらおらーっ!」
 高速で岡野の拳が飛び、戦神の籠手の一撃はアーマーの装甲をまるで紙粘土のように易々と砕き割った。
「ふう。この調子なら、このダンジョンは楽勝かな……?」
 剣を鞘に納めながら、石川がやや楽観的な意見を口にする。
 だが、そういった慢心は、時として思わぬ苦戦へとつながる。
 事実、彼らが次に戦ったモンスターがまさにそれだった。
 彼らの前に現れたのは、西洋兜に短い脚が付いたようなモンスターだった。
 見るからに、メタルゴーレムの一種であると分かる。
 が、彼らはその外見に、また別の感想を抱いていた。
「メ、メッ○ール……?」
 そう、それは彼らがよく遊んでいたテレビゲームに登場する、とあるザコ敵にそっくりだったのだ。
 ただし、彼らが知っているキャラクターは西洋兜ではなく、工事用のヘルメットをかぶっていたが。
「『ヘルムート。警備用に制作されたメタルゴーレム。その強固な防御力は侮れません』だって」
 上田が解説するが、岡野は楽勝とばかりに腕をぐるぐると回す。
「な~に、どうせザコだろ。一発でぶっ飛ばしてやる。それっ!」
 勢いよく拳を突き出す岡野だったが、ヘルムートはそれを見るなり、瞬時に兜の中にボディを引っ込めた。

 ゴイィィィィィィィィィィィィィィィィン!

 周囲に寺の鐘を打ったような音が響き渡る。
 そして……。
「痛てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 拳を元の倍くらいに腫らして、岡野が飛び上がった。
 モンスター百科の記述にたがわず、ヘルムートの兜は戦神の籠手の一撃すら防いだのだ。
 もっとも籠手の方にも傷一つついてはいなかったが。
「だったら、これでどうだ!」
 今度は石川が、その頭部に向かってブレイブセイバーを振り下ろす。
 しかし、

 ガキィィィィィィィン!

 岡野の一撃と同じく、これもあっさりとはじき返されてしまったのだ。
「こ、こいつ、意外と手強いぞ……」
 石川が、衝撃にしびれる手をぷらぷらと振る。
「見た目で判断しちゃダメって事ですねぇ……」
「そうだね……」
 それまで黙っていた錫杖がやや呆れたように呟き、上田もそれに同意する。
「マスター、ここは一つ、あなた様が……」
「おれ?」
 上田は一瞬呆けたような表情になったが、すぐに頷いた。
「よ~し、やってみるか!」
 上田は構えると、いまだ兜の中にボディを引っ込めたままのヘルムートと対峙する。
 石川と岡野は手をさすりながら、向かい合う両者を静かに見守っていた。
 と、いきなりヘルムートが兜を上げ、上田に向かって体当たりを仕掛けたのだ。
「今だ!」
 上田はその動きを予測していたかのようにしゃがみ込むと、早口で呪文を唱える。

 カ・ダー・マ・デ・モー・セ!
(火の神よ、我が敵を焼け!)

「火炎呪文・フレア!」

 ヴァシュゥゥゥゥッッ!

 上田の掌から野球ボールくらいの大きさの火の玉が飛び出し、ヘルムートのむき出しの顔面に見事にヒットした。
「みぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 ドガァァァァァァァァン!

 ヘルムートは悲鳴を上げると、そのまま空中で爆発を起こし、その破片が辺りに散らばった。
「上ちゃん、やるじゃん!」
 感心した石川達が、上田に駆け寄る。
「さっすが、ロッ○マンやり込んでるだけはあるな!」
「褒めてんの、それ……?」
 喜んでいいのか分からない複雑な思いで、上田は苦笑した。



~つづく~
 サイトを更新しました。
 今日は『文庫本コーナー』です。

 さて、今日はタイトル通りです。
 更新報告に合わせて何を書くか全く考えてなくて……(爆)。

 これなら、昨日の欅さんの完成記事、今日に持ってくれば良かったかなァ(苦笑)。

 という訳で、小説版『ファイクエII』を書くにあたって、いくつか新キャラのモンスターを考えているので、今回はそれを。
 ちなみに『2』という事で、私が子供の頃好きだったゲームの『2』に登場するザコキャラをオマージュしたものを多く作っています。

イメージ 1

 まずはヘルムート
 名前だけは強そうですが、外見の通り、ザコや野郎シリーズと大して能力は変わりません。

 ただ、やはり外見通り防御力は高めになっています。
 名前の由来は「ヘルム(兜)」。

 お察しの方もいらっしゃるかもしれませんが、メタルゴーレムの一種です。

イメージ 2

 お次はアーマー
 量産型のメタルゴーレム兵士です。

 やっぱり序盤に出てくるキャラで、ドラクエで言うと『まほうつかい』や『がいこつ』と言った、「序盤のちょっと強いザコ」ポジションです。
 体色は青紫。

 上位種に、左腕が銃器になって赤い体色の『ショットアーマー』、緑の体色で髭を生やした『カーネル』と言うのも考えています。

イメージ 3

 でもって歩く松明

 炎系の呪文で攻撃してくるキャラです。
「仲間を呼ぶ」で火玉系のザコを呼ぶのも面白いかも知れませんね。

 あとは巨大なコオロギのモンスターでおばけコオロギ(上位種は大キリギリス)なんてのも考えていたのですが、そちらはイラストが間に合わなかったので、また後日……。

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。
 はい、という訳で、今回は小説版『ファイクエII』第1話の後編と参ります。

 今回は、説明的な展開が多いかも……。
 なお、前回はコチラ

 では、本文スタート!

「それで一体、どうなってるのさ!?」
 石川がガダメに尋ねる。
 フゴマー達を退けた後、彼らは学校からすぐ西側にある、元住宅地に移動していた。
 その元住宅地は、小さな集落のようになっており、人がいない事を除けば、生活などもすぐに出来るような状態だった。
 石川達が普段利用しているのは、学校の北門なのだが、正門は敷地から西側にあり、その前は道路が一本、さらに眼前にはやや大きい河川が流れていた。
 元住宅地は、学校からはその河川を挟んで反対側に存在する。
 正門ももちろん鋼鉄の扉へと変わっており、固く閉ざされていたが、その扉には、六角形を描くように六つのくぼみがあったのだ。
「まず、一つずつ説明せねばなるまいな……」
 わずかに苦悩を浮かべた表情でガダメが切り出す。
「事の起こりは、我らの世界で何者かが禁断の呪法に手を出したことから始まる」
「禁断の呪法?」
「ああ。この世界と、トゥエクラニフという二つの世界をつなげるという呪法だ。その何者かは、トゥエクラニフだけでなく、君たちのいる世界まで手中に収めようと考えたのだろう」
 ガダメの話を聞いている石川達の表情が、みるみる硬くなっていく。
 無理もなかった。
 前回の冒険の時と違い、今度は彼らが今まで暮らしていた世界そのものが危機に陥っているというのだから。
「調べてみたのですが……。どうやら、あの建物を中心に、半径七五〇シャグル(約二・六キロメートル)の範囲が結界に覆われていて、今のところはその結界内部にあるこの地域が、私たちの世界と同じように変わってしまったみたいです」
 魔法書物を手にしたサクラが解説する。
「じゃあ、おれ達の家族やクラスメイトのみんなはどうなっちゃったの!?」
 上田がサクラに詰め寄った。
 その剣幕に圧倒されつつも、サクラが続ける。
「この世界の人達は、この世界が変わってしまった時に、この世界とトゥエクラニフの狭間に飛ばされて、今は時間が止まったような状態で漂っているようです」
「それじゃ……!」
「いえ、時間が止まったまま異空間にいるという事で、むしろ安全な状態に置かれています。それよりも、むしろ倫理さん達やこの結界の中の方が危険な状況なんです」
「と言うと?」
 サクラはややためらいながらも、次の言葉を発した。
「二つの世界の融合は、少しずつですが進んでいます。あと一カ月もすれば、この結界内部は完全にトゥエクラニフの一部になってしまって、分離が出来なくなってしまうんです」
「そんな……」
 魂が抜けたような表情で、思わず上田がふらつく。
「あっ、倫理さん!」
 その身体を、サクラがとっさに支えた。
 石川と岡野も青ざめている。
「盛彦……」
 岡野を気遣うように、オータムが彼の肩にそっと手をかけた。
 そんなオータムに、岡野は静かに頷くと、冷静さを保とうとしているかのように質問した。
「それで、世界を元に戻す方法はあるわけ?」
 それに対して、アーセンが答える。
「はい。実は、その呪法を、使用するには、この世界を、構成する、六つの元素の、力を、借りなければ、ならないのです。すなわち、光、闇、火、水、土、風です。この世界と、私たちの、世界が、交わった時、それらの、元素の、力は、それぞれ、力を、宿した、クリスタルとなり、この結界内の、六ケ所に、散らばって、しまいました。それらを、集めれば、この世界と、トゥエクラニフを、再び、分離する事が、出来るはずです」
「ねぇ、それってさ……」
「はい?」
 アーセンの説明を受けて、上田が思い出したように、ポケットに手を入れる。
「これの事?」
 上田が取り出したのは、ゴルフボールくらいの大きさの、一面が五角形――正確に言えば正十二面体のクリスタルだった。
 色は黒。
 それを見て、三魔爪達が驚愕の声を上げた。
「おおっ! それこそまさに、闇属性のクリスタル、『闇の黒玉(ダーク・オニキス)』! どこでそれを!?」
「さっきの、フゴマー達と戦った場所で拾ったんだ」
「ほうか。既に連中、一個手に入れとったんやな。それと同じモンが、残り五つ、この結界内のどっかにあるはずや。『火の赤玉(ファイア・ルビー)』、『水の青玉(ウォーター・アクアマリン)』、『土の黄玉(グランド・シトリン)』、『風の緑玉(ウインド・エメラルド)』、『光の白玉(ライト・ダイヤモンド)』の五つや」
 それを聞いて、三人にも希望が湧いてきたようだった。
「それじゃ、まずは他のクリスタルを集めないといけないんだね!」
「せやけど、そのクリスタル、さっき自分らを狙った連中も探しとるで。六つのクリスタルは、言うんなら強大なパワーの塊や。それがあったら、魔王様たちどころか、大魔王様にも匹敵するパワーを得る事も夢やないんやからな」
「けど、それしか方法がないなら、やるしかないじゃん!」
 石川の言葉に、クレイは目をパチクリさせる。
「全く方法がないって言うならともかく、ほんのちょっとでも、おれ達の世界をもとに戻す可能性はあるんでしょ? だったら、やらないよりやらなきゃ!」
 それを聞いて、クレイ達はフッと笑みを浮かべる。
「そっか。自分らはそういう奴らやったな」
 サクラ達も笑顔で頷いた。
「さっすが、テッチャンさん! カッコイイですぅ!」
「わっ、ちょっと!」
 感激したセルペンが石川に飛びつき、バランスを崩した石川は、そのまま壁に頭を打ち付けてしまった。

 ガンッ!

「ぐぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
「きゃっ! テッチャンさん、しっかりして下さい! テッチャンさん!」
 慌てて伸びてしまった石川を揺さぶるセルペンを見て、今度は一同は揃って苦笑していた。
「やれやれ……」


「ところでさ、ガダメ達はどうやって、こっちの世界に来たの?」
 落ち着いてきたところで、ようやく石川が素朴な疑問をぶつけてみた。
「それは、こちらの世界が危機に陥っている事が分かったのでな。ドクター・プラズマの次元転送装置で、こちらの世界へと送ってもらったのだ。ただ、奴の魔導科学でも限界があってな。私たち六人をこちらの世界に送り込むのが精いっぱいだった、という訳だ」
「セルペンちゃんたちは?」
「セルペンがガダメ様たちにお願いしたんです。一緒に連れて行って欲しいって。セルペンはテッチャンさんとはいっつも一緒にいる運命なんです。だからセルペンは、運命に逆らわずに行動しただけなんですぅ」
「あ、そうなの……」
 嬉しくもあり、困ったことでもあり……石川としては「ハハハ」と汗ジトの笑いをするしかなかった。
「サクラちゃんたちは?」
「私は、あの時にガダメさん達と接点がありましたので、声を掛けて頂けました」
 嬉しそうな顔で、サクラが微笑む。
「あたしの方は、ザミルが紹介してくれたのさ。『救世主と一緒にワシの目を覚ましてくれた、なかなか骨のあるヤツがおります』って」
 オータムも白い歯を見せて、ニカッと笑った。

 それから、一同はその元住宅地を拠点にして、結界内を探索していくことに決めた。
 トゥエクラニフと融合した影響で、世界の分離に成功すれば、融合している時に起きた変化は元通りになる、という事だった。
 要するに、建物を破壊しようが、貯蔵されている食料を食べようが、世界の分離に成功すれば無かった事になる、という訳だ。
 なに、そんなの御都合主義だって?
 うるさいなぁ……。
 サクラが持ってきた魔法書物は、クリスタルの存在を感知するための機能が付いていて、どこかでクリスタルが魔力を発すれば反応する、という仕組みだ。
 そこで、彼女たちは住宅地にとどまり、石川達のオペレーターを務める事になった。
 三魔爪達は、彼女たちとクリスタルの護衛のため、同じく住宅地で待機。
 もともと住んでいた世界であるという事もあって、石川達が結界内の探索をする事になった。
 そうこうしている内に、早速クリスタルの反応が出た。
 場所は、彼らがいる元住宅地から、歩いてすぐの距離にある団地であった。
「五郎川団地か……」
 机に置かれた地図を見て、上田が呟く。
「よし、行こう!」
 石川の言葉に、上田と岡野が力強く頷く。
 彼らは三魔爪達が持ってきてくれた、以前の冒険の時の鎧を再び着用している。
「なんか懐かしいな、たった一カ月前の事なのに」
 自分達の格好をまじまじと見て、上田がクスッと笑う。
 ガダメは石川達を正面から見据え、真剣な表情で言った。
「いいか。君たちは、一度この世界に戻って来た影響で、力が最初にトゥエクラニフに飛ばされた時の状態にまで戻ってしまっている。君たちの力は、『トゥエクラニフの危機を救うために、世界そのものによって与えられた力』だからだ。武器の威力も、君たちのレベルに見合った状態になってしまっている。経験を積めば、以前使えた魔法や技もまた使えるようにはなるはずだが、くれぐれも注意するんだぞ」
 これは石川達の武器――即ち、ブレイブセイバー、幻の錫杖、戦神の籠手――が、彼らと一心同体のような存在であるためだという。
「でも、そこまで心配しないで下さい! 力は落ちても、私たちの世界での経験まで無くなったわけじゃないんですから!」
 一同を励ますように、錫杖が飛び跳ねる。
「それから、これも持って行ってくれ」
 そう言うと、ガダメは石川に何かキーホルダーのようなものを三つ手渡した。
「これは……?」
 一つは眼球のような形をしていて、もう一つはアーセンの原形、そしてもう一つはクレイの胴体のような形をしていた。
「それを空中に投げて名を呼べば、私たちを君たちの居る場所に召喚する事が出来る。我々の力が必要な時は、いつでも呼んでくれ!」
「なるほど、分かったよ。有難う」
 ペコリと石川が頭を下げる。
 住宅地を後にして、石川達は五郎川団地へと向かう。
 彼らの世界を元に戻すための新たな冒険は、始まったばかりであった。



~つづく~
 さて今日は、小説版『ファイクエII』の続きと行きたいと思います。
 人気投票も現在受付中ですので、是非ご参加頂ければ幸いです。m(_ _)m

 なお、前回はコチラ
 では、本文スタート!

「うう~~~ん……」
 ゆっくりと石川が目を開ける。
 だんだんと意識が覚醒してきて、石川は上半身を起こした。
 そばには上田と岡野も倒れている。
 そこは、彼らの小学校の校門前だった。
 が、何かがおかしい。
 校門が強固な鉄の扉へと変わって、固く閉じられているのだ。
 それだけではない。
「ええっ! 何これ!?」
 ガバッと起き上がり、石川が周囲を見渡す。
 彼らがいた校門の右手には大きな病院が、左側には日本家屋の一軒家があったはずなのだが、病院は西洋風の城砦に、民家もレンガ造りの建物へと姿を変えているのだ。
 石川の悲鳴で気が付いたのか、上田と岡野も目を覚ました。
「ん……んんん……」
「う~ん……」
 目を覚ました二人は、石川と同じように周囲を見回すと、驚愕に満ちた表情で一気に目を覚ました。
「な、何じゃこりゃ!?」
「おれ達、夢でも見てるのか……!?」
 三人は辺りを調べてみた。
 どういう訳か、彼ら三人の他には人っ子一人いない。
 建物の配置や地形はそのままだったが、決定的な違いは、建っている建物が全て姿を変えている、という事だった。
 特に彼らの小学校は、要塞のようなものへと変わっており、上空は稲光が閃く黒雲で覆われている。
 そして、これら“変貌した景色”に、三人は懐かしいものを感じていた。
 それは――
「トゥエクラニフ……?」
 ポツリと上田が呟く。
 そう、この景色は、かつて彼らが旅をしたトゥエクラニフの雰囲気そのままであったのだ。
「なんでおれ達の世界が、あの世界みたいに……?」
 岡野がそこまで言った時だった。
「見つけたぞ!」
 野太い声が聞こえ、三人が振り向く。
 そこには陣笠のようなものを被った、九人の兵士たちがいたのだ。
 リーダー格と思われる一人は、陣笠に兜飾りがついていて、腕には太刀を握っている。
 残りの者たちは全員同じ姿で、陣笠に『二』~『九』までの漢字が書かれており、偶数の数字の者は槍、奇数の数字の者は弓を持っていた。
 全身を鋼鉄の外装で覆っており、頭部もフルフェイスの兜で覆われている。
 そして、独特の魔力反応――
「メタルゴーレム……?」
 怪訝な表情で上田が言った。
 そう、それはかつて、彼らがプラズマ研究所などで戦ったメタルゴーレムと同じ雰囲気を放っていたのだ。
 リーダー格が太刀を構え、進み出る。
「我らはフゴマー九兄弟! 小僧ども、大人しく我らについてくるのだ! 逆らうと言うのであれば、容赦はせん!」
 ギラリと刃を光らせて、リーダー格が言った。
 それに対し、石川達は身構える。
 どう見ても相手の態度が友好的ではないからだ。
 が、かつて冒険した時と違い、今の彼らはただの小学生。
 歯向かうのは無謀以外の何物でもない――そう思われた。
 フゴマー達が武器を構えた、まさにその時。
「主~~~っ!」

 ザクッ!

 聞きなれた声と共に赤い杖が飛んできて、地面に勢いよく突き刺さったのだ。
 上田の目が、驚愕のために見開かれる。
「しゃ、錫杖!?」
 まさしく、それは三人があのスパイドル城で出会った幻の錫杖だったのだ。
 続いて、
「イシカワ! オカノ! 受け取れ!」
 声と共に、石川達の足元に剣と籠手が投げられていた。
 それはそれぞれ、ブレイブセイバーと戦神の籠手だった。
 そして、彼らにそれを放った人物は――
「ガダメ!」
 驚いたように、石川が叫ぶ。
 ガダメだけではない。
 彼らの視線の先には、クレイとアーセン、さらにはサクラ、オータム、セルペンまでいたのだ。
「お久しぶりです、倫理さん!」
「盛彦、しっかりしな!」
「テッちゃんさん、また会えましたね!」
 次から次に彼らの想像もしない出来事が起きて混乱してしまいそうだったが、今は目の前の相手だ。
 石川達はそれぞれの武器を取ると、フゴマー達の方へ向き直った。
 リーダー格――彼らの長男で、イチローと言った――は苦い顔をすると、周囲の兄弟達に向かって叫んだ。
「ええい、構わん! 切って捨ててしまえ!」
「おう!」
 リーダー格の号令を合図に、フゴマー達はいっせいに石川達に襲い掛かる。
 それに対して、石川達は互角の勝負を繰り広げていた。
 最終決戦の時ほどではないにせよ、初めてトゥエクラニフに飛ばされた時くらいまでには、彼らの身体能力が向上していたのである。

 ゼー・ライ・ヴァー・ソウ!
(閃光よ、走れ)

「閃光呪文・バーン!」
 上田の掌から帯状の炎が飛び出し、四体をまとめて包み込む。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 炎に包まれた四体は、火だるまになって次々と倒れ伏した。
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 岡野も飛んでくる矢と突き出される槍を籠手で防ぎつつ、相手の懐に飛び込んで一体ずつ確実に仕留めていく。
 スパイドルナイトのような魔王クラスならともかく、フゴマー達の攻撃に、戦神の籠手は傷一つついていなかった。
 そして、石川はイチローと、お互いに剣を構えて向き合っていた。
 イチローは上段に、石川は中段、即ち刃の切っ先を相手の目に向ける、いわゆる青眼に構えている。
 イチローは緊張した面持ちで、太刀を握る手に力を込めた。
 石川達が強いとは聞いていたが、丸腰の相手を捕らえてくるのであれば、赤子の手をひねる様なもの……。
 そう考えていたのだ。
 ところが、楽に終わるはずだった仕事は、予想外の乱入者のおかげで、彼の思惑とは全く逆の方向に動き始めている。
 すでに戦況は決していると言ってもいい。
 この時、彼の最良の選択は逃げる事だった。
 だが――
(せっかくのチャンス……このまま棒に振ってたまるか!)
 兄弟達を倒されたという怒りとつまらぬ意地が、彼にそれ選択をさせる事を拒否していた。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 イチローが太刀を振り上げ、石川に切りかかる。

 ガシィィィィィィィィィィィィン!

 石川の剣がそれを受け止め、周囲に耳障りな金属音を響かせた。

 ガシィィィン! ガシィィィン! ガシィィィィィン!

 お互いに一歩も引かぬ攻防が続く。
 が、石川は相手の剣の軌道を読むと、一瞬の隙をついて高々と空中に跳んだ。
「!」
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ガキィィィィィィィィィィィィィィィィン!

 石川が振り下ろした剣は、凄まじい金属音を響かせ、イチローの肩口から胴体にかけて両断していた。
「こ、こんな馬鹿な……」
 イチローの手から太刀が落ち、地面に乾いた金属音が響く。
 そして、

 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 しばし放電した後、イチローのボディが大爆発を起こしたのだった。



~つづく~
 今日、FC2にWikiのコンテンツもある事を知ったので、『ファイクエWiki』を作ってみました。
 まだまだトップページとエピソードの項目しか出来ていませんが、編集にどしどし参加して頂けると幸いです

 何故か外部リンクが上手くいかなかったりと、まだまだ手探りではありますが、ある程度形になったらサイトの方にもWikiへのリンクを作りたいと思います(丁度一番右下の欄が開いてますし)。

 と言ったところで、今回はこの辺で。
 こんにちは、アカサカです。

 今回から、小説版『ファイクエII』の投稿に取り掛かりたいと思います。
 という訳で、今回はプロローグです。

 では、早速スタート!

 F県F市の石九小学校。
 ここはF市の郊外にある、何の変哲もない公立小学校だ。
 ただし、この小学校には、誰も知らない秘密があった。
 それは、この小学校に在籍する4年生の児童三人が、異世界に召喚されて、大冒険を繰り広げたという事である。
 その三人とは、石川鉄夫、上田倫理、岡野盛彦。
 ごくごく普通の小学生だが、異世界、トゥエクラニフでは救世主であり、それに見合った能力を手に入れていた。
 しかし……。
「テッちゃん、最近あんま元気ないね」
 釣り目気味のクラスメートが声をかける。
「そう?」
「ああ。テッちゃんだけじゃなくてさ、あと上ちゃんと岡ちゃんも……。一カ月くらい前から、なんかボーッとしてることが多いよ?」
「別に、何でもないよ大(おお)ちゃん」
「ふーん……」
 大ちゃんと呼ばれたクラスメートは、訝し気な表情のまま、そこから立ち去った。
 教室の一角では、上田と岡野も……。
「ねぇ、岡ちゃん」
「ん?」
 岡野に向かって、上田が右手の人差し指を向ける。
 そして、
「カ・ダー・マ・デ・モー・セ……」
 それは火炎呪文・フレアの詠唱だ。
「っておい! ちょっと待て!」
 岡野は慌てて飛び退るが、上田の指先からは、炎どころか火花一つ出ない。
「やっぱり駄目なんだよなぁ……」
 最初から結果が分かっていた様子で、上田がため息をつく。
 上田が考えていた事を察した岡野も、それに同意するように続ける。
「まぁね……。帰って来た時は、あんな『ドラ〇ンボ〇ル』みたいな事が出来たらプロスポーツ選手も夢じゃないなんて思ってたけどさ……」
 それは岡野や石川も同じで、トゥエクラニフに居た頃の特殊な力はすっかりなくなってしまい、ただの小学生に戻ってしまっていた。
 彼らがトゥエクラニフで冒険していた数か月は、驚くべきことに、この現実世界では5分も経っていなかった。
 最初は三人とも夢かと思ったが、三人とも、はっきりとあの冒険の事を覚えていた。
 あの苦しかった(?)トゥエクラニフでの冒険も、今となってはいい思い出であった。
 いや、それどころか、そのおかげで三人は人間的に一回りも二回りも成長をする事が出来たのだ。
 素晴らしい、最高の思い出であった。
 が、なまじ、そんなハラハラドキドキの思い出があればあるほど、現在の境遇が退屈でつまらないものに見えてくる。
「あーあ……」
 三人は同時にため息をつく。
 そんなわけで、三人はあの冒険の日々を、ただの夢だったと割り切る事が出来ないのでいた。

 さて、こちらはトゥエクラニフ。
 スパイドル軍の脅威が消えて一カ月。
 正気に戻ったスパイドル軍の面々の尽力もあり、人々は異変前の暮らしをなんとか取り戻し、平穏に暮らしていた。
 ただし、軍の主であるスパイドルナイトや、マージュの復活には、まだまだ時間が必要なようであったが。
 そんなトゥエクラニフの、ハサキヒオやブクソフカとはまた別の地域。

 ビカビカッ! ビカァァァァァァァァァァッ!

 分厚い雲の下、稲妻が光る。
 昼間だと言うのに不気味なほど暗い。
 稲光に照らされて、山々が見えた。この世界でも、オーソレ山と並び自然の要害として知られるクライヤ山脈だ。
 おや?
 よく見れば、木々に巧みにカモフラージュされているが、人口の建造物が見える。
 そう、そこは見事に自然の中に溶け込んだ広大な屋敷だった。

 ビカァァァァァァァァァァァァァァッ!

「フフフフフフフフフ……」
 いま、その屋敷の最上階の部屋――外見からはどう見ても山にしか見えないそこで、一人の男が笑みを浮かべていた。
 見るからに魔術師のようなローブに身を包み、頭には深々とフードを被っている。
 顔は怒ったような表情を描いた仮面に覆われていて、伺うことは出来ない。
 その姿はマージュを思わせるが、彼よりは幾分地味な印象であった。
 しかし、仮面の奥の瞳は鋭く、知性の輝きで彩られ、得も言われぬカリスマ性を感じさせる。
 だが、さらに奥には邪悪な光をたたえていた。
「すべては我が計画通り……ファッ、ファッ、ファッ、ファッ!」
 魔術師の高笑いは、屋敷中に、やがてクライヤ山脈全体に響き渡っていった。


 キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン……

 石九小学校に終業のチャイムが響き渡る。
 校舎からは帰宅姿の生徒たちがチラホラと現れ始めた。
 石川達も、教室で荷物をランドセルにまとめて帰る所であった。
 どんなに退屈だろうと、時間は普通に過ぎ去っていく。
 石川達は、あの冒険の日々は本当に夢だったのではないかと思い始めていた。
 三人が校門を出た、その時――

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

 激震がその場を襲い、石川達は引っくり返った。
「なんだ、なんだ!?」
「なになに!?」
 さきほどまで雲一つなかった空は、いきなり暗雲に覆われ、あちこちでスパークが巻き起こる。
「一体なんだ!?」
 まだ残っていた児童や教師たちが飛び出してきて空を見つめた。
 校舎のちょうど真上の辺りで雲は渦を巻き始める。

 バリバリ……ババババババッ!

 スパークはますます強まり、やがて渦巻きの中心から黒い巨大な球体が姿を現した。
「あれは!?」
 そして、次の瞬間、

 グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 いくつもの悲鳴と絶叫が巻き起こり、エネルギーの嵐が吹き荒れる。
 凄まじいエネルギーに周囲一帯が飲み込まれ、光に包まれて、何もかもが見えなくなっていった。



~つづく~
 はい、という訳で、今回で小説版『ファイクエI』もひとまず完結となります。

 今回は割とアッサリな展開に思われるかもしれませんが、まぁ、エピローグですし……。
 意図的にそうした部分もあるんですけどね。(^ ^;)

 前回はコチラ
 という訳で、本文スタート!

「終わった……?」
「そうみたい……」
 石川達は、呆然とマージュ達がいた方を見つめていたが、やがて、
「はぁぁぁ~~~っ……」
 気が抜けたように、その場にへたり込んだ。
 三人とも、疲労困憊に陥っていたのだ。
 そして、いくらか体力が回復してくると、
「今度こそ本当に終わったんだ……」
 全てを出し切ったような表情で、石川が呟いた。
 そこへ、
「礼を言う、異世界の少年たち」
 ガダメ達が、石川達に感謝の言葉をかけた。
 三人はガダメ達に支えられて立ち上がった。
 と、その身体が薄く発光し始めた事に、その場にいた全員が気が付いた。
「これは……」
「どうやら、お別れの時が、来たようですね……」
 いつもの無表情な顔に寂しげな色をにじませて、アーセンが呟く。
「そっか……おれ達、やっと帰れるんだ」
 まるで、たった今思い出したかのように、岡野が呟く。
 あれだけ長い冒険だったが、終わってみると、トゥエクラニフに来たのがつい昨日の事のように思えた。
 錫杖が上田の手から離れ、ガダメ達の方へピョンピョン跳ねていく。
「錫杖?」
 驚いた上田が声をかけると、錫杖はくるりと彼らの方を振り向く。
「お別れです、マスター。短い間でしたが、楽しかったですよ」
 錫杖が悲しげに笑う。
 上田も涙が出そうになるのをこらえながら、錫杖に手を振った。
「有難う、錫杖。おれも君の事、忘れない!」
 ガダメが進み出て、石川達に向かって頭を下げる。
「少年たち、君たちはこの世界、そしてスパイドルナイト様を救ってくれたのだ。この通り、お礼を申し上げる」
 続いてクレイも石川達に陽気に手を振った。
「元気でな、ボン達! 縁があったら、また会おうな!」
 それを聞いて、三人は苦笑する。
「本当はそうならない方がいいんだろうけどね……」
 次の瞬間、光に包まれた石川達は、その場から消えうせた。
「さらばだ、救世主たち……」
 石川達がいた場所に熱い視線を送りながら、ガダメが呟いた。

 いつしかスパイドル城を覆っていた吹雪はやみ、城を太陽の光が照らしていた。
 ハサキヒオやブクソフカの各地でも、人々は目に見えた変化を感じ取っていた。
 荒れた海が、穏やかな青い海に変わった。
 荒涼とした砂漠に、草が芽を出した。
 枯れた川に水が戻った。
 そして、砂漠や平原や森に棲んでいた魔物達が大人しくなった。

 セルペンは石川達がボガラニャタウンを出てからというものの、毎日スパイドル城の方を見つめていた。
 彼女が城の方の変化に気づいたのも、そんな時だった。
「テッチャンさんが……きっとテッチャンさん達がやったんだ……」
 その時である。
 <セルペンちゃん>
「!」
 セルペンが振り向くと、そこには光に包まれた石川達がいた。
「テッチャンさん!」
 即座に彼女は悟った。
 彼らが元の世界に帰る時が来たのだという事を。
「テッチャンさん……やったんですね?」
 <うん。おれ達、ついにやったよ。だから……>
「分かってます。それでも、帰る前にセルペンとの約束、守りに来てくれたんですね」
 涙ぐみながら、セルペンはニッコリ笑った。
「有難う御座いました、テッチャンさん! お元気で!」
 <セルペンちゃんも、元気でね!>
 そこまで言うと、三人の姿はフッと消え失せた。

 次に三人が現れたのは、タイタオニク号の居住地区、オータムの目の前だった。
「盛彦!」
 <よっ、オータム>
 岡野は指を二本立ててVサインをする。
 何とも言えない、すがすがしい笑顔であった。
 思わずオータムの頬が赤く染まる。
 <色々ありがとう。おれ達、元の世界に帰る事になったからさ>
「そっか……。海が穏やかになったと思ったら、そういう事だったんだね」
 <元気でな、オータム>
「盛彦達もね!」
 岡野が差し出した手に、オータムは自分の手を勢いよくタッチしてパシッといい音を立てた。

 その次に彼らが現れたのは、ブッコフタウン。
 もちろん、サクラの所である。
 聡明な彼女は、三人がこの世界を救った事をすぐに理解した。
「倫理さん……。ついに、もとの世界に帰れるんですね」
 <うん。……おれ、サクラちゃんと一緒に調べ物したり、ゲームブックで冒険した事、絶対に忘れないから!>
「私もです!」
 サクラは必至で涙を見せまいと努力した。
 笑みを浮かべるが、やはり涙は隠せなかった。
「さよなら、倫理さん。さよなら、皆さん!」
 目の前で消えていく三人に、サクラはいつまでも手を振っていた。

 それから三人は、ブットバ・シー号のミオク達、ハテナ町のモーカ達に会って、別れの挨拶を交わした。
 そして……。
(うっ……)
 気が付くと、三人は何もない空間を漂っていた。
 上も下も、時間の流れすらも分からない。
 が、遥か前方に光――出口があるに、三人は気が付いた。
 三人はその光に向かって進んでいく。

 シュパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!

 三人の視界が、一気に光に包まれた。


「ううう……」
 ゆっくりと意識が戻ってくる。
 石川が目を覚ました。
「あれ、ここ……」
 近くでは上田と岡野が眠っている。
 そこは非常に懐かしい、しかし見知った場所だった。
「あれれ?」
 そう、そこは彼らが元居た世界の、小学校の校庭の片隅だったのだ。
 しかし空は晴れており、青い空には白い雲がまばらにあるだけで、とても雷が鳴るような天気には見えなかった。
「う、うそっ! おれ達……」
 慌てて石川は、上田達を揺すり起こす。
「ちょっと起きて! 上ちゃん! 岡ちゃん!」
「ん……?」
「う~ん……」
 石川に揺すられて、二人も目を覚ました。
「ここって……」
 まだボーッとしながら周囲を見回していた二人だが、周囲の状況を把握すると、驚愕の表情で跳ね起きた。
「うそ!? おれ達、戻って来たの!?」
「そうみたい……」
「まさか夢じゃないよね……」
 三人はお互いの頬をつねってみる。
 その途端、
「いてててて!」
 同時に悲鳴が響いた。
「夢じゃない!」
 またまた同時に、三人は同じセリフを口にする。
 と、その時だ。

 <あと、五分で、昼休みが終わります。教室に戻って、学習の、準備をしましょう>

 昼休みの終わりを告げる校内放送が、校庭に響き渡った。
 どうやら、こちらでは彼らが雷に打たれた時から全く時間が経っていないらしかった。
「やばっ!」
 三人は慌てて立ち上がると、校舎に向かって一目散にかけて行くのだった。



~おしまい~
 はい、という訳で、今日は小説版『ファイクエ』の続きといきたいと思います。
 今回でストーリーの方はほぼ完結、と言ったところです。

 前回はコチラです。
 では、本文スタート!

「ほほほほほほほほほほほ、ほーっほほほほほほほほほほ」
 笑い声は、四方八方から寄せてきた。
 ほほほほほほほほほほ。
 声それ自体が形と重さを持った物体になって、渦を描いて回りながら、石川達を縛り上げる。
 まるで声それ自体に、体中を撫でまわされているようだった。
 手を出せば、笑い声のひとかけらに触る事が出来そうだった。
「だ、誰だ!?」
 石川は首を振って、辺り中を見回した。
「どこだ?」
「ふふふふふふ、ほぉぉぉぉぉほほほほほほほほほほほほほ! どこをお探しかえ? ここだ、ここだよ」
 けたたましい声、おぞましい声、無理に女を真似た男のような声。
 不快な悪臭をかき混ぜながら、声は目まぐるしく居場所を変える。
「ほほほほほほほほほ。ほーっほほほほほほほほほほほ! どこを見ているのさ。こっちだ。こっちだったら」
「ひっ!」
 見えない手で頬を撫でられ、上田が思わず悲鳴を上げる。
「ほほほほほほほほほ。おぉにさぁんこぉちら、手ぇの鳴ぁるほぉぉぉへ!」
 右から左、また左から右……声は上へ下へとうねるように移動する。
「誰だ、お前は! 姿を見せろ!」
「ここですよ」
 彼らの眼前、何もないようにしか見えない空間から声がした。
 その一点に、青い布が閃いた。
 かと思うと、樹上を滑る蛇のような動きでローブがはためき、闇影が凝り集まるようにして、そいつはいつの間にか立っていた。
「初めまして、子供たち。私はマージュ。マージュ=ギッカーナⅠ世」
 キラキラと蛇の鱗のように輝く青いローブ。
 深々と引き下ろした頭巾の下には、三日月形の目と口を描いた笑顔の仮面を被っており、素顔は見えない。
 あの時、スパイドルナイトと暗がりで会話していたあの男だ。
「マージュ、お前……」
 傷口を押さえながら、よろめく足取りでスパイドルナイトが立ち上がる。
「ほほほほほ、無様なものですねぇ、スパイドルナイト」
 口元に手を当て、マージュがからかうように笑った。
「くっ……。少年たち、ここから離れろ! こいつは私と同じ魔王……」
 スパイドルナイトが言い終わらない内に、ギガフレアの火炎が彼に襲い掛かった。

 シュゴォォォォォォォォォォォォォォッ!

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 彼よりもさらに強力なギガフレアを受け、スパイドルナイトは黒焦げになって後方へと吹っ飛ぶ。
「安心しなさい、スパイドルナイト。この地上世界を浄化するという使命は、我がダークマジッカーが引き継がせてもらいますよ」
「スパイドルナイト!」
 慌てて石川達はスパイドルナイトに駆け寄る。
 気を失ってはいるが、まだ息はあった。
 上田は急いで呪文を唱え、先ほどまで死闘を繰り広げていた相手にヒーレストをかける。
 石川と岡野の方は、武器を構えてマージュに向き直った。
 マージュは笑った。
「ほほほほほほ、私と戦うつもりですか。およしなさい、小さな戦士たち。そんな玩具を振り回すと、あなた達の方が怪我をしてしまいますよ」
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 二人は打ちかかった。
 勢い込んで、そのまま転がってしまうほど。
 剣と拳は、確かにローブを薙ぎ払った。
 だが、何の手ごたえも無い。
 マージュの笑い声は変わらない。
「ほほほほほほほほ、無駄ですよ、無駄無駄」
「ちぃっ、じゃあこれならどうだ!」
 石川は意識を集中させて、掌に魔力を集める。
「超新星呪文・メテオザッパー!」

 ズゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 石川の掌から、光の流星が飛ぶ。
 あの魔爪竜を下したメテオザッパーは、しかし、マージュの眼前であっけなく消えうせた。
「ええっ!?」
 あの最強威力の魔法があっさりと消滅し、石川は一瞬、我が目を疑う。
「だから無駄だと言ったでしょう。私に呪文は効きませんよ」
「じゃあこれならどうだ!」
 岡野が両方の掌を構え、その間に気の塊を発生させる。
「し~ん~りゅ~う~……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 岡野の突き出した掌から、龍の姿をした気が飛んだ。
 魔法ではない気功術なら、奴にも通用する――そう考えての事だった。
 しかし、神龍波もまた、マージュに届く前に消滅した。
「んなっ……!?」
「その技は、気を魔力で練り上げて発射している物でしょう。魔力が少しでも含まれている限り、私には同じことです」
 そう。マージュはありとあらゆる攻撃魔法に対して、耐性を持っているらしかった。
 二人が愕然となった所に、マージュが呪文を放つ。
 極大閃光呪文・バーンゲストだ。
 マージュはスパイドルナイトと同じく、詠唱一つ唱えず、こともなげに極大呪文を放ったのだ。
 しかも、威力はスパイドルナイトのものを上回っていた。

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 魔王の間が大爆発に包まれる。
 爆煙が晴れると、そこには石川達がボロボロになって倒れ伏していた。
 四人とも息はあるものの、既に戦闘不能なのは明らかだった。
「ほほほほほほほ、口ほどにもありませんねぇ、“救世主”さんたち?」
 石川は倒れ伏したまま、拳を握り締める。
 その瞳に涙が浮かび、床に零れ落ちた。
(何でだよ……。ここまで来たってのに、最後の最後で終わりなのかよ……)
 そこへ、彼らを鼓舞する声が響く。
「テツオ! 諦めるな!」
「!」
 顔を上げた石川達の目に飛び込んできたのは、彼らを守るように立っているガダメ達の姿だった。
 ようやく傷を回復させて、追いついてきたのだ。
「しっかりせい! まだ終わってへんで!」
「その通りです! 今、治して差し上げます!」
 クレイが四人を抱き起し、アーセンがヒーレストを唱える。
 石川達は立ち上がったものの、スパイドルナイトはまだ意識が戻らない。
「ガダメ、あいつは……?」
「あの方は、マージュ様。スパイドルナイト様と同じく、魔王様のお一人だ。そして……」
「そっか、あいつも『悪意』にやられちゃったって訳か」
「そうだ。魔王様達は強力な魔力を持っているが故に、我らよりもなお、悪意の影響を受けてしまう」
「つまり、アイツが正真正銘のラスボスって事ね……!」
 岡野が自分の右肩に手を置き、右腕をグルグルと回した。
 ガダメ達が現れた事で、彼らの中にあった戦意も復活したのだ。
「マージュ様は、特に、魔法に長けた、魔王様です。攻撃魔法の、類は、一切、通用しません」
 アーセンの言葉に、上田ががっくりと肩を落とす。
「なんだよ、それじゃあおれ、役に立てないじゃん……」
 だが、そんな上田の肩に石川が手を置いて言った。
「なに言ってんの、他にも補助呪文とかあるじゃ。それに錫杖だっているし」
「そうそう、その通りです。マスター!」
 自身の存在を誇示するように、錫杖がピョンピョンと跳ねて見せる。
「そうか。そうだね!」
 上田は素早く呪文を唱えると、アーセンと共に、全員に補助呪文を掛けた。
 ファスト、アタッカップ、ガード、そしてリフレクト。
 三人と三魔爪達は、四方八方からマージュへと飛びかかった。
「何人でかかってこようと無駄な事ですよ」
 マージュはそれらの攻撃を難なくかわすと、素早く右腕を突き出す。
 そこには鋭い三本の爪を備えた手甲が装備されていた。
 爪はガダメの腕をかすめ、ガダメの腕からは血が流れ出る。
「くっ!」
「私が呪文一辺倒の魔王ではない事、お前達ならよく知っておろう。無駄な事はやめておいた方が身のためだ」
「例え敵わぬ相手だとしても、我らはテツオ達に希望を見出したのです! あなたの暴走も、必ず止めて御覧に入れます!」
「戯言を……!」
 再度爪を繰り出そうとするマージュだが、その腕に、錫杖が変形した鎖鎌が絡みついた。
「!」
「みんな、今のうちに……!」
「よぉぉぉし!」
 岡野が渾身の力を込めて、マージュに打ちかかる。
 今度こそ命中するタイミングであった。
 だが、

 バキィィィィィィィィィィィッ!

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 横から飛んできた腕に薙ぎ払われ、岡野が吹っ飛ぶ。
「!?」
 一同は、岡野を吹っ飛ばした相手を見て愕然となった。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 野獣のような咆哮を上げたのは、なんとスパイドルナイトだったのだ。
 その目は焦点があっておらず、再び黒く濁っている。
「どうなってんの……うわっ!」
 スパイドルナイトに気を取られた隙に、上田はマージュに力任せに振り回され、錫杖ごと床に叩きつけられた。
「おやめ下さい、スパイドルナイト様!」
 ガダメとクレイが、スパイドルナイトにすがりつく。
「くっ……やはり、まだ浄化しきれていなかったのか……」
 苦々しげにガダメが言った。
 強力な魔力を持つ魔王は、悪意の影響をより深く受けてしまう事は先ほども述べた。
 そのため、ただ石川達に倒されただけでは、ガダメ達のように完全に悪意から解放されてはいなかったのだ。
「やはり、無駄なあがきだったようですね」
 マージュが言うなり、辺りの空気が突然膨れ上がるようにぼっと熱くなり、目の前全部が紅蓮に燃えた。

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 仮面の口から、燃え盛る火炎が吐き出されたのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 呪文ではない火炎は、リフレクトの呪文では防げない。
 スパイドルナイトをも巻き添えにして、炎は一同を再び薙ぎ払う。
 息も絶え絶えに横たわる彼らを見下ろし、マージュはクスクス笑った。
「終わりですね、救世主さんたち。それでは……」
 マージュがとどめとばかりに、再び火炎を吐こうとする。
 その時だった。

 ガシッ!

 何者かが、マージュを後ろから羽交い絞めにしたのだ。
「き、貴様!」
 初めてマージュの口から焦ったような声が飛び出した。
 マージュを羽交い絞めにしている相手は、スパイドルナイトだった。
「礼を言うぞ、お前の火炎のおかげで目が覚めた!」
 あの時、火炎を受けたショックで、スパイドルナイト本来の意識が目覚めていたのだ。
 スパイドルナイトはマージュを羽交い絞めにしたまま、石川達に向かって叫ぶ。
「少年たちよ、私ごとマージュを討て!」
「!?」
 石川達は、驚愕の表情になって叫んだ。
「ばっ……バカな事言うな!」
「出来ないよ、そんな事!」
「やるのだ! 私もマージュも、ただ倒されただけでは完全に浄化はされない! 今を逃せば、マージュを止めるチャンスは無くなる! 君たちも元の世界に帰れないんだぞ!」
「でも、でも……」
 泣きそうな顔になって、上田が躊躇う。
 そこへ声を掛けたのはガダメだった。
「……頼む、少年たち。スパイドルナイト様のおっしゃる通りにしてくれ」
「! お前ら何を言って……」
 反論する岡野だが、構わずスパイドルナイトが叫んだ。
「心配するな! 我ら魔王は、肉体は滅んでも魂までは滅びない! 時を置いて、復活する事が出来る! 元の通りの自分として! だから撃つのだ!」
「くっ……」
 それでも。浄化のためとはいえ、もともと善良だった魔王達を完全に倒してしまう事に、抵抗が無いわけがない。
 そう、彼らはまだ、一〇歳そこらの小学生なのだ。
 三人は唇を噛んだ。
「ワイらからも頼む。スパイドルナイト様と、マージュ様を助けてくれへんか!」
「まだ子供の、あなた達に、こんな事を、頼むのは、酷い事だと、分かっています。ですが、あなた達のほか、出来る者は、いないのです!」
 石川はしばしの間、俯いていた。
 しかし……。
「やるぞぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 意を決して叫ぶ。
「上ちゃん、岡ちゃん! 三人の力を合わせるんだ!」
「わ……分かった!」
「こうなったら、やってやろうじゃねえか!」
 上田と岡野も腹を決めて、石川の手に、自分の手を合わせた。
 三人から、これまでにない量の魔力が立ち上っていく。
「おおっ……」
 三魔爪達が、そしてスパイドルナイトがその光景に目を奪われた。
「閃光(ひかり)の……波動!」

 ズォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 突き出した掌から、三色の光が飛び出す。
 青、黄色、緑……。
 それらの光は渦を巻き、螺旋状になって、マージュ達を飲み込んでいった。
「有難う、少年たち……」
 光に包まれ、スパイドルナイトが静かに言った。
 そしてまた、マージュも光の中で同じように消えていく。
 三人の目は、砕けていく仮面の下から現れたマージュの素顔が、穏やかに微笑んでいるのを見逃さなかった。



~つづく~

 てな訳で、次回はいよいよRPGでいう所の『エンディング』です。
 なるべく早く投稿したいとは思っています。

 ちなみに三人の合体呪文、最初は『閃光の螺旋』にしようかと思ったのですが、それだと某『レ○アース』と丸被りするので没になりました。(^ ^;)

 あと、今回のラスト部分、スパイドルナイトとマージュの最期は、『Gガンダム』のシュヴァルツ/キョウジの最期や、『ゴウザウラー』のエンジン王の最期をちょっと意識しながら執筆しました。

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。
 今日は小説版『ファイクエ』の続きです。
 今回はいよいよ、スパイドルナイトとの決戦ですが……?

 なお、前回はコチラ
 では、本文スタート!

「……来たな」
 スパイドルナイトは静かに言った。
 濃い陰影の中から注がれる錐の先のように尖った視線には、なお底知れぬ力があった。
 石川達は、自分たちが隅々まで透視され、吟味されているのを感じた。
 緊張のあまり、首筋が硬くなった。
 奥歯がきしんで、歯を食いしばっている事に気づいた。
 戦いを仕掛けもしない内から、飲まれてしまってどうする!
 石川は瞳に力を籠め、一歩前に進み出た。
「スパイドルナイトか」
「いかにも」
 スパイドルナイの声は地を這い、闇を揺すった。
「あんたを助けに来た。『悪意』に惑わされてるあんたを倒して、あんたと、この世界を助けるために!」
「ふっ……ふははははははははははははははははは!」
 スパイドルナイトは、声高に笑った。
「お前達ごときに、この魔王スパイドルナイトが倒せるものか! だが、この城までたどり着き、我が三魔爪まで下すとは見上げた奴らよ。なぁ、小僧ども。ものは相談だが――」
 じっと三人を見た。
「どうだ、私の配下になる気は無いか?」
「はぁっ!?」
 あまりに突然で、予想もしていなかった言葉に、石川達は思わず素っ頓狂な声を出す。
「私はこれから新たな戦いを始める。トゥエクラニフ全土を掌握するための戦いをな!」
「な、なに!?」
「私の味方になったら、ハサキヒオとブクソフカをお前たちにやってもいい」
「バカな事言うなよ!」
「そうか。それは残念だな」
「いくらおれ達が子供でも、そんな古い手に乗る訳ないだろ!」
「それにな、昔っから、そういう話に乗ったやつは破滅するって決まってんだよ!」
「そういう事!」
 岡野と上田も続ける。
「命は惜しくないのか?」
「うるさい! それよりなにより、この世界を救わないと、おれ達は帰れないんだ!」
 石川は猛然とスパイドルナイトに向かって突進した。
 あとには上田と岡野も続く。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 大きく宙に飛んで、石川は思いっきりスパイドルナイトの頭上に剣を振り降ろした。

 ザシィィィィィィィィィィィィィィッ!

 玉座が真っ二つに割れた。
 だが、スパイドルナイトの姿が忽然と消えていた。
「えっ!?」
「ふははははははははははははははははは!」
 背後からスパイドルナイトのあざ笑う声がした。
「テッちゃん、岡ちゃん、後ろ!」
 上田の声に二人が振り向くと、後ろにスパイドルナイトが悠然と立っていた。
「くそーっ!」
 石川と岡野は、再び剣と拳を振りかざして突進した。
 スパイドルナイトはこともなげに二人の攻撃をかわす。
 と、その刹那、その三つの目に、刃物めいた光点が現れた。
 二人がはっとして飛び退った空間の一点に、光は走り、見る見るうちに膨れ上がって爆発した。

 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

「ボンベストか!」
 上田がその呪文を正確に見抜いて叫ぶ。
 さらに、
「ギガフレア! バーンゲスト!」
 スパイドルナイトは次々と呪文を放ってくる。
 もちろん、いずれも最高位の呪文である。

 ズガァァァァァァァン!
 ドガァァァァァァァァァァァァァァン!

 次々と飛んでくる呪文の嵐が炸裂し、爆発が巻き起こる。
「なんて威力だ! しかも呪文の詠唱をしてないぞ!」
 驚愕の表情で上田が叫んだ。
 そう、あのアーセンですら、呪文を使う時には上田達と同じく詠唱を行っていたのだ。
「どうした小僧ども! 達者なのは口だけか!?」
 スパイドルナイトの手から、新たなギガフレアが飛ぶ。
「このぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 対抗して上田がギガフレアを、そして石川もメガフレアを放った。

 シュゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 正面から火炎呪文が激突する。
 驚いた事に、上田と石川の合体フレアの方が押されていた。
 石川が上田に向かって驚愕の声を上げる。
「上ちゃん、これどういう事!?」
「こんな……あいつのギガフレアの方が、おれのギガフレアよりも威力が高いみたい!」
「ええっ!?」

 シュガァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!

「うわぁぁぁぁぁっ!」
 ついにスパイドルナイトのギガフレアが合体フレアを打ち破り、二人は真紅の炎に包まれる。
「あつっ……」
「テッちゃん、前!」
「えっ?」
 炎の中を、一気にスパイドルナイトが接近していた。
「速い!」
「喰らえ!」
 スパイドルナイトが右拳を突き出す。
 一瞬で、その拳は蜘蛛の脚や槍を思わせる、鋭い爪へと変化していた。
 その爪が、石川の胸めがけて飛ぶ。
「ちいっ!」
 とっさに二人の間に割り込んだ岡野が、無造作に腕を前に出していた。
「なにっ!?」
 スパイドルナイトの爪が、岡野の左腕に突き刺さる。
 その爪は、天界の金属で作られたはずの戦神の籠手すら貫いていた。
「ううっ!」
 当然、岡野も左腕に深い傷を負うが、今はそんな事に構っていられない。
 左腕に爪が突き刺さったため、一瞬動きを止めたスパイドルナイトに、岡野の右腕がうなりをあげて迫っていた。
 まともに届けば、それはスパイドルナイトの顔面を捉えていただろう。
 だが、そうはならなかった。
 スパイドルナイトは、この至近距離でいきなり呪文を放ったのだ。
「ボム!」

 ズガァァァァァァァァン!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 通常のボンバー並みの威力を持つ、凄まじい爆発が三人とスパイドルナイトを吹き飛ばした。
「岡ちゃん!」
 体勢を立て直す三人だが、岡野はガックリと膝をつく。
 その顔は青く、呼吸も荒くなっている。
「はあ、はあ……」
「岡ちゃん!?」
「私の爪には毒が仕込まれている。早く手当てをせねば、命に係わるぞ」
「くっ!」
 急いで上田は岡野の傷口に手をかざすと、呪文を唱えた。

 ヴェーノ・キーロゥ
(穢れし毒よ、消えよ)

「解毒呪文・ポイズノン!」
 岡野の傷口を淡い光が覆い、それにともなって、岡野の顔色も元に戻っていった。
「どうする、あの呪文……それに毒は厄介だぜ」
 立ち上がって岡野が呟く。
「詠唱がない分、どうしてもおれ達は後れをとっちゃう。だったら、三人でいる事を活かさないと」
「どうやって……って!」
 ギョッとなって岡野が前を見た。
 前方から再びボンベストの光球が迫っていたのだ。
 その時だ。
 上田は気力を集中し、呪文を唱えていた。
「反射呪文・リフレクト!」
 瞬く間に、岡野の前に透明な魔力の壁が現れる。

 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 石川と上田の二人はまたも吹っ飛ばされたが、岡野は平気だ。
 体の周囲の魔力の壁が、敵の呪文を跳ね返し、最高威力の空爆がスパイドルナイト自身を打ちのめす。
「なっ、何いっ!?」
 初めてスパイドルナイトに隙が生まれた。
「今だぁぁぁぁっ!」
 石川と岡野が、同時にスパイドルナイトに飛びかかる。
 体勢を立て直したスパイドルナイトは腕を振るった。その一撃は岡野を打ち払ったが、石川のブレイブソードはその防御をかいくぐり、蜘蛛を模した分厚い鎧を切り裂いた。

 ザシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 青黒い鮮血が飛ぶ。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 スパイドルナイトは、苦痛に歪んだ頭を振り立てて絶叫した。
 石川は返す刀で、スパイドルナイトの胴体を横に薙ぎ払う。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 再び鮮血が飛び、スパイドルナイトはガックリと床に膝をついた。
「はぁ、はぁ……」
 石川は刃に付いた血糊を払うと、静かに荒い息を吐くスパイドルナイトを見下ろしていた。
 スパイドルナイトの瞳から、急速に濁った色が抜け落ちていく。
「私は……私は何をしていたんだ?」
 三魔爪や今までのボスたちと同じく、石川の渾身の一撃で、スパイドルナイトもまた悪意の呪縛から解放されたのだ。
「悪い夢を見てたんだよ」
 石川は剣を収めると、スパイドルナイトに向かって手を差し出した。
「君たちは……。そうか、異世界の……」
 スパイドルナイトは穏やかな目つきで、石川の手を取ろうとする。
 その時だ。
「ほほほほほほほほほほほほほほ」
 何とも言えず気味の悪い笑い声が、辺り中に響き渡った。
「!?」



~つづく~
 前回からそんなに日は経ってませんが、今日は『ファイクエ』の新エピソードでいきたいと思います。
 そう言えば昔エーオーブンさんの所で『超高速ヒカリアン』連載してた頃は、週一で投稿してたっけなぁ……。

 それはともかく、スタート!

「えっと……どういう事?」
 思いもよらぬことを言ったガダメに、石川が聞き返した。
 ガダメは床に手をついて座り直すと、真剣な目で言った。
「実は……今回の異変は、我らも望んで起こしたものではないのだ」
 ガダメは一呼吸置くと、いつにも増して真面目な顔をして話し始めた。
 この世界が天界・地上界・魔界に別れていることは、既に説明済みであろう。
 魔界はこれらの世界では一番“下”にある事になるのだが、それにちょっとした問題があった。
 この世界は、現実世界と比べても、全体的に平和な世界ではあるが、そんな世界にも怒りや憎しみ、哀しみといった『負の感情』は当然存在する。
 それらの『重たい』感情は、厄介な事に世界の下の方に、まるで重力に引かれるように沈殿してしまうのだ。
 その結果、魔界にはそんな感情、すなわち『悪意』が溜まってしまうのだが、これらは『強い魔力にひかれてしまう』という性質を持っていた。
 つまり、魔王や彼ら魔界騎士といった者たちが、望まずして悪に染まってしまうのである。
「その『悪意』に取り込まれている時、自分自身、それが“おかしくなってしまった”という認識が無い……。だからそれらの行動を“正しいもの”として認識してしまうのだ」
 ガダメが苦々しく言った。
 石川達にも思い当たる事があった。
 それは、まさに当のガダメとのボガラニャタワーでの戦い。
 あの時、ガダメはセルペンを攻撃した事に対して、自分自身が何をやったのか驚くというほどに動揺していた。
「つまり、あの時……」
「そうだ。あの時は、わずかながら私の本来の心が、悪意に染まってしまった心に干渉をしていたのだ」
 一同は黙り込む。
 やがて上田が口を開いた。
「でもさ……あんた達がおかしくなるのと、おれ達がこの世界に飛ばされてきたのって、どういう関係があるの?」
「それは、悪に染まった我々を浄化できるのは、『別の世界の光の力のみ』だからと伝わっている」
「と言うと?」
「我々が悪に染まった場合、それを浄化できるのは光の力なのだが、『元々この世界に存在する光』では、悪意だけでなく我々の魂まで消滅させてしまうのだ」
 天界が地上における魔族の暴走に対処できない理由の一つがこれだった。
 もともと望んで悪事を働いているわけでない魔族を犠牲にする事は出来ない。いわば魔界騎士達も被害者だという認識なのである。
 対して石川達、『別の世界』の人間の光の力であれば、悪意だけを消し去る事が出来るのだという。
 三魔爪達も石川達に倒された事で、悪の心を浄化され、正気を取り戻したという訳だ。
「君たちが倒してきたモンスターは、ゴールドに姿を変えていただろう? あれも倒された事で魂が浄化されて、また同じモンスターとして生まれ変わっているのだ」
「そうだったの……」
 ガダメはすまなさそうに、再び手をついて頭を下げる。
「本来、この世界とは何の関わりも無い君たちに、こんな事を頼むのは勝手だと重々承知している。しかし、頼む! この世界には、君たちしか頼れる者がいないのだ!」
 石川達は顔を見合わせると、やがて微笑んで頷いた。
「分かったよ。どっちみち、おれ達もこの騒動を解決しないと、もとに世界に帰れないみたいだし……」
「すまん! 心から感謝する。異世界の少年たちよ……!」
「……石川だよ」
「ん?」
 ガダメはきょとんとして、石川達の方を見上げた。
「石川哲夫。それがおれの名前」
「おれは上田倫理」
「おれは、岡野盛彦」
 三人は改めて自己紹介をした。
 考えてみれば、これまでガダメ達に自分達の名前を名乗る機会など無かった。
「イシカワ、ウエダ、オカノ……。そうか。頼んだ」
 手を差し出すガダメに石川も手を伸ばすと、しっかりと握手を交わした。
 と、その時だ。
「ところでさ、テッちゃん、武器はどうするの? さっきの戦いで、剣、折れちゃったじゃん」
「あ……」
 思い出したように言った上田に、石川も汗ジトになる。
「それやったら、これを使い」
 いつの間に意識を取り戻したか、クレイが壁に向かって文字通り“腕を伸ばす”。
 クレイの手が壁に触れると、スッ、と一部の壁が横に動いて消失した。
 隠し部屋になっていたのだ。
「あの中に、かつて、我々が、天界より、預かった、武具が、収められています。きっと、あなた達に、合うものが、あるはずです」
 同じく目を覚ましたアーセンも続ける。
「分かった。有難う」
 石川達はペコリと頭を下げると、隠し部屋に入っていった。
 中にはそんなに多くはないものの、色々な武器が収められていた。
 剣や槍、弓矢、杖、爪など……。
 部屋を歩いている内に、石川と岡野は、何かに導かれるように歩いて行った。
 石川の目の前にあったのは一本の剣だった。
 床に直接、真っすぐに刺されている。
 柄には細かな彫刻が施され、鍔の部分は龍を象っている。
 石川はその柄に手をかけると、そのまま一気に引き抜いた。
 鏡のような青々とした刃。
 今にも油が滴りそうなしっとりとしたその光沢。
 程よい重さで、妙にしっくりと手に合う。
「この剣は……」
 石川がぐっと力を込めて握りしめると、
「うっ!?」
 ブルブルッ――と手が震えた。
 一瞬、手が離れなくなったのかと思うほど、ぴったりと柄に吸い付いている。
 と、剣から不思議な力が伝わって来た。その力がまるで血液のように、あっという間に全身を駆け巡り、今にも爆発しそうな闘志と力が全身にみなぎった。
 さっきまでの疲れがウソのように吹っ飛んでいた。
「テッちゃんも見つけたらしいな、自分に合う武器」
 見れば、岡野も金属的な輝きを放つ籠手を両手にはめている。
 それはよく見ると、獅子を模した形状をしていた。
「上ちゃんは?」
 二人は振り返ったが、上田が手にしていたのは相変わらずあの幻の錫杖だ。
 上田は錫杖を大事そうに握ると、にっこり笑って言った。
「どれもおれには合いそうになくて……やっぱりおれは、この錫杖がいいみたい。ね?」
「はい」
 上田が笑いかけると、錫杖の方も嬉しそうに笑った。

 隠し部屋から戻って来た三人を、ガダメ達は感激の面持ちで見ていた。
「おおっ!『ブレイブセイバー』と『戦神の籠手』に選ばれたか……。やはり君たちこそが、伝説の救世主……」
「頼んだで!」
「どうか、この世界を。そして、スパイドルナイト様を……」
「オーケイ!」
 三人は頷くと、さらに上階へと続く階段を駆け上っていった。
 上階もまた、黒曜石で出来た立派な宮殿になっていた。
 壁や天井や円柱には、蜘蛛の彫り物が施してある。
 さらに進んで角を曲がると、円柱の陰から、石川達めがけて強烈な光線が飛来した。
「おわっ!」
 三人が交わして飛びのくと、四方の円柱の陰から銃を構えた重装甲のメタルゴーレム達が二十体ばかり現れた。
 ドクター・プラズマの研究所に配備されていたパワードロイドを、スパイドル城の警備用にさらに改良したガーディアンだ。
 <侵入者ハッケン、排除! 排除!>
 ガーディアン達は機械的にそう言うと、一斉に光線銃を構えて攻撃してきた。
 だが、自分たちにとって最高の武器を手に入れた石川達は敢然として光線を受け止めた。
「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 上田の呪文に援護されながら、石川と岡野は猛然と突進し、ブレイブセイバーと戦神の籠手が閃光を放って、三度四度、宙を切り裂いた。
 たちまちバラバラになったガーディアン達が、次々と宙を舞った。
 二人は改めて、天界の武器のすさまじさを知った。
 その時だ。
「!」
 凄まじい気を感じて、三人は立ち止まった。
 その気は奥から放たれている。
 石川達は緊張し、さらに奥に進んで、
「あっ!?」
 息をのんで武器を身構えた。
 そこは豪華な魔王の間だった。
 その正面の一段高いところで、玉座に座った魔界騎士が、恐ろしい顔で石川達を睨みつけていた。
 並の者なら一目散に逃げだしてしまうほどの気迫だ。
 事実、現実世界に居た頃の石川達であれば、部屋に入る事すらできなかったであろう。
 全身を黄色と黒を基調とした、蜘蛛を模した鎧で包み、紫色の豪奢なマントを身に着けている。
 三つある眼は非常に鋭い。
 スパイドルナイトだった。



~つづく~
 と言う訳で、今回は小説版『ファイクエ』11話の完結編です。
 今回はちょっと長めかな……?

 前回はコチラです。
 では、本文スタート!

「このッ……! ここまで来て、負けてられるか!」
 岡野が自分を奮い立たせるように叫ぶと立ち上がり、上田も続く。
 石川もそれを見て、剣を杖代わりにして起き上がった。
 三人は三方に散って、それぞれ別々に魔爪竜に攻撃を仕掛けた。
 だが、魔爪竜も三つの首を持っている。

 ブォォォォォォォォォォォォォッ!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ガダメの首が再び猛炎を吐き、火だるまになった上田が吹っ飛ばされた。
 続いて、

 ドガァァァァァァァァァァァァァァッ!

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 アーセンの首の体当たりを受け、岡野が壁まで吹っ飛ばされる。
 そのまま壁に背中から激突し、ずるずるっと床に崩れ落ちた。
 全身に激痛が走り、骨がきしみ、思うように動けなかった。
「このおっ!」
 石川が気合と共に魔爪竜に向けて剣を突き入れる。
 が、その時信じられない事が起こった。
 硬い鱗で覆われているはずの魔爪竜の身体が、一瞬グニャリと曲がったのだ。
「なにっ!?」
 <アホ! 魔爪竜には、ワイも合体しとるんや! 体組織を変化させるなんて、朝飯前やで!>

 バキィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!

「うわぁぁぁぁっ!」
 いきなり顔面に強烈な衝撃を受け、石川が叩き飛ばされる。
 顔の骨が歪んだかと思ったほどだ。
 魔爪竜の巨大な尻尾が、顔面を殴りつけたのだ。
 岡野と同じく、石川は大理石の壁に叩きつけられて床に転がり落ちた。
 叩きつけられた時、ギシッと全身の骨がきしむ音がした。
 頬は腫れあがり、口の中を切ったのか、血が流れていた。
「く、くそっ……!」
 石川は必死に起き上がろうとしたが、めまいがして再び床に沈んだ。
 尻尾で殴られた時に軽い脳震盪を起こしたのだ。
 何度か頭を振り、めまいも収まってやっと身を起こした時だった。

 ブォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

「うわぁぁぁっ!」
 猛炎の渦をモロに浴び、石川は火だるまになって吹き飛ばされた。
 それは激痛を遥かに超えた衝撃だった。
 胸が苦しくて息をするのもやっとだった。意識がもうろうとし、目がかすんだ。
 この世界に来て、強化された身体能力が無ければ確実に即死していたはずだ。
 石川は何とか立ち上がろうとしたが、ガクッと膝が折れてまた倒れてしまった。
 両足の神経がマヒして動けないのだ。
 <喰らえ!>
 ガダメの首の単眼がさらに鋭くなった。
 そして、ひときわ強烈な炎の渦を浴びせかけた。
 石川はかろうじて横に避けると、熱風を潜り抜けて魔爪竜の懐に飛び込み、脚に斬りかかった。
 だが、あっけなく跳ね返された。
 今度はありったけの力で宙に飛び、剣を振り下ろした。
 剣は魔爪竜の肩口に当たった。

 ガキィィィィィィィン!

 だが、空しく金属音が響いただけだった。
 石川は愕然とした。
「くそっ! 柔らかくなったり硬くなったり、どうなってんだ、こいつの身体は!?」
 その時である。

 ガシッ!

「あっ!?」
 魔爪竜の腕が凄まじい速度で動き、石川の身体をつかんでいた。
「し、しまった!」
 絶体絶命のピンチ――
 このまま魔爪竜が力をこめれば、石川の身体はあっけなく握りつぶされてしまうだろう。
 ガダメの首が石川の前までやってきて、眼光鋭く睨みつけた。
 <これで終わりだ。これでなっ……>
 だが、魔爪竜が指に力を込めたのと同時だった。
 石川が力を振り絞って、
「くそーっ、負けてたまるか!」
 渾身の力を込めて剣を突き出したのだ。

 ドシュッ!

 完全に虚を突かれたガダメの目のすぐ上に、石川の剣は鍔の先まで突き刺さり、おびただしい青い鮮血が飛んだ。
 同時に、

 バキィィィィィィィィィンッ!

 石川の剣がガダメの額に刺さったままへし折れた。
 <ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!>
 不意を突かれたガダメは思わずのけぞって、眼を押さえて身もだえた。
 流れた血が眼に入り、ガダメの首は完全に盲目となっていた。
 <ガダメはん!>
 <ガダメ!>
 クレイとアーセンの首も、思わず動揺してガダメの首の方を向く。
 その時には、上田と岡野が体勢を立て直していた。
 魔爪竜の意識が石川に向いていた隙に、何とか上田が回復の時間を稼ぐことが出来たのだ。
「テッちゃんが!」
 魔爪竜に掴まれている石川の姿を見つけ、上田が焦った悲鳴を上げる。
 岡野は魔爪竜を睨みつけると、全身に力を込めた。
(この世界じゃ、強くなった武闘家は気を使える……。あの時、ガダメも気功術を使ってた……。なら、今のおれなら出来るはず!)
 意を決すると、岡野は両手を構えて精神を集中させた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……」

 ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……

 その掌に、光の球が生まれ、輝きを増していく。
「岡ちゃん!?」
 驚いて、上田が岡野の両手を見つめる。
「か~〇~は~〇~……波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 叫び声と共に岡野が両手を突き出すと、掌から龍の姿をした気の塊が飛び出した。

 ギュォォォォォォォォォォォォォッ!

 龍の気は、そのまま一直線に魔爪竜に向かっていく。
 <なんや!?>
 気づいたクレイがそちらを向くが、一瞬遅い。

 ドガァァァァァァァァァァァァァァッ!

 龍の気は、魔爪竜の左腕と左翼を根こそぎ吹っ飛ばしていた。
<ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!>
 魔爪竜が悶え、石川が地面に落ちる。
 上田は素早く石川に駆け寄ると、その場から離脱し、最高位の回復呪文であるヒーレストを唱えた。
 みるみる石川の傷がふさがっていき、石川の顔に血の気が戻って来た。
「さんきゅ、上ちゃん……」
 ただ、完全回復にはまだ時間がかかるのか、その笑顔には力が無い。
「岡ちゃん、何だったの、今の?」
 石川に回復呪文を掛けながら、上田が岡野に尋ねる。
「ほら、この前の戦いで、ガダメが気功術を使ってたろ? 今のおれのレベルなら、使えるんじゃないかって思ってさ」
「ふ~ん……。でもさ、さすがに『か○○め波』は無いんじゃないの?」
 汗ジトになって上田が言う。
 岡野もばつが悪そうな顔をして頭をかいた。
「やっぱ、流石にマズいか……」
 上田はふう、と息をつくと、微笑んで言った。
「あの気、龍の形をしてたしさ、『神龍波(しんりゅうは)』とかどう?」
 それを聞いて、岡野も満足そうにうなずく。
「いいねぇ、それ! オリジナル技っぽくて!」
 その時、錫杖が叫ぶ。
「皆さん、油断しないで下さい! 魔爪竜はまだ、やられてませんよ!」
 はっとなって三人が魔爪竜の方を向くと、魔爪竜は吹き飛んだ左腕と翼を復元している所だった。
「今のうちに何とかしないと、彼らが完全回復してしまっては終わりです!」
「よ~し、だったら……」
 今度は上田が前に進み出ると、両手を広げる。
 実は上田には、ずっと考えていた事があった。
 それはブッコフ図書館で調べものをしていた時である。
 バーン系やボム系、ツイスター系の呪文には『極大呪文』があった。
 だが、フレア系とアイス系にはその『極大呪文』が存在しなかったのだ。
(憶測だけど……フレア系とアイス系は、どっちも『熱エネルギー』の呪文……。もし、この二つを合わせたのが『極大呪文』だったとしたら……)
 上田の右手に青白い光が、左手に赤い光が発生する。
 そのまま両手を合わせると、相反したエネルギーのスパークが巻き起こる。
「極大光熱呪文……ブリザレム!」

 シュゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 上田が両手を突き出すと、渦を巻いた赤と青のエネルギーが飛び出し、スパークをまとって魔爪竜に突っ込んでいく。

 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!

 <ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!>
 ブリザレムの直撃を受けた魔爪竜は、全身をすさまじいエネルギーに蹂躙されていた。
「やった! ……えっ!?」
 勝利を確信した上田だが、次の瞬間、その顔は驚愕に変わっていた。
 ボロボロになりながらも、魔爪竜はまだ健在だ。
 <自分ら……許さへんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!>
 <絶対に、この場で、倒させて頂きます!>
 怒りに燃えるクレイとアーセンが叫んだ。
 だが、その前に石川が立つ。
 既に上田のヒーレストで体力は全開しているものの、剣を失った彼は丸腰だ。
 慌てて上田が石川の肩を掴む。
「待って、テッちゃん! 武器も無いのに、どうやって戦うっていうの!?」
 が、振り向いた石川の顔には自信が満ちていた。
「大丈夫。今の二人を見て、分かったんだ。おれにも“必殺技”って呼べる魔法があるって!」
「ええっ!?」
 困惑している上田をよそに、石川が構えを取る。
 石川が精神を集中させると、頭の中に宇宙のイメージが自然に浮かんできた。
(色んなものが見える――)
 石川の神経は、流れのすべてに広がりつつあった。
 宇宙はビッグバンを起こし、星が生まれる。
 石川はその流れを、まるで自分の体で再現するような気持ちになりながら、右腕を突き出した。
「超新星呪文・メテオザッパァァァァァァァァァァァァッ!」

 ズゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 石川の右腕から、無数の流れ星のように虹色のエネルギーが飛び出す。
 その凄まじいまでの魔力を知り、クレイ達は戦慄した。
 <く、来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!>
 だが、彼らの思考はそこで止まった。
 メテオザッパーのエネルギーは、魔爪竜の身体を飲み込んでいた。

 シュゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 凄まじい爆発が起こり、魔爪竜の身体はその中に消えていた。


「か……勝った……?」
 石川達は魂が抜けたような顔で、その場に座り込んだ。
 体力も気力も、全ての力を使い果たしたのだ。
 緊張の糸が切れ、三人ともしばしその場に座り込んでいた。
 その時だ。

 ドシャッ! ドシャッ! ドシャッ!

 何かが彼らの眼前に落ちてきて、三人は身をこわばらせた。
 それは――
「う……」
 もはやボロボロとなった三魔爪達だった。
 三人とも、かろうじて息はあるものの、戦闘の続行が不可能であることは明らかであった。
 アーセンなど、原型の姿に戻ってしまっている。
 石川達が緊張した面持ちで彼らを見つめていると、最初に身を起こしたのはガダメだった。
 剣が刺さったのが目の上だったためか、眼ははっきりと開いている。
 ガダメは石川達の方を見つめると、ひれ伏して叫んだ。
「異世界の少年たちよ、頼む! この世界と、スパイドルナイト様を救ってくれ!」
「はぁっ!?」
 予想だにしなかったガダメの言葉に、石川達は目を丸くした。



~つづく~
 前回からかなり間が空きましたが、今回は久々に小説版『ファイクエ』の続きでいきたいと思います。
 なお、その前回はコチラ

 では、さっそくスタート!

「どうしたんですか?」
 錫杖がきょとんとしたような顔つき(と言っても、単眼がそれっぽいように見えるだけだが)で、再度言葉を発する。
「つ……杖が喋った……」
 愕然となる一同に、錫杖はさも当然と言った様子で答えた。
「そりゃ、喋ったっておかしくはないでしょう。今までそういうモンスターを見た事は無かったんですか? それから、私は“杖”じゃなくて“錫杖”です。『幻(まほろば)の錫杖』。以後、宜しくお願いします」
 錫杖が、お辞儀をするように先端をクイッと曲げる。
 どうやら彼(?)は、『生きている杖(リビングスタッフ)』の一種らしかった。
「えーっと……それで、おれが君の新しい主って言うのは?」
 ようやく落ち着きを取り戻した上田が、錫杖を握ったまま尋ねる。
「それは、あなたの魔力が私を目覚めさせたからです。私は、主にふさわしい者の魔力を得ると目覚める事が出来るんですよ」
「ふ~ん……」
 不思議とその事実を受け入れている様子の上田に対して、石川と岡野は怪訝な表情のままだ。
「本当かな……」
「何かの罠じゃ……?」
 二人がそう思うのも当然だ。
 ここは敵の本拠地なのである。
 しかし、上田は首を横に振る。
「ううん。多分、嘘は言ってない。何となくだけど、分かるんだ」
 確信をもって上田が言った。
 錫杖を握っていると、不思議な一体感と安心感が生まれるのだ。
 まるで久しぶりに肉親に再会したような、不思議な感覚だった。
 その様子に、石川と岡野もようやく納得したようだった。
 かくして新たな仲間を加えた一同は、さらに先へ進んでいった。
 道中、上田は新しく相棒になった錫杖に、自身の特性を説明されていた。
 いわく、装備者の魔法力を打撃力に変換できる武器である、という事。
 使用者の意思で、錫杖からある程度変形して他の武器にもなれるという事。
 道すがら、上田が試してみた結果、大鎌(翼の部分が合体して巨大化した)、鎖鎌(先端が鎌に、グリップ部分が上下に分かれて、内部に仕込まれていた鎖で繋がる)、手甲鉤と棍(先端部が手甲に、グリップが棍へと分離)などなど……。
(要するに、セルペンちゃんが使ってたムチの上位互換って事か……)
 納得したように上田が頷く。
 これまで肉弾戦ではほぼ役に立てなかった彼にとっては僥倖であった。
 逆に錫杖の方も、上田達から現在のこの世界の状況を聞いて、納得したように言った。
「なるほど……それならば、主(あるじ)私を目覚めさせる事が出来たのも分かります。もともと私は、この世界に異変が起きた時の対策として魔界で作られたのですから……」
 そんな錫杖に、石川が横から尋ねる。
「なあなあ、あんた、見た感じ上ちゃんの『最強武器』っぽいじゃん。おれらにはそういうの無いの?」
「そうですねぇ……。私が知っている限りでは、天界で作られた剣と籠手があると聞いた事がありますが……」
「へー、まさにおれ達のためにあるようなもんじゃん」
「そうだね」
 目を輝かせる岡野に、上田もクスッと笑う。
 石川と岡野にも、いわゆる『最強装備』がある……。
 それがもし本当であれば、この先の戦いで大きな助けになるのは間違いないし、三人と一本は、襲い掛かるモンスターを撃退しながら、その期待に胸を膨らませていた。
 だが、また階段を登り切ったところで、一同の表情は硬いものになる。
 そこはまた広いホールで、三人の戦士が彼らを待ち構えていたのだ。
 当然、
「また会ったな、異世界の少年たち」
 そう。ガダメ達三魔爪である。
 錫杖も緊張した面持ちで言った。
「皆さん、気を付けて下さい。彼らは……」
 それを遮って石川が答える。
「ああ、知ってるよ。これまでにも戦った事があるんだから……」
 前回のブッコフタウンでの戦いを思い出し、その額には汗が流れていた。
 あれから経験を積み、彼らのレベルも上がっているのは確実だ。
 しかし、三魔爪から発せられる気迫は、そんな彼らを警戒させるに十分だった。
 特にガダメに至っては、前回は三対一であったにも関わらず、彼らの方が苦戦したのだ。
 当然、クレイとアーセンも、ブッコフタウンの戦いでは本気を出していなかったことは明白である。
「今度こそお前達を倒す。我らの真の力、見るがいい! クレイ! アーセン!」
「はいな!」
「はい!」
 三魔爪達は両手を広げると、叫んだ。
「魔界変幻!」
 すると、三人の身体が溶けるように崩れ、一つの塊へと融合した。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 塊は膨張し、それと同時に形が変化していく。
 床を踏み砕く、巨大な足が生えた。
 大蛇よりもさらに太い尾が伸びた。
 空をも覆い隠すような、巨大な翼が生まれた。
 鋭く伸びた爪を備えた前足が生えた。
 そして、三つの首が次々と伸びた。
「げげっ!」
 石川達が、驚愕の声を上げながら見上げる。
 そこに出現していたのは、全高が五シャグル(約一八メートル)はありそうな、天を突くような巨大な三つ首竜だった。
 それぞれの首には特徴があった。
 右の首は竜の埴輪のような形状で、左の首は、緑色の彫刻のような形をしている。
 そして、真ん中の首は金属質の鱗を持ち、単眼であった。
 <見たか! これぞ我らの究極の姿、魔爪竜だ!>
 真ん中の首が、辺りを震わせる雷のような叫び声をあげた。
 それは紛れも無く、ガダメの声だった。
「あいつら……」
「合体しちゃった……?」
 三人は息をのんで愕然となった。

 ガォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 魔爪竜は城の外まで轟くような咆哮を上げると、真ん中の、ガダメの首から紅蓮の炎を吐いた。
 炎を渦を巻き、目にもとまらぬ速さで飛んできた。
「くっ!」
 すかさず上田は錫杖を構えると、素早く呪文を唱える。

 ブーブッゲ・ギー・アレイ・ズーザ・ゴージン!
(吹き荒れよ、氷の刃)

「吹雪呪文・ブリザード!」
 上田の手から錫杖を通し、凄まじい氷の刃を伴った吹雪が噴き出す。
 アイス系の最強呪文、ブリザードだ。
 ブリザードは、魔爪竜が吐き出した炎を何とか押しとどめていた。
 そこへ、

 グー・バク・ゴウ・ゲレム・ガルム・バング!
(大気よ、全てを砕け散らせたまえ)

 <極大爆裂呪文・ボンベスト!>
 アーセンの首が呪文を唱え、その口から直接ボンベストのエネルギーを吐き出す。
 ボンベストは着弾すると、凄まじい爆発を引き起こした。

 ドガドガドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 爆発に巻き込まれた三人は、木の葉のように吹き飛び、地面に投げ出される。
「くうっ……」
 なんとか身を起こす石川だが、魔爪竜の力に底知れぬ恐怖を抱いていた。
 それは、初めて三魔爪に追い詰められた時と同じ、あの恐怖だった。



~つづく~
 と言う訳で、ひと月近く間が空きましたが、今日は『ファイクエ』の新エピソードでいきたいと思います。
 では、スタート!

 ソゲンカ門を突破した一同は、一路、スパイドル城へと向かっていた。
 寒い事には寒いが、アイスヒドラが作り出していた吹雪はやんでいる為、耐えられないほどではない。
 一時ほど歩くと、三人は白のすぐ近くまで到着していた。
 城に接近した三人は、要塞のような石造りの門を抜け、岩陰から城内の様子を見た。
 オーソレ山を背に、荘厳華麗な黒曜石の建物がそびえていた。宮殿だ。
 たれこめた雲に覆われて薄暗い空の下、真っ黒な城は、整然と居住まいを正して建っている。
 それは言われなければ魔王の居城だと気が付かないほど、豪奢で壮麗で、とても美しく立派に映った。
「やっと……着いたね」
「うん……」
 三人は緊張した面持ちで、宮殿に接近した。
 頑丈そうな鉄の門を開けて中に忍び込もうとした時、頭上からモンスターの群れが急襲してきた。
 フロストターキーとメイジターキーの飛行部隊だった。
 フロストターキーの編隊が襲い、すぐさまメイジターキーの編隊が続いた。
 石川がフロストターキーとメイジターキーを数匹ずつ切り倒し、上田が呪文でサポートし、岡野は空高く飛びあがって、拳と足で打ち落とす。
 そして隙を見て宮殿に飛び込んだ。
 中は広いホールになっていた。
 しんと静まり返り、人の気配も無い。
「静か……だね」
「だね……」
 三人は慎重に歩を進める。
 そうして、数歩歩いた時。

 カチッ

「え?」

 チュドォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!

「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 突然、床が爆発を起こし、三人は吹っ飛ばされた。
「な、なんだ? 敵の攻撃か……?」
 真っ黒こげになり、半分眼を回しながら岡野が呟く。
「違うみたいだけど……」
 そう言って、上田が何気なく近くの床に手を置いた時だ。

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

「どっしぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 再び爆発が巻き起こり、三人はまもたや派手に吹っ飛ばされる。
「わ、分かった。上ちゃん、岡ちゃん、ここ、地雷部屋なんだ……」
「地雷部屋ぁ!?」
 岡野が驚いた声を出す。
 道理で、この部屋にはモンスターの一匹も出なかったはずだ。
「どうする? このままじゃあ、進めない……」
 石川が唇をかむ。
 仮に上田が飛翔呪文(フライヤー)を使ったとしても他の二人を抱えて飛んだりはできないという事は、既に証明されている。
「ふふふ、だったら……」
 その上田がニヤリと笑い、ろうそくの炎のようにゆらりと立ち上がった。
「どうすんのさ、上ちゃん?」
 怪訝そうな表情になる岡野に対して、笑みを浮かべたままの上田の返答はとんでもないものだった。
「爆発するなら……爆発させてやるのよ! ぜ~~~んぶな!」
「いいっ!?」
 石川と岡野の表情が驚愕のためにこわばるが、上田はその時には既に呪文を唱えていた。

 グー・ダッ・ガー・ハー・ゼイ・ロウ!
(大気よ、爆ぜろ!)

「爆裂呪文、ボム!」
 上田の掌から光球が飛び出し、床へと着弾する。
 その途端、

 ドガドガドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 床に埋められていた地雷が誘爆し、次々と爆発が巻き起こる。
 あっという間に部屋は爆炎が充満する地獄絵図となったが、上田はその光景に興奮したように叫び、さらにボムの呪文を放った。
「ふはははははは! 砕けろ! 砕けろ! みんな砕けちまえーっ!」
「くっそ、上ちゃんの奴、無茶苦茶しやがって……」
 爆風を避けながら、岡野が愚痴を言う。
「きっと爆発のし過ぎでキレたんだよ……」
 汗ジトになりながら、石川が呟いた。
 この時、二人の脳裏に浮かんだのはただ一つ。
(コイツ、危ねえ……)

 数分後、地雷部屋は見事に真っ黒こげになった部屋へと様変わりしていた。
「よし、これでもう大丈夫なはず。行こう、二人とも」
「あ、ああ……」
「う、うん……」
 スッキリした表情で歩き出す上田に、呆然となった表情の石川と岡野が続いた。
 三人は部屋の奥にあった階段を駆け上る。
 その途端、異様な殺気を感じて立ち止まった。
 二階ホールの巨大な円柱の陰から、次々に剣を持った骸骨の魔物が姿を現して、三人の前に立ちはだかったのだ。
 その数は、ざっと数えて一〇〇体はいる。
 このスパイドル城の警備をしている、スカルガードという上級の骸骨剣士の騎士団だ。
 宮殿の中は、巨大な円柱がずらりと両側に並んで、奥の闇へと続いていた。
 スカルガード達は骨の音をきしませながらにじり寄ると、なだれ込むように襲撃してきた。
 先ほどと同じように、上田の呪文のサポートを受けた石川が数体を切り裂き、岡野が拳で打ち砕きながら正面を突破して奥へと向かう。
 即座に騎士達の群れが後を追った。
 こうして、同じ戦法を何度も繰り返しながら、三人は奥へ奥へと向かった。
 そして、最後のスカルガードを倒した時、一番奥の部屋の前まで来ていた。
 先頭に立っていた石川は呼吸を整えると、その扉をそっと開けた。
 奥には階段があり、その手前には、一風変わった杖が祀ってあった。
 鈍い輝きを放つワインレッドで、先端は楕円形になっており、その先には槍のような刃が、両脇からはコウモリの翼のようなものが生えており、翼にはそれぞれ無数のリングが通してある。
 いわゆる『錫杖』という奴だ。
「なんだこれ?」
 思わず、上田がその杖を手に取る。
 すると、
「おや、貴方が私の新しい主ですか?」
 楕円形の部分が、まるで瞼を開けるかのようにパッチリと開き、一つ目が出現していた。
 声はその錫杖から発せられていたのだ。
 石川と岡野はその場に固まり、上田は錫杖を持ったままわなわなと震えている。
 そして――
「ななななななななな……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 城中を揺るがすような悲鳴を上げたのだった。



~つづく~
 今日は『ファイクエ』10話の完結編でいきたいと思います。
 小説版『ファイクエ』も、いよいよ山場に入ってきました……。

 では、スタート!

 三人は、ソゲンカ門の中に入っていった。
 中は明るく、広々としている。
 辺り一面、美しいと言ってもいいほどピカピカだった。
 つるつるで平らな床のあちこちには、かつて落ちたつららが細かに割れてうず高く堆積し、危なっかしい氷のケルンをなしている。
 遥かな天井から屈折に屈折を繰り返してここまで届いた光は、ほのかに柔らかく、随所で小さな虹を宿した。
 外の雪嵐が遠のき、やがて全く聞こえなくなった。
 一歩ごとに腰まで埋まる雪もここには無い。歩くのがずっと楽だ。
 うっかり触ると、指が張り付いてしまうほど冷たい氷の壁が、どこまでも迷路のように続く。
 ひんやり、ひっそりと静まり返った氷の迷宮を、彼らは注意深く進んだ。
 最初、迷路は大したことは無いもののように思われた。
 なにせ壁はところどころ完全に透明で、何重なりも向こう側まではっきり先が見えるのだから。
 しかし、どんな悪意のたまものか、道はひどく入り組んでおり、とんでもない方角まで回り込まなければ、望む方向に進むことが出来ない。
 回り込んでいるうちに、もともとどっちを目指していた物やら、頭が混乱してしまう。
 散々グルグル回らされた挙句、結局どこにもたどり着けない道も多い。
 なまじあからさまに見えている向こう側にたどり着けないのは、酷く悔しい。
 壁を火炎呪文で溶かせば良さそうなものだが、全体が氷で出来ているソゲンカ門で、下手にそんな事をしてしまえば、建物全体が崩壊してしまう恐れもある。
 そして、モンスターはそんな彼らの進路を容赦なく妨害してくる。
「えーい、どけどけ! 邪魔なんだよ!」
「おらおらおらおら!」
「守備力減退呪文・ソフター! もういっちょ、閃光呪文・バーネイ!」
 凍り付く息を吹きかけてくるフロストターキーをローストにし、ちょろちょろ飛び回るおばけバチを切り払い、バーネイの呪文をかけてくる冥府の使いを反射呪文(リフレクト)で逆に丸焼きにし、鋭い角をかざしてやみくもに突進してくるライノザウルスを踏み越えて、彼らは進んだ。
 そして――
「あっ!?」
 三人はだだっ広い大広間に出た。
 そこでは五つの首を持った、氷でできた竜の彫刻が、絶えず吹雪を吐き出している。
「ここが吹雪の発生源か! よーし、叩き壊してやる!」
 三人は武器を構える。
 その様子を指令室から見ていたクレイは、慌てた声を出した。
「どうすんねん。このままやと、吹雪を止められてまうで?」
 だが、オーイェ・ティは落ち着き払って答えた。
「オーイェー。大丈夫です、クレイ様」
 そう言うと、手近にあったコンソールのレバーを引いた。
「モンスター・アイスヒドラ、出げ~き!」
 すると、

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 地鳴りと共に、吹雪を噴き出していた彫刻の表面にひびが入ったかと思うと、一気に氷が砕け散り、その中から、全身を青い鱗に包まれた巨大な五つ首竜が姿を現した。
 その全高は四シャグル(約一四メートル)を超え、頭部は牛でも丸飲み出来そうなほどに巨大だ。
 なんと、このモンスター・アイスヒドラこそが、あの凄まじいブリザードを起こしていたのである。
 石川達は驚愕して目を見開く。
「モンスター!」
「頭が五個もあるよ!」

 ンギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!

 アイスヒドラは咆哮を上げると、口から凄まじい吹雪を噴き出して攻撃してきた。

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 吹雪の勢いに、三人は思わず身を縮こませる。
 そこへすかさず、巨大な頭部が体当たりしてきて、石川が吹っ飛ばされた。
「テッちゃん!」
「大丈夫か!?」
「あ、ああ。大丈夫!」
 石川は上半身を起こしながら答える。
「この野郎!」
 岡野が首を殴りつけ、さらに蹴りを見舞うが、別の首からの反撃を受けて、同じく吹っ飛ばされた。
「こ、こりゃいかん……」
 目を回しながら岡野が氷の床に引っくり返る。
「このぉ!」

 ゲキ・カ・ダー・マ・ジー・バツ・メイ・ガー!
(火の神よ、その炎で焼き尽くせ!)

「火炎呪文・ギガフレア!」

 シュガォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 上田の手から、巨大な爆炎が飛ぶ。
 アーセンも使っていた、最高ランクの火炎呪文、『ギガフレア』だ。
 ギガフレアはアイスヒドラの頭部の一つにまともに命中した。
「どうよ!?」
 だが、

 ンギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!

 怒りに燃えた他の首が襲い掛かり、勢いのついた一撃が、上田のすぐ横の床を砕き、上田はその衝撃で吹っ飛ばされた。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
 吹っ飛ばされた上田は床に転がる。
 と、その衝撃で、ナップザックから小さなタルが転がり出た。
 村を出る前に、リョートから「寒さを我慢できなくなったらこれを使って」と渡されたウイスキーボンボンである。
 ちなみに遭難時にブランデー等が体を温めるという説だが、実際にはアルコールをとると血管が拡張して中枢で暖まった血液が末端に流れるので暖かくなったように感じるが、中枢の体温は低下してしまうので、長期的に見ればかえって逆効果になってしまう。
 つまり「あと一時間で下山できる」といった短期的な状況に対して有効なのである。
 まぁ、それはさておき……。
「これってお酒だよね……。だったら」
 上田はタルを開けると、中に入っていたウイスキーボンボンを手に取る。
「これでも喰らえ!」
 上田はボンボンをアイスヒドラの口に向かって放り投げたのだ。
 ボンボンは見事にヒドラの口の中に飛び込む。
 それから少し間をおいて、

 ンギャァァァァ……

 五つの首が、みるみる赤く染まっていく。
 なんとアイスヒドラは、ボンボンのウイスキーで酔っぱらってしまったようであった。
 全ての首が酔っぱらってしまったのは、胴体を共有している為であろう。
 酔っぱらった首たちは、互いに絡みあい、しまいにはお互い噛み合うやら、吹雪で凍らせ合うやら、凄まじい狂態を繰り広げている。
 すっかりこっちの事を忘れてしまったアイスヒドラを他所に、上田は急いで石川と岡野を回復させた。
「ふええ、どうなってんの?」
「あいつら、酔っぱらっちまってるな……」
 一匹で大げんかを繰り広げているアイスヒドラを見て、二人は一瞬呆気にとられる。
 しかし、そこへ上田の声が飛んで我に返る。
「二人とも、今のうちに!」
「了解!」
「よぉ~し……」
 三人は気合を込めると、石川はバーネイ、上田はギガフレア、そして岡野は上田から渡された噴火の杖から炎を振りかざして炎を飛ばす。
 一束になった巨大な火炎は、アイスヒドラを直撃する。
 それに伴って、ソゲンカ門内部の温度も急激に上昇していった。
 広間を形成している氷も溶け出し、辺りにもうもうと蒸気を発生させる。
 もちろん、オーイェ・ティ達のいる部屋も。
「あ、暑い……」
 ただでさえ暑い毛皮に覆われているオーイェ・ティは汗びっしょりになって呟いた。
 やがて、

 チュドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!

 限界を超えたアイスヒドラのボディが、大爆発を起こしたのだ。
「ちいっ!」
「脱出や!」
 三魔爪はとっさに脱出したものの、一瞬逃げ遅れたオーイェ・ティは爆発に巻き込まれてしまう。
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~っ!」
 オーイェ・ティは爆風の中、木の葉のように上空高く吹っ飛ばされていった。


 アイスヒドラが倒された後、ソゲンカ門はゆっくりと崩壊していった。
 三人は上田が唱えた脱出呪文・エスケイプで、門の外へと無事脱出している。
 振り向くと、ソゲンカ門があった場所には、清らかな水滝が滔々(とうとう)と流れていた。
 すでに吹雪はやみ、空にはオーロラが輝いている。
 そして、遥か地平線に見えるのは……。
「あれが……スパイドル城か!」
 黒曜石で出来た、荘厳華麗な城が姿を現していた。
「よし、行こう!」
 石川が元気よく歩き出し、残りの二人も力強く頷くと、後に続く。
 冒険の終着点は、もうすぐであった。



~つづく~
 今日、冷蔵庫で冷やしていたアーモンド入りのチョコレートを噛んでいたら、唐突に歯が欠けました(汗)。
 歯磨きはしっかりしてるんだけどなぁ……

 今日は久々にニチアサを見る事が出来ましたが、久々なせいかちょっとチンプンカンプン……。(^ ^;)

 さて、本文の方は昨日の続きでいきたいと思います。
 ギャグシーンの多かった前回から、だんだんと本題に入っていきます。

 ではスタート!

「どうかゆっくり温まって行って下さい」
 石川に向かって、温かい飲み物が注がれたマグカップが差し出される。
 カップを差し出したのは、エスキモーのような防寒具に身を包んだ、十代後半ほどの少年だ。
 おっとりした雰囲気の顔が特徴的だった。
 ここはこのツンドランド地方にある、エスカモーという村で、彼らを助けたのはリョートという村の少年であった。
 村には現実世界の物よりも大きめのイグルーが並び、リョートの家の前には牛ほどもある犬が曳く犬ぞりが停めてある。
「有難う……」
 石川は丁寧にカップを受け取ると、フゥフゥ言いながらカップに口をつけた。
「あったか~い……」
「本当に、生き返るなぁ……」
 横では同じようにマグカップを持った上田と岡野が笑顔を見せている。
 そんな三人を満足そうに見ていたリョートだったが、ふと、その表情が曇る。
「いや全く、この吹雪にはオレ達も参ってるんだよ」
 外では相変わらず、猛烈な吹雪が吹き荒れていた。
 このまま吹雪が続けば、エスカモー村が雪の下に埋まってしまうのではないかとすら思える。
「これって異常気象なんですか?」
 吹雪の事を尋ねてみた石川に、リョートは首を横に振る。
「いや、この先にあるソゲンカ門って所が原因なんだ」
「ソゲンカ門?」
「そう。そこのオーイェ・ティって奴が、猛烈な吹雪を起こして、その先にある魔王様の城に誰も近づけないようにしてるんだ」
 聞けば、このエスカモー村は魔王スパイドルナイトの城に最も近い村で、魔物が凶暴化して以来、猛烈な吹雪で誰も城に近づけなくなっているのだという。
 元々スパイドルナイトは、このブクソフカ大陸とハサキヒオ大陸を治めている魔王という事だった。
 話を聴いた石川は、立ち上がって叫んだ。
「よ~し! リョートさん、おれ達がそのオーイェ・ティって奴をやっつけて来てやる!」
「ええっ!?」
「きっと、そのスパイドル城に誰も近づけたくない訳があるんだ。上ちゃん! 岡ちゃん!」
 石川の言葉に、上田と岡野もコクリと頷いた。

 さて、一方そのソゲンカ門。
 ここは門とは言っているものの、パリのエトワール凱旋門のように巨大で、砦や城と言っても差し支えないような建造物だった。
 しかも驚くことに、建物すべてが氷で出来ているのだ。
 その門のあちこちにある窓から、猛烈な吹雪が巻き起こっていた。
 氷系では最強の吹雪呪文、ブリザードにも勝る勢いだ。
 そんなソゲンカ門の一室に、ガダメ達三魔爪は訪れていた。
「ようこそおいで下さいました~」
 簡易なプロテクターを身に着けた人物が出迎える。
 全身を獣毛が覆っており、目など毛に隠れて見えない。
 いわゆる雪男だ。ただし、体格は人間とそう変わらないサイズだったが。
 このソゲンカ門を守るオーイェ・ティである。
「しっかりと、お勤めを、果たしているようですね、オーイェ・ティ」
 いつもの仮面のような表情ながら、アーセンが満足そうに言った。
 横ではクレイがガタガタと震えている。
「それにしても……ちょっと、寒すぎやあらへんか? こんなんじゃ凍ってまうで……」
「オーイェー。申し訳ありません、クレイ様。しかしこのソゲンカ門はスパイドル城につながる門。誰も近づけてはならぬとスパイドルナイト様から厳命されておりますので……」
「しゃあないなぁ……。アーセンはんは、寒ないんでっか?」
 ふと、身震い一つしないアーセンにクレイが問いかける。
 アーセンはわずかに首をかしげるように言った。
「私は、ゴーレムですからねぇ。そういった、感覚は、あまりよく、分かりません」
「便利やな……。なぁ、ガダメはん?」
 ガダメの方を振り返るクレイだったが、返事は無い。
 ガダメは下を向いたまま、何ごとか思案していたのだ。
(何故私は、あの時セルペンに手をあげた? いや、そもそも、私は何故その事に対して違和感を持ったのだ? この地上世界から人族を排除し、地上世界を浄化する。それが我々魔族の使命だ。そのはずだ。ん? それならば何故、私は魔族と人族が共に住む街の市長などやっていたのだ? どうなっている? 私は結局、何がしたいんだ……?)
 前回、ボガラニャタワーで石川達と一戦を交えて以来、ガダメの中になにやら形容できない違和感が生まれていた。
 今までの自分の、スパイドル軍三魔爪としての行動、それ自体に偽りはない。
 それが自分たちに課せられた使命だと思ってやってきた。その気持ちにウソは無かった。
 だが、一方でそんな自分に「それは違うのではないか」と分析しているガダメもいた。
 思考はぐるぐると回り、結局答えは見いだせない。
 さらに、その思考も中断される事になる。
「ガダメはん!」
「うおっ!」
 突然、視界にクレイが飛び込んできて、大声で怒鳴ったのだ。
「何だ、脅かすな、クレイ」
「ガダメはんが何べん呼んでも返事せえへんからやろ! どうしたんや? この間、異世界のボン達を迎え撃ちに行ってから、なんかおかしいで?」
「おかしいか……。そうかも知れん」
 深刻な顔で呟くガダメに、クレイはあからさまに不思議な表情をして見せる。
「なぁ、クレイ。『この地上世界から人族を排除し、浄化する』。それが我々、魔界騎士の使命に違いないよな?」
「今さら何言うてんねん。そんなん、何百年も前から当たり前の事やないか」
「そうだ。そうだったな……」
 長い間共に戦ってきた同僚の言葉に、ガダメは思い悩むことをやめる。
(私の疑問を解消するのは後だ。今は、異世界の少年たちを迎え撃つのみ!)
 いつもの生真面目な表情で、ガダメはキッと前方を見据える。
 その時だ。

 ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!

 城内にけたたましく警報が響き渡った。
 はじかれたようにオーイェ・ティが叫ぶ。
「オーイェー! 何者かがこのソゲンカ門に近づいてるぞ!」

 言うまでもなく、門に接近していたのは石川達だ。
「あれだ!」
「すごい吹雪を噴き出してる!」

 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 吹雪が吹き荒れる中、三人は門に向かって走って行った。
 風が酷く巻いているので、雪は上から下にばかりでなく、下から上へも飛びしきる。
 雪はますます濃く、深くなり、辺りはろくに見えず、靴の中で足が凍えた。
 突風に腕を上げて避けた勢いで、たまたま後ろを振り向けば、三人の足跡はたちまち吹き散らされ、埋められていく。
 まるで戻る道筋すら、周到に閉ざしてまわっているかのように。
 そこへ、
「うわっ!」
 突然、大蛇のような触手が振り下ろされて、一同はその場から飛び退った。
 現れたのは、成人男性の倍はありそうな、巨大なイソギンチャクのような姿をした怪物だった。
 ローパーというモンスターで、触手でとらえた獲物を頭頂部の口で食い尽くしてしまう恐るべき相手だ。
 三人は気合を入れなおすと、かじかんだ手に力を込めた。
 上田の炎の呪文が飛び、岡野が触手を捕まえ、そこを石川の剣が切り落とす。
 さしもの肉食獣も三人の連携の前にはひとたまりもない。
 岡野の拳を受けて、ゴールドへと姿を変えるのだった。
 息が白い煙になってたなびく。
 動き回った事で多少、体が温まった三人は、門の外壁に寄り集まり、互いの無事を確認して、ほっと微笑んだ。



~つづく~
 今日は約三か月ぶりに『ファイクエ』の続きで行きます。
 ……続きも早いところ執筆できたらいいのですが。(^ ^;)

 では、さっそくスタート!

 セルペンと別れ、ボガラニャタウンを後にした一行は西へと進んでいた。
 西方にあるオーソレ山(ざん)の麓の、スパイドルナイトの居城を目指しているのだ。
 西に進むにつれ、気候は変化していく。
 空は雲に覆われ、その内に雪まで振り出したのだ。
「おっかしいなぁ……」
 地図を手に、上田が怪訝な表情をする。
 どっちを見ても、荒涼とした砂山ばかりだ。
 なだらかな砂漠が海のように続いている。
 時折、冷たい風が砂塵を巻き上げながら吹き抜けていく。
 西の砂山にはもうじき太陽が落ちようとしていた。
 ボガラニャタウンを出てから、既に五日が経過していた。
「確かに西の方は寒いって聞いてたけど……この辺りはまだ、雪が降るはずがないのに……」
「気にするなよ、上ちゃん。食料だって、いっぱい買い込んでるんだし。少しぐらい迷ったって、どうって事無いって」
 わざと元気づけるように石川が言った。
 ここで自分が不安そうな顔をしては、周囲にまで伝染してしまう。
 石川に元気づけられたように上田と岡野も頷くと、また歩き出した。
 しかしながら、そんな一同を、この後さらに過酷な状況が待ち受けていることを、この時の彼らは知る由も無かった。

「これ、ほとんど吹雪じゃない!?」

 シュゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!

 凄まじいという言葉を十回繰り返しても表現できないほどの吹雪が横殴りに向かってくる。
 あれから一同は一時ほど歩いていたのだが、天気はどんどん悪くなるばかりで、現状はこのありさま、という訳だ。
 三人は普段の服装の上から、ボガラニャタウンで買った防寒着を着ていた。
 そうでもしなかったら凍え死んでいただろう。
 辺り一面、視界も何もかも雪で覆われている。
 このまま進むのは自殺行為だ。まして、三人は吹雪の中を旅した経験など皆無である。
「これ以上進むと危ないから、今日はここで休もう!」
「異議なし!」
 吹雪で声があまり伝わらないため、三人は声を張り上げていた。


 それからしばらくして。
 三人は雪をかき集めてかまくらを作り、中で火を焚いて暖を取っていた。
 いわゆるビバーグという奴である。
「寒い……寒すぎる……」
 いかに防寒具を着て火を焚いていると言え、寒い事には変わりない。
 いや、それでもまだマシな方だろう。
 もし防寒具や火が無ければ、とっくの昔に凍ってしまっていただろう。
「やだよこんな所で凍え死になんて! 絶対にいや!」
「おれ、なんだか眠い……」
 岡野の首がコテッと下がる。
「おれも……」
 続いて上田もカクッ。
「お、おい、眠っちゃダメだって! 上ちゃん! 岡ちゃん!」
 二人を揺する石川だったが、
「だめだ……おれも眠い……。うう~ん……」
 石川も睡魔に襲われ、意識がブラックアウトてしまう。

「……チャンさん……テッチャンさん!」
「ん?」
 呼ばれた声に石川が顔を上げると、そこに立っていたのはセルペンだった。
「せ、セルペンちゃん?」
「しっかりして下さい、寝たら凍死してしまいます」
 この時、石川の頭はほとんどマヒ状態であった。
 従って、これが夢か現実かの判別などつくはずもない。
「大丈夫……セルペンが温めてあげます」
 そう言うと、セルペンが頬を赤らめ、恥ずかしそうに自分の服に手をかけた。
「ええっ!?」
 パサッという音と共に、地面に服が落ちた。
(ちょ、ちょっと待て! おれ達小学生だよ!? こんな展開あっていいわけ!?)
 ドギマギする石川だったが、続けてパサッとセルペンの髪の毛が落ちる。
「えっ?」
 驚いた石川が顔を上げると、そこに立っていたのは……
「ちょっとだけよぉ~ん♪」
 首から下が人間の姿になったザコであった。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 石川は悲鳴を上げ、びっくりして目を覚ました。
 それが夢と分かると、彼は、
「助かった……」
 とつぶやき、心臓の鼓動もだんだん正常に戻っていった。
 そして、残念そうな顔をして言ったのだった。
「ちぇっ、夢ならもっとサービスしてくれたらいいのに」
 ダメダメ。
 この物語は良い子のみんなだって見てるんだから。
「っと、いけない! 上ちゃん! 岡ちゃん! 起きてってば!」
 はっと気づいた石川が、岡野を揺する。
 この時、幸せそうな顔をして寝ていた岡野が見ていた夢は……。

「や、やった……。ついにおれは、元の世界に帰ったんだーっ!」
 岡野は感激の面持ちで、目の前に広がる光景を見つめていた。
 彼の目の前に広がっているのは、元居た世界の校庭だ。
 そこへ校内放送が響き渡る。
 <あと五分で、昼休みが終わります。教室に戻って、学習の、準備をしましょう>
「いけね! 急がないと!」
 急いで校舎に向かって駆けだす岡野だったが、下駄箱の前で仁王立ちしている人物がいた。
 その人物は、怒りの表情で岡野を睨みつける。
「盛彦……あたしを放って帰ろうなんて、いい度胸じゃないか!」
「げげっ、オータム!?」
 途端に岡野の顔から血の気がサーッと引く。
「この薄情者! あんたなんか、あんたなんか!」

 ビシバシ! ビシバシ! ビシバシ!

 オータムは岡野の胸ぐらをつかむと、往復ビンタをかました。
「ご、ごめん、オータム……」
 殴られた岡野の意識がフェードアウトしていき……

「あれっ!?」
 気が付くと、そこは彼らが寒さをしのいでいたかまくらの中だった。
「ほら起きて、岡ちゃん!」
「テッちゃん? あれは……そうか、夢だったのか……」
 岡野はホッとしたような、ガッカリしたような複雑な表情でため息をつく。
「よし、後は上ちゃんだな……」
 二人は上田の方に目をやる。
 上田もまた、幸せそうな顔でクークーと寝息を立てていた。

「上田さ~ん、こっちですよ~!」
「待ってよ~、サクラちゃ~ん!」
 一面花畑の中で、上田とサクラがキラキラと目を輝かせながら鬼ごっこをしていた。
 ベタと言えばベタだ。
 その内に、目の前に一本の大木が見えてきた。
 二人は追いかけっこをしながら、木の幹の周りを駆け巡る。
 一周するごとに二人の距離は縮まり、ついに上田はサクラを捕まえる。
「つ~かまえた♪」
 が、勢いが付きすぎて、そのまま二人して花畑に倒れ込んでしまう。
「うわっ!」
「きゃっ!」

 ドサッ!

 ちょうど上田がサクラを地面に組み敷くような格好になった。
 だが、その時の上田の手の位置が悪かった。
 上田の右手は、しっかりとサクラの左胸を掴んでいたのだ。
 ……まぁ、まだ『掴める』ほど成長しているのかと言われれば微妙だが。
「げっ! またやっちゃ……」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! エッチ!」

 パシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!

「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 見事にサクラの平手打ちが決まり、上田は空に輝くお星さまになったのだった。

「はっ!」
 頬を赤く腫らした上田がパチッと目を開ける。
「上ちゃん、しっかりして!」
「眠っちゃだめだ、上ちゃん!」
「もう大丈夫だよ。……はぁ、夢で良かった」
 安心したような顔で上田が呟く。
 そして、こう続けた。
「同じネタ、何度も使うなよ……」
 ほっとけ。
 その時である。

 シャン、シャン、シャン、シャン、シャン……

 どこからか鈴の音が聞こえてきたのだ。
 続けて、
「はいっー! はいやーっ!」
 今度ははっきりと、人の声が聞こえてきた。
「誰か来たぞ!」
 立ち上がって石川が叫んだ。



~つづく~
 かなり前にブロ友さんのサースィさんが題材にしてらしたカレーメシ、私も今日、たまたま機会があったので買ってみました。



 ……試食はまた今度ですが(爆)。

 さて今日は、最近更新が滞ってる『ファイクエ』の用語解説を行いたいと思います。
 第十話もぼちぼち書き始めましたので、近い内に発表出来たらな、と思っています。

 では、スタート!

■トゥエクラニフ
この物語の舞台。地球とは異なる次元にある、剣と魔法のファンタジー世界。
元々は人族と魔族が仲良く暮らす世界だが……。

■ハサキヒオ大陸
石川達が最初に飛ばされた大陸。北側は山脈、南側には大洋が広がっている。

■ブクソフカ大陸
物語後半の舞台になっている、ハサキヒオ大陸よりも南側にある大陸。
内海が存在する逆“コ”の字型の大陸で、大陸の南北は内海とオーソレ山で分断されている。

■人間(にんげん)
この世界では人族と魔族の総称。

■人族(じんぞく)
この世界の、主に地上に住む人種。我々地球人とほぼ同じ種族だが、魔力を有するためか、百歳を超えて生きる者も珍しくない。
平均して、地球人類の平均よりもやや平和的。

■魔族(まぞく)
魔界出身の、人族とは別種の人種。生まれながらの魔族と、魔物や器物が進化した魔族が存在し、前者は尖った耳や、人族の約十倍の寿命を持つ点が特徴。その分成長も遅い。また、その血は青い色をしている。名前の通り魔力に長けているが、体力や力は人族に劣る。悪い種族ではなく、むしろ一般的なファンタジーにおけるエルフに近い。
魔界出身の彼らにとって、地上の太陽は眩しすぎるため、地上で暮らす者は変わり物と見られる。基本的に人族とは共存共栄しており、両者のハーフなども普通に生まれる。

■魔法
この世界に存在する、精神的なエネルギー。修行の結果や生まれつきの能力などで、魔法を行使する事が出来る。

魔導士(まどうし)
魔法を使う者の中でも、特に攻撃魔法や強化魔法を得意とする者。

■法術士(ほうじゅつし)
魔法を使う者の中でも、特に回復魔法や補助魔法を得意とする者。

■魔術士(まじゅつし)
魔法を使う者の中で、魔導士と法術士の能力を併せ持っている者。上田がこれ。

■救世主伝説(きゅうせいしゅでんせつ)
この世界に伝わる言い伝え。「世界に異変起きる時、異世界からの来訪者が現れ、異変の源を鎮めるだろう。そして、異変を鎮めた来訪者達は、自らの世界に帰るであろう」というもので、この世界では馴染みのお伽話のように扱われている。

■リマッカ商会
モーカ・リマッカを会長とする、この世界の一大コンツェルン。運送から警備まで、幅広く事業を行っている。

■シャグル
この世界の長さの単位。一シャグルは約三・五メートル。十分の一シャグルは一スーセ。

■カーグ
この世界の重さの単位。一カーグは約二・五グラム。千カーグは一ギカラ。

■リゴク
この世界の容積の単位。一リゴクは約一・四リットル。

■ゴールド
この世界の通貨単位。一ゴールドは日本円に換算すると約十円。

■天上世界(てんじょうせかい)
雲の上に存在する世界。雲が魔力で地面のように固まっている。地上との交流も行われており、人族が暮らしている。さらにその上には天界が存在する。

■天界(てんかい)
天上世界よりさらに上空に存在すると言われている世界。天帝が治め、その下には天界騎士達がいる。

■天界騎士(てんかいきし)
天界に暮らす者たち。現実世界で言うと仙人に近い存在で、主に地上で多大な功績を残したものがスカウトされることが多い。不老不死で、地上の平和を見守っているものの、基本的には地上の争いには干渉できない事になっている。徒弟制度が用いられており、光騎士という弟子を取っている。人族出身の者が多いが、魔族出身の者も少数ながら存在する。

■光騎士(ひかりきし)
まだ修行中の天界騎士。師匠から免許をもらう事で一人前の天界騎士になれるが、今度は自分が弟子を持たなければならない。

■魔界(まかい)
地底に存在する、魔族たちの生まれ故郷。地底にはあるが、太陽の光が地上の地面を透過して届いており、紫がかった空が特徴。大魔王が治めており、その下に存在する魔王達が各地を治めている。

■魔王(まおう)
魔界騎士の中でも、特に各地を治めている者。現実世界での知事のようなもの。それぞれ『○王』という肩書を持ち、スパイドルナイトは『蟲王』の称号を持つ。

■魔界騎士(まかいきし)
魔界を守護する者達で、天界騎士と対になる存在。魔界騎士になると、同じく不老不死となり、さらに修業を積んだ魔界騎士は肉体が滅びても魂は不滅で、時を置いて復活する事が出来る。また、特殊な条件下では、肉体が滅びる事で魂が浄化されるといった特徴を持つ。天界騎士と同じく、闇騎士という弟子を取っている。
定義は天界騎士よりも若干曖昧で、生まれつきの魔族以外の場合は
「魔力を帯びて人格を持つ:魔物」→「人型を取れるようになる:闇騎士」→「人型を常に維持できる:魔界騎士」と格上げされる。
生まれつきの魔族出身者の場合は天界騎士に準ずる。

■闇騎士(やみきし)
修行中の魔界騎士。基本的に魔族が多いが、人族出身の闇騎士・魔界騎士も存在する。

■魔物(モンスター)
この世界に存在する生物の中でも、人間に匹敵する魔力や、あるいは知能を備えた者たち。動物に近い物や、器物が魔力を帯びて魔物化したものなど、種類は様々。
倒されるとゴールドに姿が変わるという特徴があり、古代の神々の魔法による、と言い伝えられている。
基本的にこの世界に生きる生物だったが、最近、何らかの理由で凶暴化してきたらしい。

 いかがだったでしょうか?
 また何かあったら、追加していきたいと思います。

 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。


 どもこんにちは、アカサカです。



ギリアム「旦那様、今日はブロ友様から頂いたイラストのご紹介との事ですが……」

アカサカ「そうそう。ブロ友さんの冷やしゴジラさんが、『ファイクエ』の外伝小説『哀しみの土人形』のイメージイラストを描いてくれたんよ」



アカサカ「こちらがそれだ」


ギリアム「ほほう……なかなかハードな雰囲気で御座いますな」


アカサカ「内容がシリアスでハードだからな。シチュエーションとしては、『劇中で死んだあるキャラクターの血が付着して、アーセンが血涙を流してるように見える』って事だそうだ」


ギリアム「なるほど」

アカサカ「ちなみに右上の男の子は、冷やしゴジラさんがイメージしたヤマトだぞ」



アカサカ「ヤマトは本編の後、オレも設定画を描いた事がある」

ギリアム「冷やしゴジラ様のイラストとは、だいぶ雰囲気が違いますな」

アカサカ「オレのは、『バトシーラー』のつちわらしもイメージに入れてるからな。けど、オレは冷やしゴジラさん版も可愛くて好きだぞ



 と言ったところで、今日はこの辺で。
 どうも。ではでは。